プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

トラヴィアータ by メスト指揮

2007-09-08 16:45
7日金曜日、オーチャードホールでのチューリッヒ歌劇場の「ラ・トラヴィアータ」見てきました!指揮者のウェルザー・メストは、早々に小澤の後釜として2010年からのウィーン国立歌劇場の音楽監督就任が決まったばかり。オーチャードホールでのオペラチケットが、¥39,000-というのはちょっと高いが、7月にミラノで見損なったレオ・ヌッチのジェルモンと、時期ウィーンフィル主任指揮者のメストの株価上昇から考えると安いではないか!(?)というふうに無理に納得して行ってきたというわけ。
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トラヴィアータだけは、とにかく昨年暮れから今年ミラノに行くまでに、色々な演奏をたくさん聞いているのだけど、このメストののは、精密緻密、流れる清流のようで、序曲からしててとても上品。


いわゆるイタリアらしい、と言うかヴェルディらしいあの「ズンパッパ、ズンパッパ」が全く無いのだ!まるで全編アダージョのよう。それでいながら歌手よりテンポを早くして歌をひっぱたり、遅くして後から付いていったり…   

全体にバイオリンはピチカート(だっけ?)中心で、旋律としてはあまり聞こえなくて不思議な感じなのだが、歌との調和がすばらしく、とにかくびっくり。これが新時代のトラヴィアータではないか!と思いました。相当に歌手とのコミュニケーションも取れていた感じ。

レオ・ヌッチもこのようなイタリアぽくないトラヴィアータで、ショルティとの時とは違う歌い方で、若い指揮者を応援しているというか、余裕を持って新しい演奏を楽しんで歌っている感じが、がすごいなあと思いました。カーテンコールのときにメストとヌッチは手をつないでニコニコ話してました。

また、このメストは、ルックスも指揮もかっこいいなあ。途中、全く動かなくなったり、後ろのバーに左手をかけたままで指揮したり、ちょっとクライバーのような感じ。(二人ともオーストリア人か?)双眼鏡で指揮者ばかり見ていた。オペラのオーケストラボックスとしては、ちょっと問題なのだろうが、1階席からでも指揮者の上半身が見えてしまうのだ。

で、歌手のほうはエヴァ・メイのヴィオレッタは、2幕目1場の前半までは、なんか弱々しいのが目立って(演出もそうなっていて、泣いたり倒れたりばかり)いまひとつかなあ、と思っていたら、「モロー!」あたりからすごいことになってきて、「アマーミ、アルフレード!」で背筋がゾクッとした。3幕目は、今まで聞いた中では最高の瀕死のヴィオレッタではないかと思った!

寝たままで、消え入るような声で歌い、素晴らしい表現力。ジェルモンの手紙を読むところなど、誰よりも迫真の演技、感動したなあ。この時のメストの音楽も、なんか凄かった。ここではじめてバイオリンが聞こえた感じだけど、小さい音なのに、緊張が張り詰めたような響き。CD出るのかなあ?エヴァ・メイ、CDでしか聞いたことなかったが、こんなすごい歌手だったか!!

テノールのスイスの木こりみたいな歌手も(すみません、名前忘れました)、なかなか良い声でした。が、2幕目第1場のパリ郊外の家のオープニングで、安っぽいキャンピングチェアみたいのに座って、ずっと右端で歌うと、足に力が入らないらしくて、声が少し揺れていた。その後で立ち上がると良い声で、「パリに行って金払ってやる!」アリア(良く省略されるけど、僕の大好きな曲)は良かったのだけど。これは多分オーチャードホールの劇場としての、出来の悪さも原因ね。

舞台の奥行きがなくて、おそらく廻り舞台も無いので、演出も制限があるのだろう。2幕目1場では、まんなかについたてを塔のように立てて、その中におそらく1幕目の家具関係を隠していたのだろう。だから真ん中で歌うと声が後ろのついたての中の倉庫のようなところに吸収されてしまって、全く前に出てこない。

演出家もそれはわかっているようで、2幕目1場は、ほとんど歌い手は右端か左端で歌っていたのだけど、音が偏るし、せっかくの20数分にもわたるジェルモンとヴィオレッタのやりとりが、モノラルみたいになっていた。オーケストラの音も、後ろに吸い込まれてしまっていました。だって、ついたてが全くスピーカーのホーンのようにかたつむり状になっているのだから、どうしようもない。今回は良い席でオーケストラにも近かったのだけど、それでもおとといの新国立の天井桟敷のC席のほうがずっと音が良かった。これだけが残念。

どうでもいいようなことだが、アンニーナが意地悪そうなおばさんでおかしかった。3幕目でヴィオレッタが「20ルイの半分を貧しい人にあげて」と言うと「残りが少しになってしまいますよ。」とアンニーナが言い、ヴィオレッタが「私には充分」というシーンがあるが、なんか、昨日のアンニーナさんは、その後で「私のお給料はどうなるんですか?」と言いそうな感じで、これはスカラ座のアンニーナのほうがいかにも優しいお母さんという感じで声も見た目も良かった。


フローラ、ガストン、伯爵、グランヴィル医師などの役もけっこう大切なところを歌うのだが、これは正直メインキャストからかなり格落ちという感じで、そこらがスカラと違う。

しかし、今週は体調不良にも関わらず2日連続のオペラでした。今日も実は二期会の「仮面舞踏会」が文化会館であるのだけど、これはさすがにやめました。実は、明日も「マラーホフのジゼル」があるはずだったのだが、幸か不幸がマラーホフが怪我したので、キャンセル返金になりました。

次ぎは16日のキエフ国立歌劇場の“リゴレット”です。


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