プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

オペラ座グラン・ガラ

 昨夜、3月9日のパリオペラ座来日公演、グラン・ガラの初日に行ってきました。凄かったです。感動!オペラ座のエトワール達は、毎年来日して公演をしていますが、やはり本公演は格が違いますね。今回は、ガラと言っても、パ・ド・ドゥをいくつも見せてくれるのではなく、「テーマとヴァリエーション」、「アザー・ダンス」、「ダフニスとクロエ」の三作の全編をたっぷりと見せてくれたので、満足感が強いです。

 「テーマとヴァリエーション」はバランシンの傑作です。ABTの十八番というイメージも強いですが。昨夜は先週の「ラ・シルフィード」の時のコンビ、ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマンで踊られました。この二人はもう完璧ですね。シルフィードとは違って短いチュチュで脚の美しさが際立つミリアム。静止の美しさは、頭から足までピアノ線が入っているようです。マチアスも複雑なジャンプを素晴らしい高さでこなしていました。片腕だけのリフトやキャッチも多いので、かなり体力を使うと思います。小柄な彼には負担が大きいと思うのですが、シルフィード同様に「練習しました」という感じを全く見せずに踊りきったのが凄い。この二人、これから注目していきたいです。

 「アザー・ダンス」は世界バレエなどでおなじみの演目です。2012年には、エトワールになったばかりのジョシュア・オファルトとオーレリ・デュポンで見ていますが、全編を通しで見るのは今回が初めて。ローラ・エッケが踊るはずだったんですよね、たしか。彼女の降板は残念ですが、代わりに踊ったエトワールのリュドミラ・パリエロが神々しいばかりに素晴らしかったです。造形美と言っていいのでしょうか?体全体で作られる形が本当に美しい。ショパンの音楽をそのままグラフィカルにバレエにした感じです。これはファンになりますね。相手役のジョシュア・オファルトも今や貫禄のあるエトワール。切れのある踊りを見せてくれました。この作品、男性ダンサーのソロがけっこう難しそうですが、ピルエットやフェッテも難なく決めてくれました。

 そして、この日のお目当て「ダフニスとクロエ」フレデリック・アシュトン版はYou Tubeで見たことがありますが、バンジャマン・ミルピエ版は初めてです。

 この作品の原作は、ロンゴスという古代ギリシアの作家が書いたものと言われています。エーゲ海のレスボス島を舞台とした若い二人の恋愛物語。2014年にオペラ座の芸術監督就任が決まっていたミルピエ振り付けの力作です。この初演の時の衣装は、写真を見るとカラフルなチュチュを主体にしたクラシックなものだったようですが、今回は布をまとったシンプルなものになっていました。ダニエル・ビュランが作った舞台は初演の時とだいたい同じで、黄色い太陽、地中海の青などの色が幾何学的にステンドグラスのように美しい光になっています。ダフニス役のオーレリ・デュポンは高貴で優雅、美の象徴のように舞台をコントロールします。いつも思いますが、彫刻的な彼女の存在感は凄いものがあります。彼女の恋人役のクロエは、エルヴェ・モローが踊るはずでしたが、怪我で降板。この人の怪我で降板率は5割くらいですね。現在、デュポンのパートナーとしてはこの人が最高なので、全く残念です。しかし、代わりに踊った天才的ダンサー、ジェルマン・ルーヴェも、若いクロエの愛情と焦燥、迷いを余すことなく表現していて満足でした。

 そして、ダフニスを奪おうとするドルコンを踊ったスジェのマルク・モロー、グロテスクな踊りながら、超絶技巧を駆使して主役を食う出来でした。クロエを誘惑するリュセイオン役のレオノール・ポラック、ちょっと可愛すぎるかなと思いましたが、髪をひっつめて妖艶な踊りを見せてくれました。1時間近い、結構長い演目でしたが、本当に引き込まれました。

 そして、この日特筆すべきなのは、音楽です。素晴らしいラヴェルを聴けました。シルフィードとは別の若い指揮者、マクシム・パスカルは東フィルを確かな緊張感を持って鳴らしていました。こんなに良いラヴェルは、ハーディングの「ラ・ヴァルス」を聴いて以来と言っても良いです。コンサートとしても一級でした。バレエの音楽でこれほどのレベルの指揮が際立つのは珍しいです。願わくば、このパスカルが先月のデュポンのボレロも生で指揮してくれれば良かったのになぁ、と思います。

