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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

本年のベスト10

遅くなりましたが、本年のベスト公演(観劇した45公演中)10作を挙げます。1,2位が海外になりましたが、国内公演が7作と充実していました。

1 オルフェオとエウリディーチェ 2018/2/28 スカラ座
オケが上下する舞台に乗っているという驚き。フローレスは神の声かという素晴らしさ。この公演がDVDになるという情報が今飛び込んできました!

2 シモン・ボッカネグラ 2018/3/1 スカラ座
ヌッチは絶好調、サルトリ、ベロセルスキーも素晴らしかった。ミョンフンの指揮も良かったがやや叙情的過ぎたか?演出はだるい。

3 コルチャックリサイタル    2018/3/15 オペラシティ
後半のロッシーニ素晴らしかったです

4 三部作           2018/9/8    二期会 新国立劇場 
ミキエレットの演出素晴らしい、指揮、歌手とも最高

5 La Traviata        2018/12/7    MET
フローレス、ダムラウ、ケルシーの歌手陣が素晴らしい。指揮の新MET監督ヤニック・ネゼ・セガンも良かった。ただ、フローラや公爵陣の脇役が弱かった

6 ファルスタッフ       2018/12/15 新国立
今年の新国立で最高の公演

7 東フィルチョンミョンフン、フィデリオ 2018/5/8 サントリー
ミョンフンの指揮良かった、レオノーラのマヌエル・ウール素晴らしい!

8 イル・トロヴァトーレ(バーリ歌劇場、フリットリ) 2018/6/22 東京文化会館
フリットリ降板!しかし、男声3人が素晴らしい

9 世界バレエBプロ 2018/8/8 東京文化会館

10 ラ・トラヴィアータ 2018/10/14 藤沢市民会館
中村恵理素晴らしい,、他の歌手と格が違う
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真珠採り@MET

 さて、土曜日のオペラダブルヘッダー、後半は「真珠採り」です。このペニー・ウールコックの演出は、昨年にカマレナ、マチャイゼでLAオペラで見ています。ライブビューイングでも見ているので、もうお馴染みという感じですが、いつも序曲のところ、海中を模した緞帳全体を、真珠採りの二人が泳いで上下に動くのはどうやっているのかと思います。この演出も細部は少しづつ変わっているようで、今回は、漁村の舞台装置に魚網がありませんでした。もともとやや混み入り過ぎている感じのある舞台なので、変えているのかもしれません。

 まず、特記したいのは、今回、指揮者のエマニュエル・ヴィヨームの締まった指揮です。LAでのグラント・ガーションの指揮は、コンロンの流れを汲む「開放型」の指揮で、実にグランドオペラの雰囲気が良く出たゴージャスでミュージカルのような感じでしたが、ヴィヨームは、全体に音をコンパクトにしていて、塊感がありました。どちらが良いとは言えないのですが、指揮者によって随分違うものだと思いました。(当たり前ですが)

 カマレナはLAでは、今ひとつ調子が出なかったようで、高音で声が割れたりしていましたが、今回は面目躍如。素晴らしい!フローレスよりもう少し軽い感じで、鼻の奥深いところから柔らかい声が出て来ます。ズルガとの二重唱「聖堂の奥深く」も、「ナディールのロマンス」も、本当に聴き応えがありました。

 レイラ役のアマンダ・ウッドバリーは初めて聴きましたが、軽めのコロラトゥーラという、マチャイゼとは全く違うタイプ。装飾歌唱はとてもうまいのですが、完全にベルカントタイプで、やや役との違和感がありました。これ、好みの問題ですね。ズルガのエリオット、ヌーラバッドのアチェートも悪くはなかったのですが、ズルガは本当は他の日に出ているクヴィエチェンで聴きたかったというのが本音。

 しかし、2日で3本のオペラは、やや重かったです。三部作で寝てしまうという醜態を演じてしまいましたので、今後はスケジュールをもう少し考えようと思います。でも、METは毎日色々な違う演目をやるので、ついつい欲張ってしまいますよね。ABTのくるみ割り人形のバレエも隣でやっているんですから。(ところで、ABTのスターだった、パロマ・ヘレーラ、コロン劇場の芸術監督になっていました!)

もっと頻繁にMETに来たいと思いますが、フライト、ホテル、滞在費のどれもが、ミラノやウィーンに比べるとだいぶ高いのが壁になります。次に来られるのはいつでしょうか?

Conductor: Emmanuel Villaume
Production: Penny Woolcock
Zurga: Alexander Birch Elliott
Nadir: Javier Camarena
Leila: Amanda woodbury
Nourabad: Raymond Aceto

ファルスタッフ@新国立劇場

 12月15日の楽日に、ファルスタッフを見に行ってきました。すでに、絶賛とも言える評判が各所から入っていたので期待していましたが、まさに絶品の公演でした。

 まず挙げたいのが、カルロ・リッツィの指揮。僕がリッツィ大好きということもありますが、素晴らしかったですね。序曲からして、切れがとても良く、やや早めですが、一音一音が真珠の粒のように、浮き上がってくる感じ。この人のヴェルディは他には、シモン・ボッカネグラを聴いていますが、とにかく濁りの無い音、クリーンな音です。ファルスタッフで、音楽だけでこれほど魅了されたのは、初めてではないかと思います。

 冒頭、発表があったように、アリーチェ役のエヴァ・メイが風邪気味であるとのことでした。しかし、それなりに、実にうまくまとめていました。この役は、舞台での存在感が絶対的に必要なのですが、まさに、美しい立ち姿と優雅な振る舞いでそれを実現していました。ただ、どうやらオペラは引退を表明しているようなので、それは残念です。デセイもそうでしたが、早すぎる引退ですよね。

 そして、クイックリー夫人のシュコーザ、ナンネッタの幸田浩子、メグの鳥木弥生の4人のアンサンブルが実に良かったです。これだけでうっとりですね。

 一方の男声陣、女声に比べてやや軽い感じがありましたが、それでもフォードのオリヴィエーリ、健闘していました。フォードの実年齢はどのくらいでしょうか?30代そこそこと考えればぴったりきますね。ロベルト・カンディアのタイトルロールも、ちょっと「清純」すぎるかなという感じがありましたが、これは、2013年の来日公演で2度も聴いたスカラ座のマエストリのイメージが僕のアタマにいまだに残っているのもありますね。あのどっしりとしたファルスタッフ、サイトウキネンでの、哀れっぽいクイン・ケルシーのファルスタッフ、そして、今回のまだ若さの残る初老のファルスタッフと役作りで分けられていると思うようにします。

 ジョナサン・ミラーの演出、特に舞台美術は、何度見ても良く出来ていると感心します。最短の時間で場面転換し、音楽の途切れを生じさせません。

 今回のファルスタッフは、今年の新国立の演目の中では最高だったのではないでしょうか?

指揮:カルロ・リッツィ
演出:ジョナサン・ミラー

ファルスタッフ:ロベルト・デ・カンディア
フォード:マッティア・オリヴィエーリ
フェントン:村上公太
医師カイウス:青地英幸
バルドルフォ:糸賀修平
ピストーラ:妻屋秀和
フォード夫人アリーチェ:エヴァ・メイ
ナンネッタ:幸田浩子
クイックリー夫人:エンケレイダ・シュコーザ
ページ夫人メグ:鳥木弥生
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

三部作@MET

 金曜日の夜にトラヴィアータを見て、翌日土曜日は昼からプッチーニの「三部作」、これが4時半に終わって、8時半からはビゼーの「真珠採り」という、ちょっとした強行軍の「三部見」です。もっとゆっくり滞在したいのですが、宿泊費、食費がNYはブエノスアイレスの3-4倍するので、1週間特に目的も無く滞在して、オペラは1つだけ見るという贅沢な旅行はNYでは無理なんです。なにせ、オペラの間にリンカーンセンター内のレストランでワイン飲んだって、グラスで15ドル(1700円)くらいしますから。(ちなみに、LAなど西海岸はもっと安いですが)

 さて、この日は、昼食は食べられないと思って、朝をアッパーウェストのデリで、たくさん朝ご飯食べました。(これがまた美味しいのです。)しかし、これが大失敗で、12時半から始まった三部作の最初の「外套」後半と「修道女アンジェリカ」の前半、満腹感とまだ残っていた時差ボケのせいで、なんと寝てしまいました。海外でもう何十作もオペラを見ていますが、着いた日に劇場に直行しても、どんなに時差ボケがあっても、海外の公演では一度も寝たことがなかったのに、いやはや大失敗。また、もったいない、、、。

 そんなわけで、このブログもちょっと不完全なものになりますが、まずは、指揮者のベルトラン・ド・ビリーの素晴らしさを挙げたいです。彼は、9月に東京で二期会の「三部作」も振っていて、その時も素晴らしかったのですが、この日は、より抑揚があって、盛り上げる振り方をしていました。言い換えれば、初心者でもわかりやすい指揮を、このちょっとオタクっぽいオペラに与えたとも言えそうです。この日、初めて感じましたが、「外套」は、なんかラヴェルっぽいですね。プッチーニにしては、有名なアリアは三部作のすべてでも「私のお父さん」くらいしかありませんが、外套の序奏などは、本当に秀逸で、映画音楽などの現代の音楽にも通じると思います。ゆらぐ船と、ゆらぐ心と、これから起こる悲劇をゆっくりと予感させます。

 二期会の演出とは違い、クラシックな演出はMETらしいものでした。「外套」では、ジョルジェッタの名前を冠した貨物船が、川が運河に横付けされて荷下ろしの最中、最初は赤が基本だった照明が、場面が変わるにしたがい、グレーや緑に変わります。これが油絵の絵画を見るように美しい。ただ、個人的には、二期会の時のミキエレットの不安感を強く押し出す、コンテナが斜めにならんだ舞台のほうが新鮮でした。この演目は、あくまでも心理劇なので、登場人物の心理を表すには、船も波止場も変えてしまって良いと思いますし、そのほうが、屈折した心理面を表せると思います。

 ミケーレを歌ったガグニーゼ。日本でも2015年の新国立の「ファルスタッフ」のタイトルロールで聴いていますが、とても良かったです。この人は、どちらかというと低めのヴァリトンで、中低音部での演劇性が素晴らしいです。ルイージのアルバレス、日本でもおなじみですが、ミケーレの心をかき乱す役柄をうまく演じていました。出色だったのは、ジョルジェッタのアンバー・ワーグナー。初めて聴きましたが、声量があり、音程が正確で、それでいながら、感情を声の中に流し込むような感じが素晴らしい。どちらかというと、3人ともヴェリズモを極めた感じの歌い方で、とてもバランスが良かったです。

 修道女アンジェリカは、一番寝てしまったので、あまり書けません。演出はここでもクラシックで、芝生のある修道院の中庭ですべてが進行します。最後は、ミキエレットのように、子供が生きていたという救いの無いものではなく、普通にアンジェリカが亡くなる時に子供が現れるというものでしたが、ミキエレット版を見ると、やや物足りなく感じました。それと、タイトルロールのオポライス、いつも思うのですが、上手いです。綺麗です。そつがありません。ですが、外套のワーグナーのように、歌の中に感情を入れ込んでいるという感じが無いのです。何か空虚な感じがするのは僕だけでしょうか?

 そして、ジャンニ・スキッキ。これは目覚めてしっかり見ました。それだからではありませんが、ずっと起きていて見ていた家内に言わせても、三作の中で、一番、こなれていて、良く出来ていたと思います。とにかくテンポが良く、多くの演技が要求される演出も、実にスムースでした。ドミンゴのスキッキが出てくるところでは、明治座の新派のように、演奏中でも拍手が起こるなど、METならではというところもありましたが、決してお行儀が悪いわけではないので、そういうものだと受け止めれば良いように思います。今まで、何度も見ている演目ですが、一番良かったと思います。


CONDUCTOR
Bertrand de Billy
Giorgetta
Amber Wagner
Luigi
Marcelo Álvarez
Michele
George Gagnidze

ラ・トラヴィアータ@MET

 12月のあたまに1週間、ブエノスアイレスに滞在し、温暖な気候を満喫して、日光を浴びて日焼けした後に、いきなり零下2度のニューヨークに入るというのはけっこう気合いを入れないと、この歳になるとぎっくり腰になったりする可能性が高いのです。なので、この区間の移動の12時間だけは、ぜいたくをしてビジネスクラスを取っていたのですが、UAの夜行便が機材故障のためにキャンセル!いきなり、アルゼンチン航空のエコノミークラスになってしまいました。このシートの狭いこと。今時、エコノミークラスとは言え、こんな狭いシートがあるのかと思うようなものでしたが、なんとかぎっくり腰にもならずJFKに到着しました。今年は3月のミラノ、パリでも零下の日々を体験していたので、ダウンコートなど、装備は充分。しかし、それでも寒いものは寒いですね。それにしても、今年は3回しか海外へ出ていないのに、そのうち2回で、帰りの便がキャンセルになるというのは、確率66%。ロスバゲはなかったですが、けっこう呪われているのではないかと思ってしまいます。

 さて、ブエノスアイレスのコロン劇場は「ついで」に行ったのですが、NYのMETのほうは狙い撃ちです。2日間で3演目です。

 まず、最初はマイケル・マイヤーの新演出、ディアゴ・フローレスのMETでの初役で話題の、“ラ・トラヴィアータ”、なんと言ってもこれです。もちろん、フリットリがノルマを歌うのがどうか?というのと同じように、フローレスがアルフレードを歌うのには異論も多くあるのは事実ですが、僕はYouTubeで5年くらい前に、フローレスが2幕1場のカバレッタを歌っているのを聴いた時から、いつかは全幕で聴きたいものだと思っていました。

