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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

世界バレエ Bプログラム

8月8日、台風が迫る中を、世界バレエのBプログラムに行って来ました。平日の6時に上野に行くというのは、仕事がある身としてはなかなか辛く、この日も開幕10分前に到着。2階L席の最前列でした。ここはB席ですが、最前列が取れれば3階、いや、4階でさえもなかなか良いシートです。オペラでも狙っていますが、最前列はなかなか取れません。Aプロに続いてラッキーでした。

この日の演目は、あきらかにAプロより、豪華なラインナップになっていました。「椿姫」のパ・ド・ドゥが2つもありますし、しばらく日本では上演されていなかった、「マノン」の沼地のパ・ド・ドゥ、そして「オネーギン」の寝室のパ・ド・ドゥ、「白鳥の湖」から黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥと、好演目が目白押しです。だいたいの人が両プロともチケットを取るでしょうが、Aプロだけ見た人(例えばデュポン目当てで)は、ちょっと残念だったかもしれません。

今回も、気になった演目をコメントしていきます。

まずは、Aプロの「ディアナとアクテシオン」で素晴らしい演技を見せてくれた、オランダ国立バレエのダニエル・カマルゴ、このBプロでは第一部の「ムニュコス」と第4部の「じゃじゃ馬ならし」で登場。正直、今回まで、知らなかったダンサーですが、出色でした。Aプロでは基礎が素晴らしいと思いましたが、Bプロの2演目では、表現力の豊かさにびっくりしました。「じゃじゃ馬ならし」はこの表現力がなければ、実にたいくつなバレエになってしまいますが、思わず舞台に引き込まれてしまうほどの演技力。エリサ・バデネスはおそらくは、もともとはシュッツガルト・バレエで一緒に踊っていたと思われます。彼女も実にコケティッシュな魅力を振りまいていました。このカマルゴ、まだ若い(20代)と思います。軸のぶれの無い回転の速さ、ジャンプ力もあり、また、パートナーの扱いも上手い。王子役も見たかったです。

オペラ座のコンビ、レオノール・ポラックとジェルマン・ルーヴェの「ソナチネ」。バランシンらしく優雅で高貴な雰囲気があります。ラヴェルの曲に合わせての比較的ゆっくりした踊り。Aプロの「くるみ割り人形」より、ずっと良かったです。ポラックは素早くポアントをすると時々脚が震えることがありましたが、この演目では実にきれいなポアントでした。しかし、オペラ座のエトワールは、フランス物、マスネとかこのラヴェルなどで踊ると余計素敵ですね。(と思うのはフランスびいきの僕だけかもしれませんが)

今回、第1部で「コッペリア」、第3部で「マノン」を踊った、アリーナ・コジョカル、もう、40歳に手が届く年齢だと思いますが、可愛い!前にも言いましたが、オペラ座のダンサーは年齢に従って、「可愛い」→「たくましい」とか「優雅」、「切れのある」などとイメージを変化させるのですが、コジョカルは、あくまで「可愛い」ですね。身長が低いこともあるのでしょう。今回、なんだか、はじめて「コジョカルいいなぁ」と思いました。今まで、このコッペリアも何度も見ているのですが。マノンの「沼地のパ・ド・ドゥ」も久しぶりです。何やら、日本での上演の権利の問題があって、それが解決したのだと聞きました。この演目は一昨年、パリのオペラ座でデュポンの引退公演で見たのが目に焼き付いていますし、その前には、マラーホフとヴィシニョーワのペアの演技も何度も見ています。ですので、どうしてもそれらの演技との比較になり、そうするとダイナミックさ(特にマノンがデグリューに投げられるところ)が足りない感じがしてしまいますが、逆に様式感がきちんとあって、安心して見ていられる、そしてやはり、「可愛い!」、というところが魅力でした。

2部では、また、タマラ・ロホが最高!完全に僕の中では、ロホ復活!です。「HETのための2つの小品」は、コンテンポラリーですが、クラシックなテクニックも多く使われており、ロホの魅力が十二分に出ています。彼女は、コジョカルとは正反対のタイプ。空気を切り裂くような清冽な踊りが魅力です。これが、前回の世界バレエでは、ノイマイヤーの振り付けとは合わなかったのですが、今回はAプロの「カルメン」もそうでしたが、新しいロホの踊りのスタイルというのを見せつけてくれました。

