FC2ブログ

プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

パーヴォ・ヤルヴィと樫本大進オールフランスプログラム

 珍しく、N響の定期公演へ行きました。と言っても2月16日のことなので、ずいぶん経ってしまったのですが……

 オールフランスプログラムという内容。目当てはもちろん、ここ数年、とても良く聴いている樫本大進のサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番!ヴァイオリン協奏曲の定番とも言える美しい旋律を持った作品ですが、樫本のは、この聴き慣れた曲を、まるで初めて聴く曲のように新鮮に響かせます。曲の「精神」がそのまま雫のように音になる感じは、彼ならでは。本当に魅せられてしまいます。ただ、いつも聴いている東フィルに比べると、オケの弦の音がやや粗い感じがしました。2階のL前方、S席だったので、東フィルの定席の前から6列目とは響きも違うのですが、それだけではない、何かオケが樫本をバックアップしていない感じがしました。一昨年、ヤルヴィがカンマーフィルハーモニーを率いて、樫本大進とベートーヴェンを横浜で演奏した時のオケとの一体感には、かなわないという感じでした。

 1曲目のデュリフレの3つの舞曲は、初めて聴きました。1927年の作曲と聞いて、現代音楽かと思ったのですが、実際は印象派の音色でした。ドビュッシーの影響も感じられますが、実に美しい、清らかな旋律。キース・ジャレットのピアノのイメージがしました。バレエ音楽ですから、これに振り付けを付けたものを見たいなぁ。

 フォーレのレクイエム、久しぶりに聴きました。好きです。ヴェルディのレクイエムも良いけれど、自分の葬式にはフォーレかモーツァルトのレクイエムにしてほしいものです。ヴェルレクでは、ちょっと間違うと地獄へ落ちそうです。

 ヤルヴィの指揮はとても良く、オケも粗さが目立たなかったのだけど、合唱が新国立などに比べて清涼感に欠けました。同じく、市原愛と、開演前に体調不良で降板したバリトンのシュエンに代わって出た甲斐栄次郎もやや物足りなかったです。二人とも少しオペラっぽい。ピエ・イェズのソプラノは、ボーイソプラのが歌うこともあるくらいなので、もっと透明感が欲しかったし、バリトンは荘厳な宗教感が欲しかったと思います。でも、充分水準以上の出来でした。

 さて、次回はオペラ座からバレエ、スカラ座からオペラ2つの報告の予定です。

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:樫本大進
ソプラノ:市原 愛
バリトン:甲斐栄次郎

デュリュフレ/3つの舞曲 作品6

サン・サーンス/ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 作品61
フォーレ/レクイエム 作品48

スポンサーサイト

東フィル定期公演シベリウス&グリーグ

 いつもはオペラシティで聴く東京フィルハーモニー交響楽団の定期公演、この日(2月23日)はサントリーホールで聴きました。音響のせいでしょうか、楽器の配置が大きく違っていておもしろかったです。1階10列目、真ん中の良席でした。

 この日は、オール北欧プログラム。なかでもグリーグのピアノ協奏曲イ短調を日本の若手ピアニストの先鋒、牛田智大が弾くのが目玉。彼のピアノは、とても柔らかく、けれん味がなく、プレトニョフの心地よく抑制された指揮とぴったり合いました。第一楽章があまりにも有名ですが、僕は第2楽章の洗練された北欧の家具のようで、白樺の林に吹く風のようなさわやかな旋律が大好きです。彼のピアノは叙情的になりすぎず、しかし曲の風景をホールいっぱいに描き出すような筆のタッチがあります。

 ただ、最近の若手ピアニスト、ちょっと神経質な反田恭平や、明るく華やかなチョ・ソンジンなどに比べると、自己主張が弱い感じがします。このグリーグ、もっとオケを引っ張るような強さが欲しかったというのが実感。世界に羽ばたいていくには、もう少しアグレッシブでも良いかと思います。

 この日圧巻だったのは、シベリウスの交響曲第7番。シベリウスの番号交響曲で最後のものですが、(第8番は破棄されて、スケッチだけが残っているようです。)楽章はひとつだけ。交響詩と呼んでもよさそうなもの。フィンランディアやタピオラに近い構成の曲です。フルートが重要な役割を持ち、複雑なメロディーの中心になったり、装飾音になったりして、曲全体の透明感を強くしています。プレトニョフの指揮は、最初のティンパニから弦の、地底から響いてくるような導入部分が、やややりすぎという感じがありましたが、以降は、曲としての塊感を強く保ち、緻密な結晶のような音を聴かせてくれて、とても満足でした。

 それに比べて、この日のコンサートの最初の交響詩「フィンランディア」は、音作りがちょっと疑問でした。大変遅いテンポだったのは、まあ良いとして、全体に音がばらけて、盛り上がるところにが、塊感がないのに、ボリュームだけ上がってしまい、雑な感じが否めませんでした。プレトニョフらしくなかったです。彼には、もっとコンパクトで内省的な、オラモのような指揮を期待していただけに残念。そして、それが第7番では出来ていたのが不思議でした。

 このブログでも何度が触れましたが、僕の好きなシベリウスは、現在ストックホルム王立フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者のサカリ・オラモというフィンランド人の指揮のもの。ハンヌ・リントゥの前にフィンランド放送交響楽団の首席指揮者も務めていましたが、日本ではあまり知られていません。彼の静かな、口数の少ない、内省的なシベリウスは素晴らしいです。僕の持っているオラモのシベリウス交響曲全集、今では廃盤で\20,000-近いプレミアムが付いていますが、別々に集めると安く買えます。是非お試しください。

アンコールのシベリウスのポルカ!初めて聴きましたが、とてもキュートで素敵でした。

 最近、北欧に行きたくなってきました。もちろん、フィンランドでシベリウスを聴きたいのですが、リントゥのはあまり……やはりオラモで聴きたいので、スウェーデンに行かないと行けませんね。。

指揮:ミハイル・プレトニョフ
ピアノ:牛田智大*
ソロアンコール:シベリウス/『もみの木』
シベリウス/交響詩『フィンランディア』
グリーグ/ピアノ協奏曲*
シベリウス/組曲『ペレアスとメリザンド』
シベリウス/交響曲第7番
アンコール:シベリウス『ポルカ』

ガラ公演、ジョン・ノイマイヤーの世界

 先週の「椿姫」に続いて、ハンブルグ・バレエ団のガラ公演に行ってきました。毎年、2月、3月、そして8月はバレエの観劇が多いんです。

このガラ公演は、普通のガラ公演、つまり、パドドゥを連ねて華やかに踊るというのとは、大分違っていました。ノイマイヤー自身がステージに現れて、自身とダンスとのかかわりを観客に向かって話し、自身の歴史を振り返りながら、ひとつひとつの演目を紹介していくという趣向です。最初の「キャンディード序曲」はこのような言葉で始まりました。(英語、字幕付き)

「ダンスが何であるかを知る前から、私もいつも踊りたがる子供だった。レコードをかけるとリビング・ルームが広いステージになり、レーナード・バーンスタインの“キャンディード序曲”を聴きながら、記憶の中の私はひたすら踊った。」

このキャンディード序曲は群舞のパートが多く、日本人の有井舞耀と菅井円加が素晴らしい踊りを見せました。

そのあと、「アイ・ガット・リズム」「くるみ割り人形」「ヴェニスに死す」「ペール・ギュント」「マタイ受難曲」「クリスマス・オラトリオⅠ-Ⅳ」「ニジンスキー」「ハムレット」「椿姫」「作品100─モーリスのために」「マーラー交響曲第3番」、と続きました。プリンシパルのシルヴィア・アッツォーニ、カーステン・ユング、ゲスト・アーティストのアリーナ・コジョカル(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)らの踊りも素晴らしいのですが、僕が特に感銘を受けたのは、やはり群舞です。特に「マタイ受難曲」(英語ではSt. Matthew Passionって言うんですね。随分イメージ違います)「クリスマス・オラトリオ」そして最後の「マーラー交響曲第3番」は本当に素晴らしかったです。僕のバレエ友達(?)のTさんが教えてくれたのですが、ノイマイヤーはこういう大きな曲に振り付けをしたダンスを、“シンフォニック・バレエ”と呼んでいるそうです。なるほど!という感じ。このカンパニーのダンサーは本当に基礎的な技術から高度な技術まで、誰もがとても高いレベルなので、群舞になっても、主役級だけが光るということがないのです。

