プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ブルーレイのトラヴィアータ

2007年7月に、ミラノのスカラ座まで行って見たそのシーズン最後の演目「椿姫」がブルーレイディスクになって発売されたので、これを入手して自宅で見ました。2年前は最終日のゲオルギュー、カウフマン、フロンターリ、マゼール指揮というキャストの最終日の回を、土間の前の方、いわばプラチナチケットを取っていのですが、ゲオルギューに良くありがちな「ドタキャン」(詳しくはこのブログの前のほうにあります。)を食らって、ヴィオレッタは、新進のロシアのソプラノのイリーナ・ルングになってしまいました。

51b7tzIguAL.jpg今回発売されたブルーレイディスクはテノールも私達が見たヨナス・カウフマンではなくてラモン・ヴァルガスになっており、実際に僕が見たものとはだいぶ違うキャストでしたが、当時、マゼールもゲオルギューも初日に大ブーイングをされてしまい、マゼールは憤慨して、そのまま降板するつもりで荷物をまとめているのを、スカラ座サイドが何とか説き伏せて最後まで上演させたとの事。ゲオルギューも同じシーズンの最初に夫のロベルト・アラーニャが「アイーダ」の第一幕が終わったところでブーイングに怒って帰ってしまい、代役がジーンズのまま2幕目を歌うはめになり、怒ったスカラ座がアラーニャとは2度と契約しないと縁切り宣言する中で、妻のゲオルギューのほうは出演するかどうかと、スキャンダラスな騒ぎになった舞台でした。海外のウェブサイトのブログなどにも色々と記事が載り、ミラノで楽しみましたが、高いチケットを買ってゲオルギューが見られなかったのは残念でした。

ということで、このディスク、穴の空くほど見返しました。まず、マゼールの演奏もゲオルギューも、ブーイングを受けるような出来ではなく、これはやはりスカラ座の初演に騒動を起こす一連の輩が、まだまだスカラ座のトラヴィアータにはカラス、ジュリーニの亡霊を生かそうとしているからではないかと思います。

ただ、僕が聞いた最終日の演奏に比べると、オーケストラの弦の音が長く響いていて、やや締まりがなく、特に序曲はイタリア人好みの切れのよい、”ズンタッタ”が出ていないような気がしました。また、ゲオルギューは、やはり94年の名演、ショルティ、ヌッチ、ロパードのDVDに比べると、特に中音域での緊張感が無く、間の抜けた感じのする場面が多く見られました。特に1-2幕。尻上がりに良くはなっていますが、同じ世代のフレミングやデセイなどに比べると、歳を取るに連れて味が出てきているというよりは、劣化しているという感じでややがっかりしました。

ヴァルガスは当時の批評では大変好意的でしたが、ブルーレイでアップの多い画面で見ると、まずルックスが悪すぎる。(これがブルーレイの怖いところですが)それでも顔は充分に演技をしているのですが、声の調子が一本調子すぎて見ている方が今ひとつ感情移入ができません。僕が実際に舞台で見たヨナス・カウフマンに軍配を上げたいと思います。舞台の時よりも良く見えたのは、ロベルト・フロンターリのジェルモンで、地味ですが、締まった声と演技で舞台をピリッとさせていました。

今回、始めて自宅でハイビジョン対応のプロジェクターを使用し80インチ画面と、それなりのオーディオ機器で見ましたが、ブルーレイディスクはなかなかすごいです。スカラ座の最前席にいる、というよりプロンプターボックスの中にいるよう。しかし、ここまでアップにして見ることがオペラにとって良いことなのかなぁ、、と疑問を感じます。これからオペラのブルーレイも、DVDの焼き直しではなくて、元からブルーレイ用に撮影されたものが出てくるでしょうから、そこらへんをどのように構成していくか編集者の腕も試されると思います。
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