プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

バレエ・リュス ストラヴィンスキー・イブニング

何とか時間を作って、当日予約でマチネの公演に行って来ました。

この”バレエ・リュス”というのは、19世紀後半から20世紀はじめまでロシア出身の芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフのもとで、パリを中心に活動したバレエ団の名前です。特徴は、バレエ、音楽、美術、演出を高いレベルに統合し総合芸術を目指したこと。ですので、普通のバレエ公演より、お金も人も手間もかかるようです。

新国立は今回、火の鳥(1910年初演 フォーキン振り付け)、アポロ(1928年初演 バランシン)、結婚(1925年初演 二ジンスカ=ニジンスキーの妹)の3つのストラヴィンスキー作曲の作品を再現した意欲的な公演を行いました。 意欲的ですよ。新国はオペラよりバレエのほうが意欲的!

実は、今年このバレエ・リュスの作品はスポットライトが当たっていて、5月のザルツブルグ音楽祭でも演じられました。この時は、バルトリが音楽祭の総監督を務め、そのテーマが"sacrifice(犠牲)"ということで、アポロの代わりに、”春の祭典(1913年シャンゼリゼ劇場こけら落とし公演 ニジンスキー)”をやりました。指揮はなんとゲルギエフ、そして彼の率いるマリインスキーバレエ団が踊りました。ただ、ただ、素晴らしかったです。春の祭典はフランス語では"Le sacre du printemps"で、つまり「春の生け贄」なんですね。だから「犠牲」のテーマで選ばれたのです。ちなみに、20世紀初頭、バレエ・リュスの衣装や美術には、あの有名なデザイナーのココ・シャネルが全面的に協力をしていました。そして、春の祭典は1913年の初演で、フランスのバレエ界で未曾有のスキャンダルになりました。あまりにも新しすぎたのです。音楽もバレエも。この時指揮をしていたのは、バレエ音楽のマエストロとして歴史に残る巨匠のピエール・モントゥでした。また、「ちなみに」になりますが、彼が指揮したドリーブの”コッペリア”、"シルヴィア”は凄いです。

さて、そして色々あってこのスキャンダル事件の後に、シャネルとストラヴィンスキーは恋に落ちるんです。これは2009年にフランスで映画化され「COCO CHANEL & IGOR STRAVINSKY」という作品になっていますが、残念ながらまだ見る機会がありません。

今回の新国立の公演、全体としては素晴らしかったと思いますが、やはり「春の祭典」が欲しかったなぁ、というのが本音。でも代わりにアポロが見られました。これも素晴らしかったです。ダンサーのレベルはマリインスキーに全くひけを取りません。

ただ、火の鳥を演じた小野絢子が、ちょっと小柄すぎました。火の鳥はおおきな鳥だと思います。赤い翼をはためかせて飛んでくる。だからマリインスキーでも非常に背の高いアレクサンドラ・イオシフィディを起用していました。彼女はマリインスキーの中ではセコンド・ソリスト、オペラ座で言えばスジェのランクですが、このバレエ・リュスの作品は、フェッテもリフトもピルエットも無いので技巧的にはそんなに高いものが要求されない、ただ、運動量と、見栄えのする長身が必要だと思います。その点、小野絢子は損していましたね。ちょとと「火の小鳥」という感じでした。ダブルキャストの米沢唯のほうが良かったかもしれません。
スクリーンショット


そして、美術面では、舞台美術がちょっとシンプルすぎます。今回、けっこう良い料金を取っている(ザルツブルグのS席は100ユーロ、新国立は¥12,600-とほぼ同じ。)のですが、ザルツブルグに比べると、舞台の大道具はかなり薄っぺらい感じがしました。

クーン・カッセルの指揮は、まずまずで東フィルにストラヴィンスキーらしい音を出させていたと思いますが、もう少し躍動感が欲しいところ。やはりバレエの指揮の域は出ていない感じ。

それでも総合的には、良かったと思います。まずはダンサーのすべての質が高い、合唱も入りましたが、(結婚)さすが新国立合唱団、こういうのはメチャクチャうまいです。何より、ストラヴィンスキーとバレエ・リュスが持つ、妖艶な、不思議な魅力を余すところなく出していました。今回バレエとしては異例に男性客が多かったと思います。

ストラヴィンスキーのバレエ音楽では、プルチネルラが好きですが、まあちょっとまとまりすぎているので、今回の3つの曲目はバレエと一緒に聴くとすごい魅力を感じました。

それにしても最近残念なのは、バレエ音楽を真剣に振ろうという良い指揮者がいないこと、モントゥはその旗手だったのですが、その後ピエール・ブーレーズ、アンドレ・クリュイタンス、アンドレ・プレヴィンなどフランス系の一流指揮者がバレエ音楽を実際にバレエ公演で振っていました。しかし、もっともバレエ音楽に貢献したのは、サザーランドの夫としても知られているオーストラリア人、リチャード・ボニングでしょう。彼はフランス系のバレエからロシア系のバレエ音楽まで、深い教養を持って実に素晴らしい音楽を作り出しました。21世紀になってからは、一時サイモン・ラトルがバーミンガムにいたころに、同市にもロイヤル・バレエがあることからバレエ音楽を振ったり、録音していますが、それももう10年前のこと。今、一流指揮者でバレエ音楽を振る人はなかなか知りません。

バレエと音楽の調和、それも高度な調和は素晴らしい感動を呼びます。誰か若手でやってくれないかなー。ハーディングさんなんか、ラベル振っているし良いんでは? ハーディング指揮でコジョカルやロホが踊ったらすごいなぁ。
関連記事
スポンサーサイト

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://provenzailmar.blog18.fc2.com/tb.php/396-dbad7fb1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad