プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

リゴレット by ライブビューイング

METライブビューイング「リゴレット」の最終日に行ってきました。

僕は、あまりライブビューイングが好きではなく、それならDVDでも一枚買おうという方なんですが、このリゴレットだけは、予告編を見た時から絶対見に行こうと思っていました。なにしろ、舞台を60年代のラスベガスに置き換えたと言うんですから興味津々。

これは、間違いなく大好きな演出です。マントヴァ公を公爵の意味する"デューク”という名前に置き換えて、フランク・シナトラとその取り巻き(ディーン・マーチンとかサミー・デイヴィスJr.など、通称ラット・パック)になぞらえて、リゴレットは彼らの中で道化役者という設定も自然。

正直、今回のプロダクションでのストーリーの流れはあまりにも自然で、今まで見たクラシック版のリゴレットよりも、歌にも動きにも必然性が感じられたくらいです。演出のマイケル・メイヤーの実力はすごい。

たとえば、ジルダが家から3ヶ月も外に出られない設定も、ラスベガスなら「さもありなん」という感じ。実際、21歳未満はカジノには入れないのですから、今でも旅行でラスベガスに家族で行くと、子供達だけは部屋にいるか、映画館に行くかと別の世界にいなくてはいけないのです。

そして、スパラフチーレが殺したジルダをキャディラックのトランクに投げ込むと言うのも、実に迫真の演出。袋に入れてその中身を見ないというより、よっぽど現実味があります。

ただ、モンテローネがアラブの金持という設定はまだ許せても、周りの取り巻きがモンテローネのかぶり物を笑いものにするシーンは、人種差別的な問題があるのでは。こういうところはアメリカ人は無頓着というか、洗練されていませんね。まあ、METのスポンサーの多くがユダヤ系であるので、問題にはならないのでしょうが。

歌手では、ジルダ役のダムラウが素晴らしかったです。さすがダムラウという感じ。この役を得意にしていたグルヴェローバの再来(まだ現役だから再来ではないですね)という感じ。清らかな高音までスーッと出て、表現力も素晴らしい。それにしても、ミイラの棺桶やキャディラックのトランクに詰め込まれて大丈夫だったんでしょうか?僕なんか閉所恐怖症ですから、気が狂ってしまいます。

デューク役のピョートル・ベチャワも良く頑張っていました。役作りを相当勉強したと思います。お気楽なプレイボーイ役をうまくこなしていましたが、マフィアのボスというにはお坊ちゃん過ぎるか? どうもこの人を見ていたら、ジュゼッペ・ステファノを思い出しました。声の感じ、見てくれも良く似ているんです。つまり、高音が明るくないので、ややこの役にはどうか....という感じは持ちました。しかし、これはパヴァロッティ・コンプレックスですね。ああいうマントヴァ公はもう出ないでしょうから。

残念だったのは、タイトルロールのルチッチ、僕の好みもあるとは思いますが、歌い方がやや単調で、「悪魔め、鬼め」という気迫と、自身もマフィアの一員という”悪さ”みたいなものが感じられないのです。声は、鼻でくぐもるような感じで、ヴェルディバリトンではないなぁと思いました。ここはレオ・ヌッチが一番ぴったりなんでしょうが、なかなか今はヴェルディを歌うバリトンが不足しているようです。

良かったのは、スパラフチーレのコーツァン。こちらは鼻が通ったくぐもらない素晴らしいバス。体は細いので演技も殺し屋らしく、脇をきちんと固めていました。

マリオッティの指揮、やや軽い感じはしましたが、とても良かったと思います。これは、やはり生で聴きたかった。

それにしても、このように大画面でアップになってしまうと、どうしてもビジュアル系の歌手でないと持ちません。往年のサザーランドなどのような歌手は出幕がなくなりそうです。

METのライブビューイングはインタビューも楽しみのひとつ。まあ、舞台裏が観劇途中で見えてしまうので、オペラにのめり込めない原因にはなるのですけどね。フレミングのインタビュアーは、もう堂に入ったもので、CNNのキャスターもできそう。その中で、ダムラウに役作りの秘訣を尋ねた時、「I trust on Verdi(ヴェルディを信じているの)」と答えたのが印象的で素敵でした。

最後に、一番違和感のあったのは、指揮者以外にイタリア人が一人もいないこと、ヴェルディのオペラで、しかもイタリアンマフィアをモチーフにしているのに、タイトルロールもどう見てもロシアのマフィア。僕は、イタリアマフィアのドラマ(ソプラノズなど)や映画を多く見ているので、これだけ顔のアップが多いと、やはりアル・パチーノみたいな顔が欲しくなります。やっぱりヌッチですよね。

その意味では、次回上映のパルジファルは違和感の無い配役で、これも見たくなりました。
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