プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

新国立「アイーダ」

新国立の金看板、ゼッフェレリの「アイーダ」5年ぶりの公演です。最終日を見ました。

これは、やはり新国立劇場の宝ですね。劇場の開場記念に数億とも言われるフィーを払ってゼッフェレリにこの劇場用に作らせたプロダクション。メトロポリタンやスカラ座の演出にも負けません。ステージ狭しと広がる大仕掛けな舞台装置、豪華な衣装、延べ300名の凱旋行進、2頭登場する馬、アイーダトランペットをステージ上で演奏するなどの新国立ならではのアイデア、世界的にもレベルの高い新国立バレエ団の素晴らしい”巫女たちの舞”、と思ったのですが、実は新国立のダンサーではないんですね。そして第4幕での完全な二重舞台、ステージすべてが王宮と地下牢の2段となり、幕と一緒に地下牢が上がって来るスペクタクル!これができるのは、世界でも限られた数の歌劇場しかないとのことです。

まさしく、グランドオペラの中のグランドオペラ、新国立劇場にとっては、公演すればするほど赤字になるそうですが、見るものはオペラの魅力を堪能できます。

で、この日のアイーダ、指揮が始まったとたん、「おやっ?」。非常にゆっくりなテンポ、そして楽器がバラバラになって音を出してくる感じが非常に不思議。不協和音とまでは言いませんが、アイーダの序曲の魅力である一筋の光になってくるような清冽感がありません。この感じは指揮者の結局最後まで続きました。微妙な、でもたしかにわかるテンポダウンや、ゆらぎが結局ドイツ的なのです。で、なんかゆるい。まあ、指揮者のミヒャエル・ギュットラー、ドイツ人でもっぱらワーグナーを指揮している若手ですから、そう期待はしていませんでしたが、それにしてもどうしてそういう人をヴェルディのオペラの指揮に持ってきたのでしょう?スカラ座にバレンボイムが来たように、ワーグナー派の指揮者にヴェルディを振らせるのが世界的な流行なんでしょうかね。

イタリアにも日本に呼べそうな若い指揮者はいますし、日本でも2月に"仮面舞踏会”で実にイタリアンなテンポ感のある指揮をした柴田真郁のような有望な若手がいるのですから、そう言う人をピックアップしても良いと思います。

やはり、アイーダの指揮には、テンポ感、緊張感が欲しい。引き締まった指揮。この日のギュットラーにはそれがありませんでした。

歌手では、まずタイトルロールのラトニア・ムーア、期待していたのですが、残念ながら、前回の公演のノルマ・ファンティーニから見てもだいぶ格下でした。とにかく声量はありますが、表現力、気品に欠けます。エチオピアの王女の声ではありません。それでも、最終日は声もだいぶ抑えていたとのことですが、一人大声を上げていたという感じです。ただ、まだ若いのでこれから伸びる可能性は充分にあると思いました。まだヴェルディについての理解も乏しいような気がします。ヴェルディを良く知っていたら、ああいう歌い方はしないと思います。そしてラメダスのカルロ・ヴェントレも、ちょっといただけませんでした。高音に艶も甘さもなく、くぐもった声を張り上げるという感じ。バリトンかと思ったほどです。張り上げてはいるのですが、声が届かない。三重唱では、彼の声だけ合唱の中に消えてしまうのです。こちらは、今後の可能性は無さそうな感じ........

素晴らしかったのは、アモナズロの堀内康雄、もう格が違います。声の質も表現力も。2007年の公演の同役でも素晴らしかったですが、長いヨーロッパでの生活で、ますます磨きがかかった感じです。第三幕目のアイーダとの二重唱から、怒りに変わるあたり、本当に息を止めて聞き入ってしまいました。この日の歌手で最高だったと思います。それだけに、彼が去ったあとの三幕目のアイーダとラダメスのやりとりは実に退屈でした。最後の地下牢の場面で、ようやく少し役に入りこんで感情表現が出来ていた感じです。

アムネリスのマリアンネ・コルネッティは良かったと思います。まず気品がありました。第4幕の朗唱も想いがこもっているのが伝わってくる熱唱。中低音がちょっと地声ぽくナマに聞こえましたが、アイーダ、ラダメスの二人に比べ、自分の声を上手にコントロールをして、アムネリスを充分理解して唄っているように聞こえました。

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そして、ランフィスの妻屋秀和にはブラヴォ!! ずいぶんとシェイプアップしてスマートになられましたが、声も切れが増していました。エジプト王の平野和、1幕目の出だしの難しい低音が、やや不安定だった気がしますが、メロディーに乗ってきてからはとても良かった。前回のエジプト王の斉木健詞のようなモゴモゴ感(ファンの方には失礼)がなく、気持ち良く聴けました。

伝令が樋口達哉というのも、ずいぶんと贅沢な配役。彼はラダメスのカヴァーに入っていましたから、そっちでやってくれたほうが良かったかも、と思いました。

合唱は、いつもながら素晴らしく新国立ならではの魅力がありました。またバレエも振り付けもダンサーの技量も光っていましたが、ダンサーは多分東京シティバレエ団。

この日は、加藤浩子先生と先生の講座の出席者の方たちと観劇後に会食をしましたが、そこに平野和さんが登場、拍手喝采でした。フォルクスオーパーの専属歌手の平野さん、この公演のために家族と一緒にウィーンから来日していて、翌日帰国という忙しいところに顔を出してくれたのですが、非常に感じが良く、また話しもおもしろい好青年で、これは会った人はファンになってしまいますね。まだ35歳ということですから、これからが楽しみです。

新国立のアイーダ、やはり見に行って良かったとは思いますが、イタリアオペラのイタリアオペラらしさが、新国立の公演でも、このところちょっと失われて来ているような気がします。先日のブログに書いた、ムーティのローマでのナブッコのbisの時の言葉が胸に響きます。
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