2012年モスクワでの “O mio rimoroso”
https://www.youtube.com/watch?v=LfZqrgvDdYo

ちなみに、こちらは今回の公演の”O mio rimoroso”
https://www.metopera.org/season/2018-19-season/la-traviata/

 結論的には、やっぱり、フローレス「良かった」ですね。成熟したアルフレード、若さをかなぐり出していない、馬鹿すぎない、しかし、情熱的で知的でさえあるアルフレードを堪能しました。2幕目の上記の “O mio rimoroso や、冒頭の“Lunge da lei per me-“のカバレッタでの燃えるような感情を、前にも言いましたが、ポルシェの完璧な6気筒水平対向エンジンのような声に乗せて歌われると、もう、グーッときてしまいます。彼のロッシーニは生で聴いたことはないのですが、ロッシーニの声としてはやや重くなりすぎてきているとのことを聞きます。しかし、アルフレードには今やぴったりだと思います。一幕目のヴィオレッタの幻想で響く遠くの声でさえ、こちらの感情を大きく揺り動かします。3幕目の「パリを離れて」のところで、アタマを一小節早く出てしまい、歌い直したのがちょっと珍しかったですが、全体に感情の歌への流し込みが素晴らしい。これは、タイトルロールのダムラウも同様です。昨年の11月に夫君のテステと来日した時に、一部は歌ってくれて、「凄いなぁ」と思ったのですが、全幕聴くと、彼女の余裕のある歌い方が、実にヴィオレッタの優雅さを出していることに気づきます。1幕目のアリアでも、充分に余裕があり、この分、感情表現に力を割いているように思えます。ともすれば、このような歌手は、感情表現がオーバーになりすぎるのですが、ここはとてもうまく押さえてあります。トラヴィアータの場合、ピークを2幕1場のヴィオレッタとアルフレードの別れ”Amami Alfredo”のところに持って来る演出、あるいは3幕目の”E tardi!(遅いわ)“から「道を踏み外した女」のところに持って来るパターン、そして、最後の”死“に持って来るパターンがあると思うのですが、今回の公演はクラシックな2幕1場のピークバージョンではないかと思います。それだけに2幕目の盛り上がり方は素晴らしかったです。期待以上だったのは、ジェルモン役のクイン・ケルシー。この人は今ひとつ声の奥行きに欠ける印象があったのですが、この日は素晴らしかったですね。ただ、正直ジェルモンは「プロヴァンスの海と土」が良ければ、すべて良しという感じはありますけども。

 指揮のヤニック・ネゼ・セガン、ついに、METの音楽監督になりましたが、レヴァインと比べて、音作りがおとなしいという感じがします。だから、ドン・カルロなどだとちょっと物足りないのですが、今日のトラヴィアータは良かったと思います。クラリネットを積極的に使って、主音節を浮き出させていました。基本的には、超一流の歌手に気持ち良く歌ってもらおうという指揮でした。

 意外だったのが、マイヤーの演出。ラスベガスバージョンのリゴレットのようになるのではという怖れと期待を持っていったのですが、しごくシンプル、クラシカルでした。全幕で、ずっとベッドを舞台中央に置いていたのは、ヴィオレッタの死を、デッカー演出の時の時計やグランヴィル医師のように、逃げられない場所と意味づけていたのでしょうか? それとも、序曲の時に既に、死の場面を出していましたので、その後の全幕はすべて回想だったということでしょうか?そこらへん、もう少し明確にしたほうがおもしろかったと思います。また、コンビチュニーのように、アルフレードの妹は2幕目、3幕目でジェルモンに連れられて登場するのもおもしろいのですが、その意味するところが、ジェルモンの画策なのか、ヴィオレッタの老いと死に対する、「若さ」の象徴なのか、いずれにしても不明瞭なところが気になりました。また、脇役が今ひとつでしたね。特に、フローラのクリスティン・シャヴェスがしまりませんでした。

 色々と言いましたが、公演としては大満足でした。僕の好きなカヴァレッタもカットされませんでしたし。ただ、今年3月にスカラ座で聴いた“オルフェオとエウリディーチェ”でのフローレスとどちらがもう一度聴きたいかというと、オルフェオですね。以前に、カウフマンでアルフレードを聴いたことがありますが、それよりも、アンドレア・シェニエで聴いた時のほうが良かったのと同じようなことです。アルフレードって、そんな役なのかもしれません。

CONDUCTOR
Yannick Nézet-Séguin
PRODUCTION
Michael Mayer

Violetta
Diana Damrau
Alfredo
Juan Diego Flórez
Germont
Quinn Kelsey





コロン歌劇場での“ノルマ”

 生まれて初めて、南米に行って来ました。アルゼンチンのブエノスアイレスは、訳あって前から行ってみたと思っていたところ。今回、同地だけで6泊7日しました。ウルグアイの古い町、コロニア・デル・サクラメントへ日帰りで行ってきたのを除けば、毎日、街をフラフラしていました。パタゴニアとかイグアスの滝とか、一般的に行く観光地はすべてやめにしました。この旅行を計画した昨年の秋に、気づいたのが、ちょうど旅行中に、テアトロ・コロンで、“ノルマ”をやるということ。しかも、タイトルロールがフリットリ!だということで、早速チケットを取りました。ただ、「本当に出るのかなぁ」とは思っていたのです。その悪い予感は的中し、フリットリは11月に入って降板、ベルリンでのファルスタッフに行ってしまいました。まあ、フリットリの喉にとっては、ノルマを歌うことは疑問でしたから、しかたがないかなぁというところです。

 テアトロ・コロンは、その大きさ、美しさから、パリのオペラ座、ミラノのスカラ座と並び、世界の三大オペラ劇場と言われています。僕たちが行った日は、ちょうどブエノスアイレスでサミット(G20)が行われている時で、前日にはコロンで、レセプションがあったので、テレビで見られた方も多いと思います。
 座席で2500,立ち席で1200という大きさは、スカラ座を大きくしのぎ、感覚的にはNYのメトロポリタンに近い大きさという感じがします。

 指揮者はイタリア人のベテラン、レナート・パルンボ。実に素晴らしい音楽を聞かせてくれました。僕は2011年のエルナーニで聴いていました。音をこねくり回すようなことをせず、(ノルマではこれを良くやられます)楽譜をなぞるような指揮。序曲はやや古楽っぽく、切れの良いものでしたが、歌がはいると、レガートが美しく、しかし、若い歌手を引っ張るようなところが、ビシッと芯のはいった演奏につながっていました。伸ばすところは伸ばし、締めるところは締めるというベッリーニの楽譜が良くわかっているという印象があります。そして演出も一本の大きな木が真ん中に立ったシンプルなものでしたが、奥行きのある舞台(20mはあります)を有効につかった立ち回りで好感が持てました。

 フリットリの代役となった、アンナ・ピロッジは、ヴェリズモ的な歌い方がこのノルマにあっていないような感じもして、それがやや気になりましたが、高音まで気持ち良くあがる美声で、感情も良く表されていて、まずは健闘したと言えると思います。アダルジーザのアナリサ・ストゥロッパは、今回の歌手陣の中で一番良く、余裕充分な中高音の発声で、何とも言えない柔らかい奥行きのある声が魅力的でした。声量が一番あったということで、ややノルマを喰ってしまった感じはあります。

 残念だったのが、ポリオーネ役のへクター・サンドバル。一幕目は完全に喉の調子が悪かったようで、高音が立ち上がりません。声量も合唱に飲み込まれるような感じ。2幕目以降立ち直りますが、完全に力不足なのは隠しようもありませんでした。

 終わってみれば、とても印象の強い“ノルマ”ではありませんでしたが、オケを中心にレベル的には高いものだったと思います。多分、2度とブエノス・アイレスを訪れる機会はないと思いますが、コロン劇場の美しさとともに、思い出に残る公演になりそうです。

1週間、温暖なアルゼンチンにいて、これから極寒のNY行きで、現地ではトリプルヘッダーでの観劇、旅の後半はちょっときつい日程です。

とても座り心地が良く、ゆったりしているコロンの椅子
ゆったりしていて、座り心地の良いコロン劇場の椅子、さながらプレミアエコノミー



DIRECTOR MUSICAL INVITADO
Renato Palumbo
DIRECTOR DE ESCENA
Anna Piozzi
NORMA, SACERDOTISA DE LOS DRUIDAS
Christina Major
POLLIONE, PROCÓNSUL ROMANO
Héctor Sandoval
ADALGISA, SACERDOTISA RIVAL DE NORMA
Annalisa Stroppa
OROVESO
Fernando Radó
CLOTILDE
Guadalupe Barrientos
FLAVIO
Santiago Burgi (2, 4, 5 y 7)