 ともあれ、「バレエは総合芸術だ!」と思い知らされた夜でした。

2-3月のバレエ月間はこれで終わり。この週末と月曜日はバッティストーニ&東フィルのラフマニノフとチャイコフスキー。珍しくゲネプロと本番両方行きます。そしてその後はルチアです。

 それと、今日、7月の藤原歌劇団のデヴィーアの「ノルマ」と、9月の東フィル、バッティの「オテロ」のチケット取りました。「ノルマ」はこれを逃したらいつ聴けるかわからないので、デヴィーアの出る2日間両方取りました。どちらも一番高い席でも1万円台。お値打ちです。皆様も是非!

ノルマ  
 https://www.jof.or.jp/performance/nrml/1707_norma.html

オテロ  
http://tpo.or.jp/concert/20170908-01.php


グラン・ガラのキャスト
「テーマとヴァリエーション」
振付: ジョージ・バランシン
音楽: ピョートル・I.チャイコフスキー
照明: マーク・スタンリー
ミリアム・ウルド=ブラーム / マチアス・エイマン、オーレリア・ベレ、セヴリーヌ・ウェステルマン、ロール=アデライド・ブーコー、ソフィー・マイユー他

「アザー・ダンス」
振付: ジェローム・ロビンズ
音楽: フレデリック・ショパン
衣裳: サン・ロカスト
照明: ジェニファー・ティプトン
リュドミラ・パリエロ / ジョシュア・オファルト

「ダフニスとクロエ」
振付: バンジャマン・ミルピエ
音楽: モーリス・ラヴェル
装置画: ダニエル・ビュラン
ダフニス:ジェルマン・ルーヴェ / クロエ:オレリー・デュポン
ドルコン:マルク・モロー / リュセイオン:レオノール・ボラック
ブリュアクシス:フランソワ・アリュー
マリーヌ・ガニオ、エレノアール・ゲリノー、ローランス・ラフォン、エミリー・アスブン他

指揮:マクシム・パスカル
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
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ユーゴ・マルシャンがエトワール昇格!

昨日、3月3日の”ラ・シルフィード”の公演でジェイムズを踊ったユーゴ・マルシャンが、公演後舞台に現れた芸術監督のオレリー・デュポンにエトワール昇格を告げられたとのことです。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/33.html

去年のエトワール・ガラで、一番感動したのが、マルシャンとジルベールの"チャイコフスキー・パ・ド・ドウでした。マルシャン、優雅でしたねー。エトワール昇格おめでとうございます。それにしても、昨日も行けば良かったなぁ。エトワール昇格が海外で発表されるのは初めてではありませんが、日本での発表は今までになかったと思います。

東京文化会館終演後のエトワール昇格の瞬間(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=GyPfim8Oq2Q

3月2日”ラ・シルフィード”のブログ

http://provenzailmar.blog18.fc2.com/blog-entry-618.html



オペラ座の”ラ・シルフィード“

 3月2日、昨年芸術監督に着任して一年たったオレリー・デュポン率いるパリオペラ座の来日公演の初日に、”ラ・シルフィード“を見に行ってきました。全幕ものとしては、ちょっと地味かなぁと思っていたのですが、凄かったです。感動しました。終幕のカーテンコールは10分間続きました。

 シルフィードを全幕で見るのは、昨年の新国立劇場でのブルノンヴィル版に続き、今回のラコット版で2回目。今回のほうが、パ・ド・ドゥの回数が多いように感じました。それでも、フェッテやピロエットのような派手な見せ場はなく、特にシルフィードを演じる女性ダンサーは、小技で見せる場面が多いので、全体にしっとりとした感じの舞台です。

 今回のオペラ座の来日では、目玉のエトワールのうち、マチュー・ガニオ、エルヴェ・モロー、ローラ・エッケという超目玉のキャストが怪我などで降板、来日しないことになり、随分と残念な思いをしている方は多いと思います。しかし、この日の3人の若き(でもないか..)エトワールは素晴らしかったです。特に魅了されたのは、シルフィードを踊ったミリアム・ウルド=ブラーム、小さな体で本当に宙に浮いているように踊り、“妖精感”たっぷり!「練習しました!」という感じが全く無いんですね。踊っている間の表情の変化、手の先の表現などが、余裕たっぷりです。シルフィードが魅力的でないと、浮気するジェイムズが悪者みたいに見えるのですが、これほどシルフィードが素晴らしいと、「そりゃ、こんな素敵な人が出てきたらしようがないよね。」と思うわけです。ポワントでの静止は時間が止まったようで、なんとも美しい!

