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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

二期会"希望よ、来たれ”ガラ・コンサート

二期会「希望よ来たれ」

長いことご無沙汰をしていました。2月20日のサグリパンティ指揮の二期会「椿姫」から5ヶ月近く劇場に行っていません。この間、チケットを取っておいたのにキャンセルになった公演は次の通り

■シッラ:指揮者のビオンディとエウローパ・ガランテも横浜まで来て来日して練習していたのに中止。残念でした。
■中村恵理リサイタル:横須賀まで来てくれるはずだったのに…..
■東フィル、プレトニョフ、スメタナ:東フィルはここから7月まで休止。
■ジュリオ・チェーザレ:新国立劇場の意欲作。
■東フィル、佐渡裕。バーンスタイン:バーンスタイン聞きたかったなぁ。
■サムソンとデリラ(二期会):珍しい演目、美しい音楽。
■ドン・キホーテ(バレエ):新国立のバレエ、ひさしぶりにシーズンチケット取ったのです。
■ワルキューレ:パリのオペラ座で、カウフマンのジークムント聴く予定でした。やっとチケット取ったのに。
■MAYERLING(バレエ-マクミラン版):こちらはオペラ座でのバレエ
■オルフェ(ノイマイヤーバレエ付き):ザルツブルグ音楽祭も行き損ねました。もっとも飛行機も飛んでいない。
■ドン・パスクァーレ:バルトリも吹っ飛びました。
■コンサート:ザルツブルグのガラ公演(涙)
■海賊(ベッリーニ):始めてシチリアに行って、マッシモ劇場で見るのを楽しみにしていました。
■ナブッコ(パレルモ・マッシモ劇場来日):マッシモ劇場をイタリアと日本で聞き損ねました。
■ノルマ(パレルモ・マッシモ劇場来日)
■東フィルプレトニョフチャイコフスキー
■マッシモ劇場ガラ
■マイスタージンガー:新国立劇場、これも聞きたかったなぁ
■レクイエム ルスティオーニ

キャンセルになったチケット、19公演です。幸い、すべてのチケットが返金されるようです。(イタリアの公演だけが怪しい。。。)

コロナで苦しんでいる方や、亡くなった方もいらっしゃる中で、オペラやコンサートをミスしていることを語るのは、不謹慎と思いますが、僕の生活もがらっと変わってしまいました。インターネットで配信された公演もいくつか見たのですが、やはり生にはかないません。

そんな5ヶ月を過ごして、ようやく東京文化会館で7月11日の土曜日に二期会のガラ・コンサートが開かれて、行って来ました。

プログラムは以下の通り

プログラム:

<第1部>
ベートーヴェン オペラ『フィデリオ』 序曲
ベートーヴェン オペラ『フィデリオ』より 「悪者よ、どこに急ぐのだ~希望よ、来たれ!」
  (ソプラノ 木下美穂子)
プッチーニ オペラ『トスカ』より 「星は光りぬ」
  (テノール 城 宏憲)
ロッシーニ オペラ『セビリャの理髪師』より 「今の歌声は」
  (メゾソプラノ 中島郁子)
ロッシーニ オペラ『セビリャの理髪師』より 「わたしは町のなんでも屋」
  (バリトン 黒田 博)
<第2部>
モーツァルト オペラ『魔笛』 序曲
モーツァルト オペラ『魔笛』より 「イシスとオシリスの神に感謝を」
  (バス 妻屋秀和)
ベルク オペラ『ルル』より 「ルルの歌」
  (ソプラノ 森谷真理、ダンス 中村 蓉)
プッチーニ オペラ『トゥーランドット』より 「誰も寝てはならぬ」
  (テノール 福井 敬)

