プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

新国立「アイーダ」

新国立の金看板、ゼッフェレリの「アイーダ」5年ぶりの公演です。最終日を見ました。

これは、やはり新国立劇場の宝ですね。劇場の開場記念に数億とも言われるフィーを払ってゼッフェレリにこの劇場用に作らせたプロダクション。メトロポリタンやスカラ座の演出にも負けません。ステージ狭しと広がる大仕掛けな舞台装置、豪華な衣装、延べ300名の凱旋行進、2頭登場する馬、アイーダトランペットをステージ上で演奏するなどの新国立ならではのアイデア、世界的にもレベルの高い新国立バレエ団の素晴らしい”巫女たちの舞”、と思ったのですが、実は新国立のダンサーではないんですね。そして第4幕での完全な二重舞台、ステージすべてが王宮と地下牢の2段となり、幕と一緒に地下牢が上がって来るスペクタクル!これができるのは、世界でも限られた数の歌劇場しかないとのことです。

まさしく、グランドオペラの中のグランドオペラ、新国立劇場にとっては、公演すればするほど赤字になるそうですが、見るものはオペラの魅力を堪能できます。

で、この日のアイーダ、指揮が始まったとたん、「おやっ?」。非常にゆっくりなテンポ、そして楽器がバラバラになって音を出してくる感じが非常に不思議。不協和音とまでは言いませんが、アイーダの序曲の魅力である一筋の光になってくるような清冽感がありません。この感じは指揮者の結局最後まで続きました。微妙な、でもたしかにわかるテンポダウンや、ゆらぎが結局ドイツ的なのです。で、なんかゆるい。まあ、指揮者のミヒャエル・ギュットラー、ドイツ人でもっぱらワーグナーを指揮している若手ですから、そう期待はしていませんでしたが、それにしてもどうしてそういう人をヴェルディのオペラの指揮に持ってきたのでしょう?スカラ座にバレンボイムが来たように、ワーグナー派の指揮者にヴェルディを振らせるのが世界的な流行なんでしょうかね。

イタリアにも日本に呼べそうな若い指揮者はいますし、日本でも2月に"仮面舞踏会”で実にイタリアンなテンポ感のある指揮をした柴田真郁のような有望な若手がいるのですから、そう言う人をピックアップしても良いと思います。

やはり、アイーダの指揮には、テンポ感、緊張感が欲しい。引き締まった指揮。この日のギュットラーにはそれがありませんでした。

歌手では、まずタイトルロールのラトニア・ムーア、期待していたのですが、残念ながら、前回の公演のノルマ・ファンティーニから見てもだいぶ格下でした。とにかく声量はありますが、表現力、気品に欠けます。エチオピアの王女の声ではありません。それでも、最終日は声もだいぶ抑えていたとのことですが、一人大声を上げていたという感じです。ただ、まだ若いのでこれから伸びる可能性は充分にあると思いました。まだヴェルディについての理解も乏しいような気がします。ヴェルディを良く知っていたら、ああいう歌い方はしないと思います。そしてラメダスのカルロ・ヴェントレも、ちょっといただけませんでした。高音に艶も甘さもなく、くぐもった声を張り上げるという感じ。バリトンかと思ったほどです。張り上げてはいるのですが、声が届かない。三重唱では、彼の声だけ合唱の中に消えてしまうのです。こちらは、今後の可能性は無さそうな感じ........

素晴らしかったのは、アモナズロの堀内康雄、もう格が違います。声の質も表現力も。2007年の公演の同役でも素晴らしかったですが、長いヨーロッパでの生活で、ますます磨きがかかった感じです。第三幕目のアイーダとの二重唱から、怒りに変わるあたり、本当に息を止めて聞き入ってしまいました。この日の歌手で最高だったと思います。それだけに、彼が去ったあとの三幕目のアイーダとラダメスのやりとりは実に退屈でした。最後の地下牢の場面で、ようやく少し役に入りこんで感情表現が出来ていた感じです。

アムネリスのマリアンネ・コルネッティは良かったと思います。まず気品がありました。第4幕の朗唱も想いがこもっているのが伝わってくる熱唱。中低音がちょっと地声ぽくナマに聞こえましたが、アイーダ、ラダメスの二人に比べ、自分の声を上手にコントロールをして、アムネリスを充分理解して唄っているように聞こえました。