 そして、ノイマイヤーの魅力はその振り付けが、彼自身が「愛の表現」というように、人間の感性を、見事にダンスの中の手、脚の動き、そして表情に出し尽くしていることでしょう。「あ、こういう表現があるんだ!」と、見ていてとても納得するのです。論理的な動きでもあると思います。

 今回の公演は、もちろん録音で踊られたのですが、マーラーの3番なんかは、オーケストラでやってくれたら、もうたまらない!という感じです。6月にはハンブルグでバレエのフェスティバルもあるそうです。今回の演目のうち、日本で今週末に公演のある「ニジンスキー」以外にに全幕で踊られるものもあるのでしょうか?僕はオペラでしか当地で観劇したことはありませんが、バレエも見に行きたいものです。

東フィル、ジュピター&幻想交響曲

 だいぶ前になってしまったのですが、1月24日、オペラシティでの東京フィルハーモニー定期演奏会での、チョン・ミョンフン指揮のモーツァルト交響曲第41番「ジュピター」とベルリオーズ「幻想交響曲」の感想です。

亡くなった僕の父は、モーツァルトが好きで、交響曲ではこの「ジュピター」がお気に入りだったようです。ですので、僕も小さい頃から家ではこの曲が流れることが良くあったのを覚えています。この日のミョンフンの「ジュピター」は、実に豊穣感があり、ゆったりとした大きな音楽でした。観客を包み込むようなミョンフン独特のものでした。ただ、僕の好みからすると、少し大らか過ぎるような気がしました。僕はもう少し古典的な音のほうが好みです。ただ、これは僕が最近の古楽的演奏傾向に慣れてしまっているせいもあるかもしれません。ともあれ、この日のジュピターは、これはこれで、実に気持ちの良いものでした。

 休憩後の、「幻想交響曲」はミョンフンの得意の演目、繊細さを保ちながらも劇的な音の体験を与えてくれるものでした。しかし、どちらかというと、この日の2つの楽曲では、こちらのほうが古典的か??

東フィルは、ミョンフン、プレトニョフ、バッティストーニという性格の全く違う指揮者のもとで、どんどんと成長しているように思えます。来期は、定期公演にオペラも入れて、挑戦的なプログラムで会員を魅了してくれます。

• モーツァルト/交響曲第41番 ハ長調K.551『ジュピター』
• ベルリオーズ/幻想交響曲 op.14

バレエ“椿姫” by ジョン・ノイマイヤー

 1月は、ブログをすっかりサボってしまいました。と言うよりも、1月は観劇が1回しかなかったんです。東フィルの定期公演、ミョンフン指揮のジュピターと幻想交響曲でした。これは、また後でアップします。お正月に、すっかり「ものを書く」という作業から遠ざかってしまい、そのままずるずるとお休みになってしまいました。

 さて、2月の観劇予定は、海外も入れて6回もあります。そのうち3回がバレエです。今月はしっかり書きます! でもって、最初の公演が2月3日土曜日のマチネ@文化会館、ハンブルグバレエ来日公演の「椿姫」でした。期待した以上に素晴らしかったです。バレエの椿姫は、「黒のパドドゥ」は何回も見ていますが、全幕で見たのは2014年のパリオペラ座来日公演での、デュポンとモローでの舞台だけです。この公演は、僕の見たバレエ公演の中でも1−2を争う素晴らしいものでした。(もうひとつ挙げるとしたら、やはりデュポンのアデュー公演の「マノン」です。)この時は、二人の踊りに目を奪われてしまい、演目全体の構成を見る余裕がなかったのですが、今回は落ち着いて見ることができました。

