プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ランメルモールのルチア コンサート形式 ゲルギエフ指揮

デセイはやはり凄い。命を削って声を削って歌ってくれた今回のルチア、ドニゼッティでウッと来ることもあまりないのですが、感激しました。

来日前には色々な噂が飛び交って、このルチアだけのために本当にサントリーホールまで来てくれるのかと心配していたのです。フランスでも9月キャンセルが出たという話もあったし。。

今回ステージに登場したときも、何か疲れ気味の感じでしたが、歌い出せばそんな心配は吹き飛びました。今回の彼女の歌い方は、今までの彼女のルチアを歌っていた時とはちょっと違ったかなと言う感じをもちました。やや多め装飾を入れながら超高音はピアニシモを長く美しく入れて(あるいはピアニシモにせざるえなかったのかも)、音程はいつも通り非常に正確で、ますますベルカント!という感じが強くしました。バルトリの向こうを張っているわけではないと思いますが、昨年から今年に書けてはジュリオ・チェーザレなどで演目がだぶったりしましたので、どうしても比較されますよね。今回は、デセイの良さが以前より非常に良く出ていたと思います。これには指揮のゲルギエフも非常に貢献していて、あの顔(ジャック・ニコルソンかと思う)からは考えられない緻密さ、軽さとすっと立ち上がるDOHCエンジンのような(なんだ、その例えは?)盛り上がりが、デセイの歌と見事にマッチしていました。ゲルギエフは何でも振れて、ほとんど寝ないそうですが、僕は、ロッシーニの「ランスへの旅」を聞いた時も同じ印象を持ちました。ロマン派以前のイタリアのオペラも素晴らしくコンダクトしますね。狂乱の場は、デセイのすごさと、ゲルギエフの切れのよい音、そしてやはりグラスハーモニカで合わせてくれると断然美しく、もう息が止まりそうでした。



で、今回の歌手陣は下記。

ルチア   :ナタリー・デセイ(ソプラノ)
エンリーコ :ウラジスラフ・スリムスキー(バリトン)
エドガルド :エフゲニー・アキーモフ(テノール)
アルトゥーロ:ディミトリー・ヴォロパエフ(テノール)
ライモンド :イリヤ・バンニク(バス) 
アリーサ  :ジャンナ・ドムブロフスカヤ(メゾ・ソプラノ)
ノルマンノ :水口聡(テノール)
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正直なところ、今回はデセイの一人舞台。エドガルド(昨日まで間違えてエンリーコと書いてました。失礼の上塗り)を代役で歌ったスリムスキーは、いないほうが良いくらいひどかったです。褒めている方、良かったと思っている方、気分を悪くされると思いますので先に謝りますが、音程は全然定まらないし、レチタティーボなんかグニャグニャ、とにかく声出しの最後の部分だけは思いっきり大きな声を出して、どうだという感じでした。まあベリズモならがまんできないことも無いと思いますが、ベルカントのこのオペラではどうにもならない代物(また、失礼)でした。まだましだったのはあるトゥーロのヴァバエフ、ノルマンノの水口聡でしょうか?

この、演目は、あのマリア・カラスでさえ、最初のアリア「あたりは沈黙に閉ざされ」で、現在残っている録音でも、激しく音程を外してしまっています。ルチアは難しいのです。これを立派にこなしたデセイを褒めるべきであって、スリムスキーを責めるのは酷かもしれませんが、それでもブラボーを出していた聴衆の皆さんもいましたね。とにかく声量さえあればブラボーという感じは、バレエで言えば、ピルエットとかジャンプさえ早くて高ければ大拍手と同じかなと思いました。

ルチアあたりもだんだん唄える人が少なくなってきました。デセイがいなくなれば、美しいフランス語版のルチアなんか、何世紀も聴けないのでは。でも、最近、パトリシア・プティポンがオペラに出だしたという話も聞きます。ドイツライプツィヒ出身の出色の若手ソプラノ、シモーネ・ケルメスも古楽からヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」を唄ったというニュースも入っています。

なんとか、今の若い優秀な世代がつないで行ってほしいものです。ただ、イタリアものの場合、ヴァリトンの後継者がいないんですよ。ゴッビ、バスティアーニ、ブルゾン、そして今晩聞くヌッチ、、、その後がいない。。

ま、一週間のうちに世界最高峰のソプラノとバリトンでイタリアオペラが聴ける東京とう街、なかなかすごいと思います。
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