プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

スカラ座はどこへ行く?

年末に、NHKのBSでスカラ座の特集を4晩連続でやりました。僕は、シモン・ボッカネグラと、ジークフリート(まだ半分)を見ました。カルメンは、演出家にすごいブーイングだったそうですね。そこをそのまま流してしまうREIはおもしろいですね。もしかしたら、毎回ブーイングで、ブーイング無しのパフォーマンスが無かったのでは。

ここでは、僕が愛してやまない、”シモン・ボッカネグラ”についてちょっと話します。結論から言うと、”バレンボイムはベルリンに帰れ!”ということになるんですが、それだけで終わってはブログにもならないので、もう少し書きます。2012-2013のヴェルディイヤーを、なんとローエングリンでスタートしたスカラ座。まあ、ワーグナーイヤーでもあるので、色々と理屈をこねていますが、そこらへんは加藤浩子さんのブログ http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/の「スカラ座の「らしからぬ」オープニング」をご覧下さい。

まあ、でもバレンボイムのローエングリンは悪いはずはなく、僕はスカラ座のオープニングをローエングリンで見たくなかっただけです。(ドイツの劇場であれば、拍手喝采ですが)パスしましたが(実はチラ見した)、キャストも相当なもんだし、良かったんでしょう。

でもね、でも、あの”シモン・ボッカネグラ”は最悪でした。何が最悪か。。これを語るのが難しいのですが、楽曲のパフォーマンスとしては良いんですよ。だから最悪なんです。完全にワーグナーの”シモン”になっている。曲の過剰な膨らまし方、歌唱の最後の伸ばし方、テンポを自由に変えて、情感を盛り上げるやり方、うまいですよ。でも、これって、日本の宅配ビザのおいしいやつって感じなんです。つまり、本物のピザじゃなくて、お手軽に、味の判断レベルを落として「ま、これも悪くない」という感じ。

シモンは聴けば聴くほど、その奥深いヴェルディがオペラに込めた意思がわかってくる、そんなとっつきの悪い演目なんですが、僕は海外で3回、DVDやCDでも色々な指揮者と歌手のパフォーマンスを聴きました。指揮で一番良かったのは、アバド、タイトルロールでは、ヌッチです。いずれにしろ、このオペラには、リグリア海の海賊だったシモンが陸に上がって、ジェノヴァの総督になり、結局は毒殺されるのですが、敵を皆許して、リグリアの海に戻っていくというオペラで、指揮者には、リグリアの海の波の音のような、インテンポなトーンが求められると思うのです。そして観客が感動する以上に、音楽が盛り上がりすぎてはいけない。音楽はあくまで美しい波のようにオペラを支えるのです。演出でも必ずリグリアの海がバックになります。

しかし、バレンボイムのシモンはトリスタンかマイスタージンガーのように、指揮と音楽で、聴衆を盛り上げてしまうのです。これなら、はじめてシモンを見た人も、それなりに満足するでしょう。しかし、スカラ座はピザ屋で言えば、イタリアの本格ピザ(南と北ではちがいますが)を出す、最高のピザ屋なんです。つまり最高のヴェルディを提供する、ヴェルディの劇場なんです。ここで、宅配ピザか、マクドナルドのクォーターパウンダーみたいな、シモンボッカネグラをやるのは許されません。味の分からない人には、スカラ座屋のピザなんだから、間違い無く本物のピザだと思われてしまうことだってあるでしょう。バイロイトでイタリアの指揮者が、イタリア感覚のズンパッパみたいなワーグナーをやって、しかもオープニングはリゴレットだった、みたいな話ですね。それでも、ドイツのオペラ初心者は感嘆するかもしれませんが、真のワーグナーファンはそれを許すでしょうか?


バレンボイム、僕は彼のワーグナーは大好きです。ワーグナーを聴くなら、故人ならフルトヴェングラー、今生きている指揮者ならバレンボイムが最高だと思います。この人たちを聴いたら、悪いんですけど、今度の新国立の音楽監督になる飯盛さんでさえ、バイロイトで指揮棒をふるどころか、助手しかできなかったのが良くわかります。(飯盛さんに限らず、日本人にワーグナーは振れないという感じがします。カイベルトみたいに、トリスタンを振りながら死にたいと言っていて、その通りになるようなものすごいパワーを入れるには、日本人は淡泊すぎます。)

そういうバレンボイムが、スカラ座の監督になった時点で、もうスカラ座がおかしくなってきているんですが、超一流の指揮者が、本人が好きでもないヴェルディをいじくりまわすと、オペラを良く知らない人は、「ヴェルディはこういうものか、なるほどすごい。」みたいになっちゃう危険があります。アメリカ人が緑茶に砂糖を入れて飲むのをオーケーと言う、またそれをグローバル化という方には、それはけっこうですが、僕はそのレベルまで落ちたくありません。

フランス人の渡り鳥総督(と師匠が言っていました)とバレンボイムにいいようにされているのは、スカラ座の音楽監督は超一流でなくてはいけないからなんです。でも、寿司屋にカレーの巨匠を連れてくるよりは、ノセダ、ルイジ、なんならカルロ・リッツィでもいいんじゃないですか? 

今年のスカラ座の来日もヴェルディのリゴレットとファルスタッフですが、この鳴り物入りの公演に、バレンボイムが来ない? 今から舞台の袖で転倒するか、古傷の右腕が痛み出す予定があるんですかね。スカラ座の音楽監督が、日本への公演に、それもスカラのヴェルディの公演に来ない? 日本のオペラファンも随分と馬鹿にされたものです。あるいは本人もバレンボイムも、ヴェルディを振るのは不得意だと自認しているからでしょうか?それなら、音楽監督なんかやめなさいよ言いたい。ベルリンだけだって忙しいのだから。でも、バレンボイムが来なくて、ホッとしているのが本音なんですけどね。

去年の僕のオペラと声楽のリサイタルの観劇は20数回でした。多いと思われる方もいらっしゃるでしょうが、唯一の趣味ですから、週に1回のペースで行きたいと思っているんです。去年は、3年に一度の世界バレエがあって、これを全部見たりして、バレエへの浮気が多く、フィナンシャル的にオペラまで資金が回らなかったす。しかし、最後にテレビで、こんなに腹の立つ公演を見せられるとは思いませんでした。スカラ座のブーイングは、あまりにもヒステリックだと思うことが多いですが、このシモンの後のバレンボイムへのブーイングがひどかったのは、当然でしょう。

バレンボイムのファンの方、さっきも言ったように、僕も今でもバレンボイムのファンです。ですから、この過激なブログを読んで、すぐに怒らないで下さい。彼が日本でトリスタンとイゾルデを振った時は、熱が9度あったのですが、這ってNHKホールまで行きました。バレンボイム、パーペ、マイヤー。至福の一時でした。また、彼が日本でワーグナーを振るときは絶対に行きます。彼のワーグナーは作曲家の意思を120%理解し、150%表現していると思うからです。

でも、これはスカラ座に限った話なんです。最高の寿司にカレーをかけるのはやめてください。私も日本寿司協会の会員なんで、本当にそう思うのです。

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