 感動したのは、ノイマイヤーが作った筋立てです。原作の「椿姫」の序章で、著者のデュマ・フィス(椿姫のモデルになった、実在のアルフォンシーヌ・プレシ(商売名:マリー・デュプレシ)の愛人でもありました。)が、マルグリット・ゴーチェ(これが原作での椿姫の名前、オペラではヴィオレッタ・ヴァレリー)の遺品のオークションで、彼女の恋人アルマン・デュヴァル(オペラでは、アフルレード・ジェルモン)から贈られたアベ・プレヴォーの小説「マノン・レスコー」の装丁本を100フランという大金で競り落とすところから始まるのです。ノイマイヤーはバレエの初めにこのシーンをそのまま舞台に持ち込み、そして「マノン・レスコー」の本の中の世界を、マノンとデ・グリューを幻影のように踊らせてマルグリットを最後の幕まで苛むという筋立てに仕上げ、それをすべてショパンの曲にぴったりとあわせました。ノイマイヤーの能力の高さ(天才ですね!)をあらわしていると思います。このバレエは、ヴェルディの「椿姫」より、ずっと原作に近いのです。ノイマイヤーは「ヴェルディがこの心打たれる状況(黒のパドドゥの場面)に曲をつけなかったことは、わたしにはまったく理解できないことです。」と言っていますが、これはヴェルディの落ち度というよりは、オペラの「椿姫」の台本作家のマリア・ピアーヴェに力がなかったからだと思います。ノイマイヤーとピアーヴェは原作に対して同じ立場にいるわけで、その能力の差がはっきりと出ています。余談ですが、ヴェルディもこれに気づいていたようで、椿姫の後は、主要作品としては「運命の力」と「マクベス」だけはピアーヴェに任せたものの、その後の後期作品は、ボイートとギズランツォーニに書かせています。

 さて、本題に戻りますが、マルグリットを踊ったラトビア出身のアンナ・ラウデールは、基本動作が見事なまでに美しい。彼女のポワントほど美しいポワントを見た事がありません。つま先から膝までで感情を表現します。ショパンのバラード第一番で踊られる、前述の「黒のパドドゥ」の場面では、二人が最後の愛を確かめるのを、情熱の炎を押さえ込むように表現していました。オレリー・デュポンとエルヴェ・モローが舞台の空気を押して動かして陽炎のような流れを作る踊りだとしたら、ラウデールとアルマン役のエドウィン・レヴァツォフは、舞台の空気を切り裂くような踊りだと思いました。後者のほうがもちろんノイマイヤーの精神をより忠実に体現していると言えましょう。ただ、アルマンについては、レヴァツォフは、まさに若く愛に苦しむ役にはまり込んでいて適役だと思いましたが、モローのような「色気」がありませんでした。比較してもしかたないことですが、やはりオペラ座の手にかかったノイマイヤーも凄いものです。

 ノイマイヤーの舞台を見ていると、幕を追って、美しい建築が出来上がっていくようなそんな感じがします。プレルジョカージュやキリアンの白昼夢を見ているような舞台と違う実存感があります。ですので、パドドゥだけ見るよりは全幕もので見たほうがその建築の実存感をきちんと受け止められて、満足感も強いのだと思います。舞台の最後に78歳になるノイマイヤーが舞台中央に出て来ました。かっこいい!!!

 7日の水曜日はガラ公演、「ノイマイヤーの世界」です。楽しみです。

◆主な配役◆
マルグリット・ゴーティエ:アンナ・ラウデール
アルマン・デュヴァル:エドウィン・レヴァツォフ
ムッシュー・デュヴァル(アルマンの父):イヴァン・ウルバン

マノン・レスコー:カロリーナ・アグエロ
デ・グリュー:アレクサンドル・リアブコ

プリュダンス:パトリシア・フリッツァ
ガストン・リュー:マティアス・オベルリン
オランプ:リン・シュエ
公爵:グレーム・フルマン
伯爵N:マリア・フーゲット
ナニーヌ(マルグリットの侍女):ジョージナ・ヒルズ

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:マルクス・レーティネン
ピアノ:ミハル・ビアルク、オンドレイ・ルドチェンコ


FC2Ad