プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

仮面舞踏会 藤原歌劇

今日のブログは、先日56歳という若狭で急逝した、僕の大事な友人臼井一浩さんに捧げます。老後は彼をオペラに誘おうと思っていました。

さて、今日の仮面舞踏会、期待以上の出来と思います。まず、褒めるべきは若手指揮者の柴田真郁(マイク)と東フィルでしょう。特徴のあるバイオリン(だと思う)のピッチカートから始まる序曲は、イタリアの匂いがプンプンして、最初からワクワク感があります。全曲を終えてみれが、手堅いというか、真面目というか、「イタリアを習いました」という感じで、まだ余裕はなく、冒険も無しでしたが、見事にイタリア!インテンポで、絶対に歌手から外さない指揮というのは、最近あまりなかったので、嬉しかったですね。歌手の声量があまりなかったのに比べて、やや音楽が盛り上がりすぎたところもありましたが、それが些細なことと思えるほど、将来性を感じる指揮者あでした。拍手が少なかったのは残念ですが、僕としてはブラボーでした。

一幕目の立ち上がりのシェーナでオスカルの大森智子が音をはずし、ドキッとしましたが、リッカルドの村上敏明、レナートの堀内康雄は安全運転でスタート、ウルリカの森山京子は最初から全開に近く、おどろおどろしい雰囲気で、カバレッタのあたりでは役になりきっていました。二幕目は、このオペラの見せ場、夜中の墓場の場面。ここでは村上も堀内も暖まった感じで非常に良くなってしました。堀内がいいのは、最初からわかっていたという感じですが、失礼ながら村上敏明、予想外に良い! これは、声量を抑えて、音程と表現力に力を注いで丁寧に歌っていたからでしょう。たしかに、パワーが無い、花が無い、特徴が無いと言われればそうですが、それはドミンゴのリッカルドに比べて言えることで、今日の村上は、自分のコントロールできる範囲でベストを出していました。情熱があって、ヴェルディのテノールを歌うという意気込みが伝わってきました。イタリアの小劇場でこの公演を聞けば、村上も堀内も”ブラビッシモ”間違い無し。

あまり演技には力を入れてない感じの藤原歌劇ですが、村上のリッカルドは、最後まで高潔で凜々しく好感が持てました。アメーリアの野田ヒロ子は、やや微妙なところでした。高音は非常に良く、ベルカントなんですが、中音に落ちたときに音程が定まらない。これが残念でした。同じ藤原でも高橋薫子のほうが、そこらへんは巧みですね。

堀内は、二幕目から三幕目にかけて、どんどん調子を上げて素晴らしいパフォーマンスでした。妻を責める、シェーナとアリアの繰り返しは迫力があり、引きつけられます。ここらへんでも、指揮は、まったく歌唱からはずすことなく安定していました。この一日だけの歌唱というのは、出演者のすべてにとって、かなりプレッシャーがかかると思いますが、良く練習をしたのだろうな、と思います。

実は昨日から右目が痛くて、長いこと開けていられず、観劇中もしばしば両目をつぶっていまししたが、ヴェルディの作品の中でも有名なアリアこそ無いですが、最も美しい曲をちりばめた感じのある、この演目の演奏と歌を、全く不安なく楽しめました。

上に書いた以外の歌手は、まだまだという感じで、レナートと、トム、サミュエルの3重唱あたりは格が違うのが明白でしたが、主役級以外は若手中心で、これからの藤原を背負って行くと思われる面々。伸びる余地は充分あるでしょう。

会場は満席、高齢の方が多いのですが、(こっちだって若くはない)ご夫婦で来ている方が多いのと、着物のご婦人が多いこと、そして見るからに音楽を習っていますという若い人も多く見かけました。今日は2階のLの良い席で¥9,000-、若手を積極的に使い、徹底して練習をして、水準以上のものをこの値段で聞かせる、そしてあくまでイタリアオペラを貫く藤原歌劇にブラヴィです。

イメージ的に藤原はヴェルディ以前のイタリアオペラという印象が強かったのです。演出が古いという批判はありましたが、ベッリーニの夢遊病の女は、何度見ても藤原のレベルの高さを感じます。ヴェルディは数年前に宮本亜門の演出で椿姫をやりましたが、(あ、失礼、これは二期会でした。2/11訂正)演出も、歌手も、演奏も今ひとつで、失敗に近い感じがしました。それに比べると、今日のヴェルディは、藤原なりに良く考えて、藤原の良さで押したヴェルディだと思います。彼らがヴェルディの初期の作品をやってくれると良いなと思いました。

一方で、合唱が、皆前を向いて静止して歌う、主要人物も演技らしい演技がなく、古いオペラのスタイルであるのは、今後ファン層を広げるためには、考えていかなければいけない点だと思います。しかし、色々動き回って、結果歌がおろそかになるよりは、前を向いて、各自が最高のパフォーマンスで歌ってくれるほうが良いと僕は思うのです。

9月には、マリエッラ・デヴィーアを招いてのトラヴィアータ。昨年11月にシチリアで聞き損ねていますので、楽しみです。そして、そのBキャストに、新しい藤原のソプラノ、佐藤亜紀子が出ます。これも楽しみです。そして、来年1月にはアントニオ・シラクーザを招いてのロッシーニ”オリー伯爵”公演。これからの、藤原歌劇、期待できます。

さて、明後日の、愛の妙薬の最終日。これが良いと、かなり気分が良くなりそう。
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