プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ムーティ conducts ヴェルディ

ムーティのヴェルディガラ、2日目に行って来ました。ブログのアップが遅れたのは、今日一日、ずっと昔のムーティのヴェルディの序曲集とシチリアのバレエ曲、同じくトスカニーニの序曲集を聴いていたためです。

オーチャードホールでの講演を聞いてからトリフォニーホールに行ったので、なんか演奏への期待が高まっていました。ですが、前半のシチリア島の夕べの祈りと運命の力の序曲…...この2曲は昔からムーティのヴェルディ序曲集には必ず入る十八番と思いますが、、ここまでで既になんか違和感を感じてしまいました。いやに重厚なんです。で、ところどころ休符の"溜め”みたいなのがあって、その後爆発する。非常にテアトロジック(というのかな、劇場的)ではあるんですが、ムーティの本来の熱っぽさ、鋭さ、切れみたいなのが、ソフトになったというかなぁ、うーーん。今日聞いたスカラ座の90年代の録音とも随分と違いうんです。ナブッコも違う。ナブッコ序曲の後半だけは、昔と同じ感じしましたが、全体にはヴェルディに関しての解釈が変わった感じがします。より美しく、流れるように、、元々あるロマンチック性は強まった感じがしますが、個人的には「巨匠になるとやっぱりこういう感じになるのかなぁ」という感じがありました。

ナブッコの"Va Pensiero" については、これは大合唱団がとにかくユニゾンで押しまくる曲です。やはり演奏もそれにあった強く、鋭さのある音が欲しい。今回のソフトになったムーティよりも、昨年の二期会でのバッティストーニの、ナブッコの序曲、オペラの各幕をフラッシュバックさせて切り取ったような清冽な音作りのほうが、初期のヴェルディの初々しさと熱さをダイレクトに表現していたと思います。なんとなく、どの曲にも”ゆらぎ”が入っているのも僕は気になりました。全体にそういう感じ。普通のヴェルディになって、より重厚にマイルドになった感じ。

いや、僕みたいな素人なんか及びもつかないくらい、ムーティはヴェルディを研究し理解しているわけだから、彼は自分が70代になってこの日のような解釈にたどり着いたのだと思います。マゼールの椿姫は、ベルリンの頃と2007年では全く違います。これもすごく重厚でテンポがゆっくりになった。序曲だけで1分も違うのです。これと同じような流れなんでしょうか?指揮者も円熟すると、指揮も円熟する。

できるだけ、このムーティの新しいヴェルディを理解したいと言う気持ちでいっぱい。でも、トスカニーニは僕のベンチマークですが、彼の指揮を聞くとやはりヴェルディの神髄に触れる気がします。そして、トスカニーニの後に、70年代からのムーティを聴き直してみると、昨日の指揮には、やはりどうしても違和感を感じてしまいます。ゆらぐ感じは、ちょっと北ヨーロッパ的。南イタリア的ではないような気がします。

昨日の演奏で僕にとって一番良かったのは、バレエ曲の四季でした。これもムーティの十八番ですが、本当にバレエ曲になっていました。躍動感に溢れた、そのままバレリーナが入って来そうな音楽。ヴェルディのバレエ曲を、こんなに真剣に指揮する人はムーティの他にいないでしょう。

「ムーティは衰えた」とは全く思いません。怪我などもしたようですが、まだまだパワーは充分。ただ、違う境地に入ったのだと思います。なんかドイツ、オーストリア系の音楽の好きな方には好評を博しそうな感じがありました。

この日のような序曲で始まって、来年のナブッコ、シモンのオペラ全幕はどうなるのかなぁ。こわいような楽しみなような。とりあえず、シモンは切符申し込みました。

講演ではしごかれていた、安藤赴美子と加藤宏隆。これはかわいそうだったと思います。その日の朝に言われて、舞台に上がり、ムーティと一度も合わせたことのないトラヴィアータを、「指揮者の指導のサンプル」としてマスタークラスのように指導されたのですから。

で、この日の二人は素晴らしかったと想います。特に安藤赴美子の芯の通った強さのある声。トラヴィアータよりも良かったかも。やっぱり2月のドン・カルロのエリザベッタは、待ちきれないぐらい楽しみです。僕は、高橋薫子と藤村美穂子って日本のディーヴァだと思いますが、安藤赴美子というヴェルディを歌うディーヴァが登場したって感じがします。感動しました。まだ若いし、楽しみだなぁ!
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