プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

エフゲニー・オネーギン by ボリショイオペラ

今週はオペラの”当たり”の週のようです。26日のロシア国立ボリショイオペラの"エフゲニー・オネーギン”良かったぁ!

長いテーブルが主役のように全幕、舞台の半分くらいを占めていましたが、これが実に効果的でした。テーブルは舞台の奥にあり必然的に、舞台に向かっては後ろ向きに座る人たちばかりが見えるのですが、どの幕でも音楽の始まる前に食事をする食器の音や、家具の音が入るために、観客は自分もそのテーブルに着席している気分になります。そしてテーブルの廻りを動く人間模様が非常に演劇性豊かな歌手によって表現されていて、まずは声、音楽抜きにしても素晴らしいチェルニャコフの演出。
200810290024_b.jpg

出演者ではタチアーナ役の本人の名前もタチアーナ・モノガローワは出色物。前半と後半の表情、演技の違いもさることながら、声の出し方、装飾の付け方も変わり、地味な田舎娘から華麗に羽ばたいて公爵夫人なったその変化と、その間の舞台には出ない心の葛藤を見せます。実に安心して聴ける安定したソプラノ。オネーギンへの愛を手紙に込める長い長いアリアは圧巻でした。先週のシラクーザみたいに最後の方だけアンコールで歌った欲しかったくらい。

レンスキー役のテナー、アンドレイ・ドゥナーエフも素晴らしくかったです。親友のオネーギンに裏切られた悔しさを表現するのに、俳優さながらの演技力、そして体を動かすその演技で疎かになるどころか、切なさを余裕で歌いあげる歌唱力。ヤンヤヤンヤの喝采です。

それにくらべてオネーギンのウラジスラフ・スリムスキー、決して悪くはないのですが、上の二人に比べればタイトルロールとしては、やや物足りないかなという感じ。声量しかり、表現力しかり、あとちょっとという感じ。また、第三幕のタチアーナとのやりとりでは、タチアーナが思いを残すほどの魅力的な人物に映りませんでした。これは見かけが、なんか汚い.....というせいもあるのか。何年か放浪してきたという設定だからしかたないのかもしれませんが、とにかくタチアーナが良すぎたということでしょう。

公爵役のカザコフだけは、いただけませんでした。出番も少ないので、声が温まらない内に終わってしまった感じ。しかし、最後にタチアーナをオネーギンから引き離す重要な役なので、ちょい出、でもリゴレットのモンテローネ伯爵同様、「存在感」が必要と思いますが、全く無かったです。

逆に脇役でもタチアーナの乳母を演じたエンマ・サルキシャンは年齢もけっこう行っていると思いますが、凄みさえ感じさせる迫力のあるメゾでした。

全体としては歌手のレベルは非常に高く、ボリショイオペラの層の厚さを感じました。

僕は、指揮とオーケストラに関して、なんだかんだ述べるほどオネーギンとチャイコフスキーを聞き込んでいませんが、非常に弦の音が美しく、歌手に遅れることなく、先走りすることなく、長年の友人のように馴染んでいたと思います。

いや、しかし、翌日になっても、まだ昨日の興奮が冷めやらない感じ。あの長テーブルに座りたかった......


明日は、気分を変えてタマラ・ロホのコッペリアです。


そろそろ今年後半から来年にかけての予約も入れ初めていますが、当面の悩みは、9月のスカラ座、バレンボイムのアイーダは取っているんですが、ガッティのドン・カルロをどうするか。なにせ高いんで悩み中。

関連記事
スポンサーサイト

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://provenzailmar.blog18.fc2.com/tb.php/134-aa25de9a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad