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プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ランスへの旅 藤原歌劇団

 台風迫る新国立劇場に、ランスへの旅を聴きに行って来ました。この演目は大好きです。ロッシーニの作品の中でも一番好きだと思います。ただ、あまり上演されないので、今回の観劇も2015年の日生劇場での藤原の公演以来です。藤原歌劇団主催ですが、新国立劇場と、東京二期会も共催。最近、こういう相互乗り入れが増えてきて良いですね。

 ランスへの旅は、17人もの登場人物が出て来て、「黄金の百合亭」という温泉リゾートホテル(?)を舞台に、ドタバタを繰り広げるオペラブッファなので、そこのところを「面白くない」、「浅薄だ」という向きもあるようです。が、そこに描き出される人間関係と人物描写は素晴らしいものです。そして、音楽もどこを切り取っても、すぐに口ずさめるような美しく印象的なメロディーライン。時代も出自もちょっと違いますが、リヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」に似ていますね。このオペラも僕は大好きです。

それにしても、これだけの人数の歌手をダブルキャストで揃えた藤原の実力は凄いものですね。最後の14重唱を歌うキャストだけでも計28人です。その中で、何と言ってもコリーナの光岡さん、美しい声と装飾歌唱。最後の新国王シャルル10世を讃える「即興詩」は、ハープだけをバックにみごとなものでした。そして、今回初めて聴いたフォルビル伯爵夫人の横前さん。パルマを中心に活躍しているそうですが、感情表現が素晴らしい。そして、コロラトゥーラが聴衆を天国に導くメリベーア公爵夫人の富岡さん。明るく輝くヴァリトンの上江さんのドン・アルヴァーロ。上江さんは今年、二期会から藤原に移りました。ミラノに長いこと住んでいてイタリアオペラに造詣の深い彼には、藤原のほうが出番が多いと思います。そして、甘い声で最近どんどん出演が増えている糸賀さんは、騎士ベルフィオーレを歌いました。ホセ・ブロスの声を彷彿とさせるような、彼独特のテノール。高音がちょっと割れるところがありましたが、どんなにゆったり聞いていても、目をつぶっていても、彼の声はわかります。ピーター・グライムスとか、こうもり、フィデリオとか、英独系のオペラでの出演が多かったのですが、彼もやはりイタリアオペラにぴったりな声ですね。

それと、本編では重要な役ではないのですが、マッダレーナの高橋未来子さん、幕が開いて最初にしばらくの間、歌う役なんです。これがしまらないとオペラが最初から崩壊する。いや、素晴らしいスターターでした。「夢遊病の女」の最初のリーザなんかもそうですが、主役ではないけど、とても重要な役です。

 園田マエストロの指揮は、アルベルト・ゼッダを彷彿とさせる、優雅で明るい音楽作り。

 そして前にも書いたかもしれませんが、最後の大団円のシーンでかかる荘厳な曲が、チャイコフスキーのバレエ曲「眠れる森の美女」の”アポテオーズ”という最終曲、そのものだと言うこと。この頃は著作権なんか意味なかったんですね。この曲は19世紀にはフランスで大評判になり、フランス第二の国歌(16世紀のアンリ4世への賛歌)と呼ばれていたそうだということ。このアポテオーズは世界バレエのカーテンコールにも使われています。https://www.youtube.com/watch?t=17&v=kOxeQY59YNo

とにかく、1幕のわりには、休憩込みで3時間と比較的長いオペラですが、飽きることなく堪能しました。


指揮:園田隆一郎
演出:松本重孝

コリンナ:光岡暁恵
メリベーア公爵夫人:富岡明子
フォルビル伯爵夫人:横前奈緒
コルテーゼ夫人:坂口裕子
騎士ベルフィオーレ:糸賀修平
リーベンスコフ伯爵:山本康寛
シドニー卿:小野寺光
ドン・プロフォンド:押川浩士
トロンボノク男爵:折江忠通
ドン・アルヴァーロ:上江隼人
ドン・ルイジーノ:田島達也
ドン・ルイジーノ:曽我雄一
デリア:中井奈穂
マッダレーナ:高橋未来子
モデスティーナ:田代直子
ゼフィリーノ:有本康人
アントーニオ:田村洋貴

合唱 藤原歌劇団合唱部/新国立劇場合唱団/二期会合唱団
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団



 
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カルミナ・ブラーナ by Bunkamura

K-Ballet Companyの公演を9月4日にオーチャードホールで見て来ました。寸前まで行けるかどうかわからなかったのですが、何とか間に合いました。赤坂からタクシーで駆けつけたのですが、渋谷界隈混んでいてハラハラしました。なにしろ、一幕仕立てで、遅刻したらあとから入場するタイミングが全くないんですから。

 今回の目玉は、指揮がバッティストーニだということ!去年3月にも新宿文化ホールでオペラ形式のカルミナ・ブラーナを振っていますね。こういう劇的な曲目はバッティの十八番です。ただ、今回は、思ったほどの「爆発」はなく、どちらかというとシャープに切れ込む感じ。バレエと歌唱にうまく合わせていました。それでも、「フォルトウナ」のテーマの、地響きがするような迫力は、なかなか普通のバレエの演奏では聴けません。ちなみに余談ですが、このフォルトゥナのテーマは、映画「マトリックス」の最終作(レボリューションズ)の見所、主人公ネオとエージェントの対決に使われるバックミュージックにそっくりです。いや、こっちのほうがカルミナに似ているのですが。実際、あの音楽をカルミナだと思っている方も多いようですが、これは別物です。(参考 https://www.youtube.com/watch?v=vNCDtg7M3LA 1:14あたりから始まります。)

本題に戻ります。カンタータの歌唱では、初めて聴く今井未希がとても良かったです。合唱の上を飛んで来るような美しく鋭い声でした。一方、いつも良いと思う、バリトンの与那城敬がやや声がモゴモゴして聞こえたのは、ホールの音響のせいか?僕は3階の右の袖で聴いていたのですが、今ひとつ納得がいきませんでした。これは、合唱も同じくで、同じ新国立劇場合唱団でも、新国立劇場で聴いたカルミナほどの迫力を感じず、やや軽いと思いました。

 バレエは、熊川哲也渾身の振り付けという感じ。群舞は円を強調して、それが色々に変化するようになっています。これは迫力がありましたが、色々な要素が入りすぎていて、見る方からするとやや集中しきれない感じがありました。フォルトゥナはじめとする、メインのキャラクター達の踊りも素晴らしいのですが、もともとのカルミナ・ブラーナがシンプルな詩歌集であることを考えると、やや動きが全体的にtoo muchだと思います。

 ここらへんは、新国立バレエの前監督、デヴィッド・ビントレーの振り付けたカルミナが非常にシンプルで、インパクトが強かったのとどうしても比較したくなってしまいます。

 とは言え、バレエ、歌唱、音楽のすべてに、超一流を起用したこのような、総合芸術への挑戦がBunkamuraで行われたことは、非常に意義深いと思います。30周年記念ということですが、これからもこのような挑戦を続けて欲しいと思います。

演出・振付 熊川哲也
指揮 アンドレア・バッティストーニ
東京フィルハーモニー交響楽団
歌唱
 ソプラノ 今井未希
 カウンターテナー 藤木大地
 バリトン 与那城 敬
 合唱:新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団

バレエ
 アドルフ 関野海斗
 フォルトゥナ 中村洋子
 太陽 高橋裕哉
 ヴィーナス 矢内千夏
 ダヴィデ 堀内将兵
 サタン 遅沢佑介
 白鳥 成田紗弥
 神父 伊坂文月
 他