プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

新国立”ピーター・グライムズ”を見て疲れる。

初日から評判が至極良い、ブリテンの”ピーター・グライムズ”を見に行ってきました。英語のオペラを見るのは2回目くらい。

すでに、数々のブログに書かれているように、歌手、指揮、演奏とも素晴らしかったです。

指揮:リチャード・アームストロング
演出:ウィリー・デッカー
ピーター・グライムズ(漁夫):スチュアート・スケルトン
エレン・オーフォード(寡婦、村の女教師):スーザン・グリットン
バルストロード船長(退役船長):ジョナサン・サマーズ
アーンティ(ボーア亭の女将):キャサリン・ウィン=ロジャース
ボーア亭の看板娘;鵜木 絵里、平井 香織
ボブ・ボウルズ(漁夫、メソジスト教徒):糸賀 修平
スワロー(判事):久保 和範
セドリー夫人(東インド会社代理人、未亡人):加納 悦子
ホレース・アダムス(牧師):望月 哲也
ネッド・キーン(薬剤師でやぶ医者):吉川 健一
ホブソン(保安官、運送屋):大澤 建

特に、ソプラノのイギリス人歌手、スーザン・グリットンは、気品があるというか、気高いと言っても良い素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。演奏も、僕は、この演目について全く詳しくないのですが、とても良かったと思います。間奏曲は実に美しく、前の幕の興奮を収め、次の幕への期待を高めます。音楽だけ聴いても、美しいオペラだと思います。それから、研修生の頃から、僕が注目している糸賀修平さん、今回、カバーから良い役を仕留めました。彼の声は甘く、輝きがあり、素晴らしい素質を持っていると思います。今日も、いつもの研修所公演などよりも、ずっと締まった歌い方で良かったと思います。これからベルリンに留学とのこと、個人的にはイタリアに留学してほしいですが、素晴らしい素質が花開くことを期待しています。

しかし、しかし,,,,,,,実を言うと、僕はこのオペラ好きではありません。嫌いと言ってもいいかも。

何故かというと、あまりにも戯曲的に過ぎるのです。そして、演出以前にオペラの構成が類型的すぎるのです。
1幕目では、グライムズと合唱団のかたまりの対立が延々と続きます。この繰り返しに強弱がなく、グライムズはずっと怒鳴りっぱなしというようなのが、オペラというより戯曲を感じさせます。そして、あまりにも多弁です。

後半は、群衆の声は教会の中や、舞台の外から聞こえてくるのですが、これに対するグライムスの対立も、ずっと同じパターン。最後に、自分の名前を繰り返し叫ぶというのも、現代劇っぽいのかもしれませんが、気になり出すと、非常にしつこい。全体になんか、初期の現代劇といったらなんですが、構成がありがちなもので、古臭く感じられてならないのです。

去年新国立で公演されたべルクの”ヴォツェック”は、もっと動と静があり、オペラとしてのバランスが素晴らしかったです。また、最近各地で公演されているヤナーチェクの"利口な女狐の物語"であれ、森番と動物達の両方からの見方が色々と考えられて、見たあとも色々と考えるのが楽しいオペラです。現代オペラであれば、この2つのほうがずっと好きです。

ピーター・グライムズの場合、僕が好きになれないのは、決してデッカーの演出の問題だとは思いません。オペラ自体が、僕の性格に合わないオペラなのだと思います。最初から最後まで多弁で、見るものに色々な見方を許さない感じ。これを繰り返し、同じパターンでやられると、苛つきます。

ただ、最後のシーン、英語で聞いていましたが、船を沈めろということが、イコール死ねという意味には取れませんでした。しかし、買ったプログラムの解説などには死を意味すると書いてあります。何か、このオペラは、評論家も決めつけが多いのでしょうか? 最後に幕が上がって、グライムズ一人が立っているのは、彼が再生した意味ではないかと家内が言っていましたが、そういう見方がもっと自由にできる部分がないと、息が詰まる感じがします。

まあ、結局、好き嫌いの問題だと思います。シモン・ボッカネグラを見た時に、「あ、これは僕が一番好きなオペラだ」と感じたように、このピーター・グライムズは、「僕には合わないオペラ」だったのでしょう。




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