プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ホフマン物語の魅力、大野和士の魅力、コッペリアの魅力もしゃべらせて。。。

日本の誇る新国立劇場は12月24日のホフマン物語で年内公演を終了、来年1月19日のカルメンまで長い休みです。世界の有名歌劇場で、こんな長い休みを年末年始のかき入れ時、オペラファンが一番オペラを聴きたい時に取るのは新国立だけでしょう。この休みの%は ”深刻率”…..馬鹿言っている場合じゃ無いですね。

しかし、昨日のマエストロ大野和士の講演、つい最近告知されましがた、予定は1時間。これを大幅に超えて2時間。しかも講演ではなくてリサイタルでした。

出演: 大野和士(ピアノ、お話)そして昨日の演出、演技指導
ホフマン:樋口達哉(テノール): 
ニクラウス/ジュリエッタ:小林由佳(メゾソプラノ) 
ミラクル博士:大沼徹(バリトン) 
オランピア:全詠玉〈チョン・ヨンオギ〉(ソプラノ) 
アントニア:高橋 絵理(ソプラノ) 
アントニアの母:小林紗季子(メゾソプラノ)

僕の好きな歌手ばかり。特に小林柚佳さん、高橋恵理さん、ひさしぶりに堪能しました。前から3列目は、やや響きすぎでしたが、なにせ¥1,000-です。¥10,000-ではありません。

ホフマン物語は、フランスの香りプンプンですが、元はドイツの作家、E.T.A.ホフマンの原作、これをジュール・バルビエとミシェル・カレが戯曲にしてパリで1851年に初演されました。その後、ドイツからフランスに帰化したオッフェンバックが作曲をし、オペラ(というより、オペラ・コミック=音楽と音楽を戯曲でつなぐ、フランスならではの喜劇調オペレッタ)としてパリ・コミック座で初演されたのが1881年、、同じ劇場で1875年に初代のカルメンもビゼー作曲のオペラ・コミック(オペレッタと分類される事も多い)で初演されています。この頃のパリは、どうやらグランドペラの時代からオペラ・コミックの時代になっていたんでしょうかね。1860年代頃までは、オペラ・ブッファ(ブッフ?)と呼ばれ、一応オペラの一部として見られていたようですが、その後、1880年代にコミック座が火事から立ち直ると、オペラコミックがやんやの喝采になったようです。

(と「でしょうか?とか、ようです。」と書けるのが、プロの評論家でない証拠というか、素人の特権です。関係ないですが)

前置きが長くなりましたが、大野和士さん、ホフマン物語の魅力を素晴らしい語りと”演技”で伝えてくれました。新国立のホフマン物語を見る前に聞きたかったぁ。。マエストロはリヨン歌劇場の主任指揮者として、またリヨンの著名人として、市民に大変愛されているそうです。レストランなどに現れると皆が挨拶に来て、彼はそれに応えていると聞きました。日本人がそのように海外で音楽だけでなく、人々に愛される、、ボストンの時の小澤さんみたいで、良いですね。

ちなみに、彼は僕の母校、湘南高校の7年後輩ということを昨日知りました。同級生がFBで教えてくれたのです。余計親しみが沸きます。

オランピアと言えばデセイがまず頭に浮かびます。フランスのオペラはフランス人っていう感じですかね。でも、先日の幸田浩子も良かったですし、来年7月のリヨン来日の時は、パトリツィア・チョーフィ!(4役?)、これは期待してます。 そしてホフマンはジョン・オズボーン、これはやや意外なキャスティングです。ホフマンはフランス人のほうがいいけどなぁ。。イケメンのチャールズ・カストロノーヴォなんかどうでしょか? でもオズボーンは今が旬ですからね。期待しましょう。

僕にとっての「ホフマン物語」はオペラよりずっと前から、バレエの「コッペリア」として魅力の作品です。コッペリアは、「ホフマン物語」を原作とはうたってはいません。オランピアは歌いませんし、後半も違う。ただ、バレエではコッペリウス(ミラクル博士)の悲しさが、オペラではホフマンの悲しさが違う形で表現されます。リヨンの振り付けはローラン・ペリーですが、コッペリアの振り付けも、ローランです。ローラン・プティ。この素晴らしいバレエでは、オランピアはコッペリウスの腕の中で、分解(人形ですからね)して床に散らばってしまうのです。こわーい。

バレエのほうは、ラクメで有名な(というかラクメしかない)レオ・ドリーブの作曲。オッフェンバック同じフランスの作曲家ですね。コッペリアは1870年にガルニエ宮(パリオペラ座)で初演。この頃のドリーブは絶好調で、チャイコフスキーも絶賛していたそうですから、オッフェンバックのホフマンにも影響を与えていそうですが、音楽的には序曲は多少オペラのどこかと共通項があるかなぁ。ただ、先日の新国立のフィリップ・アルローの洒落た演出を見て感じたのは、バレエ的だなぁといいうこと。オペラとバレエの融合とまで行かなくても、何かの「遭遇」を期待します。

今、ホフマンのブームでしょうか? シアトルオペラも5月にホフマン物語。 LAのタイスにくっつけて行けないかと思っています




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2013年、ごく個人的なベスト10

2013年観劇(感激)あくまで個人的ベスト10発表でーす。

ちょっと早いんですが、多分今年もう劇場に行くこともないだろうと思い、2013年に見たオペラ、コンサート、バレエ、47公演からベスト10を選びました。と言っても80%はオペラを見に行っているんですが。

しかし、15年前までは、ライブで聴きに行くのはジャズとブラジル音楽で、NYに行ってもヴィレッジばかり行っていたんですが、人間ちょっとしたことで変わるものです。

1位:ノルマ(ベッリーニ) at ザルツブルグ音楽祭、ダントツの1位、バルトリが春の音楽祭の総監督に就任。テーマを“自己犠牲”とし2年の準備期間を経てノルマを舞台上演。ただただ、素晴らしかった!ペルトゥージも若手のメキシコ人ソプラノのオルヴェーラも、そしてピリオド楽器を駆使したアントニオーニの指揮も実に品格があって締まっていて、過去のノルマとの決別(ジョークじゃないですよ)を感じました。

2位:ローマ三部作(レスピーギ)指揮バッティストーニ、こんなレスピーギは聞いたことがない。音楽の波が襲ってきて浮き上がると、そこはローマ。2公演とも行きましたが、オペラシティのが最高。サントリーでは演奏終了後に楽屋でマエストロに会えたことも強烈な思い出です。2014年新年にはまた来日しますね。

3位:オテロ(ヴェルディ)フェニーチェ劇場引っ越し公演、これも2回行きました。高くつきましたが、ヴェルディをムーティとは違った解釈で振るミョンフン(最近彼のヴェルディ大好きです。)と知的なクンデのオテロ。声量を上手にコントロールし微妙な表現を出す、クロチェットのデズデモーナ。そして、なんと美しい舞台芸術!

4位:ファルスタッフ(ヴェルディ)、スカラ座来日公演。これも2回行きました。何より、現状でこれ以上望めないようなキャスティング。特にバルッチェローナ、フリットリ(さっきまでバルトリと書いていました。よく間違えありまして、すみません。)、ルングの女性陣すばらし!カーセンは才能ありますね。こんな美しい舞台と素敵な演出のファルスタッフ見たことない。今までひとつのめり込めなかったファルスタッフに今回、完全に魅了されました。

5位:リゴレット(ヴェルディ)、スカラ座来日 ヌッチ & アザーズという感じでしたが、ヌッチはすごーーい。2012年から今年にかけて、4回生で聴きました。昔のようなテノールのお株を奪うような(元々この人、テノール)輝かしいハイバリトンではなくなりましたが、その分表現力がすごい!ただ、この日のアザーズはいまいち。やはりモシュクのジルダで聴くべきだった。それと、ドゥダメルの指揮はこのリゴレットに限っては頂けませんでした。歌手達もゲネプロから相当に不満を直接マエストロに言っていたようですが…..この人はコンサートに集中したほうが良いと思います。

6位:「ル・パルク」より“開放のパ・ド・ドゥ”(プレルジョカージュ) 、2009年にオペラ座を退団しウィーン国立バレエの監督になったマニュエル・ルグリ。仲間達」から「新しき世界」に移って3回目。自身が踊るのもあと何年か?ル・パルクのパドドゥは、94年にオペラ座の委嘱で作成されたコンテンポラリー作品。マラーホフとヴィシニョーワのも良いのですが、ルグリとデュポンが踊ると、「素晴らしいバレエ」は「素晴らしい芸術」になります。全幕上演ではなかったのですが、“しびれ感”では一位か。再来年のデュポンの引退公演はパリまで行きたいです。

7位:仮面舞踏会(ヴェルディ)、トリノ王立劇場来日 ノセダの指揮はあっさりとしていますが、ヴェルディの楽譜を凝縮した感があり、幕が進むにつれて飲み込まれて行きます。そして、ヴァルガスが良かった。他の歌手を2馬身は引き離していたでしょうか?

8位:アントニオ・シラグーザリサイタル:今年聴いたシラグーザの中で最高の出来。彼のホスピタリティ(舞台を廻りながら歌うオーソレミオとか)で、感激してしまって個々の歌のイメージがなくなってしまうのですが、無理矢理冷静に聞いてこの日、特に良かったのはトラヴィアータの1幕2場からの2つのカヴァレッタ。” "Lunge da lei per me” と"O Mio rimorso~"でした。特に後のほうは、力で押さない、ベルカントの素晴らしい出来。同じのをフローレスもリサイタルで歌っていますが、シラクーザに軍配! 

9位:シモン・ボッカネグラ(ヴェルディ)、いずみホール企画 こんな素晴らしいシモンが日本で(大阪)聴けるなんて! 青山貢のパオロの一声目から一流のシモン公演でした。堀内康雄も今年で一番良かった。大学生中心のカレッジオーケストラ、プロのレベル!なんと言っても、いずみホールという小ホールが、こういう良い作品をやることの勇気に感動しました。

10位:群盗(ヴェルディ)、パルマレッジョ劇場 今年はヴェルディ生誕200年、でもって、ヴェルディが生まれたレ・ロンコレ、育ったブッセート、住まったサンタガータ、そしてヴェルディを認めたパルマ、ミラノに、ヴェルディの誕生日のあとすぐに行って来ました。ヴェルディ劇場でのブルゾンの“ファルスタッフ”、スカラ座でのサルトリ、セラフィン、パーペの“ドン・カルロ”も素晴らしかったですが、(特に後者は!)敢えて、パルマの群盗に一票。まずは、珍しい演目が聴けたこと、パルマのシーズンオープニングで指揮も歌手も力がはいっていたこと。指揮のチャンパ、まだ兄ちゃんという感じですが、初期のヴェルディの肝を掴んでましたねー。そしてバリトンのルチンスキも良かった。来年3月、またパルマ行きますよー。街も劇場も魅力たっぷり。

番外:バレエ・リュス(ストラヴィンスキー)、ザルツブルグ音楽祭 バレエ・リュスとは、19世紀後半から20世紀はじめまでロシア出身の芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフのもとで、パリを中心に活動したバレエ団の名前です。滅多に見られない。今年はなんと、新国立でもやりましたので、年に2回見たことになります。が、ザルツブルグの公演はマイリンスキーがその力を見せつけました。なにせ、ゲルギエフがバレエの指揮を振った!特に、「火の鳥」と「結婚」はすごかったです。

というような、個人的ベスト10ですが、今年は引っ越し公演の来日が多く、また、僕自身の“引っ越し観劇”も多く、出費がかかりました。オペラ貧乏。

来年の予定も決まりつつあります。今のところ、とても期待しているのは、3月イタリアで見る、真珠取り(ランカトーレ&シラクーザ)、シモン(ヌッチ、サルトリ、コロンバラ)、同じく3月のオペラ座来日のバレエ椿姫(デュポン)、リヨンのホフマン物語など。不安と期待なのが、ムーティのローマ歌劇場です。指揮者、歌手も新旧の交代という感じの強い中、ヴェルディバリトンだけが、ヌッチの後継者がいません。だからここ数年、ヌッチをできるだけ聴くようにしています。最近、降板も多いようで心配なんですが、、、

それでは、皆様、良いお年をお迎え下さい。

仮面舞踏会 トリノ王立歌劇場

久々に公演が終わって数時間でブログアップします。(まだアップしてないのがありますが。)

昨日に続き、今日もトリノ王立劇場です。「仮面舞踏会」。1日と4日の公演が非常な好評を博していましたし、トスカのほうも大好評。しかしその割には今日、空席が目立ちました。明日のトスカのパンフレットも配っていました。ジャパンアーツさん、良い企画を持ってきて頑張っているんですけどね。

さて、今日のノセダの指揮ですが、序曲でいきなりびっくり。今までに聴いたことのない音作り。アバドでもムーティでも、だいたい仮面の序曲は波が広がってくるようにゆっくりと穏やかにスタートするのですが、今日は最初のピチカートのまんま、スピードアップで序曲に入った感じです。いや、こんなの聴いたことないなぁと、正直かなりの違和感を持ちました。しかし、昨日のロッシーニも最初の感覚はそうでしたね。で、終わってみれば、やはりこの指揮者はただ者ではない! 

彼自身の世界を明確に持っています。聞き取れるかどうかのピアニシモから一気に頂点に達し、そして余韻を残さずに潔く音を切る。もう少し、引っ張ってほしい感じがするのですが、そこが鮮烈な印象を与えます。これは、一番の特徴かもしれません。長い休符の余韻も素晴らしく効果的。絵画的というより彫刻的な音作りでしょうか、巧みな木管の使い方と柔らかい弦。そして、全体としては軽いタッチなのですが、緩い感じは一切ない。なんか上質なシードルを飲んでいる感じです。シャンパンというほどの豪華な音ではなく、シンプルでコンパクト、香り高いお酒です。この音作りは病みつきになるかもしれません。ただ、これが嫌いな人もいるかなと思います。クラシックなヴェルディとは確実に一線を画すものだと思います。ミョンフンと比較したら興味深いことでしょう。とりあえず、いつものように、明日はトスカニーニの仮面を聴いてみましょう。(あれ? 持ってたかな?)うん、でももしかすると、かなりトスカニーニのコンセプトに近いかもしれません。無駄なものがないですから。

歌手で一番良かったのは、ラモン・ヴァルガスです。絶対です。僕、彼を生で聴く機会が多いのですが、いつも裏切られたことはありません。今日は前半、やや疲れ気味な感じがしましたが、3幕目良かったですね。Bravoです。家で仮面舞踏会のDVDを見るときは、やはりドミンゴかパヴァロッティになるんですが、最後の死に際にリッカルドが、「私は彼女を愛したが、神を汚してはいない。」と言いますね。ドミンゴが言うと「そうか、そうか。そうだよな、お前とアメーリアは潔白だ。」と思いますが、パヴァロッティが言うと「ウソこけ。やってんだろうが!」と思います。レーナートももう一刺ししてしまうかも。その点、ヴァルガスはドミンゴほどの高貴さにも、パヴァロッティほどのイタリア的な明るさにもかないませんが、歌唱の技術と表現力、そして朴訥と言っても良いような人の良さが売りです。彼の告白なら、レーナートも観客も信じますよ。聴くたびにうまくなっているようなきがするなぁ。

で、オクサナ・ディカですが。最初から出力全開の状態。3幕目のアリアも彼女としては素晴らしい出来だったと思います。ただ、僕はこの人の声は苦手です。高音は良く伸びますが非常に金属的で、まずこれが駄目です。そして下から上までずーっとビブラートがかっているのも駄目です。テバルディの再来と言われているようですけど、ちょっとなあ。声質としては、けっこう強い方ですから、トスカのほうが合うのでは。彼女の今日の出来を絶賛している人もいたので、好き嫌いのはっきりする声なのかもしれませんね。ヴェルディの仮面はシモン・ボッカネグラの後に作曲されています。シモンはあとで改作されるのですが、序曲などはそっくり。そして、名誉を重んじて、自分の敵を許すのも似ています。仮面のアメーリアはシモンのアメーリア(マリア)と同じ声質で良いと思います。そうするともっと軽いほうが、僕は好きです。指揮がシードル酒なら歌手もそっちかな。

ウルリカのコルネッティも熱演でした。おどろおどろしさが良く出ていました。ただ、巻き舌がtoo muchでどうも気になって、そうなるとそこばっかり気になって、彼女の歌を楽しめませんでした。新国のアビレガイッシの時もアムネリスの時も、あんまり感じなかったんだけどなぁ。なんかアメリカ人って感じ(アメリカ人ですが)でしたね。Bravaより”Marvelous”という感じ。うん?これはイギリス英語かな?拍手は一番多かったので、良かったのだと思いますが、今日はディカのビブラートと同じく、コルネッティの巻き舌が気になりすぎてしまって、聴き方も失敗した感じがあります。

それで、もしかすると今日のMVPはオスカルの市原愛かもしれません。第一声、オスカルが悪いと仮面が台無しになりますが、スミ・ジョー顔負けのヴェルディボイスで登場。以降も素晴らしかったです。ただ、Brava!しようにも、チャンスがないんですよね。静岡からやって来た超オペラおたくのK君もそう言ってました。まあ、Bravaがかかる、そういう役じゃないんですから仕方ないですね。ですのでカーテンコールでBravaしまくりました。やや音程が危ういところもありますが、実に役を勉強し、ヴェルディを解った上でこの役をやっている感じ。良かったですね。

レーナートのヴィヴィアーニはなにかもったりした感じ。少なくともヴェルディバリトンではない。どっちかというと、ホロストフスキーの弟子みたいな方向性。リサイタルで聴いたら、それなりに良いかもしれません。でも、あまりに拍手が少ないのは、評価が低すぎるような気もして複雑な印象でした。

前の2公演を聴いてませんが、ブログなどを読む限り、なんか、最初の2回のほうが良かったのでは、という気がしないでもないです。2回見た方教えて下さい。

あと、ちょっとがっかりしたのが演出。特に舞台芸術。今年は、ヴェルディイヤーということで、たくさんイタリアの歌劇場のヴェルディ作品を見ましたが、みんな素晴らしく綺麗な舞台でした。最高だったのはフェニーチェのオテロ、紗幕を上手に使い、ブルーが際立ちました。そして、マホガニーに包まれて、英国の香りがプンプンしたスカラ座のファルスタッフ。最後のフーガをテーブルの上で歌ったのも素敵でした。パルマレッジョ劇場の群盗も低予算ながら、実に洒落ていました。そしてミラノで見たスカラ座のドン・カルロス。おなじみのクレーネンブロックの演出ですが、舞台をより洗練された空間にしていました。今、僕のMacのノートのデスクトップピクチャになっています。

