プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

新国立「愛の妙薬」 by シラクーザ & アザーズ

愛の妙薬、初日に行ってきました。まずキャストを書いておきましょう。

指揮:ジュリアン・サレムクール
演出:チェーザレ・リエヴィ
ネモリーノ:アントニーノ・シラグーザ
アディーナ:ニコル・キャベル
ドゥルカマーラ:レナート・ジローラミ
ベルコーレ:成田 博之
ジャンネッタ:九嶋 香奈枝

今日は、シラクーザのリサイタルに行ったと思えば納得がいく、そんな夜でした。彼は偉いと思います。カサロヴァとのチェネレントラの時もそう思ったけれど、相方が全く合わせてくれなくても、レベルが違っても、自分で自分を盛り上げてそれなりのベストを尽くしてくれる。何より、今日のようなキャスティングでも日本に来てくれる。去年はラモン・ヴァルガスで聞いた(ウィーンにて)ネモリーノ、これは、なんとなくパヴァロッティの流れを汲む感じがしました。とても良かったのはその時のブログに書いたとおり。で、今日のシラクーザのネモリーノは、よりドニゼッティ自身が描いた当時のイメージに近いと思います。あくまでも軽く、澄んだ声。力まずに歌いこなしているという感じ。ベルカントすぎないベルカント。この役でデビューしたんですから、慣れたものでしょう。「人知れぬ涙」は、期待通り素晴らしかったです。ビスをお願いするつもりで、一所懸命ブラボーと拍手してたら、一瞬指揮者と目配せしてはしましたが、残念ながら2度目は無し。彼はよくやってくれるんですけどね。今日は、彼としてはベストのベストではなかったのかもしれません。それでも、タイトルに書いたように、完全にシラクーザ & アザーズでした。このアザーズがちょっとひどすぎました。この前のセヴィリアから、新国立にはがっかりさせられます。まず、指揮がひどい。まあ、新国立の公式ブログに、「バレンボイムの秘蔵っ子 指揮:ジュリアン・サレムクール」と堂々と書くのが、ドニゼッティのオペラの宣伝としては、考えられないでしょう。素人相手の公演じゃないんだから。維持会員だってたくさんいる。新国立の横の薬局のおばさんだって、維持会員で、オペラ詳しいですよ。そういう人達は、バレンボイムはフルトヴェングラーの教えを受けて、今やワーグナーの大家の指揮者であることは当然知っているわけで、そのバレンボイムの秘蔵っ子がドニゼッティ振りますなんて、宣伝するのは、「不得意な演目にも挑戦する指揮者!」と書いてあるのと同じで、観客を馬鹿にしていますよね。実際、こんなにドロドロした愛の妙薬の序曲は聴いたことがありません。本気で「これは、もしかして古楽的な解釈なのかも」と思って聞いていました。で、アディーナが歌い出したら、オケが全然歌に付いていけない。いきなり、「あ、古楽でも何でもなく、指揮が下手なんだ。」と納得。そして、ドニゼッティらしい、楽しさ、テンポ感が最後まで全く無し。一幕目に遅かったせいか、今度は、二幕目の初め、ベルコーレの歌い出しをすっぽかして、どんどん先に行ってしまう。連れもあきれていました。初日ということもあるのでしょうが、公式サイトで、「リハーサル順調に進行中」などと期待を持たせて、この出来は、どういうことでしょう。

そして、アディーナのニコラ・キャベル。期待していたのですが、見事に裏切られました。モゴモゴと腹話術みたいな歌い方で、イタリア語にも何語にも聞こえない。ベルカントはほど遠く、あえて言えばロシア出身の歌手がプッチーニを歌っている感じ。まあ、キャリアを見ても、ドニゼッティではないですよね。2011年のドン・ジョヴァンニでドンナ・アンナで聞いているはずですが、あまりイメージがないんです。こんなに下手だったかなぁ。

セヴィリアのイェニスもミスキャストでしたが、彼は多分プッチーニとかベリズモ系を歌わせたら、うまいと思います。そして、ロジーナ役のロクサーナ・コンスタンティネスクも、これから伸びると思わせる希望がありました。しかし、今日のキャベルは、ミスキャストプラス、下手でした。伸びしろも感じられず........

救われたのは、ドゥルカマーラ役のバリトン、レナート・ジローラミが良かったこと。こっちはあまり期待してなかったのですが、望外に良かったです。表現力のある歌と演技もできる。

それにしても、やはり、指揮もできない音楽監督がモチベーションを失う(もうやめるし、多忙だそうです)と、劇場もこんなになっちゃうんですね。シラクーザが出てない場面は、シチリアの場末の田舎劇場(どこだ?)の雰囲気で、それなりに味がありましたが。

今なら、アディーナを歌える若手はけっこういると思います。日本人なら藤原歌劇ですが、高橋薫子とか、去年ウィーンに出ていたアドリアーナ・クチェロヴァとか。

演出も、かなり不満でしたが、あまりにもネガティブなブログになるので、今日はシラクーザの素敵な声だけ頭の中で響かせて眠るとします。

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