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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

アイーダ@神奈川県民ホール

10月21日のアイーダに行ってきました。アイーダを生で聴くのは7回目。ヴェルディの作品の中では、トラヴィアータ、シモン・ボッカネグラ、ドン・カルロの次に多いと思います。特に今年は、4月の新国立の公演にも行っていますので、2度目の観劇。今回は、なんと4つの劇場(札幌文化芸術劇場hitaru、神奈川県民ホール、兵庫県立芸術文化センター、iichiko総合文化センター)と3つの芸術団体(東京二期会、札幌交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団)が、共同制作をするという意欲的な公演なのですが、逆にこれだけ多くの劇場が係わると収集がつかなくなってしまうのではという危惧も。

 指揮のバッティストーニは、このオペラを大変得意としていて、プログラムにもあるように「最高にワクワクするオペラ」と言っています。この日の指揮も、歌手に寄り添うというよりは、歌手をぐんぐん引っ張って行く迫力のあるものでした。アイーダの曲のエッセンスを絞り出すような感じです。ただ若干金管の響きが強すぎて、歌手の声をかき消すところがありました。アイーダトランペットは舞台の両端で鳴らされましたが、これはとても良かった。たいてい、もっと高いところで吹かれるのですが、正面から聞くのも良いものです。また、メロディーラインを奏でる楽器のボリュームを少し上げて、歌唱や合唱とユニゾンするようにしているところが、とてもイタリアっぽい。3幕目の最後のところは、イタリア感がピークに達して感動しました。4月のカリニャーニのややマイルドな演奏は“シンフォニー”のようでしたが、バッティストーニの指揮は、彫刻刀で削ったようなシャープで歌手を鼓舞するパワフルな“オペラ音楽”でした。

 ただ、この指揮についていけた歌手とそうでない歌手がいたのも事実。良かったのは、アモナズロの上江隼人。新国立の時の同役も彼でしたが、得意の高音に加えて、中低音に凄みが出て、アモナズロになりきっていました。声の演技が素晴らしかったです。そして、西村悟の代役で、もともとの伝令の役から大抜擢されてラダメスを歌った城宏憲が、一幕目の「清きアイーダ」からびっくりするような美声を聴かせました。声を振り回さずにコントロールしているところも良かったです。若いラダメスの苦悩を良く演じていました。新国立の研修生の頃から聴いていますが、今回のチャンスを生かしましたね。今後、主役級の役も付くのではないでしょうか?ランフィスの斉木健詞も、いつもはややモゴモゴした感じがあるのですが、この日はクリアでとても良かったです。アイーダの木下美穂子も、突出してはいませんでしたが、無難に歌っていました。

 残念だったのは、アムネリスのサーニャ・アナスタシア。一幕目は、声が出ない。テンポも遅れる。ただ、まあまだ喉が温まっていないのだろうと思っていました。で2幕目に期待していたのですが、その第一声、音がはずれた!だいたい1/4音はずれてしまっていました。いきなり、頭から水をかけられたような気分になりました。その後も無理に高音を出そうとすると、まるで、コーンスピーカーの紙が破れたような籠もった声になってしまい、落ち着いてオペラを聴いていられない状態。3-4幕目ではようやく持ち直して、「ああ、これが実力なんだ」と思われる良い歌唱を聴かせましたが、前日の清水華澄がとても良かった、(僕も演奏会形式で聴いていますが素晴らしかったです。)と聞いていますので、何もこのレベルの歌手を海外から招聘する必要性があったのかと思ってしまいました。このオペラは、“アイーダ”ではなくて、“アムネリス”というタイトルにしても良いくらい、アムネリスの役は重要なのに、大変残念でした。

 そして、もうひとつ残念だったのは演出。演出はほとんど無いという感じで、一昔前の藤原のように、歌手は前を向いて両手を広げて歌うのが殆ど。これなら演奏会形式でも良いような気がしました。それを補うように、バレエは本格的。東京シティバレエ団のプリンシパルクラスが、フェッテやマネージュを繰り広げ、さながらバレエの公演のようです。バレエが好きな僕としては嬉しかったのですが、演出の無い分をすべてバレエに託したような安易さがあり、また、オペラとの調和という面でもやや疑問でした。

