プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

イタリアで出逢った日本の「おもてなし」

今回のイタリア旅行は、ちょっといつもとは違ったアレンジメントをしました。

ひとつは、初めて旅行社のツァーを利用したこと。いつもは、オペラに行くにも観光に行くにもツァーは使いません。個人でフライトもホテルもオペラのチケットも手配します。どうしてもオペラのチケットが手配できなかったことが一度(スカラ座で)ありまして、この時は旅行代理店を使いましたが、その公演を見に行くツァーは敢えて避けて、個人旅行を組んで貰いました。

ツァーには、過去に一度苦い経験があり、クリスマス時期に急にバケーションが取れることになった時にホテルもフライトも取れなかったので、仕方なく家族でオーストラリアへのツァーを利用したのが良くなかったんです。別に旗を持った添乗員さんの後をついて歩くのは全然良いのですが、現地に着いてから自由行動がなく、すぐにホテルには入れずで、到着後2時間でもう我慢できずに、旅行会社に「一切の事故等の責任を自身で負う」という念書にサインをして、以降帰りのフライトまで自由行動にしてもらいました。ま、すぐにそういう念書が出てくるということは、僕みたいな人はけっこう多いのでしょう。

ですので、今回のツァーにも多大な期待はしていなかったのですが、オペラツァーということでホテルも豪華、食事も豪華ということで、果たしてどんなもんだろうか?という興味はかなり持っていました。結論から言うと、これがなかなか良かったんですよ。催行社のYツァーは音楽関係の旅行に強いということもあって、すべてに渡って非常に手慣れていましたが、かといってマニュアルで流すようなことはなく、個性の強い高齢のお客様一人一人のリクエストに自然体で応じていました。僕はイギリスで仕事をしていたので、パルマからの参加になったのですが、日本から来たツァーの本体一行の方々は、台風のために成田発が10時間近く遅れ、そのためフランクフルトの空港近くのホテルで仮眠を取って翌朝パルマに入るという強行軍になってしまいました。天候のせいとは言え、急なことで色々な手違いもあっただろうし、お客様は相当ストレスが溜まっているだろうと思いつつ到着した方々と昼食を共にしました。実際皆さん、「いや参った、参った」という感じで顔には疲れもにじんでいる中、旅行者の添乗員は「天候のせいとは言え、大変なご迷惑をおかけしました」と挨拶をします。ところが、「いや、あんた良くやってくれたよ。」という声がご老人からかかりました。これが、さいさきの良いスタート。その後も遅れを取り戻すためにスケジュールの変更や短縮が相次いだのですが、添乗員の手際が素晴らしい。そして、同行している音楽評論家の女性(誰だかおわかりですよね)も、バスの中で2時間も立ちっぱなしでDVDやCDでオペラを見せながら、熱の入った解説をしてくれますので、時差呆けで寝る人も見当たらず拍手まで入ります。

そうは言っても、皆さん疲れていますし、中には杖をついていらっしゃる方もいるので、徒歩での移動は遅れる方も出ます。しかし、添乗員はそのような人に目配りはしながら、決して「お荷物持ちましょうか?」とか「お休みされますか?」とは言いません。高齢でこのようなツァーに参加される方の個人の尊厳にリスペクトを払っている姿勢が明らかなのです。ですので、もちろん旗も持ちませんし、「皆さん、ついてきてください。」とか「集まってください。」という掛け声を一度も聞かなかった気がします。

オペラが終わると、出待ちをするという評論家の方が希望する仲間を誘って、歌手と写真を撮ったり、遅くまでバーで音楽談義をしたり、まあ実に楽しそうです。

話せばきりがありませんが、このオペラツァーにはびっくりしました。日本風の至れり尽くせりではないんです。あくまで個人の自由と尊厳を尊重し、心地よく旅行をしてもらうために、サイドや後からアシストするという姿勢。

僕はまだ一人でも夫婦でもツァーに参加しないで海外旅行に行けると思っていますが、70歳、いや80歳すぎた時にどうでしょうか? 今回、このツァーに参加して、「死なない限りはオペラツァーに行けるな」と確信が持てました。すごーい、良い気分で帰国しました。

そして、もうひとつの体験。これは、このツァーに途中参加するためにロンドンからパルマまで個人で移動する際のことです。移動することには全く不安はないのですが、アリタリア航空(まさしく、僕が出張中に2度目の倒産をした)でミラノリナーテ空港についてイタリアのタクシーで中央駅まで行き、イタリアに残るヨーロッパ伝統の低床式ホーム(低床式電車ではない)から、重い荷物を電車に載せて、時間に正確なイタリア国鉄でパルマまで行き、それからまたタクシーで…..、それも夜の10時過ぎに….、と思ったら、けっこう面倒になりました。

で、いつもはアメリカンエクスプレスに相談するのですが、インターネットを見ていたら、日本語でのイタリア内のリムジンサービスのサイトを発見。とりあえず見積依頼のメールを入れたところ、その日のうちに日本語で返事が来ました。値段もとてっもリーズナブルです。早速予約。予約金も10%程度。出発まで2回ほど確認のメールも来ましたが、これも自動送信のメールではなく個人名の日本語で丁寧なメール。でも、肝心のサービスが悪ければしようがないのですが、ミラノの空港では頼んだのよりも立派なメルセデスのSクラスが待っていました。英語をしゃべる運転手も感じ良く、ちょっと天気の話などをしますが、こちらが疲れているのを感じ取って、パルマまでの1時間半はシュアで安全、かつ速いドライブに集中してくれました。ま、当たり前のことなんですけどね。でも、こういうサービス他で頼むと必ず「チップは見積の金額に入っています」とは言っても、別にチップを請求される事が多いんです。もしくは欲しそうなそぶりをする。ま、たいした金額でなければ払いますけどね。この運転手、非常に気に入ったので、(イタリア人はしゃべりすぎて休ませてくれない事が多い)降りる時に現金でチップをエクストラに払おうとしたら、”Buena Notte!”と言ってすぐに去って行きました。スマート! ロンドンで仕事で疲れ切っていたので、空港からホテルまで直行、その間、荷物の心配も、スリの心配もせずに快適に休んで、電車とタクシーを利用したのの2倍ちょっとくらいの料金なら安いと思います。昔、こういう日本人専用のリムジンサービスをバブルの頃に利用したことがありますが、現地のリモよりも高いんです。で、日本人のドライバーなのに、チップをねだられたりして、嫌な思いをしたことがあります。(特にニューヨーク) でも、このリムジン会社のサービスは、とても洗練されていました。後から「いかがでしたか?」というメールも届き、「オペラを見に行ったんですよ」と言うと、「小さい会社で忙しくやっていて、オペラ見に行く暇もなくて。。」と返事がありました。こういう表情が見えるサービス、そしてY社同様に、押しつけがましくないサービスいいですね。ウェブサイト(日本語です)を見ると経営者はローマ出身のイタリア人の方ですが、日本からのリクエストにはすべて日本語で対応です。

Tiber Limo テヴェレ・リモという会社です。今度家内とイタリアに行った時にも是非利用したいと思いました。

まだ、日本人がヨーロッパでやってるレストランとか、同じくオークションを代理で入札して商品を落として送ってくれるサービスとか、日本人がむこうでやっているサービスを、ここ数が月でいくつか利用しましたが、みんな感じが良くて、正確で安心。値段もリーズナブル。押しつけがましくない。日本のおもてなしが、海外で洗練されたスタイルかな、と思います。
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ムーティー、ヴェルディを語る!

昨日のオーチャードホールは、ムーティーの公演ではなくて講演なのに満席。さすが、帝王ムーティーのパワーです。(やっぱりスネイプ先生に似ているなぁと思いましたが)

前から4列目、フリーの学生席、招待席を除くと最前列を家内が取ってくれたおかげで、ムーティの表情まで良く見える。

前半は、彼がどうやって音楽を仕事にするようになったかを幼少の話からしてくれました。バイオリン→ピアノ→指揮と来たんですね。最初の演奏会でリヒテルと共演した時、その打ち合わせにリヒテルに呼ばれた話がおもしろかった。ひたすら指揮者としてオケのパートをピアノで弾かされたとのこと。若き日の想い出を楽しそうに語っていました。

そして、ヴェルディへの思い。以前からインタビューなどで、彼のヴェルディへの熱い想い、特にファルスタッフは「毎晩でも指揮したい」と語っていたのは知っていましたが、本当に熱い!「ヴェルディは、人間として人間に語りかけている。だから、どの国の人でも同じように受け止めることが出来る。」というところは、本当にそうだなぁと思いました。そして、サンターガタのヴェルディの部屋には最後まで開いていた、モーツァルト、ハイドン、ヴェートーベンの楽譜があったことなどの話は、先週そこに行き、それらを見て来ただけに胸に迫るものがありました。

そして、パルマで先週聴いた「群盗」。こういう曲を若い指揮者は最初に振るべきだと感じましたが、彼がフィレンツェで最初に振ったのも「群盗」というのが、なんか納得でした。

そして、後半は30日、31日の演奏会でも歌う安藤赴美子さんと加藤宏隆さんが客席から舞台に上がってトラヴィアータ1幕2場のジェルモンとヴィオレッタが会ってからAdioまでの場面を歌いました。そしてそれからが大変。予定時間を1時間オーバーして、マスタークラス状態。二人の歌手の発音から歌い方までを厳しくチェック。ついには自分でピアノを弾き、一緒に歌いレッスンしました。しかし、そのやり方はジョークを交え、わかりやすく、人間的で、心打たれるものがありました。そしてレッスンするに従って、どんどん場面の緊張感が増していくんです。ムーティーのピアノの一音一音に感情が込められている。

現在の指揮者や演出家への皮肉もシャープでした。そして、自伝の訳やられた田口道子さんの通訳が素晴らしい!まるで、トルシェ監督の通訳のダバディのよう。彼女無くしては昨日の講演は成り立たなかったでしょう。

素晴らしい講演でした。また、考えさせられる講演でもありました。このような講演を企画された日本ヴェルディ協会の執行部の方々(僕も会員ですが)に感謝!

まだまだ書きたいこともありますが、このブログをご覧になっている多くの方々が、実際に講演を聴きにいったのではと思いますので、ここらへんんで。。

昨夜は、フェイスブックはこの話題で沸騰でした。それにしても、お二人の歌手の方にマエストロから歌って欲しいというリクエストがあったのが、当日の朝というのにはびっくり。それも数分という話が1時間に。いや、お疲れさまでした。

先週、ブッセート、ロンコレ、サンターガタ、パルマ、ミラノとヴェルディが過ごした場所を訪れ、そこで彼のオペラを聴いてきたその後のこの講演。また、僕のヴェルディに対する尊敬が深まりました。これからは、もっと理解も深めなければ。。でもマエストロも、完全にヴェルディを理解できるのは神だけだ、と言っていました。

スカラ座は豪華だ! ドン・カルロ

フェスティバル・ヴェルディ第三夜、超豪華キャストのスカラ座「ドン・カルロ」

さて、第三夜、などというとリングみたいですが、いよいよスカラ座にやってきました。久しぶりです。5年前にマゼール指揮、イリーナ・リングのトラヴィアータを見て以来。
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今日のドン・カルロはタイトルロールが僕の大好きなテノール、ファビオ・サルトリです。昨年4月にチューリッヒ歌劇場で、シモンボッカネグラ(レオ・ヌッチ)を見た時に、ガブリエーレ・アドルノ役で素晴らしい歌唱を聴かせてくれて以来ファンにになりました。が、残念なことに全く日本には来たことが無いと思います。

彼の声は、テノールでも高めのほう。実にイタリア的な凝縮感と明るさ、そして柔らかさを持った美声です。フローラスやシラクーザに比べれば、もう少し重いところまで歌えるのでヴェルディにはぴったり。タマーニョってこんな声だったのではと思ったりします。まだ30代後半に見えますが、かなり太っていて(太りつつある)100Kgは軽くありそうな巨体。ヴィジュアル的には全く騒がれないので、日本のオペラファンの間でも名前が出てくることさえ少ないのですが、実力的には今、最高のヴェルディ・テノールで引っ張りだこです。是非、どこか日本で読んで欲しいイタリア歌手第一位ですね。
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今日のキャストはまさに豪華絢爛。フィリポⅡ世にルネ・パーペ。彼は来日の時にもこの役を歌いました。僕は5月にザルツブルグでドイツレクイエムも聴いていますが、いまやバスのオールラウンダーとして”キング“と言える実力と貫禄がありますね。そしてエリザベッタには、マルティナ・セラフィン、エボリ公女にはエカテリーナ・グヴァノヴァという、イタリアやMETで引っ張りだこの二人が歌います。生で聴くのは初めてですが、二人とも表現力が素晴らしい。この演目にはかかせないところです。前日の群盗はヴェルディ初期の作品で、あまり表現力を必要とする声質のオペラではなかったのですが、ドン・カルロとなると、同じ作曲家が書いたとは思えない内容。恋愛、政治、憎しみ、友情、名誉という感情がてんこ盛り。だからこそここ数年、世界のオペラ批評家の間でもヴェルディの作品で、一番人気の作品になっています。この感情の絡みを表現できる歌手がそろわないと、ドンカルロはブラボーになりません。今や観客も作品を良く知っているのです。ただ、個人的に言えばパーペのフィリポは何度も聴いているんで、フルラネットあたりで聴いてみたかったというのも本音。

この日、拍手が一番多かったのは、ポーザ公ロドリーゴを演じた、バリトンのマッシッモ・カヴァレッティ。先月のスカラ座来日のファルスタッフで見事なフォードを演じてくれましたが、この日も大変良かった。ヴェルディ・バリトンとしてはやや低めですが、音程が安定していて美しい声です。ただ、まだヤーゴやシモンを歌うには素直すぎるか? 拍手が多かったのは、彼がここミラノの出身だということもあったそうです。

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指揮はファビオ・ルイージ。今や、スカラとMETでヴェルディを振るといえば彼、という暗い安定した力を持っていると思います。まさにイタリアオペラの指揮者。オケも素晴らしかったのですが、なぜか金管がややもごついたような感じがしましたのが残念。それと、ルイージやガッティも何度か聴いたので、最近の若い指揮者、マリオッティとかバッティストーニで聴いてみたいなぁ、、とこれも贅沢ですね。

ところで、来日の時も感じたのですが、スカラ座合唱団の実力。ただ、きれいにそろっているのではなく、群衆が集まるところは群衆っぽく聞こえるのです。力強さがあります。タンホイザーなどの合唱では新国立は素晴らしいと想いますが、ヴェルディの合唱は、スカラ座のほうが迫ってくるものがあります。

今回のヴェルディ3夜は、エージェントにチケットをお願いしたので、すべてプラティア席という贅沢でした。スカラ座で良いのは、シートの前に字幕があること。これはMetも同じですが、舞台がきれいになりますね。日本でも新国立あたりは最初からこれをやってほしかったです。英語への切替もできますし。

それと、幕間の飲み物と軽食が色々あって、しかも美味しい。これもいいところ。ただ、プログラムは厚いだけで、内容は歌詞と過去の公演の記録が主で、内容に乏しいです。これは新国立などのほうが全然充実していますね。日本のオペラのプログラムは高いものもありますが、総じてレベル高いと思います。

公演が終わった後、ぶらぶら歩いて帰って5分。楽です。季節も良かったので、もう少し遠いホテルでも問題ありませんでしたが、寒い時は大変ですね。

これで、イタリアともアリデベルチです。あー、楽しかった。

「群盗」パルマ・レッジョ歌劇場

ヴェルディの旅2日目「群盗」パルマ・レッジョ歌劇場

さて、今日の劇場は、昨日のブッセートのテアトロ・ヴェルディよりはだいぶ規模も大きく1,000人入れるパルマレッジョ劇場。イタリアの劇場はどこでも、外側は地味で、そこが劇場とは気がつかないくらいですが、中は絢爛豪華です。今日はシーズンの初日プルミエで、スカラ座でも見られないような背中丸出しのロングドレスの女性や、テレビ局のインタビューなどが入っていました。
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この劇場はたしか去年のフェスティバルでは「レニャーノの戦い」を上演したはず。ヴェルディのマイナー作品を良くやってくれるところのようです。「群盗 I Masnadieri」は、ヴェルディ11 作目で、マクベスと同年、ルイーザ・ミレルの2年前の1887年に書かれています。この頃のヴェルディは年に1作以上のオペラを生み出しており、「苦役の時代」と呼ばれています。この「群盗」はヨーロッパでも滅多に上演されることがありません。日本では過去にびわ湖ホールが上演しただけだろうということです。原作はロマン派の代表的な作家シラー、話の流れはなかなか勇ましく刺激的なのですが、Tutto Verdiのブルーレイを見た限りは、音楽ならびに台本も今ひとつ単調、退屈という感じでした。指揮はルイゾッティで、バリトンも今回と同じルチンスキなんですけどね。。

ところが、生で聴いた今日は序曲から気合い充分!なんと言っても指揮が良い。

基本的には、ヴェルディ初期〜中期のズンパッパ節なんですが、この切れ味が良く、まったく臆面なく鳴らしています。変に伸ばしたり引っ張ったりせずに、ひたすらズンパッパ。これがとても良い。舞台とのシンクロナイズは完璧。歌手をグングンと引っ張ります。指揮者のチャンパはまだ若い売り出し中。ポニーテールのあんちゃんという感じですが、良くオケを把握しています。イタリアは若い指揮者はいいのがたくさんいますね!

群盗の親玉カルロのロベルト・アロニカ、今売り出し中のテノールです。彼は2011年のボローニャの引っ越し公演の際に急逝したリチートラの代わりにエルナーニを演じたのですが、その時は高音がきつかった印象がありましたが、今日はそんなことはありませんでした。むしろ最初から全開モード。群盗は一幕目からテノールは歌いっぱなしです。艶のある良い声をしていますし、声量も充分。なかなか良いと思っていましたが、幕間に師匠に会ったところ「声大きすぎない?」と言われました。それから後半、たしかに、どんどん声が大きくなってきて、いやそれはパワーはすごいのですが、ベリズモもびっくりという感じで、ソプラノのフローリアンもぶっ飛ばす勢い。また、これに拍手喝采になるものだから余計乗ってきます。これはあきらかに、怒鳴り過ぎで、曲に陰影がなくなってしまい興をそぎました。

これに対して、バリトンのルチンスキ、兄を亡き者にしようという悪役のフランチェスコですが、これはなかなか良かったです。地味な声で迫力はありませんが、こいつ、悪いなぁ」と思えるだけの充分な表現力がありました。サンカルロのブルーレイで聴いた時より良かったです。

パルマの劇場は今大変な財政難にあえいでいると聞きます。最近劇場専属のオケも解散して、今は公演のたびにオーディションで短期間契約を結んでいるとのこと。また、別にトスカニーニ管弦楽団をオケに使うこともあるようで、この日の公演もそうでした。演奏家の生活も楽ではないですね。

群盗、かなり満足な公演でした。この頃のヴェルディの音楽は理屈抜きで楽しめます。他にもCDでしか聴いたことがないですが、アッティラなんかも非常に良いですね。これも滅多に上演されませんが、いつか生で見たいものです。
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レッジョ劇場の横は大きな公園になっていて、ここを抜けて夜も更けたパルマの町の気持ちの良い空気を吸いながらホテルに帰りました。町中にフェスティバル・ヴェルディの飾りがしてあり、昨日のブッセート同様にヴェルディへの親しみ、尊敬、愛情が満ちあふれたところだと感じました。あ、それから前述のトスカニーニもここで生まれたんですよね。生家訪問しました。
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ファルスタッフ、ヴェルディの聖地で聴きました。

ブッセート、240人入りの劇場でのファルスタッフ

ブッセートには、テアトロヴェルディというヴェルディの名前を冠した小劇場があります。オーケストラピットを作ると240人、平土間には70人ほどしか入れません。それでも立派な馬蹄形の19世紀の劇場様式で、ボックス席もシャンデリアもあって豪華。使われるのは、毎年10月のフェスティヴァル・ヴェルディの時だけだそうです。
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ヴェルディの生まれたル・ロンコレという小さな村で彼の生家を見て、それから更に奥に進んだところにあるサンターガタのヴェルディの邸宅、(亡くなる2ヶ月前まで底に住んでいました。)を訪れました。ここは、ヴェルディの末裔の人達が今も住んでいるので、特別にヴェルディとジュゼッピーナの寝室だけ案内をしてもらいました。ヴェルディの寝室は書斎も兼ねていて、グランドピアノが置いてあります。ここにアリーゴボイトがミニチュアの舞台を持ち込んで、なかなか筆の進まないヴェルディの興味の矛先をファルスタッフに向けさせたところなのでしょう。そして、ジュゼッピーナの寝室の間には、短い廊下と小さなソファが。ジュゼッピーナは作曲中に期限の悪いヴェルディを気遣って、このソファで話かけるタイミングを気長に待っていたそうです。(たしか、そういうことを読んだ記憶があります。)
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そんなことを思い出しながら、夕陽が差し込むヴェルディ邸にいると、なんとも不思議な気分でした。ヴェルディが長くいた空間を共有している幸せ。これで、もう完全にヴェルディおたくです。

さて、ヴェルディの邸宅を後にしてブッセートへ。ヴェルディとブッセートの町の人達とは、ジュゼッピーナの過去の事もあり、決して良好な関係ではなかったのですが、バレッツィという地元の食品関係を扱う豪商が音楽を愛していて、ヴェルディの才能を認めて、援助をしたのです。そのバレッツィ邸はヴェルディの博物館になっています。その向かい側のレストランで、ヴェルディの大好物、この地方の名産の生ハムで軽い夕食。

そして、テアトロヴェルディでのファルスタッフです。プラチナチケットと言えば、プラチナチケットですが、この公演はオペラそのものを楽しむというよりは、フェスティバルの象徴的な公演、日本的に言えば「ジュゼッペ・ヴェルディ奉納公演」という感じでしょうか。

この日のキャストは、往年の名バリトン、レーナード・ブルゾン、あとはミラノのスカラ座アカデミーの出身の若手中心でした。クィックリー夫人役のフランチェスカ・アスチョーティが一番良かったかな。ブルゾンは、貫禄はあるものの、やはり衰えたという感じでした。指揮者の若いセバスティアーノ・ロッリは一番拍手多かったですね。天井桟敷にお母さんがいたようで、「ブラボー」と「ママ!」みたいな声が飛んでいたようです。ここらへんが、この小さい劇場の楽しいところなのかも。

まあ、細かいことを気にするような公演ではないです。奉納オペラですから! このブッセートまで来てヴェルディのオペラを見ることは、おそらくもう無いでしょう。もしかすると一生に一度もなかったかもしれない。でも来れたんですから、それはそれは幸せです。本当にヴェルディ好きだなぁ!!
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コクーンに包まれて。高橋薫子ミニリサイタル

コクーンに包まれて。高橋薫子ミニリサイタル

パルマに来ています。ヴェルディフェスティバルです。

さて、日本を出発する2日前の土曜日に、藤原歌劇団のソプラノ、高橋薫子(のぶこ)さんのミニ・リサイタルを聴きに、溝の口洗足学園が今年オープンしたばかりのシルバーマウンテンというコンサートホールに聴きに行きました。写真では見ていましたが、その不思議な姿にはびっくり、本当に繭のようです。夜だったので、シルバーの外壁が色々な色に照らされて幻想的。中は、ホールというよりはスタジオがいくつも会って、同時に複数の演奏会が行われていました。このブログの通り、コクーンに包まれながら、高橋薫子さんの素敵なリサイタル、とっても良かったです。
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高橋薫子さんは新国立でドン・ジョヴァンニのツェルリーナで聞いて以来ファンになりましたが、去年12月にベッリーニの夢遊病の女のアミーナ(この人が夢遊病)を歌った時に、口が開いたまま閉じなくなるくらいびっくりしました。日本でこの役をこんなに素晴らしく歌う人がいたんなんて。世界でも、この役を最近やったのは、チェチリア・バルトリ、ナタリー・デセイ、エヴァ・メイくらいしか知りません。ベッリーニが技巧を尽くした難しい曲がたくさんあります。特にフィナーレのアリアは、ある歌手の人が「あれさえなければ、是非歌いたい。」と言っていたくらい難しい。(僕が歌うのではないので、「難しそう」)完全にベルカント用と言って良い曲なので、歌手が自由に出来る部分が多いのですが、それだけに高い技巧と正確な音程、幅広い音階、そしてなにしろ場面がアルプスですから、澄んだ声質が求められます。

高橋さんの声は、澄んでいるだけでなく、明るい。そして表現力があるのです。そこで、高橋さんではなくてアミーナが歌っている感じ。

それは、土曜日のリサイタルでも同じでした。前半は日本の童謡などをアレンジしたメニュー、後半は初めて聴くフランスのアーンやイタリアのロッシーニを中心とした歌曲のメニュー。中には、前日に歌詞が届いたという曲もあったそうですが、本当に彼女自身の歌として体の中に取り込んでいました。ただ、きれいに歌っているのではないんですよ。彼女の人生が歌に注ぎ込まれているような感じ。この感じは、ナタリー・デセイのリサイタルで感じたのとても良く似ています。そういう歌い方って、やはりある程度年齢を重ねてこないと出来ないし、重ねてきても出来ない方が多い。ここまで決めつけるのはなんですが、僕は、やはり夫とかパートナーに愛されて、信じるものを持っている人の余裕みたいなものじゃないかな、と思います。ま、恋多き人生で、素晴らしい歌を聴かせる、この前スカラ座で来た人みたいなタイプもいますけど。

□平井康三郎:ゆりかご
□中田喜直:未知の扉
□前田佳世子:すてきな天使たち
Ⅰ天使とプレゼント
Ⅱ天使というよりむしろ鳥
Ⅲ泣いている天使
Ⅳおませな天使
□本居長世/岩河智子:七つの子
□草川信/岩河智子:揺籠のうた
□レハール:「メリー・ウィドー」よりヴィリアの歌
□デッラックァ:ヴィラネル
□アーン:クローリスへ
□ロッシーニ:赤ちゃんの歌
□ロッシーニ:約束
□ロッシーニ:フィレンツェの花売り娘
□ドニゼッティ:「シャモニーのリンダ」より “ああ、この魂の光”

で、このミニコンサート、ミニと言っても15分の休憩をはさんで1時間45分。ミニじゃないですよね。充分堪能しました。このくらいの量になると、少しピアノの独奏も入れないと、大変かも。

高橋薫子さん、もっとオペラの舞台でも見たいな。次の舞台はいつでしょうか?僕は高橋さんは日本のディーヴァだと思います。ディーヴァって歌がうまいのはもちろんですが、やはりその人独自の人間性が歌に反映されて魅力が高まるんだと思います。さしずめ、ドイツものでしたら藤村実穂子さんでしょうか?

来年、藤原のオリー伯爵の公演にシラクーザが来ます。また、シラクーザはリサイタルやるのかな? 何度かメイとやったこともありますね。多分、仕切るのは東京プロムジカでしょう。ここで提案です。プロムジカさん、シラクーザ&高橋薫子のリサイタルやってください!シラクーザとぴったりだと思うんですよ。かたやシチリア、かたや小豆島出身。オリーブの中で育っています。

高橋薫子さん、今度の12月7日には、第一生命ホールでヴェルディを歌います。これも楽しみです。まだ、彼女を聴かれていない方、是非是非聞いて見て下さい。



速報、ヴェルディフェスティバル パルマ到着!

無事パルマ到着しました。ロンドンで一所懸命仕事を終わらせ、ロンドンシティ空港という小さい空港から小さい飛行機で飛んできました。エンブラエル190というブラジル製です。乗ったとたんに、「♫ズンパッパ、ズンパッパ!」乾杯の歌です。でもって、着陸の時は、リゴレットの"Questa o quella"がかかります。うわぁ!イタリアだぁ!それも、トラヴィアータはクライバー盤、マントヴァ公爵は多分デルモナコという凝ったメニューです。

パルマで、とりあえずリゾットとパルマハムで乾杯!! —

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ヴェルディ200歳お誕生日パーティー at リッツカールトン

昨晩、一日遅れでヴェルディの200歳パーティを、ミッドタウンのリッツカールトンで開催しました。発起人(言い出しっぺ)は加藤浩子さん。アシスタント(ムッツィオ)は僕。3週間でゼロから開催までこぎつけて、イタリア大使館文化担当官のご挨拶から、二期会スターの安藤赴美子さん、これまた藤原歌劇団を引っ張るバスの東原貞彦さんに「乾杯の歌」を歌って頂き、ヴェルディの好きだったメニューをホテルに無理言って作って頂きました。何と85名が集まり、途中で受け付け打ち切り。満員御礼。オペラ各界のヴェルディファンが集いました。指揮者のノセダ、バッティストーニ氏からもメッセージが届きました。また、抽選には多くのプライズが!提供して頂いた方々、感謝です。準備不足でオタオタしている私を助けて頂いた、学習院のお仲間の皆様にも感謝です。

おかげさまで、なんか洒落た良いパーティーになりました。なによりヴェルディに生涯を捧げた(でもないか?)加藤先生が嬉しそうだったのが、良かったですね。

さて、来週は、これで勢いが付いたままパルマ、ブッセート、ミラノにヴェルディフェスティバルの旅に出ます。

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今日はヴェルディの誕生日です!!

本日届きました、ヴェルディのお誕生日祝です。
お祝い
ドミンゴ
スカラ星
アバド
スカラ
スカラ2

ヴェルディイヤーもあと3ヶ月、それといかにヴェルディにたどりついたか。

今年ほどヴェルディを聴いている年はありません。そりゃそうですよね。生誕200周年ですから。

今までに聴いたヴェルディの作品をリストして、まだ生で見ていない演目がたくさんあるのに、びっくりしたというか、焦ったというか...... いやー、もう少し見ているかと思いました。

下記の通りです。生で見た作品には✓を付けてあります。群盗は来週見るので、先に✓をしておきました。番号の無い作品は、その前にある作品の改作で、通常、ひとつの作品としてカウントされません。

✓1.オベルト (1839)
2.一日だけの王様 (1840)
✓3.ナブッコ (1842)
4.イ・ロンバルディ (1843)
イェルサレム (1847)
✓5.エルナーニ (1844)
6.二人のフォスカリ (1844)
7.ジョヴァンナ・ダルコ (1845)
8.アルツィーラ (1845)
9.アッティラ (1846)
✓10.マクベス (1847)
✓11.群盗 (1847)
12.海賊 (1848)
13.レニャーノの戦い (1849)
14.ルイザ・ミレル (1849)
✓15.スティッフェーリオ (1850)
アロルド (1857)
✓16.リゴレット (1851)
✓17.イル・トロヴァトーレ (1853)
✓18.ラ・トラヴィアータ (1853)
19.シチリアの晩鐘 (1855)
✓20.シモン・ボッカネグラ (1857)
✓21.仮面舞踏会 (1859)
✓22.運命の力 (1862)
✓23.ドン・カルロ (1867)
✓24.アイーダ (1871)
✓25.オテロ (1887)
✓26.ファルスタッフ (1893)
✓27.レクイエム(1868)

17作品は見ています、と言うか10作品も見ていない、と言うか。この中で最も回数を見ているのは、トラヴィアータで、なんと14回も見ています。トラヴィアータは好きなんですね。年に1回は見ないと気が済みません。あとはだいたい2-4回見ていますが、運命の力とスティッフェーリオは1回だけです。

今後、見たい、そして探せば海外か日本で見られる可能性のありそうなのは、ルイーザ・ミレル、シチリアの晩鐘、二人のフォスカリくらいでしょうか? 他は、よほど運が良く無いと見られそうにないです。

この中で最高に良かったのは、昨年チューリッヒで見たシモンボッカネグラ(レオ・ヌッチ)です。これは他を圧倒して良かった!あれからヌッチを1年半で4回聴きました。もう聴けなくなるんではないかという焦りもありました。でも、まだ大丈夫そうですね。

最初からヴェルディだけが好きだったわけではなく、今でもヴェルディだけ好きというわけではないんですが、でもヴェルディが一番好きな作曲家になりました。僕はもともと、ボサノバ、ブラジル音楽ファンで、今でもそちらのほうがずっと年季を積んでいて詳しいと思います。オペラはほんの10年ちょっとしか聴いていません。クラシックは、JAZZを良く聴いていたころに、グレン・グールドを聴いて入り込みました。良くあるパターンです。ゴールドベルグ協奏曲ですね。グレン・グールドって僕の世代では、高橋和巳かサリンジャーという感じで、必ずはまるピアニスト。あと、ビル・エバンスもそうです。でもそのうちグールドは聴かなくなります。だんだんバッハも他の演奏者で聴くようになりました。それでカザルスに行き着いたのですが、すぐにカザルスの演奏のボッケリーニにはまってしまいました。チェロ協奏曲は今でも心の糧です。

そして、ボッケリーニから戻って、スカラルッティ、コレルリ、アルビノーニ、ヴィヴァルディなどのイタリアンバロック。その頃、イムジチ良く聴きました。そして、レスピーギ、ローマ3部作も好きでしたが、リュートのための古風な舞曲とアリアをずいぶん聴きました。というわけで、今年のバッティストーニのレスピーギに興奮して2度も行ってしまったのです。あとはフランスの室内楽でしょうか。特にラベルの弦楽四重奏はボッケリーニとならんで、「僕の1枚」です。

で、イタリアの交響曲を聴こう化と思ったら、無いんですよね。オペラしか。で、オペラに行きました。最初はヴェリズモと、ロッシーニ。入りやすかったです。ヴェルディは、カラスにはまったころ(2年くらいカラスばかり聴いていた)、ジュリーニの指揮のトラヴィアータが気に入って、そこから入りました。

ヴェルディの何がいいのか? そんなことを書き出すと長くなるのでまた今度。まあ、やはり彼が音楽家であるだけでなく、”イタリアの劇場の人”であること、音楽がどんどん進化したことが魅力かなぁ。

今は、プッチーニやヴェリズモはあまり聴かなくなりました。イタリアだとヴェルディ以前ですね。特にベッリーニは好きです。そしてワーグナー、リヒャルトストラウスもけっこう好きです。まだまだ聴きたい、勉強したい音楽たくさんあります。バロック・オペラ、それからバレエ音楽(バレエももちろん)、あとは、消えつつあるボサノバとMPBのヒーローたちを聴きに行きたいです。あんまり時間がないですね。

オベルト at テアトロ・ジーリオ・ショウワ

久しぶりに、昭和音大付属(?)のテアトロ・ジーリオ・ショウワに行きました。前は会員で良く行っていたのですが、ここ数年ご無沙汰。1000人の新しい素晴らしいホールです。音響も良く建物も素敵です。併設されているフランス料理のレストランもいいですね。また、休憩にカフェで出るコーヒーがとても美味しいのですが、なんと¥250-!昭和音大は藤原系の学校のようで、デヴィーアもレッスンをしているようですが、お金あるんですねー。

昨日は、ヴェルディ第一作のオペラ、「オベルト、サン・ボニーチョ伯」を聴いてきました。これは、日本でも海外でもめったにやらないですね。日本では、過去に2002年にヴェルディ協会と東京オペラプロデュースが共同で上演しただけではないか、と言うことです。僕も古い録音のCDと最近のTutto Verdiのブルーレイ、ブッセートで上演されたものを聴いただけでした。

なかなかの熱演でしたね。この劇場の公演は、だいたい昭和音大の卒業生と藤原歌劇団からのゲスト歌手で上演されますが、今日もそうでした。

オベルト:三浦 克次(藤原歌劇団会員)
レオノーラ:廣田 美穂(藤原歌劇団会員)
リッカルド:山内 政幸(藤原歌劇団会員)
クニーツァ:丹呉 由利子(藤原歌劇団準会員)
イメルダ:下條 広野(藤原歌劇団準会員)
指揮/ダンテ・マッツォーラ
演出/マルコ・ガンディーニ
昭和音楽大学管弦楽団
昭和音楽大学合唱団

この中ではレオノーらの廣田さんがとても良かったです。そして、クニーツァのメゾの丹呉さんも、歌うにつれて表現力のある素晴らしい声に感心しました。まだ若いですが、これから楽しみですね。女性陣、藤原は層が厚いですね。

指揮者は、イタリア人の小柄な人の良さそうなお爺さんという感じで、ヴェルディの初々しい処女作を丁寧に表現して好感が持てました。序曲は良く聴いていて好きなのですが、全体を通してじっくり聞く機会はあまりなかったです。非常にベッリーニ的ですね。悲劇ですが、長調の曲が多いです。ヴェルディはベッリーニに関して「あのような、ながーーい、ながーーい曲は書けない」と言っています。この”ながーーい”というのはテンポが遅い、展開が遅いという意味かと思いますが、ヴェルディもこのオベルトでは、けっこう「ながーーい」曲を書いてます。

レオノーラとクニッツァの二重唱も、ノルマとアダルジーザの二重唱みたいな感じです。

ヴェルディは、この後のヒット作"ナブッコ”で一躍流行オペラ作曲家になるのですが、それでもまだロッシーニの影響も多く残っており、逆にここらへんまでのヴェルディはなかなかおおらかで良いですね。

先日の新国立のリゴレットに空席が多かったのに、このオベルトは満席、6月のいずみホールのシモンボッカネグラも満席。まあ、この2ホールは小さいですしメジャーではなにので、新国立とは比較になりませんが、来月10日にNHKホールで定期公演として上演される、演奏会形式のシモンボッカネグラも、もうチケットの残りが少ないとのこと。やはり、日本のヴェルディファンは、今まで見ていない演目を見たがっているんです。スカラ座が来日して、その数週間後に同じ演目をやる新国立のマーケティングは、わからないですね。

何度も言いますが、今海外で一番脚光を浴びているヴェルディの作品のひとつはシモンです。なんで新国立はやらないんでしょうね? あとは、二人のフォスカリ、ルイーザ・ミラー、スッティフェーリオ、シチリアの晩鐘、運命の力、レニャーノの戦いなども上演されれば人が入ると思うのです。ヴェルディに限らず、最近、新国立で上演された、ルサルカ、ヴォツェック、アラベッラ、ピーター・グライムズなどは、おしなべて客の入りも良く、好評でした。どうも、新国立にはラーニングカーブがないようですね。良い劇場で、挨拶している館員の人達も感じが良いのに残念です。

来週は、これまたヴェルディのマイナー作品、群盗をパルマで観劇です。それでもまだヴェルディの27作品のうち半分も生では見ていません。これからもテアトロ・ジーリオ・ショウワやいずみホールに期待しましょう。

新国立リゴレット初日

速報ではお伝えしましたが、これは問題作というか、話題作というか、意欲的な作品に仕上がっています。僕自身は、この10年間での新国立のヴェルディの公演で最高だったと思います。
俚語レ


現代演出の舞台設定はホテルです。ギャングもいる、売春婦もいるというざわざわした場面が現れた時は、ちょっと嫌な予感がしましたが、舞台が進むに連れてこの演出が良く考えられたものだということがわかりました。ヴォツェックの演出で才能を見せたクリーゲンブルグは「私にとってヴェルディは近代的なベルクよりも、ずっと演出が難しいものです。(原文のまま)」と、苦労を語っています。そう、現代演出をする演出家には大いに悩んで欲しいんです。そういう意味で、5月のナブッコの演出家グラハム・ヴィックは、いきなり「ところで21世紀の今日、我々はどんな時に神からそっぽを向かれるでしょうか?私はそれを”人間がショッピングに走る時”だと感じています。(原文のまま)」と、悩みもせずに決めつけてしまっているのには参りました。

一見、両方とも非常に似ている舞台作りですが、クリーゲンブルグには知性の輝きと作曲家に対する尊敬の念があり、また、発想の切れ味が鋭いのです。3幕目の屋上の舞台への変換は、まさしくホテルという閉鎖空間から闇の空気にさらされた登場人物が真実の姿を見せるのに最高の設定でした。ここではマッダレーナの苦悩という、通常のリゴレットでは見られない心象風景も描き出されていて実に新鮮でしたね。ま、スパイダーマンが出てきてもおかしくない舞台ではありましたが。

ただ、この演出には色々な意見が出ると思います。METのメイヤー演出に似ているところもありますし、舞台上で廻るホテルの棟がわずらわしいと思う人もいるかもしれません。ここらへんは、結局趣向性の問題でしょう。

歌手陣も素晴らしかったです。まずタイトルロールのイタリア人若手バリトンのヴラトーニャ、最近では珍しい重厚な本格派の声です。ちょっとティト・ゴッビを彷彿とします。ヌッチより重い。しかし、ヌッチを見た後でも、うなるほどのうまさと表現力を持っています。まあ一方で改めてヌッチは完全に別格というのを実感しましたけどね。彼は71歳、高音は衰えても”神”のバリトンですから比較にはなりませんが、それでもこのヴラトーニャは、個人的にはホロストフスキー、フロンターリなんかよりずっと良いと感じました。そしてジルダのゴルシュノヴァは、逆にベルカント系の美しい声。線は細いのですが、高音まで金属的にならないでスーッと声が上がります。ジルダにはぴったり。スカラの時のアレハンドレスよりよっぽど良かったです。そして、二人とも音程も安定しています。特にヴラトーニャの音程は素晴らしく正確。

ただ、この二人も好みがわかれると思いますね。ヴラトーニャはある意味、古典的な歌い方とも言えますし、技術的にはまだ伸びしろがあり声の強弱の付け方が少ないところなど不満を覚える方もいるでしょう。ゴルシュノヴァは「声量が足りない」と言われるかもしれません。

でも、この二人はそう言う点に勝る素晴らしい個性と声を持っていました。二重唱はどこでもすんばらしかったです。

指揮者のリッツォ、完璧に歌唱にシンクロした指揮でした。ブラヴォ!金管木管を意識して使っているようで、序曲から一幕目の最初のところは、ちょっと不思議な響きだったり、途中使われすぎた金管が疲れたのか「女心の歌」の出だしでずっこけたりもありましたが、全体としてはまさにオペラの指揮という感じで、基本的には Support the singers, そしてすきを見つけて 良いところでオケを主張させる、若手ながら才能を見せたと思います。

四重唱は完璧でしたっ! スカッとしましたね。言い忘れましたが、スパラチフレの妻屋さん、こういう現代演出での役は珍しいと思いますが、最近スリムになったボディと、いつもながらの決してモゴつかない発声で実に良かったですねー。一方で、朝青龍こと(本人が言っています)韓国のテノール、ウーキュン・キム。悪くはないんですが感動しなかったです。彼はいつも僕にはそういう印象です。明るくて良い声なんですが、退屈。高音が気持ち良く伸びれば、もう少し印象も良くなるんでしょうが、高音弱いです。アルフレードくらいだとそれでも良いのですが、マントヴァ公爵は自分では意識はしなくても策略、計略を用いる影のある性格です。悪人ではないですが、やはりちょっとひっかかるものが声に隠れていないと魅力的ではないです。マントヴァ公爵=パヴァロッティみたいになっていますが、色々聞いてみるとこの役に限っては、ジュゼッペ・ステファノがうまいと思いました。現代ではあまりいないですね。デムーロは真面目過ぎたし、ヴァルガスは朴訥過ぎるし、アラーニャが歌わないかなぁ。

結論→僕としては大満足な公演でしたが、なんか拍手は少なかったですね。特に前半。リゴレットとジルダの二重唱に「Bravi!」かけたら誰も付いてきませんでした。拍手がパラパラだけ。最後のほうは盛り上がってきて拍手も声もかかるようになったのですが、やはり演出と歌手に戸惑っている聴衆が多くいた感じがします。歌手陣は大満足のようすでしたが、カーテンコールも少なかったようです。その割に出待ちはすごく多かったので、やはり気に入った人は気に入っていた(当たり前ですね)と思います。色々な方々のブログが楽しみです。できれば、もう一度来週聴きに行きたいですね。

新国立リゴレット初日、速報!

新国立のシーズンオープニング、リゴレットの初日行って来ました。今日は眠いので、速報のみですが、いや、良かったです。ただし、かなり好みが分かれますね。まず、演出、ヴォツェックをやった、クリーゲンブルグの現代演出。僕は、感動しました。METのラスベガスより良いと思いました。マッダレーナの苦悩が描かれたのも新鮮。ただ、舞台は、現代のホテルですので、クラシック演出お好きな方はご注意ください。

タイトルロールのイタリア人若手バリトン、ヴラトーニャ、ティット・ゴッビのような重めのヴェルディバリトン。ヌッチを聞いた後でも、うならされました。ジルダのゴルシュノヴァは逆にベルカント系。この人も線は細いが、実に美しい声。そして、指揮も良いです。オケがちょっと冷やっとするとこありましたが。

ただ、もう一度言いますが、歌手もオケも演出もかなり個性的で、万人向けとは言えません。拍手もそれほど多かったとは言えないので、戸惑っていた聴衆も多いのでは。でも僕はBRAVISSIMO!!でした。詳しくは後日。

ナタリー・デセイの「椿姫ができるまで」

デセイのドキュメンタリー見て来ました。青山の小洒落た映画館。DVDで見て感動したエクサンプロヴァンスの2011年の夏のフェスティヴァルの、トラヴィアータを練習から本番まで時間的推移を追ってドキュメンタリーにした2時間の作品。

予告編だけでも、いいなぁ、、と思ってしまいました。何度も書いてますんで、「しつこい」と言われそうですが、僕は女性の現役オペラ歌手の中で、ナタリー・デセイが一番好きです。この映画を見て、また好きになりましたね。ほとんど恋に落ちてる感じですね。デセイにはストーカーがいるようですが、さもありなん。。

デセイの魅力を引き出そうとする、演出のジャン=フランソワ・シヴァディエがいいんですよ。フランス人同士でわかり合う感じ、うらやましいなぁ。でも下手な英語も使って出演者全員をモチベートしていく様子も感動的。

それとコレペティトゥールをやっているイタリア人(?)の女性と歌手のシーンもいいんですよね。こうやってオペラが出来てくるんだってわかります。

このオペラは、エクスの協会の中庭の特設野外ステージで行われたんです。詳しくは当日現地で観劇していた、オペラ評論家の加藤浩子さんのブログをご参照下さい。興奮が伝わって来ます。

最後のシーン、ヴィオレッタが倒れるところが、今までみたことのない見事さ!すごかったですが、これ、やっぱり練習に練習を重ねているんですね。この映画の最後は、デセイが何度も何度も倒れる練習をしているところでフェードアウトです。是非見に行って下さい。お勧めです。

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