プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

セビリアの理髪師 @ 日生劇場

 この公演、とても楽しみにしていました。なんたって、上江隼人さんのロッシーニが聴けるんだから!期待通りでしたね。上江さんがブッファ自体を歌うのも初めてでは?明るく切れが良く、甘く、でも甘すぎず、低音から高音まで段の無い美しい声とイタリア語が素晴らしい。僕、イタリア語は片言しかわからないんですが、まあ、綺麗なイタリア語というのはなんとなくわかるものです。僕は彼のヴェルディしか聴いた事なかったのですが、こうして聴いてみると、彼のロッシーニもいいですねー。

 歌手ではロジーナの中島郁子さんも良かったですね。装飾歌唱が素晴らしい。強いロジーナという感じ。Una voce poco faも貫禄を感じました。バルトロの久保田真澄さん、最近はウェルテルの大法官、清教徒のジョルジュ叔父などで迫力のあるバスを聴いていましたが、昨日は演技も入って、実に魅力的なバルトロを作り上げてくれました。
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 ただ、アルマヴィーヴァ伯爵の山本康寛さん、ちょっと安心して聴けませんでしたね。最後の大アリアを歌ったのは立派でしたが……..

今回の”セビリアの理髪師“の満足感が強いのは、歌手が素晴らしかったこともありますが、何と言ってもマエストロ園田隆一郎さんの指揮が締まっていたこと。ゆったりとしたテンポで明確な音を出してきます。チェンバロの弾き振りですので、レチタティーヴォの入り方も実にスムース。ペーザロで振っているだけありますよね。ロジーナなどところどころテンポが上がってしまうところもありましたが、実に自然にオケを一緒に連れて行きます。

 そして、粟国淳さんの演出も良かったです。廻り舞台をフルに使って、大道具の裏側も舞台にしてしまう。舞台美術は書き割りばかりですからお金はかかっていないですが、実に軽快でわかりやすい演出でした。2幕最後のフィナーレをバレエのパ・ド・ドゥのように一人一人を順に出してきて歌わせる、ヒットパレードのような演出も洒落てましたね。\5,000-のB席でしたが、満足感は5倍くらいの価値がありました。

 さて、今日はこれから夜行便のフライトでラスベガスへ、、、年に一回のライセンスショーです。ホテルはルクソールというところで、アイーダの舞台みたいなんですが、ラスベガスにはオペラは無し。ギャンブルにも興味の無い僕には苦痛です。外は摂氏40度ということで、脱水症状にならないようにだけ心がけて行ってきます!

指揮:園田 隆一郎
演出:粟國 淳
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
アルマヴィーヴァ伯爵:山本 康寛
ロジーナ:中島 郁子
バルトロ:久保田 真澄
フィガロ:上江 隼人
ドン・バジリオ:デニス・ビシュニャ
ベルタ:藤谷 佳奈枝
フィオレッロ:清水 勇磨
士官:妹尾 寿佳
アンブロージョ:木谷 圭嗣
公証人:及川 貢
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フォークトを満喫“ローエングリン“、”美しき水車小屋の娘“

 2012年に新国立でのローエングリン、1幕目フォークトが降りてくる場面で、僕はうかつにも半分寝ていました。そこに、まさに神の声!第一声目であれだけびっくりしたのは、同じく2012年の新国立でドン・ジョヴァンニを歌ったマリウシュ・クヴィエチェンとフォークトの二人だけかと思います。もちろん、生を聴いて素晴らしいと感激した歌手は他にもいましたが、この二人は僕にとっては無名で、それまでにCDもDVDも聴いていなかったのです。

 フォークトの声は独特で、やや鼻にかかった中音から高音にかけて、声の切り替えなしにすーっと上がっていきます。まるで、ウィーン少年合唱団のボーイソプラノが声変わりしないで成人したみたい。高音はマイルドで耳に心地よく、今回の来日での「美しき水車小屋の娘」では、近い場所でそれを堪能することができました。本人も自身の声の“おいしいところ”は良くわかっている様子で、アンコールで歌ったブラームスはまさに高音の至福!特にアンコール2曲目の「日曜日」は彼の魅力が最大限に引き出されていました。シュライアーなどに比べると中低音部の声が弱く、表現力にもやや欠けるという点はありますが、ローエングリンでは4年前に比べてこの点もずっと良くなってきたと思います。

 2013年にはハンブルグでシモーネ・ヤングの指揮でフォークトのヴァルター(マイスタージンガー)を聴きました。これも凄かったですね。ローエングリンに比べて、「人間」らしさにあふれるヴァルターのほうが、フォークトの色々な声の表情がうかがえて楽しい感じもありました。ただ、どちらが彼に今ぴったりかというと、やはりローエングリンでしょう。フォークトが出てくると他の歌手の影が薄くなってしまう感じがありますが、今回のエルザ役のマヌエラ・ウール、必死にローエングリンにすがりつく様が、声にも演技にも良く出ていて素晴らしかったと思います。シュトラウスも良く歌っているようで、声に花があります。そして、ハインリヒ国王のアンドレス・バウアー、威厳のあるバスで舞台を締めていました。やや残念だったのは、テルラムントのユルゲン・リン、今迄新国立でも何度も聴いていて良いイメージがあったのですが、この役としては声が落ち着かず、なんとなく浮いた感じが最後まで否めませんでした。

特筆すべきは、合唱の素晴らしさ!ローエングリンで合唱が重要なことは言うまでもありませんが、新国立のシルクのような美しい合唱は、まさに世界一のローエングリン合唱だったと思います。三澤さんと合唱団にBravi!!

 ワーグナーの指揮については何とも言えるほどの見識が無いのですが、飯盛マエストロの指揮、オケを良く鳴らしてはいたと思いますが、冗長な感じがしました。他の方のブログの記録を拝見すると、2012年のペーター・シュナイダーの指揮が195分だったのに対し209分かかっていたようです。時間の問題というよりも、ワーグナーは聴いているこちらの心も体もグッと持っていくような粘っこさが欲しかった感じがしました。その点はシュナイダーの指揮のほうが蠱惑的だったような覚えがあります。あとは舞台演出ですが、お金がかかっていることはわかるのですが、ほとんど動きの無い1幕目、不必要な動きの多い3幕目と、どうも感心しませんでした。エルザに覆い被さった扇風機のカバーの巨大なのも、高価であることはわかりますが、意味不明.......

 ともあれ、フォークトは、今回の来日では、バイロイトでのパルジファルへの出演を直後に控えているスケジュールを調整して小劇場での水車小屋を入れてくれたそうです。嬉しい限りです。それにしてもフォークトのパルジファル、カウフマンとはだいぶ違うでしょうね。来年はバイエルン歌劇場と5月からタンホイザーを歌い、秋には来日です。今から楽しみ!

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