「椿姫」からは、第2幕の侯爵の別荘でのマルグリットとアルマンのパ・ド・ドゥ、第3幕からは「黒のパ・ド・ドゥ」と2つの魅力ある演目が見られました。ピアノの、フレデリック・ヴァイセ=クニッテルがとても良く、ショパンの調べにのった踊りが良かったです。しかし、フリーデマン・フォーゲルも38歳ですが、童顔ですね。高いリフトから首の後ろを通って抱き合う形になるところなど、ノイマイヤーってやはり天才的な振り付けをするものだと思いました。

第4部のラスト3演目は、ノイマイヤーのアダージェット、クランコのオネーギン、寝室のパ・ド・ドゥ、そしてプティバのドン・キホーテと、涎の垂れそうな演目が続きました。シムキンのマネージュも今回はすごく高く、拍手喝采。

今回は、バレエではあまり話題にならない、指揮とオーケストラも良かったと思います。演目に合わせて、軽快に、また、粘っこく、またマーラーの5番のように、静かに心の奥に響くような音楽を作り出していました。全幕のドン・キホーテも良かったのですが、こういったガラだと、ミンクス、ドリーブ、チャイコフスキーという3大バレエ作曲家の作品が聴けます。これだけでも幸せ。

休憩時に、文化会館の事業企画課のSさんと話したのですが、今では、この3年に一度の世界バレエに出演することを目的にして頑張っているダンサーがたくさんいると、そして、ここに出たことは、ダンサーの経歴にも誇れる印になるということでした。世界中探してもこんなに素晴らしいダンサーが一堂に会するイベントはありませんものね。

満足しました。多分、今年のバレエ観劇はこれでおしまいかと思います。

― 第1部 ―
「眠れる森の美女」
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ

「ムニェコス(人形)」
振付:アルベルト・メンデス
音楽:レムベルト・エグエス
ヴィエングセイ・ヴァルデス
ダニエル・カマルゴ

「ソナチネ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:モーリス・ラヴェル
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ

「オルフェウス」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー、ハインリヒ・ビーバー、ピーター・プレグヴァド、アンディ・パートリッジ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

ローラン・プティの「コッペリア」
振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ
アリーナ・コジョカル
セザール・コラレス

― 第2部 ―

「シンデレラ」
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ

「HETのための2つの小品」
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:エリッキ=スヴェン・トール、アルヴォ・ペルト
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス

「白鳥の湖」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アシュレイ・ボーダー
レオニード・サラファーノフ

「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル

― 第3部 ―

「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
メリッサ・ハミルトン
ロベルト・ボッレ

「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ミリアム・ウルド=ブラーム
マチアス・エイマン

「マノン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー

「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
サラ・ラム
フェデリコ・ボネッリ

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ

― 第4部 ―

「じゃじゃ馬馴らし」
振付:ジョン・クランコ
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
編曲:クルト・ハインツ・シュトルツェ
エリサ・バデネス
ダニエル・カマルゴ

「ヌレエフ」より パ・ド・ドゥ
振付:ユーリー・ポソホフ
音楽:イリヤ・デムツキー
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ

「アダージェット」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:グスタフ・マーラー
マリア・アイシュヴァルト
アレクサンドル・リアブコ

「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アレッサンドラ・フェリ
マルセロ・ゴメス

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル(「ソナチネ」「椿姫」)
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世界バレエAプログラム

先日の“ドン・キホーテ”に続いて、第15回世界バレエのAプログラム見て来ました。堪能しました。3年に一度の世界バレエフェスティヴァル、僕は2003年から見ています。今回は、佐々木忠治さんという偉大なインプレサリオが亡くなって、その継続を心配しましたが、なんのなんの!今年も素晴らしいキャストで素晴らしいバレエを見せてくれました。前回同様の両プロ共4時間越えです。今年のAプロは、どちらかというと派手な演出のものよりもじっくり見られる演目が多くて、とても良かったです。