指揮:沖澤のどか/管弦楽:東京交響楽団

客席は、密を避けるために、一席づつ座れないようにしています。5階は全部空席でした。つまり満席になっても40%くらいの入りということになりますが、良く入っていたと思います。もちろん、Bravo!はかけられませんから、手が痛くなるまで拍手するのみ。でも、本当に良いコンサートでした。ベートーヴェンの生誕250周年ということで、フィデリオの序曲とアリアから始まりました。そして、プッチーニ、モーツァルト、ロッシーニが2曲づつと、ベルクの「ルル」。ヴェルディがなかったのは残念ですが、二期会のスター歌手陣がそろって、「これがオペラだ!」という曲を披露してくれました。中島郁子さんの”Una Voce Poco Fa”は美しい装飾歌唱で、ゾクゾクしました。続く黒田博さんのフィガロ、実に気持ち良さそうに歌っています。2部のルルのアリアは、なかなか聴くことが無い曲ですが、中村蓉さんのコンテンポラリーダンスと森谷真理さんの感情表現豊かな歌唱で、このまま全幕聴きたくなりました。最後が福井敬さんの十八番で終わったのですが、”Vincero”はコロナに勝つということでしょう。指揮の沖澤のどかさんは初めて聴きましたが、ロッシーニなどは、ちょっとピリオドっぽくて、真面目な指揮という感じ。好感が持てました。

休憩の25分を除くと、正味1時間のコンサートで、盛り上がったところで終わってしまった感じですが、この時期、歌唱を主体としたコンサートを再開してくれた、二期会、東京交響楽団の皆さん、そして東京文化会館には敬意と感謝を送りたいです。
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二期会「椿姫」



 2月20日、東京文化会館でのマチネ、「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」に行って来ました。今週は、これで3回目のオペラ。日水木とソワレ1回、マチネ2回です。この歳(66歳)になってくると、週に3回オペラを見に行くには、ある程度体力に余力を持って備えることが重要になります。でないと公演中に寝てしまったりします。

 この日は、僕が所属する日本ヴェルディ協会が文化会館のホワイエに会員募集のブースを出しているので、開演前と休憩時間に、そこに他の会員の方と立ちました。10人位の方とお話し出来て、入会案内をお渡ししました。

 さて、この日の目玉は、なんと言っても、マエストロのサグリパンティ氏。ヴェルディ協会で講演会に招聘したりしたので、もう慣れましたが、最初は名前を口にするときに緊張してしまいました。(特に女性の方に電話で話す時、、、)

 彼の指揮は、抑揚感に溢れながら、インテンポで実にイタリアっぽい指揮で、素晴らしいものでした。音の強弱の付け方が特徴的で、登場人物の喜びや怒り、悲しみ、孤独を表すところを、音で引っ張って行く感じでした。ただ、個人的な好みとしては、やや強弱が付きすぎている感じがしました。

 舞台美術が凝っており、白い椿の花をステージに置いた形になっています。幕が進むにつれて、花びらの枚数が少なくなって、ヴィオレッタの命も短くなることを暗示していました。2幕目以降は舞台上方に大きな鏡が出て、舞台上の動きを映し出すのが面白いと思いました。椿の花とわかれば、そういうふうに思うのですが、最初に幕が上がって思ったのは、60-70年代に流行っていた、ピザレストランの「カプリ」の店内(洞窟に似せてある)のようで、ちょっとピザが食べたくなりました。

 この日の歌手陣は、若手組でした。1幕目1場は全体に緊張からか声がうわずり気味で、ちょっと心配したのですが、休憩後の2幕目のフローラの夜会からは、劇的に良くなりました。最初のほうでは高音がまとまらなかったヴィオレッタの谷原めぐみは、2,3幕目では素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。「道をはずれた女」はグッと来ましたね。アルフレードの樋口達也も2幕目の怒りまくっている表現、3幕目で打って変わってヴィオレッタを励ます「パリを離れて」は聞き応えがありました。ヴィオレッタの最期がアルフレードの胸の中、というのは、20回以上見ているトラヴィアータでも初めてです。当たり前のように思いますが、普通は、ヴィオレッタは一人で死んで行き(あるいは生き返って行く)、それをアルフレードやジェルモンがかこんで終わるというものですが、この日の二期会の演出は新鮮でした。

 もう一つ驚いたのは、2幕目のフローラの夜会の場面のバレエで、ダンサーが男女10名出て来て、コンテンポラリーで本格的な踊りを繰り広げるのです。どこかのバレエ団が参加しているのかと思いましたが、そうではないようで、二期会で選んだようで、かなりのキャリアのダンサーも入っていました。これが迫力ありましたね。バレエの終わりには客席から大きな拍手が沸きました。プログラムに、バレエ評論家の長野由紀が3ページに渡って、ノイマイヤーのバレエ「椿姫」について書いてあるのも、今回の公演でバレエの重要性を示したものかと思いました。二期会の新しい試みでしょうか、歓迎したいですね。このようなバレエをマクベスにも入れてやってほしいです。

 木曜日のマチネでしたが、8割方は満席になっていました。とは言え、まだチケットは売られていますので、この土日の公演間に合います。是非ご覧になってください。

指揮: ジャコモ・サグリパンティ
演出: 原田 諒
装置: 松井るみ
衣裳: 前田文子
照明: 喜多村 貴
振付: 麻咲梨乃
合唱指揮: 佐藤 宏
演出助手: 菊池裕美子
舞台監督: 村田健輔
公演監督: 大野徹也

ヴィオレッタ 谷原めぐみ

フローラ 藤井麻美

アンニーナ 磯地美樹

アルフレード 樋口達哉※

ジェルモン 成田博之

ガストン 下村将太

ドゥフォール 米谷毅彦

ドビニー 伊藤 純

グランヴィル 峰 茂樹

ジュゼッペ 吉見佳晃

仲介人 香月 健

ダンサー: 千葉さなえ、玲実くれあ、輝生かなで、栗原寧々、鈴木萌恵
岡崎大樹、上垣内 平、宮澤良輔、谷森雄次、岩下貴史
合唱 : 二期会合唱団
管弦楽 : 東京都交響楽団

「カルメン」東フィル定期公演

 2月19日、東京フィルハーモニーの定期公演会でビゼーのカルメンが演奏会形式で上演されました。世界の歌劇場で一番演奏されることの多い演目は、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」で、次がこの「カルメン」だそうですが、僕は、「カルメン」はまだ4回目です。前回は2009年なので、本当に久しぶり。

 この日は、なんと言ってもマエストロ チョン・ミョンフンの指揮が素晴らしかったです。この熱いオペラを、情熱的に、しかし実に知的に響かせていました。今まで聴いたカルメンの音楽が、どちらかというと「ドンシャリ」的になってしまったことが多かった(それがスコアの指示なのかもしれませんが)ので、ミョンフンのふくよかにふくらませるような音に感動しました。また、指揮の姿もかっこいいですよねー。この前ミョンフンを聴いたのは、去年のスカラ座での「シモン・ボッカネグラ」でしたが、これも凄く良かったのですが、彼のスタイルには「カルメン」の方が合うようです。

 最近のオペラの演奏会形式は、ただ、立って前を向いて歌うというのではなく、かなり演技も付けてくれるので、聴いていてもオペラの中に入り込みやすいです。ドン・ホセ役のキム・アルフレードには、やられましたねー。ともすれば、平板のようになりがちなこの役で、素晴らしい感情表現を出していました。かすれるような声まで出して、破綻が無い。カルメンを聴いて、ドン・ホセの心の内側、その苦しみが痛いほどわかったのは初めてです。この人で、ヴェルディを聴いたらいいだろうなぁ、とも思いました。

 そして、ミカエラ役のソプラノのアンドレア・キャロルもとても良かったです。プログラムに「豊かで暗い低音域ときらめく高音域」と書いてありましたが、まったくその通り。中低音の歌唱の多いこの役を、実に存在感のあるものにしていました。アジリタも上手そう。「リゴレット」のジルダや「ドン・パスクァーレ」のノリーナも歌っているそうです。聴いてみたいなぁ。

 タイトルロールのイタリア人、マリーナ・コンパラートは、カルメンを得意としているだけあって、余裕綽々の歌唱。低音から高音まで輝くような声です。ただ、中低音部では、もう少しドスの効いたところがあっても良かったかと思います。

 もう一人の韓国人、エスカミーリョ役のバリトン、チェ・ビョンヒョクも立派な声で良かったのですが、ちょっと声を作っている感があり、声の厚みを感じませんでした。やや一本調子だったかなとも思います。この点、山賊の親玉のダンカイロを歌った、上江隼人のほうが、レチタティーヴォの部分も入れて、実に表現力のある歌唱をしていました。Bravoです。上江は二期会から藤原歌劇団に最近移ったのですが、引っ張りだこですね。
 その他の日本人もすごい豪華キャスト、モラレスの青山貴、メルセデスの山下牧子など、多分、主役級のアンダーになっているのではないかと思いました。これだけの歌手を世界と日本から集めたのも、マエストロの力があってのことでしょう。

 ちなみに、この日の公演は、レチタティーヴォがちょっと省略されながら入った、コミックとグランドオペラの折衷版でした。僕はレチタティーヴォ版が好きなので、この点でも満足です。演奏会形式ではレチタティーヴォは省略されるかと思っていましたので。

 東フィルではシーズンに一回程度、演奏会形式のオペラを入れます。去年はフィデリオ(これもチョン・ミョンフン指揮)でした。いつも非常にクォリティの高い公演ですが、定期会員だとS席で前から3列目、¥6,300-という超リーズナブルなチケットプライスです。

 次の東フィルの公演は3月16日、プレトニョフ指揮でスメタナの「我が祖国」全曲です。これも楽しみです。

カルメン(メゾ・ソプラノ):マリーナ・コンパラート
ドン・ホセ(テノール):キム・アルフレード
エスカミーリョ(バリトン):チェ・ビョンヒョク
ミカエラ(ソプラノ):アンドレア・キャロル
スニガ(バス):伊藤貴之
モラレス(バリトン):青山貴
ダンカイロ(バリトン):上江隼人
レメンダード(テノール):清水徹太郎
フラスキータ(ソプラノ):伊藤晴
メルセデス(メゾ・ソプラノ):山下牧子
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)
児童合唱:杉並児童合唱団(児童合唱指揮:津嶋麻子)

指揮:チョン・ミョンフン
東京フィルハーモニー交響楽団

セビリアの理髪師@新国立劇場

 今年2回目の新国立劇場は、お馴染みの「セビリアの理髪師」。ヨーゼフ・ケップリンガーというオーストリアの演出家になるこのプロダクションは、2005年の初演以来、既に4回目の公演。僕自身も3回目の観劇です。廻り舞台にドールハウスのように組み立てられた巨大なバルトロの家(3階建て)の中と外で、せわしなく動き廻る歌手達の演出が、音楽を聴くのを邪魔するという意見を良く聴きます。僕も最初に聴いた時は、そんな印象を持ちました。が、このオペラブッファを表現するのに、この演出はとてもポジティブに働いてると思います。実際に、こんな生活をしていた人達のドラマなんだと思うと、歌っていない時の動きも面白みがあります。例えば、ロジーナが自分の部屋で、エクササイズをけっこう激しくやっているところ、なんとボクササイズまでやっています。積極的で明るい彼女の性格が良くわかります。バルトロの部屋にある骸骨の標本見本も面白いですね。まあ、3回同じプロダクションを見ているので、こちらにも余裕もあると言えるのですが、双眼鏡で色々と見てしまいました。

 歌手は、非常に高いレベルで、非の打ち所が無いという感じ。一番感嘆したのは、アルマヴィーヴァ伯爵を歌ったアメリカ人のルネ・バルベラ。2幕目最後の大アリア「もう逆らうのをやめろ」は素晴らしかったですね。高音がちょっと鼻に掛かって、しかし上質な白ワイン(軽めの)のような味わいのある声で難しい装飾歌唱を軽々とこなしていく。いや、本当に良かったです。過去の公演では2012年には、この大アリアが省略されていてがっかりした記憶があります。もっとも、この大アリア、最近になって復活してきて良く歌われるようになってきましたが、5-6年前までは、普通に切り取られていることが多かったのです。そして、フィガロのフランス人、フローリアン・センペイも、過去に聴いたフィガロの中でもベストの出来。奥行きと輝きのある声は、一幕目の「街の何でも屋」からエンジン全開でした。そして、ロジーナの脇園彩もベリッシマ!中低音から高音まで、しっかりと決まる音程。魔法のようなアジリタ。Una Voce Poco Faは、今まで聴いたものの中でもバルトリにならぶ凄いものでした。昨年のドンナ・エルヴィーラも素晴らしかったし、来年はケルビーノを歌ってくれるし、海外で活躍している日本人が逆輸入で来てくれるの、とても嬉しいです。

 その他、バルトロのパオロ・ボルドーニャ、ドン・バジリオのマルコ・スポッティも良かったです。ベルタの加納悦子は演技もなかなかでしたが、2幕目の「年寄りは妻を求め」のカヴァレッタ(?)が特筆もので良かったです。脇役が良いと、本当に舞台が締まります。これほど、歌手陣が充実したロッシーニを聴くのは、2015年、アムステルダムで聴いた「ランスへの旅」以来でしょうか? それだけに、新国立でもランスやウィリアムテル、湖上の美人などを新作としてやってほしい気持ちが募ります。

 指揮者のアントネッロ・アルマンディは初めて聴きました。序曲でいきなり、ホルンが「プハ〜」とやらかしてしまって、これはちょっと残念。高まっていた気持ちに水をあびせられた感じです。それ以外は、良かったと思います。ただ、なんか、響きが固い感じがします。ロッシーニらしい、ゆらめくような軽さが充分に出ていない気がしました。

 それにしても、満足なセヴィリアでした。今週は、このあと、東フィルのカルメン、二期会の椿姫と週3回のオペラウィークです。体調を整えて臨みます。

指揮:アントネッロ・アッレマンディ
演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー
アルマヴィーヴァ伯爵:ルネ・バルベラ
ロジーナ:脇園 彩
バルトロ:パオロ・ボルドーニャ
フィガロ:フローリアン・センペイ
ドン・バジリオ:マルコ・スポッティ
ベルタ:加納悦子
フィオレッロ:吉川健一
隊長:木幡雅志
アンブロージオ:古川和彦
管弦楽:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
チェンバロ:小埜寺美樹

ラ・ボエーム@新国立劇場

 今年の新国立劇場での初オペラは、1月31日のラ・ボエームでした。目当ては、なんと言ってもニーノ・マチャイゼです。彼女は今回初来日、今まで日本に来たことがないので、ファンの僕は、今まで彼女を聴くために、パルマ(真珠採り)、ロサンジェルス(タイス)、アムステルダム(ランスへの旅)、と追っかけて来ました。今回、マチャイゼは日本をとても気に入った(特に浅草)ようなので、これからはもっと来てくれるでしょう。

 彼女の声は、いつものように芯がしっかりあって、低音から高音までをしっかりと歌い込み、情感を表す技術に優れたものでしたが、正直なところ、ミミという役柄にぴったりかと言うと、そうは言えないような気がしました。マチャイゼの魅力は、やはり「強い女性」を演じた時に最高潮になると思います。ですので、ジルダとか、タイス、レイラ、フォルビル伯爵夫人などの役で聴いた時のほうが、しっくり来ましたね。彼女自身も、プッチーニの演目で、ここ5-10年の間に歌うことを目指しているのは、トスカだと言っています。

 ロドルフォ役のマッテオ・リッピも良かったです。高音まで良く伸びる明るめのイタリアンボイス。貧しい芸術家という雰囲気を良く出していました。マルチェロのマリオ・カッシも良いバリトンだと思いますが、やや一本調子なのが気になりました。ムゼッタの辻井亜希穂。ドイツを中心に実績充分ということで、美しい声でしたが、もう少し華やかさ(色っぽさ?)が欲しかった気がします。ショナールの森口賢二は、安定した声と演技で舞台を引き締めていました。

 僕はラ・ボエームを見るのはまだ3回目なんです。以前に見たのも2回とも新国立の粟国演出です。この演出は美しいですね。クラシックで、印象派の絵画のようです。僕のオペラの師匠のK先生が、プッチーニはルノアールのようだと言っていましたが、まったくその通り。(一方ヴェルディは、セザンヌでしょうか?)特に第3幕の雪のアンフェール関門の場面は紗幕をうまく使って、本当に絵画のようです。新国立の演出の中では、「ばらの騎士」とならんで、名演出だと思います。

 最後に、指揮。新国立ではおなじみになったカリニャーニです。カリニャーニの指揮の特徴はグングンと歌唱をひっぱり、落とすところは落として歌唱を浮き上がらせるところです。この日もそんな感じを受けました。かなり映画音楽っぽい。ただ、このラ・ボエームは、ヴェルディなど(オテロが印象に残っていますが)のように、音楽の塊感を出す曲ではないので、このような指揮がプッチーニファンの人の耳にどう響いたのかは、ちょっと疑問でした。

 ネガティブなことも色々と書きましたが、全体としては、非常に水準の高いラ・ボエームでした。満足!

指揮:パオロ・カリニャーニ
演出:粟國 淳
美術:パスクアーレ・グロッシ
衣装:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明:笠原俊幸

ミミ:ニーノ・マチャイゼ
ロドルフォ:マッテオ・リッピ
マルチェッロ:マリオ・カッシ
ムゼッタ:辻井亜季穂
ショナール:森口賢二
コッリーネ:松位 浩
ベノア:鹿野由之
アルチンドロ:晴 雅彦
パルピニョール:寺田宗永
管弦楽:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団