プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

中村恵理B→Cソプラノリサイタル

 3月21日、オペラシティのリサイタルホールに初めて行きました。ソプラノの中村恵理のリサイタル。”B→C”と銘打っていますが、これは「バッハからコンテンポラリーまで」という意味です。250席のホールは、サントリーのブルーローズよりまだ小さく、木の内装は暖かい感じです。

 この日はピアニストで作曲家の英国人リチャード・ワイルズの伴奏で、バッハからワイルズ迄の小品15曲の構成で、中村自身が「今回の公演は、私の音楽史の中で嵐の章になる。」と言っているように、斬新で精力的なプログラムでした。

 僕と家内は、中村恵理が新国立の研修生だったころから、その声に魅了されていました。この日も、ふくよかで深みがあり、そして強く、しかし良くコントロールされた美しい声を堪能しました。最初の3曲は、ロベルト・シューマンの妻、クララ・シューマンの美しい歌曲。そして次はフェリックス・メンデルスゾーンの姉のファニーの2曲と、この日は女性作曲家の作品を多く取り上げていました。この5曲、繊細でキラキラしていて、中村の高音が輝いていました。本当、ため息ものです。

 そして、バッハのカンタータに続き、“C”の現代作品に移ります。グバイドゥーリナ、ショスタコーヴィッチと吠えるような声の曲が続いたあとの”天人五衰“は、三島由紀夫の詩にワイルズが中村恵理のために曲を付けたもの。日本語の歌曲です。絵画展に例えれば、洋画が並ぶ中に金箔を使った日本画が一枚入ったような感じです。静寂を感じさせる、それは美しい歌唱でした。この日の曲の構成は、おそらく中村とワイルズが考えたものでしょうが、15曲がストーリーを持って連なるように注意深く並べられていました。 

 休憩後の7曲は印象派のイメージ(時代的にも)を持つ、これも女性作曲家のリリー・ブランジェの2作品がみずみずしく、中村の声も弾みます。そしてユーモラスなルトスワフスキの寓話をもとにした2曲。2番目のアントレの前のソルベみたいですね。そして、ワイルズの力作、未発表のオペラ“分裂と征服”から1曲。20世紀初頭に英国で参政権を求めて声を上げた女性たちの生き様を描いたもの。力強い叫びが英語で響きます。最後の言葉は”How funny!”。

 ラストの歌はヴェルディの “E strano/そはかの人か….花から花へ“。正直、それまでの流れの中から、急にクラシックなヴェルディのメロディにどのようにつながるのかと思いましたが、スタッカートを使ったピアノと無伴奏の部分を多くしたりして、見事にヴェルディを現代音楽につなげました。まるで、グレン・グールドがヴェルディを弾いているようでした。中村の歌唱は最高潮に達します。強く、そしてふくよか。聴き応えがありました。終わるとBrava, Braviの嵐。

 実に内容のある、素晴らしいリサイタルでした。前日の”ルチア“に染まっていた頭がリセットされました。中村理恵は4月の新国立の”フィガロの結婚“でスザンナを歌います。これも楽しみですね。

ソプラノ:中村恵理
ピアノ:リチャード・ワイルズ


• クララ・シューマン:《3つの歌》op.12から「彼は嵐と雨の中をやってきた」 
• クララ・シューマン:《6つの歌》op.13から「私はあなたの眼のなかに」 
• クララ・シューマン:《3つの歌》op.12から「美しさゆえに愛するのなら」 
• ファニー・メンデルスゾーン:《12の歌》op.9から「失うこと」 
• ファニー・メンデルスゾーン:《6つの歌》op.1から「朝のセレナーデ」 
• J.S.バッハ:カンタータ第57番《試練に耐えうる人は幸いなり》BWV57から
• 「俗世の命を速やかに終えて」「私は死を、死を望みます」 
• ワイルズ:《最終歌》(2016、中村恵理委嘱作品)から「エピソード ── 三島由紀夫『天人五衰』より」
• グバイドゥーリナ:《T.S.エリオットへのオマージュ》(1987)から「冷気が足元から膝に上ってく
• ショスタコーヴィチ:《アレクサンドル・ブロークの詩による7つの歌》op.127(1967)から「ガマユーン」 
• メシアン:《ミのための詩》から「恐怖」「妻」 
• リリ・ブーランジェ:《空の晴れ間》から「ベッドの裾のところに」「二本のおだまきが」 
• ルトスワフスキ:《歌の花と歌のお話》(1989~90)から「かめ」「バッタ」 
• ワイルズ:《分裂と征服》(1993)から「なんと奇妙な」
• ヴェルディ:《椿姫》から「そはかの人か…花から花へ」
• 【アンコール曲】ワイルズ:《最終歌》から「エピソード ── ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』より」 
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ルチア@新国立劇場

