プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

藤原歌劇団 "夢遊病の女”

久しぶりのベリーニです。僕はこのブログでも何度も書いていますが、「夢遊病の女」大好きで、ライブの公演は今日で2回目ですが、CDやDVDを含めると、トラヴィアータ、シモン・ボッカネグラの次に多い回数を聴いていると思います。

さて、今日の公演ですが、非常に良かったです。何が良かったかって、とにかくアミーナ役の高橋薫子(のぶこ)が期待通りブラヴァでした。2008年の新国立のドン・ジョヴァンニのツェルリーナで非常に良かったのを覚えていますが、4年たって、またうまくなったなぁ、と感じました。アミーナは難しい役ですが、とてもベルカントに高音まできれいに出ていまいしたし、高音のコロラトゥーラも素晴らしい、何より演技も含め情感を入れた歌い方が素晴らしかったです。声質もとても華があって、合唱の時も、そんなに大きな声ではないのですが、ちゃんとタイトルロール、というふうに声が雲の上に出てくるように聞こえました。アミーナは大声で歌ったら歌えるんでしょうが、このように上品にしかも感動的に歌える日本のソプラノがいるなんて。。。。

最後のフィナーレのアリアは高音がちょっときびしそうなところもありましたが、それでもあの難しいアリアを本当に良く歌っていました。まあ、この1週間、毎日バルトリのを聴いてましたので、それと比べたらいけないですね。

そして、伯爵役の妻屋秀和さんも良かった! ドン・ジョヴァンニの時は騎士長で高橋さんと共演していました。だいたい、バスの人だと、騎士長とか宗教裁判長とか、巨人とか、そんな役が多いのですが、この伯爵役は、歌うころも多いし、普通の人間だし、いい役です。日本人のバスで、妻屋さんのように、クリアに発音が出る人っていないですね。みんな、古いタイプのモゴモゴこもる芝居がかったバスで、あれ嫌いなんです。ただ、プレイボーイの伯爵にはやや妻屋さん、真面目すぎるイメージだったかも。

それと、リーザ役の関真理子さんが出色の出来だったと思います。夢遊病の女では、1幕目、幕が開いてから5分くらいまでは主役が出てこないで、リーザが主に歌うのです。だからリーザが駄目だと、主役が良くても離陸失敗という感じになってしまいます。これはちょうど、シモン・ボッカネグラのパオロと同じような位置づけですね。パオロもシモンが出てくるまで、ピエトロと二人で5分くらい幕開きのところを演じますから。

この3人が良かったというのは、トラヴィアータで言うと、ヴィオレッタとジェルモンとアンニーナが良かったみたいなもので、そうするともう後はどうでもいいに近いです。

エルヴィーノ役の小山陽次郎さん、前にテアトロ・ジーリオ・ショウワで同役をやった時は、けっこう良かったと思ったのですが、今回は、ちょっといただけませんでした。音程が不安定で、安心して聞き込めない。声質は、すごくいいんですけどね。後半やや良くなりましたが、出だしは悪かったですね。それとアレッスィオの和下田大輔さん。声はゴニョゴニョ、イタリア語の発音は全くわからない。歌っているのか、レチタティーボかわからないような有様でした。まだ公演が終わって数時間で、このブログをアップするのに、ここまで言い切ってしまっていいかわかりませんし、本人には申し訳ないけれど、それが実感。

ですけど、バルトリ/フローレス、デセイ/フローレスのどちらの夢遊病の女でも、耳をすませて聴いているのはアミーナのほうで、エルヴィーノはどちらかというと退屈な役の感じがします。

ですから今回のこの夢遊病の女が良い公演だったと思えるのは、トラヴィアータで、アルフレードとガストーネ子爵がひどくても、ヴィオレッタ、ジェルモンが良ければ、その椿姫の公演は良いと言えるのと同じです。(かなり強引かつめちゃくちゃな論理)、今回は高橋さんと妻屋さんの素晴らしい出来で、すべてをカバーしたと思います。できれば、違うキャストの明日の公演も見たいと思いますが、ちょっと無理そう。

もうひとつ言えば、東京フィルハーモニー、力不足の感じ。前奏曲の最初のホルンからして、音が割れていて、がっくりしました。指揮がどうのこうの以前にベリーニの美しい音楽を再現する力量が不足していた感じです。


演出はクラシックなものですが、とても良かったです。舞台装置は、5年くらい前に藤原が昭和音大と共同で、テアトロ・ジーリオ・ショウワでやったのとほぼ同じでした。あれもとても良い公演でした。

しかし、ベリーニの音楽は美しいですね。ノルマ、清教徒も美しいけれど、この夢遊病の女は、そんなに長いフレーズでなくて、(ヴェルディがベリーニの音楽のことを「私は、あんなに長い、長い、長い、音楽は書けません」と言ったそうです)良いテンポで次から次に美しいメロディが出てくる。2幕目の後半など本当に感心します。やっぱり天才なんでしょうね。

日本ではベリーニは、本当に知られていません。30歳台で若くして亡くなったために、作品が10しかないこともあると思いますが、もっと評価され、演奏されていい作曲家です。ミラノのスカラ座のエントランスホールに大理石の台に乗った肖像が4つあるのですが、ヴェルディ、ロッシーニ、ドニゼッティ、そしてベリーニです。プッチーニじゃないんです。ベリーニはなんか別格、高貴な存在みたいな感じです。

藤原歌劇団は、2月にヴェルディの仮面舞踏会をやりますので、このチケット取りましょう。

ところで、さっきチェチリア・バルトリのホームページを見ていたら、来年5月にザルツブルグでノルマを歌う予定が入っていました。もう半分行く気になっています。
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