 オペラが終わった時は、なかなかの満足感があったのですが、一夜明けてブログにすると色々と難点が気になってしまう、そんな公演でした。


指揮 アンドレア・バッティストーニ
演出 ジュリオ・チャバッティ

アイーダ 木下美穂子
ラダメス 城宏憲
アムネリス サーニャ・アナスタシア。
アモナズロ 上江隼人
ランフィス 斉木健詞
エジプト国王 清水那由太
巫女 松井敦子
伝令 菅野敦

東京シティバレエ団
東京フィルハーモニー交響楽団

 
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ラ・トラヴィアータ 藤沢市民オペラ

 しばらくブログをご無沙汰してしまいました。その間にコンサートに数回行きましたが、時間もたってしまったので、割愛致します。

 それで、昨日は1ヶ月ぶりのオペラ、大好きなトラヴィアータです。中村恵理のヴィオレッタは、彼女のリサイタルやヴェルディ協会のイベントで、何曲かは聴いていて、それだけでも、ものすごく魅力的でしたしたので、全幕で聴くのを本当に楽しみにしていました。

 この日の彼女は、本当に素晴らしかったです。どちらかというと「力強い」ヴィオレッタなのですが、1幕の最初から、病気であることがわかるような歌い方。ちょっと息があがっているような雰囲気を醸し出しているのです。ヴィオレッタの人格と体調に完全にシンクロしているのですね。ヌッチは、舞台でどんな事故があっても、役柄から抜けませんが、そのような鬼気迫るものを感じる歌唱と演技でした。

 3幕目の最初の、“Dammi d’acqua un sorso”(お水を頂戴、ひとくち)というところも、はっきりした強い口調で歌うのですが、そこには、もう死の予感がたくさんこもっています。プログラムの解説にもありましたが、最期の場面で、”Ah1 io ritorno a viviere..” “Oh giola” (私はもう一度生きるの、ああ、嬉しい)というセリフが、これほどぴったり合うヴィオレッタは、トラヴィアータをかれこれ15回は舞台で聴いていますが、中村恵理をおいて他にはありません。ナタリー・デセイのヴィオレッタの最期の場面も、素晴らしいのですが、そのセリフとは裏腹に、「もう一度生きる」という感じはしません。この感じがするのは、あとはデヴィーアでしょうか?

 ですので、この日の公園、僕は、完全に中村恵理に“持って行かれた”という感じでした。中村の歌唱があまりに良すぎて、他の歌手が色あせて聞こえるという感じ。その中で、良かったのは、今まで何度聞いてもあまり感動しなかった、須藤慎吾のジェルモンでした。実直な田舎の紳士という感じを、声に無理なく自然に出していました。2幕目でちょっとベルカントしていたのもおもしろかったです。ただ、2幕目最終部の「プロヴァンスの海と土」の後、カヴァレッタを省略してしまったのは、とても残念。 “Non non udrai rimproveri, copriam d’oblio il pasato” (いいやお前に何も小言は言うまい。過去は忘れてしまおう。”と始まる、やさしいメロディで、ジェルモンが息子への愛情をオロオロしながら歌うこの部分が無いと、2幕目、3幕目での親子関係がはっきりとわからなくなってしまうのです。田舎の富豪の息子であるアルフレードが、いかに愛情を注がれて、言い換えれば甘やかされて育ってきたかというのがわかる部分です。これは1幕目2場のパリ郊外のヴィオレッタの館で、“O mio rimorso!”(おお、わが後悔)と歌うアルフレードのカヴァレッタとも呼応しています。この部分も良く省略されてしまうのですが、今回、こちらは残されていました。アルフレードは、1000ルイという大金をなんとかするためにパリに向かうのですが、アンニーナに言われるまでもなく、二人で働きもせずに、そのような豪華な暮らしをするのに、お金がどこから来ているか、考えもしないというのは、あまりにも馬鹿息子過ぎるのではないかと思うのです。その馬鹿息子ぶりが、良い意味でも悪い意味でもアルフレードの魅力なのですが、その部分を裏付けるのが、ジェルモンの2幕目最後のカヴァレッタ。やっぱり入れて欲しかったですね。ちなみに、実話でも原作の作者デュマ・フィスは、ヴィオレッタこと、マリー・デュプレシとの暮らしを維持するための金を父デュマに借りに行くと断られますが、その実、銀行での借金の保証人にはなっているのです。