 20日のマチネ公演に行ってきました。実は18日土曜日のチケットを取っていたのですが、大学の卒業式と重なってしまっているのに気づかず、2月になってからあわてて電話で取り直したのです。もうあまり席が残っていなくて危ないところでした。

 まずは感想ですが、「素晴らしい」という以外に言いようがありません。18日に先に聴いた家内から既に印象を聞いてはいましたが、ベルカントオペラを滅多にやらなかった新国立劇場が満を持して放った大ヒットだと思います。これで、個人的には3回目の生”ランメルモールのルチア“(ランカトーレ、デセイで聴いています)鑑賞になりますが、今回は、歌手、指揮、オケ、演出、舞台美術のすべて揃って素晴らしく、総合的には文句なくベストでした。

 今日は歌手から話をしたいと思います。何と言ってもタイトルロールを演じたオルガ・ペレチャッコ=マリオッティは、”美しき清き“という表現がぴったりな声。(容姿も…)声を張り上げず、持ち上げず、すくっと高音が立ち上がります。彼女のような自然な感じのコロラトゥーラを、あまり聴いたことがありません。いつも良く聴くのはカラス、ステファノ盤で、今回の予習用に聴いていたのは2014年のミュンヘンでのダムラウ、カレヤ盤でした。ダムラウはもちろんすごいのですが、”ドラマチック”なコロラトゥーラだと思います。アジリタというほうがふさわしいか。。。それに対しペレチャッコは「行くぞ!歌うぞ!」という感じが全くせずに、自然にコロラトゥーラに入ります。弱音、微音でも綺麗にベルカントします。

一幕目、ルチアが侍女のアリーサを従えて泉のたもとで歌うアリア(カヴァティーナでしょうか?)“regnava nel silenzio(あたりは静寂に包まれて)”は、僕の大好きな曲なのですが、中音、低音でのコロラトゥーラが要求されます。主題を繰り返し歌う最初の部分の、”Qual di chi parla, muoversi, il labbro suo vedea, (まるで誰かに語りかけるかのように唇が動くのを見た。)のこところ、音が下がるところで、音程をはずしかける歌手を聴いたことがありますが、歌い始めてまもないところで、喉が温まっていないでこの難曲を歌うのは大変難しいのだと思います。しかし、ペレチャッコは軽々とこなします。もうこれで感動でした。”狂乱の場“はもちろんbravissimo!! 彼女はデヴィーアの弟子ということですが、なるほどそのシンプルにして研ぎ澄まされた清らかさを聴いて納得。新国立出演のあとに、4月にはMETでリゴレットのジルダ、5月、ボリショイでヴィオレッタ、そして6月にはベルリンで真珠取りのレイラと立て続けに主演で歌うそうです。みんな聴きたくなります。

 エドガルド役の、スペイン人、イスマエル・ジョルディもとても良かったです。歌唱の技巧的にはまだこれからだと思うのですが、感情の込め方に深みがあって引き込まれます。ペレチャッコと二人で、本当に「若いカップルの熱愛」という感じが出ていて魅力的でした。プログラムを見て気づきましたが、2002年の新国立ではエドガルドをファビオ・サルトリが歌っているんです!サルトリのエドガルドというのも良かったでしょうね。(その頃はまだ痩せていただろうし。。)

 そして、エンリーコのポーランド人バリトン、アルトゥール・ルチンスキーは浪々とした美声で、兄の権威そのものが歌っているように聞こえます。まさに適役。ライモンドの妻屋秀和も良かった。2幕目のルチアとのやりとりは緊迫感があって引きつけられました。このシーン、なんかラ・トラヴィアータの2幕1場のジェルモンとヴィオレッタのやりとりを感じました。2幕目はズンパッパもあるし、6重唱の始めの男声2重唱がカルロとロドリーゴっぽかったり、このオペラのいたるところにヴェルディが引き継いだニュアンスがありますね。ヴェルディはベッリーニ嫌い(「長〜い、長〜い曲」と切り捨てたようです。)だったようですが、ドニゼッティの系譜に連なっているなぁと感じた次第。

 このオペラでは合唱がとても重要です。序曲からいきなり合唱に入ります。新国立の合唱団はこの最初の合唱から最後まで、素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれました。引っ越し公演でも合唱がいまいちということはままあることなので、今回は、個々の歌手と併せて、合唱も最高で、つまりはベストの歌唱のキャスティングではないでしょうか?

 そして、指揮のジャンパオロ・ビザンティを褒めるのも忘れてはなりません。大きなオーケストラを鳴らすのではなく、各パートの音を精緻に且つ、くっきりと浮き出させて、歌手を押し出しながら、鳴らすところは鳴らす。そして何より品格がありました。それがこのオペラを更に魅力的なものにしていました。狂乱の場でのグラスハーモニカは、演奏者のサシャ・レッケルト独自の”ヴェロフォン”というのだそうですが、通常のグラスハーモニカの音が透明ガラスだとしたら、このヴェロフォンは磨りガラスという印象でしょうか?その音は、精神が破綻したルチアの神経シナプスから響いて来るように聞こえて、凄みもありました。

 演出はフランス人のジャン=ルイ・グリンダ。モンテカルロ歌劇場総監督のですので、同歌劇場でも来年か再来年にこのプロダクションで公演されるそうです。スコットランドの海をベースのテーマにして、場面転換の時にも紗幕にプロジェクションマッピングで荒れる海と巨大な岩を映し出すなど凝っています。1幕目の泉の場面に、狂乱したルチアの回想(?)のところでまた戻って来るなど、演出にも“読み応え”があります。僕はスコットランドを1週間掛けて旅行したことがありますが、スカイ島という島のイメージがよみがえりました。実に美しい演出。2幕目の城内の舞台も、オークのような床が舞台を引き締めていました。3幕目はやややりすぎ(ネタバレはしませんが)の感もありますが、狂乱の場をリアルに描き出していました。そして演出を支える舞台美術や衣装が実に美しいことも是非付記したいです。新国立の実力が発揮されていると思います。

 それにしても、これだけのキャストでベルカントのオペラを高いレベルで公演できることがわかったからには、この先、新国立でベルカントをもっとやってほしいです。そうですね、勝手に希望演目を上げると、ノルマ(今年藤原で先に越されますが、、、)、清教徒(この"狂乱の場”も聴きたいです。)、夢遊病の女などのベッリーニ作品。スカラ座のロビーで4人の立像の一人(他はヴェルディ、ドニゼッティ、ロッシーニです。プッチーニは何故かいません)なんですが、ベッリーニは新国立劇場主催では一回も上演されていないです。そして、ドニゼッティの女王三部作も。。。 期待しましょう!

(指揮)
ジャンパオロ・ビザンティ
(演出)
ジャン=ルイ・グリンダ

(キャスト)

ルチア:オルガ・ペレチャッコ=マリオッティ
エドガルド:イスマエル・ジョルディ
エンリーコ:アルトゥール・ルチンスキー
ライモンド:妻屋秀和
アルトゥーロ:小原啓楼
アリーサ:小林由佳
ノルマンノ:菅野 敦
合唱指揮:三澤洋史
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【グラスハーモニカ】サシャ・レッケルト



 

東フィル定期公演、ラフマニノフ協奏曲2番、チャイコフスキー交響曲6番

 3月13日月曜日のオペラシティでの東京フィルハーモニー定期演奏会に行ってきました。指揮はバッティストーニ、メニューはラフマニノフとチャイコフスキーです。バッティはロシア音楽が大好きだとのこと。一昨年の大賀ホールでのチャイコフスキー交響曲第5番もとても良かったですが、今日は第6番『悲愴』。13年前に亡くなった僕の父が書斎で良く聴いていたので、馴染みのメロディーです。バッティストーニらしく、良く鳴らすこと!ちょっとロックのコンサートのようです。しかし、破綻はまったくなく、ステージの上から音の塊が、弦、金管、木管のそれぞれの位置から飛んでくるように聞こえます。僕の指定席が前方やや左側なので、そのせいもあると思うのですが、音の立体感が凄い!音が右から左へ手前から奥へ廻るようにうねります。第4楽章、特に好きですが、アダージョでの弦の音が美しい。前日に、ゲネプロを聴く機会があったので、マエストロがどのように音作りをしているのかをうかがい知ることが出来て良かったです。

 感想の順番が入れ違ってしまいましたが、この日の最初の曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。20歳の新鋭、松田華音は6歳の時にロシアへ留学、8歳でオーケストラの共演を果たしたという天才(!)ピアニストです。『かのん』という名前からして、音楽一家の育ちかと思ったらそうではないとのこと。このところ、東フィルは若手のソリストとオケの共演が続いていますが、この日のピアニストは、華麗さ、超絶技巧を前に出してアピールするという若手にありがちなスタイルとは違っていました。華奢な体躯とは裏腹に、線の太い音で、ひとつひとつの音を明確に、輪郭をはっきりと鳴らして来ます。感情的になりすぎないラフマニノフのピアノ、良かったですねー。バッティストーニもピアノを押し出すように、抑え気味の指揮、しかし、第三楽章になるとピアノとオケが一体になって滝のようにステージから音があふれ出して来ました。

 アンコールは無し。僕はテーマのはっきりした曲をじっくり聴いた後はアンコールが無いほうが好きなので、とても良かったです。

 東フィルも2016-2017シーズンは今日で最後、5月から新しいシーズンが始まります。バッティストーニの「春の祭典」、楽しみです。

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番*
チャイコフスキー/交響曲第6番『悲愴』

指揮:アンドレア・バッティストーニ
ピアノ:松田華音*
東京フィルハーモニー交響楽団

オペラ座グラン・ガラ

 昨夜、3月9日のパリオペラ座来日公演、グラン・ガラの初日に行ってきました。凄かったです。感動!オペラ座のエトワール達は、毎年来日して公演をしていますが、やはり本公演は格が違いますね。今回は、ガラと言っても、パ・ド・ドゥをいくつも見せてくれるのではなく、「テーマとヴァリエーション」、「アザー・ダンス」、「ダフニスとクロエ」の三作の全編をたっぷりと見せてくれたので、満足感が強いです。

 「テーマとヴァリエーション」はバランシンの傑作です。ABTの十八番というイメージも強いですが。昨夜は先週の「ラ・シルフィード」の時のコンビ、ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマンで踊られました。この二人はもう完璧ですね。シルフィードとは違って短いチュチュで脚の美しさが際立つミリアム。静止の美しさは、頭から足までピアノ線が入っているようです。マチアスも複雑なジャンプを素晴らしい高さでこなしていました。片腕だけのリフトやキャッチも多いので、かなり体力を使うと思います。小柄な彼には負担が大きいと思うのですが、シルフィード同様に「練習しました」という感じを全く見せずに踊りきったのが凄い。この二人、これから注目していきたいです。

 「アザー・ダンス」は世界バレエなどでおなじみの演目です。2012年には、エトワールになったばかりのジョシュア・オファルトとオーレリ・デュポンで見ていますが、全編を通しで見るのは今回が初めて。ローラ・エッケが踊るはずだったんですよね、たしか。彼女の降板は残念ですが、代わりに踊ったエトワールのリュドミラ・パリエロが神々しいばかりに素晴らしかったです。造形美と言っていいのでしょうか?体全体で作られる形が本当に美しい。ショパンの音楽をそのままグラフィカルにバレエにした感じです。これはファンになりますね。相手役のジョシュア・オファルトも今や貫禄のあるエトワール。切れのある踊りを見せてくれました。この作品、男性ダンサーのソロがけっこう難しそうですが、ピルエットやフェッテも難なく決めてくれました。

 そして、この日のお目当て「ダフニスとクロエ」フレデリック・アシュトン版はYou Tubeで見たことがありますが、バンジャマン・ミルピエ版は初めてです。

 この作品の原作は、ロンゴスという古代ギリシアの作家が書いたものと言われています。エーゲ海のレスボス島を舞台とした若い二人の恋愛物語。2014年にオペラ座の芸術監督就任が決まっていたミルピエ振り付けの力作です。この初演の時の衣装は、写真を見るとカラフルなチュチュを主体にしたクラシックなものだったようですが、今回は布をまとったシンプルなものになっていました。ダニエル・ビュランが作った舞台は初演の時とだいたい同じで、黄色い太陽、地中海の青などの色が幾何学的にステンドグラスのように美しい光になっています。ダフニス役のオーレリ・デュポンは高貴で優雅、美の象徴のように舞台をコントロールします。いつも思いますが、彫刻的な彼女の存在感は凄いものがあります。彼女の恋人役のクロエは、エルヴェ・モローが踊るはずでしたが、怪我で降板。この人の怪我で降板率は5割くらいですね。現在、デュポンのパートナーとしてはこの人が最高なので、全く残念です。しかし、代わりに踊った天才的ダンサー、ジェルマン・ルーヴェも、若いクロエの愛情と焦燥、迷いを余すことなく表現していて満足でした。