全作品コメントしていると20にもなるので、気になったものだけ書きます。

世界バレエで最初の演目として取り上げられることが多い、「ディアナとアクテシオン」、オランダ国立バレエのダニエル・カマルゴは若いダンサーですが、基本がきちんと出来ている感をビシバシと感じます。ジャンプも高く、動きも優雅。ティツィアーノの同名のルネッサンス期の大作品絵画を彷彿とさせる様式感もあって、今後目が離せない感じです。シュツットガルト・バレエのエリサ・バデネスもバネが良くきいた体で美しかったです。

ABTのチームが踊ったのはジゼル、第2幕のパ・ド・ドゥ。シムキンも大人になりましたね。昔はマネージュがものすごく高く、これだけで大拍手でしたが、ジゼルにこのアクロバティックな舞踏は不似合い。今回は余裕のある実に美しい手足の使い方で廻っていました。相手役のマリア・コチュトワ、上品です。ABTの名ダンサー、ジュリー・ケントを彷彿とさせます。百合の香りがするような作品になりました。

ヤーナ・サレンコの「瀕死の白鳥」、大きな動きの中に力尽きていく白鳥の悲しさを表現していてとても良かったです。ただ、どうしてもロパートキナの長い手足での劇的な演技と比較してしまいますね。

オペラ座からは3組が出ていました。レオノール・ポラックとジェルマン・ルーヴェのくるみ割り人形。これは、ルーヴェが良かったです。初めて見たのは、スジェの時(2016年)でしたが、その後、プルミエールダンスーズを飛び越えてエトワールに昇進、すぐに来日し、デュポンと「ダフニスとクロエ」を踊ってくれました。まさに天才という感じ。やや線が細いのですが、その繊細さは手足の先まで神経がはりつめていています。それに比べて、クララを踊ったレオノール・ポラック、ちょっと動きに張りがありませんでした。というか僕の好みではないのかも。可愛いことは可愛いんですがね。

オーレリ・デュポンの「・・・アンド・キャロライン」。これは見逃せなかった。一昨年のパリでのアデュー公演以来、彼女の踊りを見るのは久しぶりです。完全なコンテンポラリーで、なんか寝ている時間が長かったような感じで、彼女の魅力を出すには、演目が役不足な感じ。ここは、月並みですが、キリアンの「扉は必ず」あたりをやって欲しかったです。とは言え、彼女が見られただけでも満足。

タマラ・ロホの「カルメン」モダンとクラッシックの融合という感じですが、個人的には、今回一番良かったと思います。前回はノイマイヤーの作品を踊ったと記憶していますが、今ひとつでした。やっぱり彼女はクラシックの人かなぁと思いました。が、今回は、アロンソの振り付けを完全に自分のものにして、相手役の若いエルナンデスを引っ張っていた。グランフェッテなどの超絶技はなかったですが、新しいロホを見ました。彼女もまだデュポンと同じ年齢かと思います。頑張って欲しい!

第4部は、トリを飾るスーパーなキャスティングになっていましたが、やはりここで輝いたのはオペラ座の2組。マノンの寝室のパ・ド・ドゥを踊った、マチュー・ガニオとドロテ・ジルベール。貫禄ですね。家内が「ガニオって見るたびに格好良くなってくる」と隣でつぶやいていましたが、男から見てもそう思えます。ドロテは、昨年オペラ座で全幕の「オネーギン」のタチアナで見ていて、素晴らしかったのですが、ちょっと貫禄あり過ぎでした。でも、このマノンはぴったり。もはや、オペラ座をしょって立つという感じ。しかし、デュポンもそうですが、このドロテも、年を取るに連れて、体を絞り、筋肉体質にしているのが凄いですね。これもギエム以来のオペラ座の伝統か?

そして、フィナーレはいつも通りドン・キホーテのパ・ド・ドゥ。これは先日の全幕ものでも見ていたのですが、少し振り付けが違っていました。アティテュードでの静止が長くなっていて、見せ場がありました。そして、全幕では真っ赤な衣装だったのが、黒のチュチュに変更。僕はポラックより、このミリアム・ウルド=ブラームのほうが好きです。

それにしても休憩入れて4時間半。ワーグナーでも見ている感じですね。Bプロは8日に行くのですが、5時過ぎまで汐留で仕事があるんです。その後、車で駆けつけて間に合うかなぁ。電車で行けば大丈夫なんですが、終わるのが10時半過ぎということを考えると逗子まで車でスーッと帰りたい。素敵なバレエの後に、お酒臭い電車載りたくないですよね。