 この人、2年前の世界バレエで怪我をして、直前に来日できなかったことを覚えています。だから多分、今回見るのが初めてだと思います。さきほど「若き(?)」と書いたのは、彼女、もう35歳でお子さんもいらっしゃるんですね。

 当初、ガニオとアルビッソンの公演とどちらに行こうか迷ったのですが、アルビッソンでは妖精としては大柄すぎると思い、ミリアム・ウルド=ブラームのほうを選びました。正解でした。でもアルビッソンも見に行きたいですけど......

 ジェイムズを踊ったマチアス・エイマン。去年の「オールスターガラ」で、ジリアン・マーフィーと素敵な “Who cares?”を踊ってくれましたが、クラシックを見るのは初めて。背が低いので、“王子感”にはちょっと欠けますが、キビキビしていながら優雅な動き、素晴らしいジャンプ力で、シルフィードを必死に追いかける様子が胸を打ちます。この人は今、30歳。19歳でコリフェになり、2007年にスジェ、2008年にプルミエ・ダンスール、2009年にエトワールと、凄いステップアップをしているんですね。エトワールを取った時の舞台がレンスキーだったそうですが、ちょっと見たいですね。

 そして、つい最近、昨年の12月にオレリー・デュポンによってエトワールに任命されたのが、レオノール・ポラック。27歳ですからアルビッソンよりも若い。エフィーを踊りました。役柄にぴったりという感じ。スコットランドの田舎の可愛い娘の感じが良く出ていました。そして、ジェイムズの友人、ガーンを踊ったイヴォン・ドゥモル、プログラムのダンサーの紹介にも載っていませんでしたが、素晴らしい踊りを披露してくれました。2014年にコリフェだったので、多分今はスジェ?

 今回はオーケストラで東フィルが入り、若いフランス人指揮者フェイサル・カルイが振りました。初日ということで、まだ堅い音でしたが、それでも後半はとても叙情的な盛り上がりのあるアンサンブルを聴かせてくれました。やはり生のオケが入るのは良いですね。

 シルフィードで、これほど心を動かされるとは思ってもいませんでした。しばらく席から動けませんでした。できれば、もう一回見に行きたいくらいです。

さて、あとは9日のグラン・ガラ。デュポン、楽しみなのはもちろん、デュポンとジェルマン・ルーヴェが踊る”ダフニスとクロエ“です。これも東フィルが入ります。それまで出演者に怪我の無いことを祈るばかりです。

フィリッポ・タリオーニ原案による2幕のバレエ
台本: アドルフ・ヌーリ
復元・振付: ピエール・ラコット(フィリッポ・タリオーニ原案による)
音楽: ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー
装置: マリ=クレール・ミュッソン(ピエール・チチェリ版による)
衣裳: ミッシェル・フレスネ(ウージェーヌ・ラミ版による)

ラ・シルフィード:ミリアム・ウルド=ブラーム
ジェイムズ:マチアス・エイマン
エフィー:レオノール・ボラック
ガーン:イヴォン・ドゥモル
魔女マッジ:アレクシス・ルノー
エフィーの母:ニノン・ロー
パ・ド・ドゥ:エレオノール・ゲリノー / フランソワ・アリュー

オレリー・デュポンのボレロ

 この1週間は、金沢行きも含めて4公演に行ったので、ブログへのアップが追いつきませんでした。印象が薄くならないうちに木金の2公演のことを続けて書こうと思います。

「東京バレエ団ウィンター・ガラ」と銘打って、オーチャードホールで、3つの異色の作品を上演するという意欲的な企画です。しかし、僕としては何と言っても、一昨年のパリオペラ座での引退公演の、マクミランの ”マノン“以来のオレリー・デュポンです。彼女をライブで見られるのがすごい魅力で、チケットを取りました。

“ボレロ“を踊る女性ダンサーとしては、もちろんシルヴィ・ギエムがまず頭に浮かびます。次にプリセツカヤでしょうか・・これに対してデュポンが”ボレロ”を初めて踊ったのは2012年なんですね。ベジャールの死後5年たってから、ニューヨークの公演で初めて踊ったそうです。たしかに、デュポンというとキリアンの”扉は必ず“とか、ノイマイヤーの「椿姫」など、「静」のイメージが強かったですね。ですので、43歳で一旦引退したデュポンが、オペラ座の芸術監督として単身日本に帰ってきて踊るのが、ベジャールというのはとても興味深かったのです。