 そして、ダフニスを奪おうとするドルコンを踊ったスジェのマルク・モロー、グロテスクな踊りながら、超絶技巧を駆使して主役を食う出来でした。クロエを誘惑するリュセイオン役のレオノール・ポラック、ちょっと可愛すぎるかなと思いましたが、髪をひっつめて妖艶な踊りを見せてくれました。1時間近い、結構長い演目でしたが、本当に引き込まれました。

 そして、この日特筆すべきなのは、音楽です。素晴らしいラヴェルを聴けました。シルフィードとは別の若い指揮者、マクシム・パスカルは東フィルを確かな緊張感を持って鳴らしていました。こんなに良いラヴェルは、ハーディングの「ラ・ヴァルス」を聴いて以来と言っても良いです。コンサートとしても一級でした。バレエの音楽でこれほどのレベルの指揮が際立つのは珍しいです。願わくば、このパスカルが先月のデュポンのボレロも生で指揮してくれれば良かったのになぁ、と思います。

 ともあれ、「バレエは総合芸術だ!」と思い知らされた夜でした。

2-3月のバレエ月間はこれで終わり。この週末と月曜日はバッティストーニ&東フィルのラフマニノフとチャイコフスキー。珍しくゲネプロと本番両方行きます。そしてその後はルチアです。

 それと、今日、7月の藤原歌劇団のデヴィーアの「ノルマ」と、9月の東フィル、バッティの「オテロ」のチケット取りました。「ノルマ」はこれを逃したらいつ聴けるかわからないので、デヴィーアの出る2日間両方取りました。どちらも一番高い席でも1万円台。お値打ちです。皆様も是非!

ノルマ  
 https://www.jof.or.jp/performance/nrml/1707_norma.html

オテロ  
http://tpo.or.jp/concert/20170908-01.php


グラン・ガラのキャスト
「テーマとヴァリエーション」
振付: ジョージ・バランシン
音楽: ピョートル・I.チャイコフスキー
照明: マーク・スタンリー
ミリアム・ウルド=ブラーム / マチアス・エイマン、オーレリア・ベレ、セヴリーヌ・ウェステルマン、ロール=アデライド・ブーコー、ソフィー・マイユー他

「アザー・ダンス」
振付: ジェローム・ロビンズ
音楽: フレデリック・ショパン
衣裳: サン・ロカスト
照明: ジェニファー・ティプトン
リュドミラ・パリエロ / ジョシュア・オファルト

「ダフニスとクロエ」
振付: バンジャマン・ミルピエ
音楽: モーリス・ラヴェル
装置画: ダニエル・ビュラン
ダフニス:ジェルマン・ルーヴェ / クロエ:オレリー・デュポン
ドルコン:マルク・モロー / リュセイオン:レオノール・ボラック
ブリュアクシス:フランソワ・アリュー
マリーヌ・ガニオ、エレノアール・ゲリノー、ローランス・ラフォン、エミリー・アスブン他

指揮:マクシム・パスカル
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

ユーゴ・マルシャンがエトワール昇格!

昨日、3月3日の”ラ・シルフィード”の公演でジェイムズを踊ったユーゴ・マルシャンが、公演後舞台に現れた芸術監督のオレリー・デュポンにエトワール昇格を告げられたとのことです。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/33.html

去年のエトワール・ガラで、一番感動したのが、マルシャンとジルベールの"チャイコフスキー・パ・ド・ドウでした。マルシャン、優雅でしたねー。エトワール昇格おめでとうございます。それにしても、昨日も行けば良かったなぁ。エトワール昇格が海外で発表されるのは初めてではありませんが、日本での発表は今までになかったと思います。

東京文化会館終演後のエトワール昇格の瞬間(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=GyPfim8Oq2Q

3月2日”ラ・シルフィード”のブログ

http://provenzailmar.blog18.fc2.com/blog-entry-618.html



オペラ座の”ラ・シルフィード“

 3月2日、昨年芸術監督に着任して一年たったオレリー・デュポン率いるパリオペラ座の来日公演の初日に、”ラ・シルフィード“を見に行ってきました。全幕ものとしては、ちょっと地味かなぁと思っていたのですが、凄かったです。感動しました。終幕のカーテンコールは10分間続きました。

