プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

新型エヴァ・メイの椿姫に落涙!

ハンガリー国立歌劇場の椿姫に行ってきました。エヴァ・メイの椿姫を見るのは2回目。最初は伝説的になっている、2007年のチューリッヒ劇場来日でのメスト指揮の時だった。2幕目、3幕目が特に素晴らしく、ピアニシモに落涙。

普通、トラヴィアータで落涙するのは、一幕二場で、クラリネットの旋律で手紙を書くヴィオレッタのところに、突然帰宅したアルフレードとの熱烈な会話から、ヴィオレッタの絶叫の”Amami,Alfredo,Amami quant'io t'amo”(私があなたを愛しているくらいに、愛して)、そして”Addio!と舞台から去って行くところです。ここで、ヴィオレッタは事実上死ぬのですから。

カラスのジュリーニ盤を聞いていても、ここが一番グッと来ます。3幕目は静かなエンディング。ややオマケ的な幕というイメージもあります。そこを、このメイが唄うと、3幕目がキラキラと輝きます。何と言っても、彼女の消え入るようなピアニシモ、消え入るような声でありながらホールの奥まで届く美しい声。今回もこのソプラノは健在でした。

しかし、今回のメイが2007年と違ったのは、先ほど述べた"Amami,Alfredo",のところや、一幕目の夜会の場面で、凄みのある歌い方をしたこと。表現力がびっくりするほど出ているのです。メイというとベルカントで自然な声で歌うイメージですが、今日はスピントとは言いませんが、グイグイと引き込んでいく歌い方が諸処に聞かれました。また、演技もすごい!3幕目などベッドから落ちて転げ回るのですが、その演技はナタリー・デセイレベル。本当に熱演でした。デセイが正式に引退宣言をした今(知らない方もいらっしゃって「エーッ」かもと思いますが、6月10日メディアに出ました。下記ご覧下さい)

Natalie Dessay on ‘Becoming Traviata’—French Soprano bids ‘Adieu’ to opera stage

メイが演技派ベルカントの後をつぐのかも。ヴェルディはヴィオレッタしか唄わないのも、デセイとメイは似ています。

しかし、まあメイが良いのは織り込み済みとも言えます。メイは今、最高に油の乗ったヴィオレッタ唄いですから。

望外に良かったのはアルフレードと指揮です。テノールのペーター・バルツォ、名前も知らないハンガリーの歌手で、2011年にデビューした若手ですが、これが素晴らしいヴェルディテノール。乾杯の歌でびっくりしました。華がある中音域、かなり正確な音程、知的な感じのする表現力。これほど良いアルフレードは久々です。残念なのは、高音が弱い。Hi-Cを出したのは一度だけ。一幕目のヴィオレッタの幻想(?)の声を裏で唄う部分でも、Hi−Cは出さず、オクターブ下げていました。まあ、それも好感持てましたが。まだまだ荒っぽいところもありますが、これからが楽しみです。

3幕目のメイとのからみもすばらしく、「パリを離れて」はジーンと来ました。一幕目二場最初の「パリに金返しに行くぞー」のカヴァレッタも素晴らしい。ここは良くカットされるんですけどね。ペーター・バルツォ、名前覚えておきましょう。この人はイタリア語も非常に旨かった(と思う)です。

ジェルモンのミケーレ・カルマンディもなかなかでした。が、彼はヴェルディバリトンではない。低めのバスバリトンで、ホロトフスキーのようなタイプです。まあ、今ジェルモンを歌えるのはヌッチと堀内康雄さんくらいですから、しかたないですね。

スクリーンショット 6


びっくりしたのは、指揮のヤノーシュ・コヴァーチュ。東フィルの首席客演指揮者も務めているので日本でもおなじみの指揮者ですが、あまり聴いていないこともあって、特に印象はありませんでした。東欧の歌劇場の演奏に感心したことはあまりなく、今日も無難に"伴奏”だろうと思っていました。序曲は、無難なズンパッパで始まりましたが、1幕目から、舞台を引っ張っていくのです。「場を作る」という感じ。得に金管、木管を効果的に鳴らして、生き生きした音楽を作り出します。これは、老練な技というのか、遊びもあると感じました。指揮でもかなり楽しみました。しかし、肝心のオケ、特に弦のほう、もっと細かく言うとバイオリンの技術がいまいちで、これが残念。それに今日はものすごい湿気でただでさえ音響効果の悪い県民ホールで弦の鳴りには、悪い環境がそろっていたとは思います。

演出は、アンドラーシュ・ベーケーシュ、この人も知りませんが、クラシックながら要所に芸のある良い演出でした。一幕目と三幕目の序曲の間は、葬儀屋らしき黒服の人々が、ヴィオレッタの遺品を値踏みして持っていく、それを見ているアルフレードが壺を買い戻す、というシーンを作り、オペラ全体がアルフレードの回想というスタイルを取っています。この演出方法はゼッフェレリの映画版(レヴァイン指揮、ストラータス主演)を初め、いくつかあるスタイルなので、目新しさはありませんが、あまりしつこさがなくて(僕はゼッフェレリ版は嫌い)舞台のスパイスのようになっていて良かったと思います。

しかし、その程度だと、初めて「椿姫」を見る人には、何のことだかわからない可能性もありますね。このところはプログラムでフォローしてほしかったと思います。

二幕目のジプシーの場面では、ハンガリーバレエ団が素晴らしいバレエを見せました。フェッテまで入って、バレエが終わったところで大拍手。これは珍しいですね。ヴィオレッタの二幕目からの黒のドレスなど、衣装も素晴らしかったです。エンタテイメントとしても良くできてました。

いやー、今日の公演、S席¥22,000-で見ましたが、チケットポンテで半額になっていました。実際空席も多かったです。半額で見た人は得したと思うなぁ。椿姫、今年だけで5−6公演ありますよね。さすがにエヴァ・メイでも客を集めるのに苦労しているのでしょう。だとすると、藤原のBキャストあたりは相当厳しいのでは。そう言いながら、僕は今年4公演行きます。

さて、来週、土曜日22日はは大阪まで一泊二日の旅で、いずみホール主催の「シモン・ボッカネグラ」を見に行きます。関西地方の方にはこれはお勧め。同じ日にマチネでもう一回エヴァ・メイのトラヴィアータもあります。皆様、是非!
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