プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

MET2013-2014シーズンプログラム発表

ついに発表になりました。NYメトロポリタンオペラの2013-2014シーズンプログラム、なかなかすごいです!

その前に、明日2月28日木曜日のメトロポリタンオペラは「ドン・カルロ」。このキャストがすごい。バルバラ・フリットリ、ラモン・ヴァルガス、フルチョ・フルラネット、ドミトリー・ホロフトフスキーでロリン・マゼール指揮。前から2列目が340ドルで4席空いてるんですが、これから行けば間に合うか。これライブビューイングでやらないですよね。すごいキャスト.........さすがメトロポリタンという感じです。2011年のMET来日のドン・カルロで、主催者の陰謀でフリットリがドン・カルロのエリザベッタからラ・ボエームに横滑りしてしまったのが、いまだにうらめしい。

それは、ともかく2013-2014はこんな感じです。

9/24 モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》
9/30 ベッリーニ《ノルマ》
10/5  チャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》*新演出
10/26  ショスタコーヴィチ《鼻》
11/9  プッチーニ《トスカ》
12/14 ヴェルディ《ファルスタッフ》*新演出
12/16 モーツァルト《魔笛》
12/31 ヨハン・ストラウス《こうもり》

2014
1/9 ドニゼッティ《愛の妙薬》
1/14 プッチーニ《ラ・ボエーム》
1/16 プッチーニ《マダム・バタフライ》
2/8  ドヴォルザーク《ルサルカ》
2/26 ヘンデル《Enchanted Island》
3/1  ボロディン《イーゴリ公》*新演出
3/15 マスネ《ウェルテル》*新演出
3/24  ジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》
4/3  リヒャルト・ストラウス《アラベッラ》 
4/5  プッチーニ《ラ・ボエーム》
4/26 モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》
5/10 ロッシーニ《ラ・チェネレントラ》

まだ、あるんですが、書き写すの疲れてきたので、この辺で。。コメントも次回に。。。
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二期会 "こうもり"は日本語バージョンでした。

久しぶりに二期会の公演に行ってきました。多分2009年の宮本亜門演出の椿姫以来。

この時期の観劇の最大の敵は"花粉症”です。ここ1週間ほどで本格的に始まってしまい、もう目はかゆいわ、鼻水は出るわ.......時々目玉を取り出してブラシで洗っています。

でもって、この日の文化会館の会場に行ってまず気付いたのは、オーケストラピットが1m以上持ち上げられていること。指揮者の上半身だけでなく、演奏者の顔まで一階の観客にも見えるようになっていました。これは、多分演出上2幕目のオルロフスキーのパーティーの場での一体感を出そうとしたものだと思いますが、大植英次のエネルギッシュな指揮がよく見えて、演奏者も緊張感が持てるだろうし、音響上も良い効果が出てなかなか良いアイデアだと思います。前にマリインスキーが来日して"ランスへの旅”をやった時、ゲルギエフとオーケストラが皆舞台上に乗っていたことがありましたが、こういう演出はもっとやってもらいたいものです。

大植の指揮で始まった序曲、ウィーン風にゆらぐような感じが出ていて良い感じのスタートでした。ところが、幕が上がると、広い舞台の上にアイゼンシュタインの家が8畳ほどの狭い小舞台にしつらえてあり、そこで日本語で、かなりのドタバタのアクションを繰り広げるので、いきなりウィーンから浅草の芝居小屋に移った印象。でも、それが演出の意図でもあったようです。

しかし、最初は感情移入できなかったですね。特にこの日は、午前中加藤浩子先生のアイーダの講義でシミオナートやドミンゴを聴いてきた直後だったので、いきなり日生劇場のミュージカルに来たみたいな感じになり心落ち着かなかったです。しかも、なぜか聴衆のマナーが非常に悪い。僕の前列の人達は半分以上、腰が浮くほど前に乗り出し、おしゃべりはするは、ガサゴソ音は出すは.......これが前後左右の席で起きるので、一幕目はくさって寝てしまいました。

気を取り直して(高い切符を買ったのだから楽しまなくては損と)、2幕目から気合いを入れて見始めると、これがけっこうおもしろい。全く浅草オペラの感じなんですね。とにかく、歌手がよくまあ、ここまでできるなぁというほど、演技するし、転がるし、踊るし、それでもちろん歌うのですから感嘆しました。特に幸田浩子、生で聴くのは4年ぶりくらいですが、前はか細かったコロラトゥーラという感じしかなかったソプラノが、芯のある強い声も出るようになり、ききごたえありました。良い声に醸成されたなぁという感じ。フォルクスオーパーに出ているだけあって、演技もセリフの言い回しもたいしたものです。決してキンキンしないのに、よーく響く声が出てくるんです。すごく素敵なアデーレでした。これは、新国立の次のシーズンのホフマン物語が楽しみです。そして、今回まで名前を知らなかったのですが、ロザリンデの腰越満美も、非常にゴージャスな声のソプラノで、この二人が断然舞台を引っ張っていました。

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アルフレード(テノール歌手)の樋口達哉も、役にぴったり。ヴェルディイヤーということもあって、ヴェルディのナンバーを口ずさんでサービス精神たっぷりでした。

ちょっと残念だったのは、期待していた林美智子のオルロフスキーが、あまりにも線が細くて、オルロフスキーならではのなまめかしい感じが出なかったこと。彼女が不調だったというより、ミスキャストだと思います。最近の林美智子はどちらかというとベルカントっぽい声になってきていて、今後ロッシーニあたりを唄う予定ですから。

大植の指揮は最後まで、舞台を盛り上げる力強さと切れがありました。

ヨハンシュトラウスのウィーンの”こうもり”として考えた場合、この公演は???でしょう。でも、二期会(東京二期会というより、大阪二期会の乗りでしたが......演出の白井晃も関西出身だし)の"こうもり”という味を充分に出していていました。

ただ、舞台装置に関しては、広い舞台をフルに使わずに、小さい箱を乗せるという方式(幕が進むに連れて箱も大きくはなりましたが)、宮本亜門の椿姫もそうでしたが、やや見にくくてチマチマしている感じがありますね。二期会は箱が好きなのかなぁ。

2月に新国立、藤原、二期会と見て来て、やはり藤原、二期会は、良く練習しているという感じを持ちました。それはそうですよね。年に何回しか公演しない会場を満員にして、同じキャストで一日か二日しかやらないのですから、「初日だから不調」ってのは許されません。それに比べると新国立の「愛の妙薬」は初日と最終日の出来があまりにも違いました。海外から指揮者も含めたキャストを呼んでいるので仕方がない面もありますが、シラクーザだけは初日も最終日も良かったことを考えると、もう少しちゃんと練習をしてほしい、でないと初日のお客様に失礼だと思いました。

藤原と二期会、僕はイタリアオペラ派ということもあり、藤原のオペラがすんなりと体に入ってきます。でも、日本を代表するこの2団体、良く頑張っていると思い、嬉しくなりました。

さて、しばらく観劇の予定はなく、その間は5月のハンブルグ、ザルツブルグ行きのお勉強をします。特に”ノルマ”はある程度覚えてしまいたいです。バルトリの声に集中したいですから。

それで、3月30日に新国立のアイーダ。これは新国立の宝ですね。楽しみです。

逗子でヴェルディ生誕200年祭り開催と今年の観劇プラン

逗子で、ヴェルディ生誕200周年を記念して集会を開きました。声楽をやっていた方とか、日本の有力プロモーターにお勤めの方など、色々な方々20名ちかく集まって、楽しくCDの聞き比べや、逸話など、お話ししました。やはり、ここらあたりは、オペラの好きな方多いようです。でも男性は少なかったですね。男性はやっぱりワーグナーかなと覆います。横須賀線の中で、2回「オペラお好きですか?」とお歳のいった男性に声をかけられてお話ししたことがありますが、二回ともワーグナーをパソコンで見ている時でしたから。

電車の中でオペラ良く見ますが、ヴェルディやその他イタリアものを見ていることが圧倒的に多いのに、ワーグナーの時に声をかけられたというのは、やはり逗子鎌倉はワグネリアンがいるのでしょう。そのうちのお一人は、「今年はバイロイトに行きます。」とおっしゃっていました。

さて、今年のこれからの観劇予定が決まってきましたので、記しておきます。

2013/2/23 こうもり      二期会
2013/3/30 アイーダ      新国立 加藤浩子先生解説、
2013/3/24 ラ・トラヴィアータ 二期会 安藤赴美子 
2013/4/17 オテロ      フェニーチェ クンデ
2013/4/21 ル・パルク(バレエ)   ゆうぽーと ルグリ、デュポン
2013/5/17 ニュールンベルグのマイスタージンガー(渡欧)
ハンブルグ市立歌劇場 フォークト
2013/5/18 真夏の世の夢       ベルリン響 アバド指揮(行けるかどうか...)
2013/5/19 ノルマ ザルツブルグ祝祭劇場   バルトリ
2013/5/20 ドイツレクイエム ザルツブルグ祝祭劇場 バルトリ、ルネ・コロ
2013/5/22 ナブッコ 新国立
2012/6/15 ラ・トラヴィアータ ハンガリーオペラ  エヴァ・メイ
2013/6/22 シモン・ボッカネグラ 大阪いずみホール  堀内康雄
2013/7/10 シラクーザ・リサイタル  オペラシティ
2013/9/9    リゴレット        スカラ座来日    ヌッチ
2013/9/12? ファルスタッフ      スカラ座来日    バルトリ
2013/9月   ラ・トラヴィアータ    藤原歌劇      デヴィーア
2013/9月   ラ・トラヴィアータ    藤原歌劇      佐藤亜紀子
2013/9/25 マリエッラ・デヴィーア リサイタル オペラシティ
2013/10月  渡欧?
2013/11月  ホフマン物語       新国立       幸田浩子
2013/12月  仮面舞踏会        トリノ王立     ヴァルガス
2013/12月  トスカ          トリノ王立     フリットリ 

今年は、新国立があまり良いのがないので、いつもより観劇の回数減りそうです。でも大物が来るので、お金はかかりそう.....(^0^;)

目玉は何と言ってもザルツブルグへ行って見る、チェチリア・バルトリのノルマですが、ヴェルディ、ワーグナー生誕200周年なので、10月に仕事で渡欧する折にからめてパルマのベルディフェスティバルなど行けレばなぁと画策しております。

    


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続トラヴィアータ考

この前、「トラヴィアータ考」というブログを書いて、途中までになっていました。ヴェルディ協会風に“トラヴィアータ”と呼ばして頂きます。一応会員なので。

一幕目は、乾杯の歌あり、エステラーノ〜、エステラ〜ノ♫ あり、花から花へ、ありで美しいアリアが満載なのですが、ストーリー的には、あまりヴェルディっぽくありません。心の葛藤は、ヴィオレッタが、アルフレードの愛になびくところぐらいです。ヴェルディの主人公は悩みに悩んで、やるかやらないか、やらないかやるか、とにかくすごく悩むのです。

それが1幕目第2場になると出てきます。あの短い前奏曲は大好きです。そして、トラヴィアータを見るたびに、どのような舞台装置でパリ郊外の別荘を見せてくれるのかわくわくします。今までで一番良かったのが、ついこの前みた、Tutto Verdiのブルーレイのパルマ歌劇場の演出。ガラス窓越しに、一面雪の別荘の庭が見え、そこにいるアルフレードがふざけて雪をなげるとガラスに当たって溶けるのです。凝った演出です。

最も腑に落ちない演出は、ゼッフェレリの弟子、映画監督でもあるルカ・ロンコーニのけっこう有名なクラシック演出、なぜか巨大な玉突き台が置いてあり、そこでアルフレードが玉をついている。これは、その後も考えれば、アルフレードは、やっぱり “とろい“ということで一貫しているのでしょうけど、なーんか、人目を避けて暮らしているという感じがしないですよね。あとは、このクラシック演出、豪華で良いのですが。

でもって、この場ではアルフレードは勇んでパリに金を返しに(借りに?)行ってしまいます。その間に、アルフレードの父ジェルモンが、ヴィオレッタに会いに来るわけですが、最初のうちは反目してる二人は、段々に、まるで愛人のように理解しあっていきます。音楽もそれに合わせて二重唱で同じ旋律を歌うようになります。ところで、ジェルモンには3つのタイプがあると思います。

1. 厳格で真面目で田舎の紳士という感じのジェルモン:トーマス・ハンプソン、ロベルト・フロンターリ
2. えらく格好良くて、ヴィオレッタが恋に落ちそうなジェルモン:レナート・ブルゾン、プラシド・ドミンゴ(バリトンで)
3. 何か怪しげで、本当は妹なんかいないんじゃないかと思わせるジェルモン:レオ・ヌッチ、シェリル・ミルンズ

個人的には、ブルゾンのジェルモンが最高ですね。ヌッチも良いのですが、高貴で女あしらいもうまそうなブルゾンはジェルモンには適役です。ただ、彼はヤーゴやリゴレットは合いません。

実際、原作の作家のデュマ・フィスよりも、その父の大デュマのほうが遊んでいたようです。フローラの夜会みたいなのを、バンバンやっていたみたいですね。

それで、ヴィオレッタはこの1幕2場で、第一の死を迎えるのです。その話は、また。。。。

愛の妙薬リベンジ!

「愛の妙薬」の最終日に行ってきました。初日に行って、ネモリーノ役のシラクーザとドゥルカマーラ役のジローラミ以外があまりにも不調、特にオケと歌唱が著しくはずれてしまう場面が多くあったので、ずいぶんとネガティブなブログを書いてしまいました。(実際、怒っておりましたが。。) それで、最終日ならどうかなと思ってチケットを取ったのですが、今日は平日の昼間ということで、自分の仕事が立て込んでいて、新国立に着いたのが序曲が終わったところ。残念ながら、前半はスクリーンで視聴することになりました。それでも、一度聴いていると違いはわかるものですね。

まず、感じたのは、この前はオケと歌が色々なところでシンクロしなかったために、(一幕目、二幕目とも最初にすごい “ずれ” がありました。)歌手が安心して歌っていなかった感じがしました。シラクーザでさえ、一幕目は慣らし運転のように慎重でしたが、今日は指揮とオケともぴったり合って全開。二幕目最初のベルコーレとの二重唱は前回とは比較にならないくらい良かったです。そう、歌手の中では、ベルコーレ役の成田博之が、今回は面目躍如という感じで良かったです。

ニコラ・キャベルも、前回よりはずっと歯切れ良く生き生きと歌っていました。しかし、何と言っても、前にも増して良かったのがシラクーザ、声に艶があり魅了されました。前回は三階の1列目真ん中という新国立としては、最も音の良いところに座り、今日は4階の端っこでしたから、相当良くなっていたのではないでしょうか?グッと来ました。