― 第1部 ―

「ディアナとアクテオン」
振付:アグリッピーナ・ワガノワ
音楽:チェーザレ・プーニ
エリサ・バデネス
ダニエル・カマルゴ

「ソナタ」
振付:ウヴェ・ショルツ
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
マリア・アイシュヴァルト
アレクサンドル・リアブコ

「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー
音楽:アドルフ・アダン
マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン

「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ

「コッペリア」
振付:アルチュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
サラ・ラム
フェデリコ・ボネッリ

― 第2部 ―

「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス
ヤーナ・サレンコ

「カラヴァッジオ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
音楽:ブルーノ・モレッティ(クラウディオ・モンテヴェルディより)

メリッサ・ハミルトン
ロベルト・ボッレ

「くるみ割り人形」
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ

「・・・アンド・キャロライン」
振付:アラン・ルシアン・オイエン
音楽:トーマス・ニューマン
オレリー・デュポン
ダニエル・プロイエット

「ファラオの娘」
振付:ピエール・ラコット(マリウス・プティパに基づく)
音楽:チェーザレ・プーニ
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ

― 第3部 ―

「カルメン」
振付:アルベルト・アロンソ
音楽:ジョルジュ・ビゼー、ロディオン・シチェドリン
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス

「ルナ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
エリザベット・ロス

「アンナ・カレーニナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ

「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
アシュレイ・ボーダー
レオニード・サラファーノフ

「アフター・ザ・レイン」
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アルヴォ・ペルト
アレッサンドラ・フェリ
マルセロ・ゴメス

― 第4部 ―

「ドン・ジュアン」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:クリストフ・ウィリバルド・グルック、トマス・ルイス・デ・ヴィクトリア、トマス・ルイス・デ・ヴィクトリア
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

「シェエラザード・パ・ド・ドゥ」【世界初演】
振付:リアム・スカーレット
音楽:リムスキー・コルサコフ
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー

「ヘルマン・シュメルマン」
振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:トム・ウィレムス
ポリーナ・セミオノワ
フリーデマン・フォーゲル

「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
ミリアム・ウルド=ブラーム
マチアス・エイマン

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
チェロ:伊藤悠貴(「瀕死の白鳥」)
ピアノ:原久美子(「瀕死の白鳥」、「タランテラ」)

世界バレエ全幕プログラム「ドン・キホーテ」

台風近づく中を、27日の世界バレエの全幕プログラム「ドン・キホーテ」に行って来ました。パドドゥはたくさん見ていますが、全幕で見るのは、2007年のスカラ座来日でのタマラ・ロホ、ホセ・カレーニョの公演以来です。実にオペラ座らしい、お洒落で上品な舞台でした。

ドン・キホーテというと、第3幕のキトリのグラン・フェッテ(32回転?)など、技術面での見せ場がすぐに頭に浮かぶのですが、ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマンのコンビは、実に上品でお洒落。タマラ・ロホのフェッテが地にコンパスの脚が刺さったような鋭さがあったのに対し、ミリアムのフェッテは宙に浮いている感じ。重力が無いような印象です。タマラ・ロホのようなアティテュード(あるいはランベルセ?)での長時間の静止などは無いのですが、その分、優雅な動きで流れがあるパドドゥでした。昨年3月のオペラ座来日で、ラ・シルフィードをこの二人で踊ったのですが、地味なこの演目を、手先まで神経の行き届いた動きで、素晴らしく魅力的なものにしていたのを思い出しました。このコンビ良いですね。Bプロでのジュウェルズ「ダイヤモンド」も楽しみです。

スカラ座の時もそうでしたが、キトリはほとんど、赤黒の衣装でスペインらしさを出すものだと思っていましたが、オペラ座のキトリは黄色なんですね。とても柔らかい感じがします。動きにあった色使い。そして、とにかく、キトリの表情の変化が凄い!これほどに演技にのめりこんだキトリを見た事がありません。テクニックに本当に余裕があるんだと思います。でないと、あんなに表情を作れません。

東京バレエ団のダンサーも素晴らしかったです。特にキューピッドの足立真里亜さん可愛かったです。群舞はオペラ座よりもシンクロしていたのでは!

