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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ラ・トラヴィアータ藤原本公演

1月27日、藤原歌劇団の本公演、“ラ・トラヴィアータ”に行ってきました。トラヴィアータ、良く行きますね。多分20回以上見ていると思います。もっとも、この演目は世界で一番上演回数が多いのだそうで、2位が魔笛、以下、カルメン、ラ・ボエーム、トスカ、フィガロの結婚と続きます。

今回は、海外からのゲストの歌手はおらず、おもに藤原の看板歌手(上江さんを除く)でトリプルキャストを組んでの3日間。僕は、上江さんのジェルモン狙いで最終日に行きましたが、絶対“当たり”でした。何度も書いていますが、最近、中低音の表現力と艶が素晴らしくなってきた彼のジェルモン、昨年12月にMETで聴いた、クイン・ケルシーのジェルモンよりも良かったと思います。特に、1幕2場でヴィオレッタとのやりとりは圧巻。もともと美しいピアニシモで情感を出しながら、曲が進むに従って、だんだんとヴィオレッタと二重唱になっていくところ、グッと来ました。もちろん、光岡さんのヴィオレッタもBrava!!でした。レッジェーロな声で装飾技術も優れた歌い方、何より美しい水滴のような透き通った声が圧巻でした。そして、3幕目の「道を踏み外した女」のアリアは、彼女の素晴らしさが結晶になって、本当に聴き応えがありました。短くカットされることもなかったですし。それにしても二期会のスターである上江さんが藤原で歌うというのは珍しいこと。これから何か起こるのでしょうか?ともあれ、観客にとっては豪華なキャスティングになっていました。

アルフレードの中井亮一さんも、若々しく、甘く、良かったのですが、上記二人に比べるとちょっと物足りない。1幕2場で冒頭のカヴァレッタ2連発、もう少し強い表現力が欲しかったです。

あと、特筆すべきは、脇役の歌手が総じて良かったこと。フローラの丹呉由利子さん、いかにも自信を持っている女主人という感じで、夜会の主催者として、きっちり歌ってくれました。フローラの夜会がビシッとしないと、2つの夜会がオペラに出てくる意味がなくなってしまうんですね。ロード・オブ・ザ・リングのTwo Towersみたいなものでしょうか?

粟國さんの新演出もなかなか良かったです。額縁に入った大きな絵を使ったのは、1幕目では、原作の始めの、ヴィオレッタの死後のオークションを彷彿とさせますし、途中から額の中で舞踏会で踊る人々が見えるのも新鮮でした。2幕目以降も、額の中にストーリーのバックグラウンドを見せて、3幕目では、弱ったヴィオレッタの後ろの額はやぶれて、絵もなくなってしまっている。(おそらく売ってしまった。。)色々と想像できるところが、押しつけがましくなくて、とても好感が持てました。粟國さんがプログラムで言っているように、彼の演出は、歌手に歌いにくいポジションや体勢を取らせることがないのも、大好きです。藤原の伝統でもありますね。

そう言えば、新国立劇場の2019-2020シーズンの演目が発表になりましたね。なかなか魅力的。今年は少し多めに行こうと思います。

指揮:佐藤正浩
演出:粟國 淳
ヴィオレッタ:光岡暁恵
アルフレード:中井亮一
ジェルモン:上江隼人
フローラ:丹呉由利子
ガストン:松浦 健
ドビニー:田島達也
グランヴィル:坂本伸司
アンニーナ:牧野真由美
ジュゼッペ:有本康人
使者:相沢 創
召使:市川宥一郎
合唱:藤原歌劇団合唱部
バレエ:竹内菜那子、渡邊峻郁
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団








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本年のベスト10

遅くなりましたが、本年のベスト公演(観劇した45公演中)10作を挙げます。1,2位が海外になりましたが、国内公演が7作と充実していました。

1 オルフェオとエウリディーチェ 2018/2/28 スカラ座
オケが上下する舞台に乗っているという驚き。フローレスは神の声かという素晴らしさ。この公演がDVDになるという情報が今飛び込んできました!

