プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

スカラ座 "リゴレット” ヌッチに後光が!!

9日の公演が大評判になっていたので、今朝は興奮して早起きしてしまいました。彼のリゴレットを生で聴くのは初めてですが、日本のリサイタルで、「悪魔め、鬼め」や「復讐だ!」を何回か聴いていて、それだけでも舞台にワープするような迫力だったので、今日は本当に期待していました。で、その期待以上の今日のヌッチでした。

ヌッチも歌い始めは、いつもやや安全運転なのですが、今日は第一声から全開!"Pari siamo"では「今日はすごいな、こりゃ」という感じ。

二幕目に入り、絶好調。大好きな"悪魔め、鬼め”は、何度も(CDも含め)聴いているのですが、不覚にもまた落涙。歌も素晴らしいんですが、完全にリゴレットになりきって、怒りに震える演技が心を揺さぶります。「リゴレット、かわいそう....」と思ってしまうんです。そして、いよいよ初日にbis(劇中アンコール)のあった "復讐だ”で幕が閉じ、その後カーテンコールで現れたヌッチに、僕や他の観衆も”ビーースッ”。 僕のいた席は招待の方も多かったようで、きょとんとされていた方もいました。

スカラ座では、公式にはbisは禁止されているとか。リスナー総裁の意図か、昔からの伝統なのか知りませんが、初日のbisに応えたヌッチにスカラ座のマネージメントが苦言を呈したという噂があります。で、2日目のこの日、bisに応えるまでちょっと、ジルダ役のアレハンドレスや指揮のドゥダメルと相談をするような仕草。でも、やってくれました!やったぁ。実はオペラ友達とは「bisしようぜ」と前もって声を掛け合っていましたので、これも功を奏したと思いたいです。いざカーテンの前でヌッチが声援に応えて歌い出すと、僕のまわりに座っている方々は、最初は冗談だったのかと思って笑いが漏れましたが、すぐアンコールと気付いて大拍手。ヌッチはこうやって観衆も育てるんですよ。僕も育ててもらいましたが。。たしかに、カーテンの前でのbisなんて、イタリアだってそう簡単には聴けません。まして日本では......もしかして初めて??

もー、ダメ。鼻水も出てきました。ようやく、休憩になって、真っ赤な目をしてロビーに出たところで、知り合いの主催者の方に出会ってしまい、恥ずかしいこと。。

三幕目は、もっとすごかったです。72歳のヌッチは50歳の頃と違って高音が弱くなり、その分中低音の表現力で勝負という新しい境地を開いたのですが、今日は、その高音が三幕目で戻って来たと思います。輝くような声。

この1年半で、3回ヌッチを生で聴きました。チューリッヒでのシモン・ボッカネグラも素晴らしかった。そして、このリゴレットも。本当はその間にパレルモで"二人のフォスカリ”も聴く予定でしたが、これはかないませんでした。でも、晩年の最盛期(?)ヌッチの素晴らしいパフォーマンスを聴けたこと、本当に幸せだと思います。

さて、ヌッチ以外はどうだったのか? まあ、ヌッチと仲間達という感じですね。バレエで言えば”ルグリと仲間達”みたいな... でもルグリの友達はデュポンやギエムもいるなぁ。今日は"ヌッチと弟子達”かしら?

ダブルキャストのベッルージとアレハンドレスは、初日も聴いた知人二人共が、「9日のデムーロ、モシュクのほうが良かった。」と言っていました。うーん、残念。。ベッルージはスケール感と公爵の無責任な明るさに欠けましたが、軽いベルカントっぽい良い声で個人的には好きでした。しかし、アレハンドレスは.... 一生懸命、このチャンスにかけて歌っているのはわかるのですが、幕がかかったメゾソプラノみたいで、歌い方もなんか古くさいんです。聴いていると、比較する対象がサザーランドとかスコットとかモッフォとか、昔の歌手を思い出してしまいます。で、彼女らにはかなり及びません。ま、このくらいにしておきましょう。