ただ、前回も今回も感じたのは、シラクーザ以外は、ドニゼッティ唄いには向かないのでは、ということ。今回、買ったプログラムをホワイエにいる間にゆっくり読んで納得しましたが、キャベル、成田、ジローラミともに、得意とするのはモーツァルトやプッチーニ、ヴェルディ後期、ビゼーなど。レッジェーロな声ではないのです。ちょっと重いのです。ですから、個性的で軽く、ベルカントなシラクーザの声が浮いてしまうのだろうと思います。エヴァ・メイがいたら良かったろうなぁと思ってしまいました。そして、指揮者のサレムクール。今回、歌唱にきちんと合わせて振ったのは評価されますが、当たり前のことです。どうしても、イタリア的、ドニゼッティ的じゃないんです。重苦しい。テンポ感にかける。妙なところを伸ばすので、水をかけられたようにびっくりする。また言ってしまいますが、ドニゼッティを振らせるのに「バレンボイムの秘蔵っ子」と堂々とPRする新国立の神経がわかりません。(あ、また上から目線....)これなら一昨日の成田真郁に振ってもらいたかった。今日は、知り合いにたくさん会いましたが、皆、バレンボイムがスカラ座のシモンでブーイングを浴びたことや、今年のスカラ座来日ではヴェルディの2作をハーディングとドゥダメルに任せて、音楽監督兼首席指揮者なのに同行しないことなど新国立の維持会員なら皆知っているでしょう。(ちなみに、スカラ座来日のキャッチが「火花散る新時代のマエストロ対決」です。)
イタリアオペラにはイタリアの音と出せる指揮者を組み合わせてほしいなぁと思いました。

チェザーレ・リエヴィによる演出は、ネモリーノが黄緑とイエローの衣装に赤いカツラと、とてもカラフルで楽しいものなのですが、舞台上で、あまりにも知性の象徴としての “本“ にこだわりすぎだと思います。それが一幕だけなら良いのですが、これでもかこれでもかと出てきます。巨大な ”トリスタンとイゾルデ“ の本の象作物が動き出すところで、やや辟易する感じです。もっとシンプルにするか、あるいは農民の無知と本の知性を対象させるかのどちらかを狙って舞台装置を設定して欲しかったところです。できれば新演出で見たかったですね。一昨日の藤原の「仮面舞踏会」のクラシックでシンプルで、お金はかけていないけれど、広がりを感じさせる舞台装置を見たあとだと余計にそう感じました。

ともあれ、最終日を見に行って良かったと思います。初日しか見ないで、上から目線で文句ばかり言うのは、まったく訳のわかっていない初心者ブロガー-です。ごめんなさい。

仮面舞踏会 藤原歌劇

今日のブログは、先日56歳という若狭で急逝した、僕の大事な友人臼井一浩さんに捧げます。老後は彼をオペラに誘おうと思っていました。

さて、今日の仮面舞踏会、期待以上の出来と思います。まず、褒めるべきは若手指揮者の柴田真郁(マイク)と東フィルでしょう。特徴のあるバイオリン(だと思う)のピッチカートから始まる序曲は、イタリアの匂いがプンプンして、最初からワクワク感があります。全曲を終えてみれが、手堅いというか、真面目というか、「イタリアを習いました」という感じで、まだ余裕はなく、冒険も無しでしたが、見事にイタリア!インテンポで、絶対に歌手から外さない指揮というのは、最近あまりなかったので、嬉しかったですね。歌手の声量があまりなかったのに比べて、やや音楽が盛り上がりすぎたところもありましたが、それが些細なことと思えるほど、将来性を感じる指揮者あでした。拍手が少なかったのは残念ですが、僕としてはブラボーでした。

一幕目の立ち上がりのシェーナでオスカルの大森智子が音をはずし、ドキッとしましたが、リッカルドの村上敏明、レナートの堀内康雄は安全運転でスタート、ウルリカの森山京子は最初から全開に近く、おどろおどろしい雰囲気で、カバレッタのあたりでは役になりきっていました。二幕目は、このオペラの見せ場、夜中の墓場の場面。ここでは村上も堀内も暖まった感じで非常に良くなってしました。堀内がいいのは、最初からわかっていたという感じですが、失礼ながら村上敏明、予想外に良い! これは、声量を抑えて、音程と表現力に力を注いで丁寧に歌っていたからでしょう。たしかに、パワーが無い、花が無い、特徴が無いと言われればそうですが、それはドミンゴのリッカルドに比べて言えることで、今日の村上は、自分のコントロールできる範囲でベストを出していました。情熱があって、ヴェルディのテノールを歌うという意気込みが伝わってきました。イタリアの小劇場でこの公演を聞けば、村上も堀内も”ブラビッシモ”間違い無し。

あまり演技には力を入れてない感じの藤原歌劇ですが、村上のリッカルドは、最後まで高潔で凜々しく好感が持てました。アメーリアの野田ヒロ子は、やや微妙なところでした。高音は非常に良く、ベルカントなんですが、中音に落ちたときに音程が定まらない。これが残念でした。同じ藤原でも高橋薫子のほうが、そこらへんは巧みですね。

堀内は、二幕目から三幕目にかけて、どんどん調子を上げて素晴らしいパフォーマンスでした。妻を責める、シェーナとアリアの繰り返しは迫力があり、引きつけられます。ここらへんでも、指揮は、まったく歌唱からはずすことなく安定していました。この一日だけの歌唱というのは、出演者のすべてにとって、かなりプレッシャーがかかると思いますが、良く練習をしたのだろうな、と思います。

実は昨日から右目が痛くて、長いこと開けていられず、観劇中もしばしば両目をつぶっていまししたが、ヴェルディの作品の中でも有名なアリアこそ無いですが、最も美しい曲をちりばめた感じのある、この演目の演奏と歌を、全く不安なく楽しめました。

上に書いた以外の歌手は、まだまだという感じで、レナートと、トム、サミュエルの3重唱あたりは格が違うのが明白でしたが、主役級以外は若手中心で、これからの藤原を背負って行くと思われる面々。伸びる余地は充分あるでしょう。

会場は満席、高齢の方が多いのですが、(こっちだって若くはない)ご夫婦で来ている方が多いのと、着物のご婦人が多いこと、そして見るからに音楽を習っていますという若い人も多く見かけました。今日は2階のLの良い席で¥9,000-、若手を積極的に使い、徹底して練習をして、水準以上のものをこの値段で聞かせる、そしてあくまでイタリアオペラを貫く藤原歌劇にブラヴィです。

イメージ的に藤原はヴェルディ以前のイタリアオペラという印象が強かったのです。演出が古いという批判はありましたが、ベッリーニの夢遊病の女は、何度見ても藤原のレベルの高さを感じます。ヴェルディは数年前に宮本亜門の演出で椿姫をやりましたが、(あ、失礼、これは二期会でした。2/11訂正)演出も、歌手も、演奏も今ひとつで、失敗に近い感じがしました。それに比べると、今日のヴェルディは、藤原なりに良く考えて、藤原の良さで押したヴェルディだと思います。彼らがヴェルディの初期の作品をやってくれると良いなと思いました。

一方で、合唱が、皆前を向いて静止して歌う、主要人物も演技らしい演技がなく、古いオペラのスタイルであるのは、今後ファン層を広げるためには、考えていかなければいけない点だと思います。しかし、色々動き回って、結果歌がおろそかになるよりは、前を向いて、各自が最高のパフォーマンスで歌ってくれるほうが良いと僕は思うのです。

9月には、マリエッラ・デヴィーアを招いてのトラヴィアータ。昨年11月にシチリアで聞き損ねていますので、楽しみです。そして、そのBキャストに、新しい藤原のソプラノ、佐藤亜紀子が出ます。これも楽しみです。そして、来年1月にはアントニオ・シラクーザを招いてのロッシーニ”オリー伯爵”公演。これからの、藤原歌劇、期待できます。

さて、明後日の、愛の妙薬の最終日。これが良いと、かなり気分が良くなりそう。

トラヴィアータ考

そろそろ、逗子のローカルヴェルディ祭りhttp://www.ogasawara-gakuen.com/sub_a44ev.htm の準備をしないといけません。で、夜寝る前に色々な椿姫を見たり聞いたりしています。このオペラは、メロドランマとしては、本当に良くできています。ヴェルディの27作品の中では、やっぱりシモン・ボッカネグラが一番好きですけど、次に好きなのが、椿姫、一番見ているのも椿姫。

でも、僕が入っている日本ヴェルディ協会では、「椿姫」というのは、日本で昔誰かが(思い出せない)付けた名前なので、トラヴィアータと呼ばなければいけない、ということになっています。「道を踏み外した女」ということですが、オペラの中の名前は「すみれ」を意味するヴィオレッタで、デュマ・フィスの原作の中では、マルグリット・ゴーティエと呼ばれ、(映画男と女の女は、アンヌ・ゴーティエです。子孫かな?)で、本当にデュマ・フィスが恋に落ちたのはマリー・デュプレシとう実在の高級娼婦なのです。彼女のお墓はパリのデュマ・フィスの墓のそばにありますが、この頃の高級娼婦で墓があるのは珍しいことです。

で、実際にデュプレシは、自分のトレードマークとして椿の花を毎日買って服に飾って夜な夜なパーティに行っていましたが、いつも寄る花屋の親父は彼女のことを、「椿姫」と呼んでいたという説もあります。名前が多くてややこしいですねー。ロード・オブ・ザ・リングの中でガンダルフはエルフには"ミスランディア”と呼ばれますが、何の説明も無いので、この前公開されたホビットを見た人は、「何だ」と思ったでしょうね。

こんな調子で書いていたら、えらく長いブログになってしまいます。先にいきましょう。

この、トラヴィアータは小説が原作になっていますが、その小説は実話なんです。マリー・デュプレシの恋人はデュマ・フィス(小デュマという意味です。)そして、ジェルモンは大デュマ(デュマ・ペール)で、小デュマがまだ物書きとして自立していない時、既に、「モンテクリスト伯」、「三銃士」などの作品で有名になっていて、1幕2場のパリ郊外のヴィオレッタの別荘というのも、実は大デュマの別荘を、その息子(庶子)小デュマが使っていたわけです。

で、その一幕二場で、「パリに金を取り戻しに行くゾー」のカバレッタの後、実際に小デュマ(アルフレード)は、パリの金貸しのところに行きますが、「おまえの親父が担保を入れなければ貸せない」と言われ、金貸しから大デュマに、ヴィオレッタのことが知られてしまうのです。

で、別荘にジェルモンが現れるのも実話で、これは大デュマがデュプレシに、息子と別れろと言いに言ったわけです。その後、色々実話と、作った話が入り交じりますが、結局、ヴィオレッタは劇中のドゥフォール男爵、実際はドイツ人のシュタッケルベルク男爵の元に戻り、その後フランス人のベルゴー伯爵の妻になりロンドンに渡り丁重に扱われますが、結局結核で23歳の若さで亡くなります。作曲家のリストとも愛人関係にあったと言われています。これから先はまだ調べていませんが、フローラも実在の人物で、その屋敷も残っているようです。

トラヴィアータほど美しい序曲を持ったオペラは、そうは無いと思います。シモン・ボッカネグラの序曲も美しいですが、いかんともしがたく短い。トラヴィアータでスカラ座を長く沸かせたマリア・カラスの指揮はほとんど、カルロ・マリア・ジュリーニが振りましたが、彼の序曲は極端に遅いテンポで、約3分50秒かかりますが、マゼール、クライバー、メータ、トスカニーニなど、ほとんどの指揮者は3分ちょっと、一番短かったのは(僕が持っているCD,DVD)では、マゼールの2006年のベルリンオペラの2分50秒です。しかし、翌年の2007年にスカラ座でゲオルギューを迎えて振ったマゼールは3分30秒くらいの遅いペースでした。(これは、実際僕が現地で聞いて計りました。タイトルロールは、イリーナ・リングに変わりましたが)

カラスが第一線を去り、ジュリーニが指揮者としては珍しく70歳で引退した後(夫人が病気だったのです)、スカラ座では誰もトラヴィアータを指揮しませんでした。いや、カラスの亡霊の後に歌う歌手もいなかったのです。1964年12月17日に満を持して、カラヤン、フレーニのコンビでトラヴィアータの公演初日を迎えますが、一部の古きカラスファンのブーイングと罵声で、この公演は失敗に終わり、以後92年にムーティが公演を強行するまで30年近い間、スカラ座ではトラヴィアータは聴けなかったのです。

トラヴィアータの初演はヴェニスのフェニーチェ歌劇場ですが、イメージ的には上記の理由により、スカラ座のトラヴィアータという感じがあります。僕が行った時も、ゲオルギューとマゼールが初日にすごいブーイングを受け、ゲオルギューは最終日降板、マゼールに至っては初日で帰ると言いだし、支配人の数時間の説得でようやく指揮を続けたほどでした。

今、その公演の模様が、ブルーレイディスクで格安に入手できますが、それを聞くとブーイングもやむをえないかなと思います。ゲオルギューは94年のコベントガーデンでのショルティとの公演のイメージを持って聞くと、あまりにも衰えた感がありますし、マゼールの指揮はイタリア的ではないのです。つまりインテンポではない。つまり、抑揚と音の伸ばしがありすぎて、ワーグナーのようなのです。イタリア人はインテンポな演奏がイタリアの音楽だと思っています。これはトスカニーニが植え付けたものです。ですから、バレンボイムもブーイングをくらったのです。

やはり長くなりました。またこの続きはいつか。。。 

ランスへの旅の話など

今日、愛の妙薬の最終日のチケット取りました。C席。2度目なのでD席でも良かったのですけど、売り切れでした。もう一回しっかり聴いてきます。

ところで、仕事をしながらUSB-DEC用に、家にあるCDを結局、圧縮度がほとんど無い、Appleロスレスという方法で外付けのハードディスクに取り込んでいます。その間、あまり最近聴いてない曲、オペラ、室内楽、ボサノバ、MPBを色々と流しているのですが、オペラでは、「ランスへの旅」やっぱり良いですね。

基本的にはヴェルディおたくですが、オペラブッファというか、喜劇系も好きで、とくにこのランスへの旅と、リヒャルト・ストラウスの「ナクソス島のアドリアネ」はお気に入りです。後者は時々日本でも公演され、僕も2回見ましたが、前者は14人の重唱があったりするので、(今年の正月のNHKのオペラガラでやりました)なかなか世界中どこでも、そんなには公演されません。幸い、2008年にゲルギエフ率いるマリインスキー歌劇場が来日したときに生で見られました。はっきり言ってドタバタです。王様の戴冠式に行く旅人が、ある宿屋で足止めを食って、プールで泳いだり(オーケストラボックスがプールになったりする演出もあります。)、カラオケ大会やったりして、ドタバタしているうちに、戴冠式が行われるランスまで行き着かないで終わってしまうというたわいもない話なのですが、とにかく重唱が多くて、歌い手が良いと、見事に聴き応えがあります。

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公演を待ってもしかたないと思いますので、とても良いDVDをご紹介します。リセウ歌劇場(バルセロナ)で、2001年の録画、だから映像も良いです。演出も音楽も素晴らしい。歌手はホセ・ブロスくらいしか知りませんが、なかなか聴き応えあります。Amazonでまだ新品があって、DVDで¥3,200-です。

有名なのに、歌手や配役に負担がかかるので、あるいはそのどちらでもないけど何故か、なかなか公演してくれないオペラというと、これと、ラクメ(声が出る歌手がいない、こちらも2007年のスロベニア国立の来日でランカトーレで聴きましたが、花の二重唱でとろけてしまいます。それからフランスオペラでは「ユダヤの女」良いアリアがあるのですが、4年に一度くらいオペラ座で公演するくらいじゃないかと思います。それから世界ではやっているのに、日本ではなかなかやってくれないオペラ、ヴェルディにはそういうのたくさんあります。シモン・ボッカネグラ(今度大阪いずみホールでやりますが)、二人のフォスカリ、ルイーザ・ミラーなど。あとベッリーニも夢遊病の女以外はやらないですねー。「ノルマ」は待っていてもしかたないので、ザルツブルグまで聞きにいきます。「清教徒」も。カラスが良く歌っていましたが、あのクラスじゃないとダメなんでしょうか。ドニゼッティもあまりやってくれません。日本ではアンナ・ボレーナくらいか? 連隊の女も録画では随分見ましたが、生では見ていません。 ここらへんは旅先などで見つけたら、是非聴いておこうと思っています。

もう一回見て来ます。愛の妙薬

やはり、新国立の「愛の妙薬」最終日にもう一回見てこようと思います。さっき、切符を取ろうと新国立に電話していたんですが、お話し中で取れませんでした。WEBで取れば良いのですが、電話で取ってカードをAMEX使うと、席のランクに関係なく、シャンパン一杯付くんです。今回は2回目なのでC席でもいいと思ってます。¥7,000の席で¥1,200のシャンパンが付いたらけっこうお得ですよね。

反省したのですが、最近の僕のブログ、どうも上から目線になっていて、良くありませんでした。もう少し謙虚に観劇しなくては。これは、このところ色々と良いパフォーマンスをDVDなんかで見過ぎていることもあると思います。それと、初日はやっぱり良くないですね。だから、最終日にもう一度行こうと思います。ニコラ・キャベルがきっと、もっと良いはずです。ただ、シラクーザは今回はbisはしないとのことでs。(本人に直接聞いたのではないですけど、また聞きで。)

それから、ムーティーのローマ劇場の来年の来日、NBSではなさそうですね。どこが連れてくるのでしょうか?ジャパンアーツ? なんか東京プロムジカのような気がするんですが。。。

話は戻りますが、ネモリーノ、シラクーザの「人知れぬ涙」本当に良かったですけど、去年のラモン・ヴァルガスとどっちが良いか? CDで聞き比べたいですね。テイストが違いますね。

ラモン・ヴァルガスは今、絶好調です。今年の12月のトリノ王立の来日で、ヴェルディの仮面舞踏会の主役リッカルドをやる予定。でも、切符買うのは要注意です。すでに、歌手の変更が二人出ました。そのうち一人は、フェニーチェのオテロで来日し、トリノではレクイエムをやる予定だった、グレゴリー・クンデです。フェニーチェのほうは、WEBでインタビューも流しているし大丈夫でしょう。チケット買ったので、「クンデ変更」の文字を見つけた時には、びっくりしました。

明日は朝一番で新国立に電話です。

ローマ歌劇場を連れてムーティがやってくる

昨年11月12月のローマ歌劇場での、ムーティ指揮、「シモン・ボッカネグラ」は大好評でした。ずっと長いこと、ぱっとしなかったローマ歌劇場ですが、2010年にムーティを音楽監督に迎えてから変わってきました。このシーズンはそれが花咲いた感じです。

ムーティの最後の来日は多分2003年にスカラ座を連れてオテロを振った時、いや、その後2006年にも来ていますね。東京オペラの森でフリットリがレクイエムを歌った時。でも、やはりスカラを連れて来たときが鮮烈に脳に焼き付いています。その後、支配人との確執でスカラを去ることになり、(一部では団員との確執と言われていますが、そうではないようです)その後、色々な劇場で客演してました。小澤とは仲が良くて、ウィーンでも振ったと思います。2010年に、なぜかシカゴ交響楽団とローマ歌劇場の2カ所で音楽監督を務めるようになりましたが、結局ローマに力を入れています。

昨年のシモンは、タイトルロールをジョルジェ・ペテアン, フランチェスコ・メッリ、マリア・アグレスタ、そして、ディミトリ・ベロセルスキというキャスティングだったそうですが、やはり指揮が素晴らしかったとのこと。

この、シモンとナブッコをひっさげて来年2014年、ムーティがローマ歌劇場を連れて日本に来る(?)ようですよ。

今から楽しみ。明日は、それに関係するだろう団体の人とランチして、席取りをお願いしておこうかと。その前に、今年のスカラ座のリゴレットの席取りも大事ですが。。

新国立が不振にあえぐ中、新国立の3倍はらっても、良い演目に数を減らしても行こうと思います。

新国立「愛の妙薬」 by シラクーザ & アザーズの続き

おとといの「愛の妙薬」鑑賞後から、どうも気分が晴れません。だって、昨年の新国立は良かったんです。「ローエングリン」、「ドン・ジョヴァンニ」、「アイーダのコンサート形式」、僕は趣味ではなかったけど「ピーター・グライムス」、「夢遊病の女」は藤原だったかな? とにかく、レベルの高い公演が続いていたのに、12月のセヴィリアから、急に二流化。どうも納得がいきません。特に、指揮のジュリアン・サレムクール、いくら「バレンボイムの秘蔵っ子」というハンディキャップを負っていても(これは新国の広報に対する皮肉です。)、あれほどひどい指揮者とは考えにくいです。公式特設サイトを開くと、切れの良い序曲が聞こえてくるのですが、これは他の人の指揮なんでしょうか?

歌手にしても、キャベルは多分後半もあのままだろうけど、初日ほとんどボロボロだった成田 博之あたりは、シラクーザとの2重唱あたりからは、やや良くなってきていたので、(テニスと同じで、うまい人と歌うと調子が出るんですよね)、もう一度、最終日あたりに聞いてこようかと思います。危険な賭かもしれませんけど。

新国立「愛の妙薬」 by シラクーザ & アザーズ

愛の妙薬、初日に行ってきました。まずキャストを書いておきましょう。

指揮:ジュリアン・サレムクール
演出:チェーザレ・リエヴィ
ネモリーノ:アントニーノ・シラグーザ
アディーナ:ニコル・キャベル
ドゥルカマーラ:レナート・ジローラミ
ベルコーレ:成田 博之
ジャンネッタ:九嶋 香奈枝

今日は、シラクーザのリサイタルに行ったと思えば納得がいく、そんな夜でした。彼は偉いと思います。カサロヴァとのチェネレントラの時もそう思ったけれど、相方が全く合わせてくれなくても、レベルが違っても、自分で自分を盛り上げてそれなりのベストを尽くしてくれる。何より、今日のようなキャスティングでも日本に来てくれる。去年はラモン・ヴァルガスで聞いた(ウィーンにて)ネモリーノ、これは、なんとなくパヴァロッティの流れを汲む感じがしました。とても良かったのはその時のブログに書いたとおり。で、今日のシラクーザのネモリーノは、よりドニゼッティ自身が描いた当時のイメージに近いと思います。あくまでも軽く、澄んだ声。力まずに歌いこなしているという感じ。ベルカントすぎないベルカント。この役でデビューしたんですから、慣れたものでしょう。「人知れぬ涙」は、期待通り素晴らしかったです。ビスをお願いするつもりで、一所懸命ブラボーと拍手してたら、一瞬指揮者と目配せしてはしましたが、残念ながら2度目は無し。彼はよくやってくれるんですけどね。今日は、彼としてはベストのベストではなかったのかもしれません。それでも、タイトルに書いたように、完全にシラクーザ & アザーズでした。このアザーズがちょっとひどすぎました。この前のセヴィリアから、新国立にはがっかりさせられます。まず、指揮がひどい。まあ、新国立の公式ブログに、「バレンボイムの秘蔵っ子 指揮:ジュリアン・サレムクール」と堂々と書くのが、ドニゼッティのオペラの宣伝としては、考えられないでしょう。素人相手の公演じゃないんだから。維持会員だってたくさんいる。新国立の横の薬局のおばさんだって、維持会員で、オペラ詳しいですよ。そういう人達は、バレンボイムはフルトヴェングラーの教えを受けて、今やワーグナーの大家の指揮者であることは当然知っているわけで、そのバレンボイムの秘蔵っ子がドニゼッティ振りますなんて、宣伝するのは、「不得意な演目にも挑戦する指揮者!」と書いてあるのと同じで、観客を馬鹿にしていますよね。実際、こんなにドロドロした愛の妙薬の序曲は聴いたことがありません。本気で「これは、もしかして古楽的な解釈なのかも」と思って聞いていました。で、アディーナが歌い出したら、オケが全然歌に付いていけない。いきなり、「あ、古楽でも何でもなく、指揮が下手なんだ。」と納得。そして、ドニゼッティらしい、楽しさ、テンポ感が最後まで全く無し。一幕目に遅かったせいか、今度は、二幕目の初め、ベルコーレの歌い出しをすっぽかして、どんどん先に行ってしまう。連れもあきれていました。初日ということもあるのでしょうが、公式サイトで、「リハーサル順調に進行中」などと期待を持たせて、この出来は、どういうことでしょう。

そして、アディーナのニコラ・キャベル。期待していたのですが、見事に裏切られました。モゴモゴと腹話術みたいな歌い方で、イタリア語にも何語にも聞こえない。ベルカントはほど遠く、あえて言えばロシア出身の歌手がプッチーニを歌っている感じ。まあ、キャリアを見ても、ドニゼッティではないですよね。2011年のドン・ジョヴァンニでドンナ・アンナで聞いているはずですが、あまりイメージがないんです。こんなに下手だったかなぁ。

セヴィリアのイェニスもミスキャストでしたが、彼は多分プッチーニとかベリズモ系を歌わせたら、うまいと思います。そして、ロジーナ役のロクサーナ・コンスタンティネスクも、これから伸びると思わせる希望がありました。しかし、今日のキャベルは、ミスキャストプラス、下手でした。伸びしろも感じられず........

救われたのは、ドゥルカマーラ役のバリトン、レナート・ジローラミが良かったこと。こっちはあまり期待してなかったのですが、望外に良かったです。表現力のある歌と演技もできる。

それにしても、やはり、指揮もできない音楽監督がモチベーションを失う(もうやめるし、多忙だそうです)と、劇場もこんなになっちゃうんですね。シラクーザが出てない場面は、シチリアの場末の田舎劇場(どこだ?)の雰囲気で、それなりに味がありましたが。

今なら、アディーナを歌える若手はけっこういると思います。日本人なら藤原歌劇ですが、高橋薫子とか、去年ウィーンに出ていたアドリアーナ・クチェロヴァとか。

演出も、かなり不満でしたが、あまりにもネガティブなブログになるので、今日はシラクーザの素敵な声だけ頭の中で響かせて眠るとします。

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