プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

コッペリア at 新国立

先週はオペラ2回、バレエ1回と豪華な週でした。タマラ・ロホとホセ・カレーニョ、素晴らしかったです。詳しくは近々報告します。
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エフゲニー・オネーギン by ボリショイオペラ

今週はオペラの”当たり”の週のようです。26日のロシア国立ボリショイオペラの"エフゲニー・オネーギン”良かったぁ!

長いテーブルが主役のように全幕、舞台の半分くらいを占めていましたが、これが実に効果的でした。テーブルは舞台の奥にあり必然的に、舞台に向かっては後ろ向きに座る人たちばかりが見えるのですが、どの幕でも音楽の始まる前に食事をする食器の音や、家具の音が入るために、観客は自分もそのテーブルに着席している気分になります。そしてテーブルの廻りを動く人間模様が非常に演劇性豊かな歌手によって表現されていて、まずは声、音楽抜きにしても素晴らしいチェルニャコフの演出。
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出演者ではタチアーナ役の本人の名前もタチアーナ・モノガローワは出色物。前半と後半の表情、演技の違いもさることながら、声の出し方、装飾の付け方も変わり、地味な田舎娘から華麗に羽ばたいて公爵夫人なったその変化と、その間の舞台には出ない心の葛藤を見せます。実に安心して聴ける安定したソプラノ。オネーギンへの愛を手紙に込める長い長いアリアは圧巻でした。先週のシラクーザみたいに最後の方だけアンコールで歌った欲しかったくらい。

レンスキー役のテナー、アンドレイ・ドゥナーエフも素晴らしくかったです。親友のオネーギンに裏切られた悔しさを表現するのに、俳優さながらの演技力、そして体を動かすその演技で疎かになるどころか、切なさを余裕で歌いあげる歌唱力。ヤンヤヤンヤの喝采です。

それにくらべてオネーギンのウラジスラフ・スリムスキー、決して悪くはないのですが、上の二人に比べればタイトルロールとしては、やや物足りないかなという感じ。声量しかり、表現力しかり、あとちょっとという感じ。また、第三幕のタチアーナとのやりとりでは、タチアーナが思いを残すほどの魅力的な人物に映りませんでした。これは見かけが、なんか汚い.....というせいもあるのか。何年か放浪してきたという設定だからしかたないのかもしれませんが、とにかくタチアーナが良すぎたということでしょう。

公爵役のカザコフだけは、いただけませんでした。出番も少ないので、声が温まらない内に終わってしまった感じ。しかし、最後にタチアーナをオネーギンから引き離す重要な役なので、ちょい出、でもリゴレットのモンテローネ伯爵同様、「存在感」が必要と思いますが、全く無かったです。

逆に脇役でもタチアーナの乳母を演じたエンマ・サルキシャンは年齢もけっこう行っていると思いますが、凄みさえ感じさせる迫力のあるメゾでした。

全体としては歌手のレベルは非常に高く、ボリショイオペラの層の厚さを感じました。

僕は、指揮とオーケストラに関して、なんだかんだ述べるほどオネーギンとチャイコフスキーを聞き込んでいませんが、非常に弦の音が美しく、歌手に遅れることなく、先走りすることなく、長年の友人のように馴染んでいたと思います。

いや、しかし、翌日になっても、まだ昨日の興奮が冷めやらない感じ。あの長テーブルに座りたかった......


明日は、気分を変えてタマラ・ロホのコッペリアです。


そろそろ今年後半から来年にかけての予約も入れ初めていますが、当面の悩みは、9月のスカラ座、バレンボイムのアイーダは取っているんですが、ガッティのドン・カルロをどうするか。なにせ高いんで悩み中。

チェネレントラ at 新国立

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ひさしぶりに、オペラ公演行き!!

ロッシーニの"チェネレントラ”を20日土曜日に新国立劇場オペラパレスで見てきました。シラクーザは昨年11月のエヴァ・メイとのリサイタルでのパフォーマンスがあまりにも素晴らしかったので期待していましたが、その期待の通りでした。特徴のある甘い中音とどこまでも伸びる高音、なにより役柄を理解して演技も疎かにせず、まわりとの調和も素晴らしい。

2幕目の最初の方のアリアで拍手喝采鳴り止まず。日本の劇場としては珍しくアリアの後半部だけアンコールでもう一度歌うという大サービス。これだけでもびっくりしましたが、アンコールの時はハイCを一段上げてDまで軽々と出してました。すごいね!

ドン・マニフィコ(義父)役のシモーネのバスも素晴らしかったです。けっこう歳と思いますが、あれだけ歯切れの良いバスは珍しい。まさにロッシーニにぴったり。演技もフル回転。姉さん役の幸田浩子、清水華澄も良かったです。

が、肝腎の、、一番ギャラが高そうな、ヴェッセリーナ・カサロヴァが出てくると、いきなりロッシーニの香りが消えてしまします。この人、この日は、オペラに出ているという認識が無かったのでは。自分のリサイタルと勘違いしている。声は、高音が苦しく、その文中低音をオペラの進行と関係なく、ど迫力で響かせていました。チェネレントラというよりは、メゾの「夜の女王」。リサイタルですから演技はまったく無し。棒立ちか、観客を前にステージ前端に立って終始片手を突き出して、得意の「カサロヴァ節」の披露。フィナーレのシェーナでも、一度も王子に目をやらず、ただそっくり返って歌うのみ。選挙演説みたいですな。

ま、カサロヴァはリサイタルで聞く歌手なんでしょうね。2007年のカサロヴァのリサイタルの時も、ヘンデルはとても良かったのです。でもロッシーニを歌った時は、首を振りまくりで、ただでさえ音楽をぶつ切りにする悪い癖(だそうです)に加えて声が左右に散らばってしまい、ちょっとなー、と思ってました。今回、ぶつ切り具合はその時ほどひどくはなかったのですが、やはり悪癖の片鱗(?)は垣間見られました。まあ、とにかく全く役柄を理解していないとしか思えない「カサロヴァが歌うとこうなります」という怖~いチェネレントラでした。これなら林美智子を起用した方が良かったのではと思いながら聞いていました。

サイラスの指揮には期待していたのですが、序曲からへこみました。ロッシーニらしい軽妙さがありません。また、立ち上がりの金管、木管の音自体もお粗末でした。リハーサルなら完全にやり直しでしょう。ロッシーニクレッシェンドにも切れがなく、だるい演奏でした。唯一持っているCDがアバド指揮、ロンドン交響楽団のもので、こればかり聞いていたので比較してしまったのがいけないのかもしれませんが。。。。

ということで、シラクーザがいなければ平均以下になっていたこの公演、ギャラの半分はシラクーザに上げてほしいと思います。僕は、シラクーザの声の質(ホセ・ブロスもちょっと似ていますが)とても好きで、是非他の演目(夢遊病の娘など)でも聞きたいものです。

個人的に、現代の3大テナーは、シラクーザ、リチートラ、フローレスではないかと思います。最後は余談でした。おしまい。



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