プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ドン・パスクワーレ&こうもり、新国立研修所公演

新国立劇場の研修所オペラ公演には、できるだけ行くようにしています。いつも聴き終わって、良い気分になります。日本のオペラの将来は明るいなぁ、って言う感じ。ヌッチがまだ現役で素晴らしいシモンやリゴレットを歌ってくれたり、ドミンゴがまるで全盛期のような声(テノールになっていますが)、でタイスのアタナエルを歌ってくれるのにも感激しますが、聴き終わった時には、「いつまで聴けるんだろう?」とか「誰が後を継ぐのか?(特にヌッチの場合)」という不安がよぎります。

その点、研修所の歌手は、僕の娘と同じ世代。彼等が全盛期になる時まで、こっちが生きてられるかという問題はありますが、希望を感じます。

そして、研修所というタイトルが不要なくらい、レベルが高い!

今日の“ドン・パスクワーレ”と“こうもり”という不思議な取り合わせの独伊オペラ・ブッファ対決は演出の粟國淳さんの深い思惑があったんです。彼はプログラムの中で「一方は音符のついている“レチタティーヴォ”と呼ばれる台詞であり、音符ののっとた抑揚と、リズム、音楽記号を深く読み解くことによって、キャラクターの正確や感情の表現を実現し、もう片方は台詞の”言葉と文章“を深く読み込んだうえで、感情や正確を現す抑揚やテンポ、間合いを自らが考え表現しなければなりません。」と書いています。2つの続く作品に課されたこの難題を、研修生は見事にこなしていましたね。

できるだけ多くの研修生を出すということで、両演目とも土日でほとんどのキャストが変わります。今日、圧倒的な存在感があったのは、昨年卒業した14期のテノール、伊藤達人、ドン・パスクワーレではエルネストを、こうもりではアルフレードを唄いましたが、実に甘い良い声です。テノールでもカウンターに近いような高い声ですが、ソフトなんです。その他にもタイトルロールの松中哲平(16期)、ノリーナの種谷典子(16期)がなかなか良かったです。ただ、全体のレベルとしては「こうもり」のほうが良くまとまっていました。オルロフスキー公爵の高橋紫乃(17期)は様式感のある締まったメゾソプラノで頭ひとつ抜けていました。アイゼンシュタインの岸浪愛学(16期)、ロザリンデの飯塚茉莉子も素晴らしかったです。しかし、2つの作品を比べて見ると、多分歌手にしてみればドニゼッティのほうが、相当難しいと思います。声の強弱ひとつ取っても、「こうもり」はあまり繊細さを要求しません。イタリアオペラって難しいんだなぁ、と思った次第。

それにしても、研修所を出た歌手が新国立で歌うことが少ないのは何故でしょう?たまに出ているのは幸田浩子くらい。林美智子も最近出ません。安藤赴美子、青山貴、清水華澄、与那城敬、中村真紀などたくさんいるのに。(出ている人がいたら失礼しました、、、ですが)新国立も日本人キャストだけで公演する作品を作っても良いと思います。この前「沈黙」を聴いて、今日の研修所公演を聴いて、ますますその思いが強くなりました。
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ヌッチの連投!見つけた!

来年のことを今から話すには早すぎますが、レオ・ヌッチのシモン・ボッカネグラとルイーザミラーが一週間の間に聴けるという、ラッキーなスケジュールを見つけました。

シモン・ボッカネグラ @ リセウ歌劇場(バルセロナ)

指揮:マッシモ・ザネッティ、演出、ホセ・ルイス・ゴメス、シモン:レオ・ヌッチ、アメーリア:バルバラ・フリットリ、ガブリエレ:ファビオ・サルトリ、フィエスコ:イルデブランド・ダルカンジェロ.......これはすごい陣容。4月12日と17日に公演です。他の日はドミンゴ、ヴァルガス、フルラネット、ロドリゲスというのも豪華。

で、もってルイーザミラーはこの1週間後 @ テアトロ・レアル(マドリッド)です。

指揮:ジェームズ・コンロン、演出:アンドレ・マスペロ、ミラー:レオ・ヌッチ、ルイーザ:ラナ・コス、ロドルフォ:フランシスコ・メーリ、ヴァルター伯爵:ドミトリー・ベロセルスキー、、これも豪華
こちらの初演は4月23日ですから、17日にバルセロナでシモンを聴いて、23日にマドリッドでルイーザ・ミラーを聴くというのは、素晴らしいアイデアだと思います。