キトリ:ミリアム・ウルド=ブラーム
バジル:マチアス・エイマン
ドン・キホーテ:木村和夫
サンチョ・パンサ:岡崎隼也
ガマーシュ:樋口祐輝
メルセデス:奈良春夏
エスパーダ:柄本 弾
ロレンツォ:永田雄大

【第1幕】
2人のキトリの友人:吉川留衣 - 二瓶加奈子
【第2幕】
ヴァリエーション1:吉川留衣
ヴァリエーション2:二瓶加奈子
キューピッド:足立真里亜

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
協力:東京バレエ学校


オペラ座でオネーギン

 久しぶりにパリに行ってきました。オーレリ・デュポンのアデュー公演、ガッティのマクベス、トラヴィアータの墓参りをした3年前の5月以来。あの時は5月にしても暖かかったのですが、今回は大寒波!いきなりマイナス6度で雪のパリです!! 幸いなことは、全く積もってはいなかったので、交通機関は大丈夫だったことです。今回の旅行の本当の目当ては、ミラノスカラ座での“オルフェオとエウリディーチェ”と“シモン・ボッカネグラ”だったのですが、同じ週にパリで“オネーギン”をやっているので、見逃せないと思いチケット取りました。オペラ座の演目の中では、“椿姫”とこの“オネーギン”はオペラにもなっているので、とても興味を持って見ることが出来ます。

 しかし、オペラとは違って、バレエの場合、寸前までキャストが発表されないので、今回も当日(2/26)の朝、チケットオフィスで確認。下記がわかりました。

オネーギン:オードリック・ベザール(プルミエール・ダンスーズ)
タチアナ:ドロテ・ジルベール(エトワール)
レンスキ:ジェレミー=ルー・ケール(スジェ)
オルガ:・ミュリエル・ズスペルギー(プルミエール・ダンスーズ)

 ドロテ・ジルベールはスジェからプルミエール・ダンスーズに昇格した10年ほど前から追っかけているダンサーなので、彼女が出るのはとてもラッキーで、「やったぁ!」という感じでした。オードリック・ベザールは後で調べて解りましたが、去年のオペラ座の来日公演“エトワール・ガラ”で『クローサー』と『三人姉妹』を踊っていました。190センチを超える長身、長くて細い手足、割と“濃い”顔立ちのイケメンです。あとの二人は初めて見ます。

 オペラ座のオネーギンは“エフゲニー・オネーギン”の頭文字 “E・O”の飾り文字をあしらった紗幕で始まります。格調高いです。ジョン・クランコの晩年(1965)の振り付けは、優雅という言葉がバレエになったとしか言いようがありません。ドロテ・ジルベールはこの10年で本当に“立派”になりました。昔は、本当に“可愛らしい”という感じだったのですが、今は体つきも引き締まって、エトワールとしての貫禄が感じられます。デュポンやアルビッソンは、年齢でそんなに雰囲気が変わった感じはありませんが、ドロテは違います。ですので、この日のタチアナも後半、侯爵夫人としてオネーギンと再会する時のほうが、ドロテの今の魅力が良く出ています。体の動きの緩急にメリハリがあり、あきらかに舞台を支配する力があります。この風格あるタチアナに、ブザールも頑張ってひけを取っていないのが素晴らしい。この人脚のすねの部分が本当に細くて長い。歩くのや駆けるのがものすごく綺麗です。ですので、最後の寝室のパドッドゥで部屋から駆けだして(追い出されて)行くところが、目に焼き付きます。僕は、この場面、ルグリで何度も見ています。特にルグリとルディエールの素晴らしい演技は忘れられません。でも、この二人もその伝統をきっちり受け継いでいました。

 それに比べて、レンスキのジェレミー=ルー・ケールはちょっと物足りない。何か締まらない感じでしたね。スジェとプルミエールの差はけっこう大きいという感じがしました。1幕目の群舞は素敵でしたね。ボリショイのような正確さには欠けるかもしれませんが、パーティの場の雰囲気を充分に醸し出しています。

 このクランコの演出、もともとはオペラの音楽で振り付けようとしたとのことで、とてもオペラっぽいです。METでのカーセンの演出の“エフゲニー・オネーギン”やマイリンスキーのステパニュクの演出も、舞台作りが似ています。