 冒頭の手の動きの照明があたるところから、もうデュポンの世界でした。優雅ですべるような動き。全身がライトアップされて、「あっ!」と思いました。マノンの引退公演で体を絞って、多分数キロはやせたと思うのですが、それがそのまま引き継がれていました。2014年の8月に勅使河原三郎と共演した「睡眠」の時から比べると、本当に一回り小さくなったみたいです。凄いですよね、二人のお子さんを産んで育てているのですから。

 彼女のボレロは、様式感に溢れた美しいものです。バランスが正確に保たれて、「動」を「静」の中に閉じ込めたような動き。ギエムともロマンとも違う、彼女のボレロでした。昔、見たパトリック・デュポン(同じデュポンでも血のつながりは無いらしいです)に流れとしては似ているような…..クラシックの雰囲気もあります。「素晴らしい!」としか言いようがありません。だんだんと弦に管が入って来て盛り上がってくるにしたがい、体の動きがバネの入った幹のようになってくるところ、背筋に感動が走ります。あ−、これで音楽がライブだったらいいんだけどなぁ。シャルル・デュトワの指揮を望みます。彼の指揮でボレロを踊ったダンサーはいるんだろうか。

 ただ、今回はオーチャードホールの1階の後方のはじで、音響の悪いところだったので、テープの音楽でも生みたいに聞こえました。思わぬ状況です。

 来月もデュポンは来てくれますね。楽しみです。残念ながら、エルヴェ・モローとマチュー・ガニオ、ローラ・エッケが来られないことになってしまいましたが、デュポンはジェルマン・ルーヴェと、またラヴェルを踊ってくれます。”ダフニスとクロエ“楽しみです。

新国立劇場バレエ研修所発表公演

 10月23日、新国立劇場バレエ研修所、第12期生、第13期生の発表公演、”オータム・コンサート2016”に行ってきました。当日の午前中に、思い立ってチケットを取ったのですが、最後の3席のうちの1席が取れました。オペラ研修所の公演もそうですが、研修生の家族や先輩、後輩などが詰めかけるので、すぐに満席になってしまうのでしょう。

 中劇場で行われた公演は、休憩も入れて2時間でしたが、とても充実した内容でした。プログラムは次の通り。

『パキータ』より グラン・パ・クラシック
パキータ :関 優奈
リュシアン:芳賀 望(ゲスト)
ヴァリエーションⅠ:中島春菜
ヴァリエーションⅡ:丸山さくら
ヴァリエーションⅢ:赤井綾乃

キャラクター・ダンス レッスン (ピアノ演奏:吉田育英)
研修生

自作自演作品
『desire』 赤井綾乃 音楽:H.ジマー「Discombobulate」
『Resistance of ERASER』横山柊子 音楽:B.バルトーク「コントラスツ」第1楽章ヴェルグンコシュ
『葛藤』渡邊拓朗 音楽:A.コレッリ「ヴァイオリン・ソナタ第7番ニ短調」第4楽章

『白鳥の湖』第3幕より 王子のヴァリエーション  佐藤 鴻

『コッペリア』より パ・ド・ドゥ 杉山澄華
江本 拓(ゲスト 新国立劇場バレエ団登録ファースト・ソリスト)

『ラ・バヤデール』第2幕より パ・ダクション
ガムザッティ:横山柊子ソロル :渡邊拓朗


司 会 :小比類巻 諒介(演劇研修所第11期生)

 ソロで踊ったダンサーは、技術的には、既に充分なものを身につけていると思いました。フェッテなども素晴らしいものでした。あとは、表現力をどのように自分なりに付けていくのか、、まだ若いので、これから伸びしろがいくらでもあるように思います。パキータを踊った関さん、スター性がありますね。素敵でした。自作自演での渡邊さん、鋭い動きで空間を切り裂くような感じがありました。

 今月はオペラでは、昭和音大のコジ・ファン・トゥッテ、そしてこの新国立の研修所公演と、若手の練習を積んだ素晴らしい発表を見て、実に良い気分です。ちなみに、この公演は全席指定で\2,160-、すごいマネー・フォー・ヴァリューです!
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