 シルフィードを全幕で見るのは、昨年の新国立劇場でのブルノンヴィル版に続き、今回のラコット版で2回目。今回のほうが、パ・ド・ドゥの回数が多いように感じました。それでも、フェッテやピロエットのような派手な見せ場はなく、特にシルフィードを演じる女性ダンサーは、小技で見せる場面が多いので、全体にしっとりとした感じの舞台です。

 今回のオペラ座の来日では、目玉のエトワールのうち、マチュー・ガニオ、エルヴェ・モロー、ローラ・エッケという超目玉のキャストが怪我などで降板、来日しないことになり、随分と残念な思いをしている方は多いと思います。しかし、この日の3人の若き(でもないか..)エトワールは素晴らしかったです。特に魅了されたのは、シルフィードを踊ったミリアム・ウルド=ブラーム、小さな体で本当に宙に浮いているように踊り、“妖精感”たっぷり!「練習しました!」という感じが全く無いんですね。踊っている間の表情の変化、手の先の表現などが、余裕たっぷりです。シルフィードが魅力的でないと、浮気するジェイムズが悪者みたいに見えるのですが、これほどシルフィードが素晴らしいと、「そりゃ、こんな素敵な人が出てきたらしようがないよね。」と思うわけです。ポワントでの静止は時間が止まったようで、なんとも美しい!

 この人、2年前の世界バレエで怪我をして、直前に来日できなかったことを覚えています。だから多分、今回見るのが初めてだと思います。さきほど「若き(?)」と書いたのは、彼女、もう35歳でお子さんもいらっしゃるんですね。

 当初、ガニオとアルビッソンの公演とどちらに行こうか迷ったのですが、アルビッソンでは妖精としては大柄すぎると思い、ミリアム・ウルド=ブラームのほうを選びました。正解でした。でもアルビッソンも見に行きたいですけど......

 ジェイムズを踊ったマチアス・エイマン。去年の「オールスターガラ」で、ジリアン・マーフィーと素敵な “Who cares?”を踊ってくれましたが、クラシックを見るのは初めて。背が低いので、“王子感”にはちょっと欠けますが、キビキビしていながら優雅な動き、素晴らしいジャンプ力で、シルフィードを必死に追いかける様子が胸を打ちます。この人は今、30歳。19歳でコリフェになり、2007年にスジェ、2008年にプルミエ・ダンスール、2009年にエトワールと、凄いステップアップをしているんですね。エトワールを取った時の舞台がレンスキーだったそうですが、ちょっと見たいですね。

 そして、つい最近、昨年の12月にオレリー・デュポンによってエトワールに任命されたのが、レオノール・ポラック。27歳ですからアルビッソンよりも若い。エフィーを踊りました。役柄にぴったりという感じ。スコットランドの田舎の可愛い娘の感じが良く出ていました。そして、ジェイムズの友人、ガーンを踊ったイヴォン・ドゥモル、プログラムのダンサーの紹介にも載っていませんでしたが、素晴らしい踊りを披露してくれました。2014年にコリフェだったので、多分今はスジェ?

 今回はオーケストラで東フィルが入り、若いフランス人指揮者フェイサル・カルイが振りました。初日ということで、まだ堅い音でしたが、それでも後半はとても叙情的な盛り上がりのあるアンサンブルを聴かせてくれました。やはり生のオケが入るのは良いですね。

 シルフィードで、これほど心を動かされるとは思ってもいませんでした。しばらく席から動けませんでした。できれば、もう一回見に行きたいくらいです。

さて、あとは9日のグラン・ガラ。デュポン、楽しみなのはもちろん、デュポンとジェルマン・ルーヴェが踊る”ダフニスとクロエ“です。これも東フィルが入ります。それまで出演者に怪我の無いことを祈るばかりです。

フィリッポ・タリオーニ原案による2幕のバレエ
台本: アドルフ・ヌーリ
復元・振付: ピエール・ラコット(フィリッポ・タリオーニ原案による)
音楽: ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー
装置: マリ=クレール・ミュッソン(ピエール・チチェリ版による)
衣裳: ミッシェル・フレスネ(ウージェーヌ・ラミ版による)

ラ・シルフィード:ミリアム・ウルド=ブラーム
ジェイムズ:マチアス・エイマン
エフィー:レオノール・ボラック
ガーン:イヴォン・ドゥモル
魔女マッジ:アレクシス・ルノー
エフィーの母:ニノン・ロー
パ・ド・ドゥ:エレオノール・ゲリノー / フランソワ・アリュー

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