ザネッティはもちろん、コンロンも大好きな指揮者です。LAオペラの常任なので、そこでしか聴いたことがありませんが、いつも繊細で上品、コンパクトな指揮が素晴らしい。レジョン・ド・ヌール勲章をもらっているほど、フランス・オペラに傾倒しており、ルイーザ・ミレル(!)でもそれが発揮されると思います。

だいぶ、先の話ですが、お知らせしておきます。

ランスへの旅、藤原歌劇団

 マエストロゼッダのタクトがピンと動くとオケは、音合わせのような響きで始まる序曲を奏でます。僕にとって、これほど心を躍らせるオペラブッファ(ブッファと呼べるのはドニゼッティくらいまででしょうかね?)はありません。2008年にゲルギエフ率いるマリインスキー歌劇場が引っ越し公演で来日した際に初めて聴いてから病みつきに。。日本では滅多に上演されないので、2003年のリセウ大劇場でのロペス=コボス指揮のDVDと、1984年のペーザロでのアバド指揮のCDを聴いて来ましたが、今年になって2月に渡欧した際にアムステルダムのロイヤルダッチ歌劇場で素晴らしい公演に接することができ、そして今日また日生劇場で素晴らしいランスを聴くことができました。

 ロッシーニ自身はこの作品を「良い出来」とは思っていなかったという話がありますが、僕はこのランスの曲を一部使用している「オリー伯爵」などに比べても、素晴らしい作品だと思います。なにしろ、あの14重唱が入っているのですから。。。これが素晴らしい出来で歌われた時には、このオペラは奇跡のオペラと呼んでいいのではないかと思います。

 大阪の公演に行った知人からは、「オケがゆるかった」と言われていましたが、昨日の東京公演ではそんなことは全くなく、今年87歳になるマエストロゼッダは比較的ゆったりとしたテンポでしたが、しまった感じのあるロッシーニを聴かせてくれました。ペーザロに行った気分です。歌手もさすが藤原、良くこれだけ大人数のクォリティの高い歌手を集めたもんだと感嘆。特にコリーナの砂川涼子、コルテーゼ夫人の平野雅代は素晴らしい声を序盤から聴かせてくれました。男声では、騎士ベルフォーレの中井亮一が光りました。彼はゼッダ門下生という感じで、1月のファルスタッフでもゼッダ指揮のもと、フェントンを歌っていました。大発見は、リーベンスコフ伯爵の岡阪弘毅、シラクーザかホセ・ブロスを彷彿とさせる、イタリアンな甘い声にびっくり。歌唱技法的にはまだ伸びる余地はあると思いますが、藤原はこんな若い歌手を隠していたのか!という感じでした。

 余談ですが、今回改めて思い出したのは、最後の大団円のシーンでかかる荘厳な曲が、チャイコフスキーのバレエ曲「眠れる森の美女」の”アポテオーズ”という最終曲、そのものだと言うことと、この曲は19世紀にはフランスで大評判になり、フランス第二の国歌(16世紀のアンリ4世への賛歌)と呼ばれていたそうだということ。この時代、著作権はまだなかったに等しいんですね。このブログで何度も書きましたが、このアポテオーズは世界バレエのカーテンコールにも使われています。https://www.youtube.com/watch?t=17&v=kOxeQY59YNo

 日生劇場は多分カプリッチョ以来と思いますが、ロッシーニを聴くには丁度良いサイズ。いいですね。難は手頃なパーキングがないことくらい。

 さて、個人的なシーズン最終は、再来週の新国立研修所公演、「こうもり」、「ドン・パスクワーレ」です。それまで2週間はお休み。

指揮:アルベルト・ゼッダ
合唱:藤原歌劇団合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【7/3&5】【7/4】
コリンナ: 佐藤美枝子 砂川涼子
リベーア侯爵夫人: 鳥木弥生 向野由美子
フォルヴィル伯爵夫人: 光岡暁恵 清水理恵
コルテーゼ夫人: 清水知子 平野雅世
騎士ベルフィオーレ: 小山陽一郎 中井亮一
リーベンスコフ伯爵: 曽我雄一 岡坂弘毅
シドニー卿: 彭康亮 伊藤貴之
ドン・プロフォンド: 久保田真澄 安藤玄人
トロンボノク男爵: 三浦克次 森口賢二
ドン・アルバロ: 牧野正人 谷友博
ドン・プルデンツィオ: 柿沼伸美 押川浩士
ドン・ルイージノ: 真野郁夫 所谷直生
デリア: 山口佳子 宮本彩音
マッダレーナ: 河野めぐみ 松浦麗
モデスティーナ: 但馬由香 楠麻衣
ゼフィリーノ: 藤原海考 井出司
アントーニオ: 立花敏弘 清水良一

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