 このオペラは、実話、原作、戯曲、バレエと色々な表現があるので、それを比較するのもとてもおもしろいです。

 アルフレードを歌った笛田博昭、とても良い声をしていましたし、彼の声量は中村に負けない強さを見せていましたが、ややヴェリズモっぽい、そして音程がところどころぶれることがありました。脇役ですが、男爵役の久保田真澄、アンニーナの牧野真由美、フローラの向野由美子はとても良かったです。この脇役には豪華すぎる配役と言って良いと思いますが、公演全体がグッと締まりました。

 園田隆一郎の指揮は、丁寧で、柔らかく、ピチカートでカラフルにするところなど、彼らしさが出ていましたが、この日の主役となった、中村恵理の強さにやや負けるところがあった気がします。

 岩田宗達の演出は、2013年の新国立での藤原公園、デヴィーア主演の時の演出を元にしていると思われます。あの時3幕目にしか登場しなかった、大きな斜めの台を一幕目から登場させ、使い回していましたが、限られた装置しかない舞台では、とても効果的でした。

 この公演、今年も一日限りなのですが、できれば2日続けて聴きたいものです。とにかく中村恵理に圧倒された満足な公演でした。

指揮:園田隆一郎
演出:岩田達宗
ヴィオレッタ 中村 恵理
アルフレード 笛田 博昭
ジェルモン 須藤 慎吾
フローラ 向野 由美子
ガストン子爵 井出 司
ドビニー侯爵 三浦 克次
ドゥフォール男爵 久保田 真澄
医師グランヴィル 東原 貞彦
アンニーナ 牧野 真由美
管弦楽 テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
合唱 藤原歌劇団合唱部

絶品の「ノルマ」

 この3月末で、大学院のほうが退任になるので、授業もゼミもなくなって、だいぶ暇になるかと思っていたのですが、貧乏性なもので、空いた時間にどんどん仕事を突っ込んだり、旅行をしたりしていたら、何だか忙しくなってしまいました。そんなわけで、今まですべての観劇をブログにしていたのですが、2-3月で2つほどコンサートが漏れてしまっています。なんとか後でおっつけたいと思っていますが、とりあえず、オペラは外せないので、昨日、オーチャードホールで聴いた、二期会の「ノルマ」の感想をアップします。

 まず、今日一番に書きたいのが「指揮」です。素晴らしかったです。リッカルド・フリッツァ、新国立の2009年のオテロは、あまり印象に残らなかったのですが、昨年の「ラ・トラヴィアータ」の指揮は望外に(失礼!)に良かったのです。ピアニシモが美しく、品があって、しかし退屈でない、「静かなトラヴィアータ」でした。昨日のノルマはまさしく絶品!序曲が始まって「あっ!」と思ったのは、昨今、ノルマの序曲は古楽っぽくメリハリを付けて、楽器の響きを短くして聞かせるのがデファクト・スタンダードみたいになっているのに、フリッツァの指揮は、現代楽器をふくよかに、のびやかに鳴らします。それでいて、だぶついたところは全くなく、色に溢れたように、楽器ひとつひとつが聞き取れるような指揮でした。METでのリッツィ、一昨年のデヴィーアのノルマの時のランツィロッタの指揮も、ピリオド楽器風で、それはそれで素晴らしかったのですが、フリッツァの古き良き「ノルマ」は素晴らしい。彼は、「ラ・トラヴィアータ」の時は、1950−60年代的な演奏を排除すると言うポリシーで指揮に臨んでいましたが、ノルマでは逆ですね。けっこうへそ曲がりなのではないかとも思います。

 彼の指揮は、ノルマでも全体に低音量です。歌手もそれに合わせています。しかし、ここぞというところでは、楽器をピックアップするように浮きだたせて、音波を作ります。それもとても品格のある音波を!2幕目の序奏はずっとピアニシモが続き、ノルマの「眠っているとも」に続くのですが、ここの緊迫感が幕全体への期待を膨らませます。そして、3幕のノルマとポリオーネの2重唱「貴方は私の手中に」の序奏では、もう涙がウルウルです。ベッリーニの美しいメロディを、これだけ美しく聴かせてくれた指揮は、ノルマも6回くらい聴いていますが、滅多になかったです。僕としては、この日のMVPはマエストロ・フリッツァに捧げたいですね。多分、僕自身の好みとも合っているのでしょう。

 そして、歌手も本当に良かったです。大隅智佳子に代わって、2日続けてタイトルロールを歌った大村博美、ノルマの心情を細かくにじみ出させるような、美しい歌唱でした。”Casta Diva”はやや破綻を怖れて、8割方のパワーだったような気がしますが、静かな指揮とぴったり合っていました。ポリオーネの樋口達哉、やっと彼の持ち味が出せる役が来ましたね。ルサルカの王子じゃないでしょう!得意の高音も良かったですが、中音での感情表現が豊かで聴き応えありました。アダルジーザの富岡明子も、とても良かったのですが、役にはやや立派すぎる歌唱だったような気がします。声質がレッジェロ、リリコという感じではないのでしかたがないのですが、もう少しノルマに合わせて、彼女よりだいぶ歳も格も下だというのが、感じられる歌い方をして欲しかったです。ノルマとの二重唱や掛け合いの時に、このアンバランスがちょっと気になりました。オロヴェーゾの狩野賢一もがんばっていました。妻屋さんの次の世代として期待できますね。そして、特筆すべきなのは、二期会合唱団。少し荒いところがあるのがドルイド教徒らしくて、ノルマの合唱としては素晴らしかったです。聴き応えありました。

 セミステージ方式ということで、ステージに乗ったオケの後ろ、合唱団の前に台を設けて、そこである程度演技もつけて歌うという方式、評価が分かれそうですが、僕はとても良かったと思います。ここ数年、演奏会形式、セミステージ形式の公演を聴く機会が増えていますが、いずみホールのシモン・ボッカネグラや、テアトロ・レアル(マドリッド)でのルイーザ・ミラーなど、動きの付いた演奏会形式は、引き込まれ度が違います。藤沢市民オペラの時に、セミラーミデ役の安藤赴美子さんが、両手でこぶしを挙げて歌っているのを見ただけで、グッと来ましたから、やはりただ突っ立っているよりは、何らかの演技が少しついただけでも印象は変わります。今回はノルマはけっこう衣装も替えていましたね。

 これだけ素晴らしい内容で、2階の良い席で¥6,000−。Value for moneyですねー。残念だったのは、けっこう空いている席があったこと。二期会には、もっと宣伝してほしいですね。ポスターも無いんですよ。せっかくの箱がもったいない。

 それにしても、十二分に満足なノルマでした。昨日からずっとCD聴き返しています。(バルトリ、アントニーニ盤)

指揮: リッカルド・フリッツァ

演出: 菊池裕美子
映像: 栗山聡之
照明: 大島祐夫
合唱指揮: 佐藤 宏
舞台監督: 幸泉浩司

ポリオーネ:樋口達哉
オロヴェーゾ:狩野賢一
ノルマ:大村博美
アダルジーザ:富岡明子
クロティルデ:大賀真理子
フラーヴィオ:新海康仁

あけましておめでとうございます。

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。本年も、よろしくお願いを致します。

1月も半ばなんですが、まだオペラもバレエもコンサートも行ってないんです。いつもは、サントリーホールでの新春コンサートに行くのですが、今年は、何故かチケット取り逃してしまいました。1月は東フィルのミョンフン指揮のジュピターだけです。その代わり2月は、オペラ、バレエ、コンサートで7演目観劇の予定があります。

さて、それはそうと、新国立劇場のオペラ新芸術監督の大野和士さんが、2018-2019年の演目を発表しましたね。

新制作の演出が4つもあって、意欲的! 個人的には、大野さん、リヨンにいたのですから、フランスオペラがひとつ欲しかったというところです。

詳しくは下記サイトをご覧下さい。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_011679.html

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