2 シモン・ボッカネグラ 2018/3/1 スカラ座
ヌッチは絶好調、サルトリ、ベロセルスキーも素晴らしかった。ミョンフンの指揮も良かったがやや叙情的過ぎたか?演出はだるい。

3 コルチャックリサイタル    2018/3/15 オペラシティ
後半のロッシーニ素晴らしかったです

4 三部作           2018/9/8    二期会 新国立劇場 
ミキエレットの演出素晴らしい、指揮、歌手とも最高

5 La Traviata        2018/12/7    MET
フローレス、ダムラウ、ケルシーの歌手陣が素晴らしい。指揮の新MET監督ヤニック・ネゼ・セガンも良かった。ただ、フローラや公爵陣の脇役が弱かった

6 ファルスタッフ       2018/12/15 新国立
今年の新国立で最高の公演

7 東フィルチョンミョンフン、フィデリオ 2018/5/8 サントリー
ミョンフンの指揮良かった、レオノーラのマヌエル・ウール素晴らしい!

8 イル・トロヴァトーレ(バーリ歌劇場、フリットリ) 2018/6/22 東京文化会館
フリットリ降板!しかし、男声3人が素晴らしい

9 世界バレエBプロ 2018/8/8 東京文化会館

10 ラ・トラヴィアータ 2018/10/14 藤沢市民会館
中村恵理素晴らしい,、他の歌手と格が違う

真珠採り@MET

 さて、土曜日のオペラダブルヘッダー、後半は「真珠採り」です。このペニー・ウールコックの演出は、昨年にカマレナ、マチャイゼでLAオペラで見ています。ライブビューイングでも見ているので、もうお馴染みという感じですが、いつも序曲のところ、海中を模した緞帳全体を、真珠採りの二人が泳いで上下に動くのはどうやっているのかと思います。この演出も細部は少しづつ変わっているようで、今回は、漁村の舞台装置に魚網がありませんでした。もともとやや混み入り過ぎている感じのある舞台なので、変えているのかもしれません。

 まず、特記したいのは、今回、指揮者のエマニュエル・ヴィヨームの締まった指揮です。LAでのグラント・ガーションの指揮は、コンロンの流れを汲む「開放型」の指揮で、実にグランドオペラの雰囲気が良く出たゴージャスでミュージカルのような感じでしたが、ヴィヨームは、全体に音をコンパクトにしていて、塊感がありました。どちらが良いとは言えないのですが、指揮者によって随分違うものだと思いました。(当たり前ですが)

 カマレナはLAでは、今ひとつ調子が出なかったようで、高音で声が割れたりしていましたが、今回は面目躍如。素晴らしい!フローレスよりもう少し軽い感じで、鼻の奥深いところから柔らかい声が出て来ます。ズルガとの二重唱「聖堂の奥深く」も、「ナディールのロマンス」も、本当に聴き応えがありました。

 レイラ役のアマンダ・ウッドバリーは初めて聴きましたが、軽めのコロラトゥーラという、マチャイゼとは全く違うタイプ。装飾歌唱はとてもうまいのですが、完全にベルカントタイプで、やや役との違和感がありました。これ、好みの問題ですね。ズルガのエリオット、ヌーラバッドのアチェートも悪くはなかったのですが、ズルガは本当は他の日に出ているクヴィエチェンで聴きたかったというのが本音。

 しかし、2日で3本のオペラは、やや重かったです。三部作で寝てしまうという醜態を演じてしまいましたので、今後はスケジュールをもう少し考えようと思います。でも、METは毎日色々な違う演目をやるので、ついつい欲張ってしまいますよね。ABTのくるみ割り人形のバレエも隣でやっているんですから。(ところで、ABTのスターだった、パロマ・ヘレーラ、コロン劇場の芸術監督になっていました!)

もっと頻繁にMETに来たいと思いますが、フライト、ホテル、滞在費のどれもが、ミラノやウィーンに比べるとだいぶ高いのが壁になります。次に来られるのはいつでしょうか?

Conductor: Emmanuel Villaume
Production: Penny Woolcock
Zurga: Alexander Birch Elliott
Nadir: Javier Camarena
Leila: Amanda woodbury
Nourabad: Raymond Aceto

ファルスタッフ@新国立劇場

 12月15日の楽日に、ファルスタッフを見に行ってきました。すでに、絶賛とも言える評判が各所から入っていたので期待していましたが、まさに絶品の公演でした。

 まず挙げたいのが、カルロ・リッツィの指揮。僕がリッツィ大好きということもありますが、素晴らしかったですね。序曲からして、切れがとても良く、やや早めですが、一音一音が真珠の粒のように、浮き上がってくる感じ。この人のヴェルディは他には、シモン・ボッカネグラを聴いていますが、とにかく濁りの無い音、クリーンな音です。ファルスタッフで、音楽だけでこれほど魅了されたのは、初めてではないかと思います。

 冒頭、発表があったように、アリーチェ役のエヴァ・メイが風邪気味であるとのことでした。しかし、それなりに、実にうまくまとめていました。この役は、舞台での存在感が絶対的に必要なのですが、まさに、美しい立ち姿と優雅な振る舞いでそれを実現していました。ただ、どうやらオペラは引退を表明しているようなので、それは残念です。デセイもそうでしたが、早すぎる引退ですよね。

 そして、クイックリー夫人のシュコーザ、ナンネッタの幸田浩子、メグの鳥木弥生の4人のアンサンブルが実に良かったです。これだけでうっとりですね。

 一方の男声陣、女声に比べてやや軽い感じがありましたが、それでもフォードのオリヴィエーリ、健闘していました。フォードの実年齢はどのくらいでしょうか?30代そこそこと考えればぴったりきますね。ロベルト・カンディアのタイトルロールも、ちょっと「清純」すぎるかなという感じがありましたが、これは、2013年の来日公演で2度も聴いたスカラ座のマエストリのイメージが僕のアタマにいまだに残っているのもありますね。あのどっしりとしたファルスタッフ、サイトウキネンでの、哀れっぽいクイン・ケルシーのファルスタッフ、そして、今回のまだ若さの残る初老のファルスタッフと役作りで分けられていると思うようにします。

 ジョナサン・ミラーの演出、特に舞台美術は、何度見ても良く出来ていると感心します。最短の時間で場面転換し、音楽の途切れを生じさせません。

 今回のファルスタッフは、今年の新国立の演目の中では最高だったのではないでしょうか?

指揮:カルロ・リッツィ
演出:ジョナサン・ミラー

ファルスタッフ:ロベルト・デ・カンディア
フォード:マッティア・オリヴィエーリ
フェントン:村上公太
医師カイウス:青地英幸
バルドルフォ:糸賀修平
ピストーラ:妻屋秀和
フォード夫人アリーチェ:エヴァ・メイ
ナンネッタ:幸田浩子
クイックリー夫人:エンケレイダ・シュコーザ
ページ夫人メグ:鳥木弥生
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ラ・トラヴィアータ@MET

 12月のあたまに1週間、ブエノスアイレスに滞在し、温暖な気候を満喫して、日光を浴びて日焼けした後に、いきなり零下2度のニューヨークに入るというのはけっこう気合いを入れないと、この歳になるとぎっくり腰になったりする可能性が高いのです。なので、この区間の移動の12時間だけは、ぜいたくをしてビジネスクラスを取っていたのですが、UAの夜行便が機材故障のためにキャンセル!いきなり、アルゼンチン航空のエコノミークラスになってしまいました。このシートの狭いこと。今時、エコノミークラスとは言え、こんな狭いシートがあるのかと思うようなものでしたが、なんとかぎっくり腰にもならずJFKに到着しました。今年は3月のミラノ、パリでも零下の日々を体験していたので、ダウンコートなど、装備は充分。しかし、それでも寒いものは寒いですね。それにしても、今年は3回しか海外へ出ていないのに、そのうち2回で、帰りの便がキャンセルになるというのは、確率66%。ロスバゲはなかったですが、けっこう呪われているのではないかと思ってしまいます。

 さて、ブエノスアイレスのコロン劇場は「ついで」に行ったのですが、NYのMETのほうは狙い撃ちです。2日間で3演目です。

 まず、最初はマイケル・マイヤーの新演出、ディアゴ・フローレスのMETでの初役で話題の、“ラ・トラヴィアータ”、なんと言ってもこれです。もちろん、フリットリがノルマを歌うのがどうか?というのと同じように、フローレスがアルフレードを歌うのには異論も多くあるのは事実ですが、僕はYouTubeで5年くらい前に、フローレスが2幕1場のカバレッタを歌っているのを聴いた時から、いつかは全幕で聴きたいものだと思っていました。

2012年モスクワでの “O mio rimoroso”
https://www.youtube.com/watch?v=LfZqrgvDdYo

ちなみに、こちらは今回の公演の”O mio rimoroso”
https://www.metopera.org/season/2018-19-season/la-traviata/

 結論的には、やっぱり、フローレス「良かった」ですね。成熟したアルフレード、若さをかなぐり出していない、馬鹿すぎない、しかし、情熱的で知的でさえあるアルフレードを堪能しました。2幕目の上記の “O mio rimoroso や、冒頭の“Lunge da lei per me-“のカバレッタでの燃えるような感情を、前にも言いましたが、ポルシェの完璧な6気筒水平対向エンジンのような声に乗せて歌われると、もう、グーッときてしまいます。彼のロッシーニは生で聴いたことはないのですが、ロッシーニの声としてはやや重くなりすぎてきているとのことを聞きます。しかし、アルフレードには今やぴったりだと思います。一幕目のヴィオレッタの幻想で響く遠くの声でさえ、こちらの感情を大きく揺り動かします。3幕目の「パリを離れて」のところで、アタマを一小節早く出てしまい、歌い直したのがちょっと珍しかったですが、全体に感情の歌への流し込みが素晴らしい。これは、タイトルロールのダムラウも同様です。昨年の11月に夫君のテステと来日した時に、一部は歌ってくれて、「凄いなぁ」と思ったのですが、全幕聴くと、彼女の余裕のある歌い方が、実にヴィオレッタの優雅さを出していることに気づきます。1幕目のアリアでも、充分に余裕があり、この分、感情表現に力を割いているように思えます。ともすれば、このような歌手は、感情表現がオーバーになりすぎるのですが、ここはとてもうまく押さえてあります。トラヴィアータの場合、ピークを2幕1場のヴィオレッタとアルフレードの別れ”Amami Alfredo”のところに持って来る演出、あるいは3幕目の”E tardi!(遅いわ)“から「道を踏み外した女」のところに持って来るパターン、そして、最後の”死“に持って来るパターンがあると思うのですが、今回の公演はクラシックな2幕1場のピークバージョンではないかと思います。それだけに2幕目の盛り上がり方は素晴らしかったです。期待以上だったのは、ジェルモン役のクイン・ケルシー。この人は今ひとつ声の奥行きに欠ける印象があったのですが、この日は素晴らしかったですね。ただ、正直ジェルモンは「プロヴァンスの海と土」が良ければ、すべて良しという感じはありますけども。

 指揮のヤニック・ネゼ・セガン、ついに、METの音楽監督になりましたが、レヴァインと比べて、音作りがおとなしいという感じがします。だから、ドン・カルロなどだとちょっと物足りないのですが、今日のトラヴィアータは良かったと思います。クラリネットを積極的に使って、主音節を浮き出させていました。基本的には、超一流の歌手に気持ち良く歌ってもらおうという指揮でした。

 意外だったのが、マイヤーの演出。ラスベガスバージョンのリゴレットのようになるのではという怖れと期待を持っていったのですが、しごくシンプル、クラシカルでした。全幕で、ずっとベッドを舞台中央に置いていたのは、ヴィオレッタの死を、デッカー演出の時の時計やグランヴィル医師のように、逃げられない場所と意味づけていたのでしょうか? それとも、序曲の時に既に、死の場面を出していましたので、その後の全幕はすべて回想だったということでしょうか?そこらへん、もう少し明確にしたほうがおもしろかったと思います。また、コンビチュニーのように、アルフレードの妹は2幕目、3幕目でジェルモンに連れられて登場するのもおもしろいのですが、その意味するところが、ジェルモンの画策なのか、ヴィオレッタの老いと死に対する、「若さ」の象徴なのか、いずれにしても不明瞭なところが気になりました。また、脇役が今ひとつでしたね。特に、フローラのクリスティン・シャヴェスがしまりませんでした。

 色々と言いましたが、公演としては大満足でした。僕の好きなカヴァレッタもカットされませんでしたし。ただ、今年3月にスカラ座で聴いた“オルフェオとエウリディーチェ”でのフローレスとどちらがもう一度聴きたいかというと、オルフェオですね。以前に、カウフマンでアルフレードを聴いたことがありますが、それよりも、アンドレア・シェニエで聴いた時のほうが良かったのと同じようなことです。アルフレードって、そんな役なのかもしれません。

CONDUCTOR
Yannick Nézet-Séguin
PRODUCTION
Michael Mayer

Violetta
Diana Damrau
Alfredo
Juan Diego Flórez
Germont
Quinn Kelsey





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