ところが今日の舞台演出はイタリアの美しさに欠けました。お金をかけてないこともあるのでしょうが、そうは言っても、ぶら下がって振り子のように動く大きな鐘や、最後の幕のUFOのような物体など、それなりの大仕掛けもあります。しかし、これらが美しさを出していない。赤を血に見立てているのは良いのですが、それをいつでも黒に反映しているのは、あまりにも単純です。小道具や色や影が、それぞれ登場人物の心の動きを暗示しているのはわかりますが、いかにもありがちな表現が多いのです。その他どの幕もアイデアに欠ける気がしました。人の動きも単純すぎます。アメーリアは動きが少なすぎる、舞踏会での電車ごっこのような行列など…..ちょっと全体の演出の方向付けがわからないなぁ。評価している人も多い(というか評価している人の方が圧倒的に多い)ので、書くのがためらわれましたが、実感をウソにして書くわけにも行かず……なんか、すみません。

ただ、今日の公演色々ありましたが、ノセダの指揮とヴァルガスの歌で超一流のレベルでした。すごく上質のヴェルディを聴いたと感じます。全体のまとまり感では、スカラ座のリゴレットがヌッチ一座という感じだったのよりも、ずっとレベルが高かったと思います。しかし、同じような規模のフェニーチェ歌劇場の、春の「オテロ」ミョンフンの指揮とクンデの歌には、ちょっとかなわなかったかなというのが、今年最後の観劇(多分)の印象です。

レクイエム/ヴェルディ/ルイゾッティ

遅くなりました。忙しい12月。ブログ書く暇なくて。。夜12時くらいになると時間が出来るのですが、僕、8時間寝ないと駄目なんで、もう眠くて書けなかったんです。

で、戻りまして11月6日のルイゾッティのレクイエム。非常に良かったです。ただ、僕はヴェルディの27作の中でレクイエムは3回生で、CDでは何度も聞いていますが、あまり得意ではないです。オペラチックなのは良いのですが、どうしてでしょうね。心にスッと入ってこないんです。宗教曲として聞いてしまうからだと思います。曲名がいかんのか….. ですので、今回、ルイゾッティのに行こうかノセダのに行こうか迷ったのですが、ノセダは2回(演奏会と仮面)行くので、ルイゾッティにしました。

まず、彼はなかなかハンサム、しかも指揮の振り方がきれい。これは絶対鏡の前で振り方を相当練習していますね。ノセダのぴょんピョコ飛び跳ねる、バネ人形のような指揮とはえらい違い。クライバーなんかも鏡で練習していたと思うなぁ。ま、そんなことはいいか。良い音出していましたね。切れ味があって素晴らしい。ただ、ルイゾッティならでは、というものが欲しかったですね。それと、ちょっとテンポが早すぎるような。だから鮮烈感はすごくあるんですが、厚みが足りないかなぁ。そこらへんがマリオッティやバティストーニより弱いか。逆にサンフランシスコ歌劇場でアメリカ人の聴衆には耳にやさしいかも、という感じはします。いや、でもトータルでは素晴らしい恣意でした。又言いますが、イケメンですし。

歌手は、なんと言ってもフルラネットが良かった。彼を良く聞いている人からすると、完全に本調子ではなかったとのことですが、あんなに軽くてモゴモゴしないで、通るバスは素晴らしい。ただ、この2日後には発熱してしまって、それでも歌って、苦しそうだったとのこと。

アグレスタに代わって登場したアイノア・アルテータ。名前がなんかいいですね。色気のあるスパニッシュ系の名前。どうも聴いてから時間が経つと、上演のイメージがなくなるわけではないんですが、変なところが記憶の中で浮いてきます。この日、出だし悪かったですね。でもどんどん良くなってリベラメは迫力でした。スピントですね。ただ、冷静に考えると、この人、名前だけでなく歌う時に片足を前に出し、聴衆を飲み込むような姿勢、そして時々ルイゾッティと目を合わせる。これがかっこいいんですよ。これで30%は株価が上がった気がします。

そして、メゾのマーガレット・メッザガッパ、逆にベルカント系のレッジェロな声でしたが、美しかったですね。(声が)宗教曲という感じしました。個人的にはフルラネットの次ぎに好きでした。まだ20代ということ。これからが楽しみですね。

デムーロも良かったのですが、やや一本調子と言う感じ。この人は他のものを聴いても、ちょっとそういう感じあります。イケメンなんですけどね。(今日はやけにヴィジュアルにこだわっています。)クンデあたりやらないですかね、ヴェルレク。

合唱良かったです。日本のそろって美しい(だけ、とは言いませんが)合唱とはひと味違って、野性味もあり、厚みもあり、それでいてすごいピアニシモ(特に曲の入りの部分)もきれいでした。藤原もすごいですが、サヴァッティーニの合唱指導が良かっんでしょうね。

このレクイエムはロッシーニのスターバト・マーテルと、それぞれの作曲家唯一の宗教曲ということで位置づけが似ていますね。両方ともオペラ的。でも表現はすごく違って、今年は一ヶ月の間に素晴らしい指揮者で聴き比べられるのは、日本にいる幸せです。



スターバト・マーテルでのフリットリの涙

この12月、忙しくて全然ブログアップできませんが、今日のトリノ王立の特別演奏会、これも速報のみ。ノセダはロッシーニの序曲とスターバト・マーテルを素晴らしい指揮で、トリノのロッシーニを聴かせてくれました。しかし、泥棒かささぎ序曲と言えば、アバドの楽友会のニューイヤーコンサートなどで聴いたりしましたが、オペラ全体を見たことはないんです。、ギョーム・テルもそうです。序曲は良く聞きますが、オペラ全体を聴いたのは去年のチューリッヒ歌劇場が初めてでした。

今日のノセダは、オペラに続く序曲としてこれらを聴かせてくれました。ウィーンフィルとは全く違って、ソフトに張られた弦、逆に多分張りが強く潔いティンパニ。ここまでやるかというピアニシモと休符。クレッシェンドだけではないロッシーニを聴かせてくれました。

スターバト・マーテルのフリットリ、バルッチェローナの素晴らしかったこと。これは、詳しくは日曜日に書きましょう。多分時間ありそう。この曲で4人のソリストの歌唱が終わり、椅子に座った後、美しく厚みのある合唱が最後まで続きます。フリットリだけが座りながら口を小さく動かして一緒に歌っていましたが、だんだん顔が悲しそうになってきたので、双眼鏡で見ていると、目に涙がたまっています。歌うのをやめて唇をかんでノセダのほうをずっと見ていましたが、「アーメン」の時は、確かにまた歌っていました。

演奏が終わり、ノセダは拍手とともに指揮台を降りて、まずフリットリのところに行き、優しく頬をはさんで長いこと慰めるようにしていました。

いやこちらももらい泣き。どうして泣いていたか、この推測も色々できるので、あとで書きますが、下司な推測をしなければ、風邪で喉を痛めていたヴェルレクの時とは違って、ほぼ完全に歌えた今日、このロッシーニの美しい宗教曲が彼女の心をふるわせたのでしょう。

演奏会で歌手が泣くのは珍しいと思います。時々合唱の人は泣きますけど。

そのことが無くても、今日の演奏と歌唱は素晴らしかった。明日は、また文化会館でトリノの仮面舞踏会。いや、これも楽しみです。

ショート・インプレッションでした。

ご連絡

12月、ちょっと忙しすぎてブログ更新が滞りそうです。とりあえず、業務連絡的に…..

11/30 トリノ王立 レクイエム → これは行かなかったです。失礼。評判はいいですね。

12/2 新国立   ホフマン物語 → なかなかでした。特に演出。現代演出ですが粋でしたね。 ホフマン物語、来年のリヨン歌劇場、大野和士指揮のも行こうと思います。

今年はあと、トリノの仮面と、ヴェルディ特別演奏会で終わりになりそうです。ヒロシマのチケットは、海外出張でまた無駄に…(もう2回目)この作品とは縁がないのでしょう。

ということで。。

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