 それにしても、オペラ座の豪華なロビー、緋色で座り心地の良い椅子、シャガールの天井画というものを体験して見るバレエは、他で見るバレエとは全く別の体験です。堪能しました。

 別の話ですが、今年、エトワールのエルヴェ・モローが引退です。引退公演は5月の予定で、演目も「ロミオとジュリエット」に決まっているのですが、まだ本人の出演が決まっていません。というか半ば絶望的。怪我につぐ怪我でここ数年まともに踊れていません。デュポンのアデュー公演でも結局ボッレにその相手役を譲ったんです。今回ももし5月に踊るなら、既に引退して芸術監督に就任しているデュポンが相手を務めるという噂もあったのです。僕も家内もモローの大ファン。この日バックオフィスのインフォメーションのお姉さんに家内がモローの現状を聞いていましたが、どうも駄目なようです。残念ですね。こうなると、2014年に日本でデュポンと踊った「椿姫」は奇跡のようだったんですね。

 ともあれ、雪の降るパリで、素晴らしいオネーギンを見られて幸せでした。さて、ミラノに向かいますが、向こうも雪のようです。

 
 


ガラ公演、ジョン・ノイマイヤーの世界

 先週の「椿姫」に続いて、ハンブルグ・バレエ団のガラ公演に行ってきました。毎年、2月、3月、そして8月はバレエの観劇が多いんです。

このガラ公演は、普通のガラ公演、つまり、パドドゥを連ねて華やかに踊るというのとは、大分違っていました。ノイマイヤー自身がステージに現れて、自身とダンスとのかかわりを観客に向かって話し、自身の歴史を振り返りながら、ひとつひとつの演目を紹介していくという趣向です。最初の「キャンディード序曲」はこのような言葉で始まりました。(英語、字幕付き)

「ダンスが何であるかを知る前から、私もいつも踊りたがる子供だった。レコードをかけるとリビング・ルームが広いステージになり、レーナード・バーンスタインの“キャンディード序曲”を聴きながら、記憶の中の私はひたすら踊った。」

このキャンディード序曲は群舞のパートが多く、日本人の有井舞耀と菅井円加が素晴らしい踊りを見せました。

そのあと、「アイ・ガット・リズム」「くるみ割り人形」「ヴェニスに死す」「ペール・ギュント」「マタイ受難曲」「クリスマス・オラトリオⅠ-Ⅳ」「ニジンスキー」「ハムレット」「椿姫」「作品100─モーリスのために」「マーラー交響曲第3番」、と続きました。プリンシパルのシルヴィア・アッツォーニ、カーステン・ユング、ゲスト・アーティストのアリーナ・コジョカル(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)らの踊りも素晴らしいのですが、僕が特に感銘を受けたのは、やはり群舞です。特に「マタイ受難曲」(英語ではSt. Matthew Passionって言うんですね。随分イメージ違います)「クリスマス・オラトリオ」そして最後の「マーラー交響曲第3番」は本当に素晴らしかったです。僕のバレエ友達(?)のTさんが教えてくれたのですが、ノイマイヤーはこういう大きな曲に振り付けをしたダンスを、“シンフォニック・バレエ”と呼んでいるそうです。なるほど!という感じ。このカンパニーのダンサーは本当に基礎的な技術から高度な技術まで、誰もがとても高いレベルなので、群舞になっても、主役級だけが光るということがないのです。

 そして、ノイマイヤーの魅力はその振り付けが、彼自身が「愛の表現」というように、人間の感性を、見事にダンスの中の手、脚の動き、そして表情に出し尽くしていることでしょう。「あ、こういう表現があるんだ!」と、見ていてとても納得するのです。論理的な動きでもあると思います。

 今回の公演は、もちろん録音で踊られたのですが、マーラーの3番なんかは、オーケストラでやってくれたら、もうたまらない!という感じです。6月にはハンブルグでバレエのフェスティバルもあるそうです。今回の演目のうち、日本で今週末に公演のある「ニジンスキー」以外にに全幕で踊られるものもあるのでしょうか?僕はオペラでしか当地で観劇したことはありませんが、バレエも見に行きたいものです。

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