ドゥダメル。これは評価が分かれているようですが、僕はあまり好きになれませんでした。まず最初から序曲が遅い。交響曲的と言えば言えないこともないんですが、緊張感にかけます。そして、一幕目から終わりまで、各所で歌手とテンポが合わないところがありました。特に聴かせどころの四重唱はがっかり。ただ、これは歌手の問題もあると思います。もしかしたら、NHKホールの悪い音響、深いステージの奥と手前での音響の違いも原因かもしれませんが、このホールで充分練習もしたはずなので、やはり指揮者がまとめて欲しかった。ハーディングもオペラが大得意な指揮者ではありませんが、彼の方が健闘(というか自重)していました。皆さんが言う「鳴らしすぎ」というのは、そんなに感じなかったですが、それよりテンポの変化が不自然だったと感じました。指揮者については、その意図をできるだけ汲もうと、僕なりの力で考えるんですが、初日、拍手をする間を与えなかった”女心の歌”の後、今日も間を取ることなく、拍手をさせずにすぐに演奏を続けました。これは、確信犯ですね。かなりオペラの観衆を無視したやり方じゃないかなぁ。ドゥダメルは特にスカラ座に縁のある指揮者でもないです。若手起用なら、何度も言いますが、イタリア人で、ルイゾッティ、バティストーニ、バッティストーニ、バルトレッティ、マリオッティ、ま、ちょっと格が上がりますがカルロ・リッツィとかきら星のようにたくさんいるのに、なんで、わざわざベネズエラ人、オペラをあまり得意としない指揮者を持ってきたのか、理解に苦しみます。

ただ、オーケストラはとても良かったのです。さすが、スカラ座のオケ。これはファルスタッフの時も感じましたが、弦の音、金管の音が通常ではない!のが、すぐにわかります。それから打楽器も明らかに音が日本のオケと違う。木管は僕の性能の悪い耳ではあまりわかりませんでしたが。昔、スカラ座のオケは、来日公演の合間や終了後に、「スカラ管弦楽団」と銘打って、指揮者無しで15人くらいの編成プラスバンドネオンなどを入れて、素晴らしい演奏会を紀尾井ホールでやっていました。これを聴くと、指揮者なくてもここまで出来るんだと思いましたが、昨日も指揮者のオペラ下手(あくまで個人意見です、ドゥダメルを評価している方、すみません)をオケが救っていた気がします。これは、合唱も一緒。スカラ座の合唱を聴くと、きれいにそろっている合唱が最高だと思わなくなります。

しかし、このようなネガティブ要素をはねのけて、延々と続くラストの拍手を招いたのは、ヌッチです。彼も、今日の自身の出来には満足していたようで、ハイテンションでした。ヌッチの人柄の素晴らしいのは、色々なところで聞きます。今日も率先して観衆と握手、抱き合っていました。シモンの時もそうでしたが、彼の舞台では、最後にマエストロが出てきた後に、ヌッチ一人がカーテンコールでしめないないと拍手が終わらないんです。 そんなスーパースターは男声では、あとはドミンゴくらいでしょうか? 両者ともに72歳?よく頑張っているというか、後継がいないというか。。。

演出まで筆が届きませんでしたが、デフロの演出、素敵でした。当初はボンディの現代演出でそのままやる予定だったそうですが、クラシックで美しいデフロの演出のほうが日本では受けるとの判断があったようですね。感謝。ただ、METのメイヤー演出(ラスベガスの)みたいなのも良いですけどね。

ともあれ、大満足なリゴレットでした。残念ながら15日のチケットはすべて売り切れ。ファルスタッフは14日のチケットをなんとか、今日入手したので2回目行って来ます。
関連記事
スポンサーサイト

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://provenzailmar.blog18.fc2.com/tb.php/368-7a53c00f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad