プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

METアイーダ(ライブビューイング)

METの2010年のアイーダがWOWOWで先月放送されたのを、新国立のアイーダの印象が薄れないうちに見ました。演出はゼッフェレリではありませんが、どちらかというと重厚感を増したソーニャ・フリーセルの1980年のプロダクションを少し変化させたバーション。80年代にMETでアイーダを初演する際にはゼッフェレリも検討されたようですが、派手すぎるということになったようです。最近でこそ読み替えの演出もやっていますが、この頃のMETは本当にクラシック、保守的、重厚だったのです。

アイーダの定番DVDと言えば、この80年代のMET(実際は1989年)のレヴァイン指揮、ドミンゴ、アプリーレ・ミッロ、ドローラ・ツァーイック、シェリル・ミルンズのバージョンが定番になっています。これは、なかなか凄いクォリティです。ドミンゴはもちろん、ピークが短かったミッロが素晴らしい声を聞かせています。

驚くべきは、2010年のアムネリスもドローラ・ツァーイック、この人30年近くアムネリスを250回以上唄っているそうです。で、ラダメスはヨハン・ボータ、彼もこの役を得意としていて、僕も2009年のスカラ座の来日のアイーダで聴きました。この時の指揮はバレンボイム。この頃の彼は、まだインテンポだった印象があります。そして、アイーダはヴィオレッタ・ウルマーナ、この人もスカラ座で同役で聴きました。

この二人について言えば、METの2010年の出来はスカラ座来日よりずっと良い。これは映像で見たこともあるのでしょうか。とにかく、気品と様式感が素晴らしい。もちろんドローラ・ツァーイックも中低音から高音までを震えるようなメゾソプラノで唄っていて、この3人の重唱はすごい緊張感があり、声のバランスも素晴らしく聞き応えがありました。残念ながら、新国立の3重唱とは比較になりません。あの叫ぶアイーダ、声が届かないラダメスは残念でした。

前回のブログにも書いたのですが、新国立でのラトニア・ムーア、カルロ・ヴェントレは、声を張り上げていました。しかし、2010年のMETを見て、興味深かったのは、インターミッションでの恒例のインタビューで、フレミングが、ボータとツァーイックに声の出し方について聴くと、二人とも(別々のインタビューで)「ヴェルディではScream(叫ぶ)してはいけない。声の大きい人はどうやってそれをコントロールするかが重要。ピアニシモが多い。」と強調していたこと。ツァーイックは、「若い人は、持っている大声量の声をコントロールできない。」ので、そういう人のためのスクールをやっているとのこと。ボータも、もともとの大声を良い指導者に巡り会ってコントロールできるようになったということでした。

そうなんですよ。ヴェルディのソプラノ、テノールはヴェリズモのようにスクリームしてはいけないんです。

アイーダも一見派手に見えますが実は心理劇です。(と師匠から教わりました)ですので、ピアニシモを含む弱音から声量が上がってきても、表現が重要で、音量が重要ではないんです。

カイロでの1871年でのテレーザ・シュトルツ、ヴェルディが言う理想のアイーダ、はどのような声で歌ったのでしょうか。タイムマシンがあれば聞きにいってみたいものです。
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