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そして、ランフィスの妻屋秀和にはブラヴォ!! ずいぶんとシェイプアップしてスマートになられましたが、声も切れが増していました。エジプト王の平野和、1幕目の出だしの難しい低音が、やや不安定だった気がしますが、メロディーに乗ってきてからはとても良かった。前回のエジプト王の斉木健詞のようなモゴモゴ感(ファンの方には失礼)がなく、気持ち良く聴けました。

伝令が樋口達哉というのも、ずいぶんと贅沢な配役。彼はラダメスのカヴァーに入っていましたから、そっちでやってくれたほうが良かったかも、と思いました。

合唱は、いつもながら素晴らしく新国立ならではの魅力がありました。またバレエも振り付けもダンサーの技量も光っていましたが、ダンサーは多分東京シティバレエ団。

この日は、加藤浩子先生と先生の講座の出席者の方たちと観劇後に会食をしましたが、そこに平野和さんが登場、拍手喝采でした。フォルクスオーパーの専属歌手の平野さん、この公演のために家族と一緒にウィーンから来日していて、翌日帰国という忙しいところに顔を出してくれたのですが、非常に感じが良く、また話しもおもしろい好青年で、これは会った人はファンになってしまいますね。まだ35歳ということですから、これからが楽しみです。

新国立のアイーダ、やはり見に行って良かったとは思いますが、イタリアオペラのイタリアオペラらしさが、新国立の公演でも、このところちょっと失われて来ているような気がします。先日のブログに書いた、ムーティのローマでのナブッコのbisの時の言葉が胸に響きます。
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アイーダ見に行きます。

明日はアイーダの最終日に行ってきます。いつも、前もって他の人のブログなどは読まないようにしているのですが、最終日ともなると色々耳に入ってきてしまいます。どうも評判は今ひとつのようで。まあ、堀内康雄さんのアモナズロ、FBでぶらぼうの城間編集長がコメントしていたアムネリスのマリアンネ・コルネッティ、そしてランフィスの妻屋秀和さんが良ければなんとかなるでしょう。あと、指揮者ですね。ミヒャエル・ギュットラーって新国でフィガロ振ったんですよね。行かなかったからなぁ。でも、指揮者はイタリア人がいいんですけどね。

アイーダは、一度ヴェローナのアリーナで見たいものです。ここは毎年のようにアイーダをやりますが、その規模感たるやすごいものです。(DVDで見ただけですが)ただ、2万人も集まるこの会場への行き来、トイレの心配、昼間の暑さ(公演は夜ですが)などを考えると、毎年どうも行く気がなくなってしまうのです。

ま、とにかく明日楽しみですね。

椿姫 at 神奈川県民ホール

今年は4回も聞く予定の椿姫、その1回目が今日の二期会、神奈川県実ホール、びわ湖ホール共同プロダクションです。

今日は、指揮者が二人いた感じでした。一人はもちろん、びわ湖の音楽監督の沼尻さん、そしてもう一人はタイトルロールの安藤赴美子さんです。

今日の歌手、皆張り切っていたのは良いのですが、力が入りすぎて歌いはじめでテンポを狂わしたり、声が上ずったりするところがあったのですが、その中で落ち着いて歌っていたのが安藤さん、この人とからんで歌うことで、皆序々に安定して行きました。

安藤赴美子さん、前回も何年か前にトラヴィアータで聴いたのですが、その時よりずっとゴージャスで余裕のある声になっていて本当に感動しました。ただ、1幕目はやや声が出ずらい感じがあったようで、フィナーレのところも本来高音で終わることろを1オクターブ下げて終えていました。しかし、2幕目は素晴らしいできでした。ちょっと震えが来るくらい。日本人離れしていると言ったら、日本人の他の歌手に悪いですが、ボリュームのある声、力強い高音、表情豊かな中音で、完全に魅了されました。また、姿も美しいんですよね。タイトスカートのスーツのヴィオレッタというのは初めてでしたが、本当に素敵でした。3幕目、安藤さんはピアニシモで聞かせるタイプではないので、割と元気なヴィオレッタでしたが、やはり輝かしい高音うっとりしました。ソプラノでこれほど満足するのは久しぶりでした。

上江隼人さんも最初ちょっと力が入り気味でしたが、安藤さんにコントロールされるような感じで安定し、2幕目の二人のやりとりは素晴らしいものがありました。残念だったのは、1幕2場の”プロヴァンスの海と土”の後のの、カバレッタ(?)が省略されていたこと。あれ、好きなんですよ。お父さんが息子をはたいてしまって、それからオロオロしてなだめるところが人間味あふれていて。

不調だったのは、ブラジル出身のテノール、ポルターリです。声質は良いものがあると思うのですが、一幕目は完全に上がっていたのか、歌い出しがやたらに強くなってしまって全く安定せず。2幕目はその傾向は良くなったものの、オケを置いてきぼりにしてパリに行ってしまいました。そして、3幕目はほとんどの曲の出だしの音程が、1/4音くらい外れていました。今日に限っては、ポルターリさん残念ですがハラハラしていて安心して聴けませんでした。

一方で、フローラの谷口睦美(ぜいたくな配役です)、ガストン子爵の大槻孝志、ドビニー公爵の鹿野由之らの脇役がとても良かった。これで、1幕目、2幕目の最初が締まりました。このキャストがこんなに高いレベルにはそろうのは珍しいのではないでしょうか。

そして演出ですが、これは微妙なところで、制作意図はわかるのですが、1幕目は複雑な動きがあるのに、2幕目は後半ほとんど全員直立不動で唄うなど、ちょっと理解に苦しむところがありました。

序曲は、非常にスローで、僕の好きな感じでしたが、沼尻竜典さんの指揮はところどころ曲の終わりを伸ばすところがあり(特に1幕2場)、「おっとっと..」と,前にのめりそうな感じが若干ありました。(イタリアオペラの"インテンポ”感に欠けるところがあったんですね。)でも弦の音などは、とても良く引き出していて、聴いていて違和感があるようなことはありませんでした。

ともあれ、今日は、久しぶりに1階12列目の真ん中という良い席で聞いたので、オペラグラス無しで楽しめました。

最後に、びっくりしたのは、無料で配られたプログラムの解説が充実していること!椿姫でこんな素晴らしい資料は、優良でも入手したことがありません。加藤浩子さんを初め、東条碩夫さん、小畑恒夫さん。岡田暁生さん、岸純信さんと、そうそうたる先生方が力のはいった解説を寄稿されていて、休憩時間では読み切れないほど。カラー写真などはありませんが、内容はものすごい充実です。こういうプログラムを無料で配布するというところに、主催者の意気込みを感じました。2,000円も払ってアイドル写真集みたいなプログラムもありますからねー。

この週末もオペラ漬けでした。今日は21時から、METのカルメンをWOWWOWでやります。ガランチャ、アラーニャ、フリットリ!! これも見なくては!

ムーティの言葉

ムーティに率いられたローマ歌劇場の評判がとみに高くなっています。昨年のシモン・ボッカネグラは大変な評判でした。スカラ座のバレンボイムの評判とは全く逆です。

ムーティを生で聴いたのは、スカラ座と来日したときのオテロとレクイエムですが、それはすごい体験でした。

http://www.youtube.com/watch?v=gaXE0v0bJoE

これは、2011年のローマ歌劇場でのムーティのナブッコの Va Pensieiro 「行け我が想いよ、黄金の翼に乗って」のムービーです。ここでは、bisがかかって、会場アンコールになります。2回目の演奏では、客席の聴衆が全員立って一緒に唄っています。ムーティは途中から後ろを向いて指揮をします。これは感動的。曲が終わると、嵐のような拍手。そして、ステージ上の合唱団のメンバーも涙を拭いて抱き合っています。

ムーティがbisを受けるときに、客席に向かって3-4分話しをするのですが、僕のイタリア語能力では、最後のほうに「皆で一緒に唄いましょう」というところしかわからない。あとは時々出てくる「Viva Italia」。そこで、僕のイタリア語の先生、サラ・グランデさんに訳してもらいました。彼女曰く「これは難しいイタリア語よ。ポエティックな独特の言い方をしている。美しいイタリア語」とのこと。そして内容は、「この Va Pensieiroはオーストリアからイタリアが独立統一するシンボルになった歌と言われていますが、今イタリアは、文化に対する予算の不足から再びバラバラになろうとしている。あの時のリソルジメントのように、私たちがイタリアの文化をリソルジ(再生)させなければいけない。Viva Italia、そのためのこの歌です。この歌をイタリアの文化の墓場にしてはいけない。皆さん歌いましょう。」と言っているのだそうです。

いやぁ、ムーティ、かっこいい。もう感動ですね。You Tube見て初めて涙しました。Mutiの指揮でヌッチがヤーゴのオテロ見ましたが、このコンビでナブッコもシモンもフォスカリも見たいです。

うわさでは来年来日するとか言うのですが、まだその詳細がわかりません。是非来て欲しい。

リゴレット by ライブビューイング

METライブビューイング「リゴレット」の最終日に行ってきました。

僕は、あまりライブビューイングが好きではなく、それならDVDでも一枚買おうという方なんですが、このリゴレットだけは、予告編を見た時から絶対見に行こうと思っていました。なにしろ、舞台を60年代のラスベガスに置き換えたと言うんですから興味津々。

これは、間違いなく大好きな演出です。マントヴァ公を公爵の意味する"デューク”という名前に置き換えて、フランク・シナトラとその取り巻き(ディーン・マーチンとかサミー・デイヴィスJr.など、通称ラット・パック)になぞらえて、リゴレットは彼らの中で道化役者という設定も自然。

正直、今回のプロダクションでのストーリーの流れはあまりにも自然で、今まで見たクラシック版のリゴレットよりも、歌にも動きにも必然性が感じられたくらいです。演出のマイケル・メイヤーの実力はすごい。

たとえば、ジルダが家から3ヶ月も外に出られない設定も、ラスベガスなら「さもありなん」という感じ。実際、21歳未満はカジノには入れないのですから、今でも旅行でラスベガスに家族で行くと、子供達だけは部屋にいるか、映画館に行くかと別の世界にいなくてはいけないのです。

そして、スパラフチーレが殺したジルダをキャディラックのトランクに投げ込むと言うのも、実に迫真の演出。袋に入れてその中身を見ないというより、よっぽど現実味があります。

ただ、モンテローネがアラブの金持という設定はまだ許せても、周りの取り巻きがモンテローネのかぶり物を笑いものにするシーンは、人種差別的な問題があるのでは。こういうところはアメリカ人は無頓着というか、洗練されていませんね。まあ、METのスポンサーの多くがユダヤ系であるので、問題にはならないのでしょうが。

歌手では、ジルダ役のダムラウが素晴らしかったです。さすがダムラウという感じ。この役を得意にしていたグルヴェローバの再来(まだ現役だから再来ではないですね)という感じ。清らかな高音までスーッと出て、表現力も素晴らしい。それにしても、ミイラの棺桶やキャディラックのトランクに詰め込まれて大丈夫だったんでしょうか?僕なんか閉所恐怖症ですから、気が狂ってしまいます。

デューク役のピョートル・ベチャワも良く頑張っていました。役作りを相当勉強したと思います。お気楽なプレイボーイ役をうまくこなしていましたが、マフィアのボスというにはお坊ちゃん過ぎるか? どうもこの人を見ていたら、ジュゼッペ・ステファノを思い出しました。声の感じ、見てくれも良く似ているんです。つまり、高音が明るくないので、ややこの役にはどうか....という感じは持ちました。しかし、これはパヴァロッティ・コンプレックスですね。ああいうマントヴァ公はもう出ないでしょうから。

残念だったのは、タイトルロールのルチッチ、僕の好みもあるとは思いますが、歌い方がやや単調で、「悪魔め、鬼め」という気迫と、自身もマフィアの一員という”悪さ”みたいなものが感じられないのです。声は、鼻でくぐもるような感じで、ヴェルディバリトンではないなぁと思いました。ここはレオ・ヌッチが一番ぴったりなんでしょうが、なかなか今はヴェルディを歌うバリトンが不足しているようです。

良かったのは、スパラフチーレのコーツァン。こちらは鼻が通ったくぐもらない素晴らしいバス。体は細いので演技も殺し屋らしく、脇をきちんと固めていました。

マリオッティの指揮、やや軽い感じはしましたが、とても良かったと思います。これは、やはり生で聴きたかった。

それにしても、このように大画面でアップになってしまうと、どうしてもビジュアル系の歌手でないと持ちません。往年のサザーランドなどのような歌手は出幕がなくなりそうです。

METのライブビューイングはインタビューも楽しみのひとつ。まあ、舞台裏が観劇途中で見えてしまうので、オペラにのめり込めない原因にはなるのですけどね。フレミングのインタビュアーは、もう堂に入ったもので、CNNのキャスターもできそう。その中で、ダムラウに役作りの秘訣を尋ねた時、「I trust on Verdi(ヴェルディを信じているの)」と答えたのが印象的で素敵でした。

最後に、一番違和感のあったのは、指揮者以外にイタリア人が一人もいないこと、ヴェルディのオペラで、しかもイタリアンマフィアをモチーフにしているのに、タイトルロールもどう見てもロシアのマフィア。僕は、イタリアマフィアのドラマ(ソプラノズなど)や映画を多く見ているので、これだけ顔のアップが多いと、やはりアル・パチーノみたいな顔が欲しくなります。やっぱりヌッチですよね。

その意味では、次回上映のパルジファルは違和感の無い配役で、これも見たくなりました。

新刊発刊

今月あたまに、新刊「知財戦略の教科書」(秀和システム刊)が発刊になりました。僕は、"部分執筆”という形で、この中の「知的財産権のライセンシング」という章9頁を執筆しました。ここで、オペラと著作権の確立の関係について書きました。これはおそらく、はじめての発表ではと思います。

東京理科大学大学院 知的財産 戦略専攻科の教授、講師陣で書き上げています。

今日は宣伝でした。AA300_.jpg

http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/3707.html

ワーグナー協会に入りました。

自分でも「えーっ!」とう言う感じなんですが、このたび日本ワーグナー協会に入会しました。ブログのタイトルからして、ワーグナー協会はそぐわないんですが、この前「ヴェルディ、ワーグナー生誕200周年記念」の対談で、加藤浩子、山崎太郎、両先生の対談を聴いた時、最後に司会者から「この中でヴェルディ協会、ワーグナー協会の両方に入られている方いらっしゃいますか?」と言う質問が出て、数は少ないながら、そういう方がいらっしゃることを知りました。

それで、単純に入会したということではなく、僕としては、ワーグナーを好きな人が、どのようにワーグナーを理解し、愛好しているのかを知りたいという思いがあるんです。ヴェルディの場合、僕がはまったのは、音楽だけでなく、ヴェルディの人間性、創作された時の状況、ヴェルディの妻達や周りの人々の人間模様、作品の裏側に秘められた、そんなものまですべてが好きになったのです。ヴェルディは気むずかしいが、本質的には優しく平和を愛する人だった。でもそんなステレオタイプではなく、周りの人と確執だらけの人だったんです。2番目の妻ジュゼッピーナ・ストレッポーニ、愛人テレーザ・シュトルツ、そしてヴェルディの恩人とも言えるスカラ座支配人のメレッリ、ピアーヴェ、カンマラーノ、スクリーブなどの脚本家、そしてアリーゴ・ボイトとの関係、それを演出したリコルディなどなど。ひもとけば、色々な人間ドラマが出てきてそれはおもしろい。彼が尊敬して、いつも本を持っていた、「幼なじみ」の作者マンゾーニ。ヴェルディは彼を追悼するためにあのレクイエムを書いたのです。そして、残した「最高傑作」、音楽家の憩いの家。

ヴェルディの作品と人生を調べて、飽きることはありません。ヴェルディ協会に入って、多くの会員の方々がこのようなヴェルディに魅了されて、論文とも言うべき貴重な投稿を機関誌にされていることを知りました。

ワーグナーの場合、僕はトリスタンとイゾルデ、そしてリングが最も好きですが、その他の作品も大好きです。今年はシモーネ・ヤング指揮でフォークトが歌う、マイスタージンガーをハンブルグで5月に聴きます。しかし、ワーグナーの人間性や、作品の裏側にあるものは、とても不勉強で良くわかっていません。

ワーグナー協会に入れば、そのようなことが少しでもわかるのではないかと思って、入会したようなわけです。

ところで、マイスタージンガーで、一番記憶に残る場面は、夜警が時を告げるところですね。あの声を聞くと、ながーいマイスタージンガーの公演の中で、はっと我に返って時計を見てしまいます。

僕は、長年(オペラよりずーっと長く)、ボサノバのファンですが、ボサノバを知るにはジャズとサンバを知らなくてはなりません。ボサノバは1958年に”シェガ・デ・サウダージ”という曲が最初に出来て誕生した音楽ジャンルですが、それを作ったのはリオデジャネイロの「フランク・シナトラ愛好会」の人々、つまりA.C.ジョビン、ジョアン・ジルベルト達だったんです。

先日の山崎太郎さんのお話しからもわかりましたが、ヴェルディの後半のオペラには、ワーグナーが影響を与えています。それが実際どういうものなのか?、それをもっと知りたい、それはつまりもっとヴェルディを理解したいということなんです。

ということで、今日からヴェルディ協会とワーグナー協会の会員です。なんか巨人と阪神の両方のファンになったような気分もしますが。

今年の観劇プラン(続き)

2013年、ここまでまだ5公演しか観劇がありません。ちょっと寂しいです。でも、これから忙しくなりそうです。3月は安藤赴美子のトラヴィアータ、僕は彼女は日本では最もヴィオレッタに合うソプラノだなぁと思っています。ただ、二期会なので、あまり凝った演出しないでくれるといいなぁと願っています。そして30日は新国立のアイーダ。これはとにかく楽しいでしょう。また、堀内康雄のアモナズロは前回の時も、ものすごく良かったです。初登場のアイーダ役、ラトニア・ムーアも楽しみです。そしてこの日は、加藤浩子先生とオペラの会の皆さんと、観劇の後に食事。ワクワクするなぁ。

それから、4月はフェニーチェ歌劇場のオテロ。チョン・ミョンフン指揮も楽しみですが、何と言ってもグレゴリー・クンデのタイトルロールが聴きたい!YouTubeなどでロッシーニ唄っているのを聴きましたが、どちらかというとベルカントなんですね。この人が、どのようにオテロを唄うのか楽しみです。昔は、ロッシーニからマイアベーア、そしてヴェルディと声を熟成させてロマン派を歌ってくる歌手は多かったそうで、この人もそのパターンのようです。ヤーゴのルーチョ・ガッロもいいですね。この公演の前に、加藤浩子先生の、この公演の勉強会に出ます。
http://www.asahiculture.com/LES/detail.asp?CNO=197069&userflg=0

5月はひとつ失敗しました。ザルツブルグとハンブルグ行きと、新国のナブッコがスケジュール的にダブってしまい、ナブッコあきらめました。新演出で、これもガッロ、うーん残念。しかし、バルトリのノルマをザルツブルグで聴くのでガマンです。チケットは譲ってしまいました。

6月は大阪いずみホールのシモン・ボッカネグラ。ついにやってくれたという感じです。それも堀内康雄タイトルロールなのですごく期待しています。いずみホールのメンバーにもなってしまいました。そして、その1週間前の6月15日には、ハンガリー歌劇団のトラヴィアータ。エヴァ・メイです。エヴァ・メイのヴィオレッタは、デッセイと並んで僕の大好きなヴィオレッタなので、これも行かずにはいられずチケット取りました。が、そのために、間に挟まった仕事のラスベガスでのインターナショナル・ライセンシング・エキスポに行けなくなりました。これもやむをえないとしましょう。せっかく色々な仕事を去年で減らしたので、オペラを優先せねば。

7月にシラクーザのリサイタルのチケット取りました。この人のリサイタルに裏切られたことはありません。ついでに同じ東京プロムジカ主催のマリエッラ・デヴィーアのリサイタルも9月にゲットしました。

それで、これから先はチケット取るのもこれからなんですが、何と言っても目玉はスカラ座の来日。とりあえずリゴレットはベストシートで9月11日のマチネで取ります。ヌッチはシモンとジェルモンを生で良い席で聴きました。あとは、このリゴレットとフォスカリを聴きたいです。ヌッチ、歳も歳ですから早く聴いておかなくては。そして、ハーディング指揮、カーセン演出のファルスタッフも行きたいです。ただ、うちの場合、家内も行きますから両方ともベストシートを取ると25万円もかかかってしまいます。ファルスタッフは安めのシートにしなくては。

9月は藤原のトラヴィアータがあります。これはデヴィーアのタイトルロールの公演はもちろん、新人の佐藤亜紀子のも行こうと思います。藤原は良質なオペラをリーズナブルな価格で提供してくれます。デヴィーアが歌ってS席で\20,000-なんて、イタリアでもありませんよ。

あとは、逃せないのは12月のトリノ王立、なにせ王立劇場ですから、ちょっと他の劇場とは違います。(劇場の誇りが違うんだそうです。)ノセダは僕の好きな指揮者です。これはもうチケット発売中です。フリットリのトスカもすごく魅力的ですが、ここはやはり仮面舞踏会を押さえました。ヴァルガスのリッカルドは聞き応えあると思うんです。

だいたい、このくらいは押さえなければいけないチケットだと思っています。しかし、今年はチケット代高くつきますねー。ザルツブルグのチケットも一人400ユーロですし、オペラ貧乏になりそうです。

10,11月は、まだ予定入れていません。めぼしい公演が無いのと、10月にロンドンに仕事で行くかもしれないので、そのスケジュールと調節が必要なんです。ロンドンに行ったら、行きか帰りにやっぱりオペラですね。できれば、パルマのフェスティバルに引っかけたいんですが、そううまく行くかどうか。あとは、METとパリオペラ座のライブビューイングがあるので、これに行きましょう。本来、映画館でオペラ見るの、あまり好きじゃ無いんですが、なにしろ安いですし、インタビューなんかのおまけもありますから。3月のMETのリゴレットは、舞台が現代のラスベガスのカジノになっていて賛否両論ですが、見逃せないですね。

実は昨年の12月に友人が、駅で倒れて急死しました。56歳、現役の広告マンでした。僕の高校の後輩でもあり、逗子に住んでいたので、亡くなる6日前にも一緒に食事をしたばかりでした。これがかなりショックで、しばらく尾を引いています。僕も長いことC型肝炎を持っていて、今も週に3回強力ミノファーゲンという注射を打って、健康体を維持しています。でもいつ何が起こるかわからないし、仕事も大事だけど好きなことを優先しようと思う、今日この頃です。今年の7月には60歳。会社勤めなら定年ですものね。

とめどもなく書いたブログになりました。今日はこのへんで。



ヴェルディ&ワーグナー対談 at 新国立

なんて楽しい対談だったんだろう。至福の90分でしたね。今日の加藤浩子さんと山崎太郎さんのヴェルディ、ワーグナー対談。生誕200周年を記念してのヴェルディ協会、ワーグナー協会の共催の企画でしたが、ヴェルディ対ワーグナーというような構図ではなく、両氏がヴェルディのワーグナーも知り尽くした上で、二人の音楽家の人間と音楽の共通性と相違を語りあったのでした。知識の豊富さ、奥深さはもちろんなのですが、何より、二人には音楽家への敬愛の念.....というと一般的すぎますね、「愛」ですね、これがほとばしり出ているんです。だから、聞いていて楽しい、心がワクワクして来ます。

加藤さんと山崎さんの好きなヴェルディ作品が期せずして「シモン・ボッカネグラ」に一致したのにも、とても嬉しそうでした。いや、僕も興奮しました。このブログで何度も何度も書いているように、僕もシモンが一番好きなヴェルディの作品ですから。加藤さんが、新国立劇場の担当者に「新国さんでは、一度もやってくれませんけど」と笑いながらチクリと入れていたのが痛快でした。そして、山崎さんの好きなワーグナー作品は「ニュールンベルグのマイスタージンガー」、加藤さんは「トリスタンとイゾルデ」。バイロイトで、トリスタンをやると、お客の中で倒れる人が出るそうです。その人を観客が手渡しで通路まで送り届けるという山崎さんの話もおもしろかったですね。実際、僕もトリスタンがワーグナー作品の中で最も好き(特にポネル演出の)ですが、バレンボイムが2007年にベルリン歌劇場を連れてきてやったトリスタンでも、救急車が来ていました。指揮者のカイベルトもトリスタンの指揮中に死にたいと言って、実際、その通りに死んでしまいました。トリスタンを聞くのは命がけだといつも思います。

超現実家のヴェルディと超夢想家のワーグナー、女性に対して保守的に制したヴェルディと女性に振り回されて救済を求めたワーグナー。ですけど、人間のドラマを描いたところは、新世代(19世紀の)のオペラ作家としては、革新的なものでした。

新国立のホワイエで行われた、この対談、20人が定員と言われていましたが、50人は来ていたと思います。二人のレクチャラーは90分の制限がなければ、何時間でも楽しく話していそうでした。IMG_0078.jpg
実に、豊かな土曜日の昼になりました。二人の先生にお礼申し上げます。

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