プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ビゼー「真珠取り」パルマ王立歌劇場

モデナを月曜朝に車で発ち、あちこち寄り道をしながらパルマに到着しました。「真珠取り(LES PÊCHEURS DE PERLES)」美しい旋律のオペラです。それを、デジレ・ランカトーレ、アントニオ・シラグーザのゴールデンコンビでやるというので、昨年の秋にチケットを取りました。ところが2週間前にランカトーレが降板、そして、なんと初日当日朝の同劇場ウェブサイトを見ると、シラグーザまで降板になっていました。パルマお得意のドタバタのキャスト交代はなんと楽団にまでおよび、予定されていた「トスカニーニ交響楽団」が、この真珠取りの共同演出劇場である、モデナパヴァロッティ歌劇場付(だと思う)「エミリア・ロマーニャ交響楽団」に代わっていました。これに気付いたのは、劇場でプログラムを買って、公演がスタートした後に、音が不思議なので気付いた次第。

しかし、今回はすべてのトラブルを主人公レイラ役にデジレの代わりに立った、ニーノ・マチャイゼが払拭しました。現在のイタリアオペラでのソプラノとしては、マチャイゼの方が歌っていますし、”旬“という感じですので、期待はしていましたが、それ以上。

個人的にはリゴレットのジルダのイメージがあるので、彼女の声のリリコレッジェロと思っていましたが、この日はびっくり、メゾソプラノかと思うような中低音の迫力と表現力、鋼のような強い声、完全にリリコスピント!魅了されました。この日は初日ということで、恒例のパルマTVの撮影も入り、世界にストリーミングされていたのですが、日本で聴いていた知人もマチャイゼには圧倒されていました。

目をつぶってきいていると、スタジオ録音のジュルジュ・プレートゥル指揮、マリア・カラスのタイトルロールを彷彿とする強く情熱に溢れた声。マチャイゼはもともと、グルジア出身ですがイタリアオペラもフランスものへの理解も深いのです。もともと有名になったのは、フランスオペラ、グノーの「ロミオとジュリエット」、そして同「ファウスト」でも好評を博し、5月にはロサンジェルスオペラでマスネの名作「タイス」を歌います。アタナエルはドミンゴです。ドミンゴのフランスオペラも良いかも。少なくともイタリアものよりは。。。この時にちょうど、LAのビジネスパートナーとの契約更新のミーティングがあるので、できれば現地でこ聴きたいと思っています。

しかし、「真珠取り」のオペラで、有名な曲はどちらかというと男声なんですね。まずは、テノールの漁師役のナディールの歌う切ない「耳に残るは君の歌声」のアリア。この曲はオペラからポップス界に移って最も世に知られた曲でしょう。60年代後半にフレンチポップスオーケストラの巨匠、ポールモーリアがカバー、そしてコンチネンタルタンゴのアルフレッド・ハウゼオーケストラが「真珠取りのタンゴ」として大ヒットにしました。その他、マラード楽団、リカルド・サントス楽団などがカバーしています。

シラクーザの代役として当日朝か前日夜に(多分)出演を告げられた、ロシア出身(多分)のディミトリー・コルチャック、甘くて良い声をしています。これは予想以上。シラクーザよりふんわりした甘さ。日本でも2011年だったかなぁ、コジ・ファン・トゥッテに出演の予定が東日本大震災の影響を嫌ってか降板していますが、モーツァルトの他にイタリア物、特にロッシーニは良く歌っています。

今日も出だしは好調で、全体としても充分にシラグーザの代役を務めたと思いますが、やはり「耳に残るは君の歌声」は、歌い込みが足りないというか、実力が足りないというか。。。長い歌いに呼吸が追いつかず、ブレスが「はぁっ!」という感じ。溺れた歌手のようになり、次ぎの歌い出しの音程が定まらない。残念です。だけど、5回の公演があるので、もっと良くなる感じはしました。

バリトンのズルガは、イタリア人のヴィチェンゾ・タオルミーナ。出だしこそ、不安定でしたが、かなりの出来でした。明るい軽いバリトン。でも高めではありませんね。しかし、ここでまた残念だったのは、オペラの中でもドン・カルロの「カルロとロドリーゴの二重唱」にならぶ、いやそれ以上に美しいとされる男声二重唱の「聖なる神殿の奥深く」、ややオカマチックなんですが、これも練習不足で声が合わない。ざんねーん。。

トリエステ、パルマ、モデナの共同制作の演出は素晴らしい!指揮のフランス人、PATRICK FOURNILLIERもボン! ただ、オケが突然トスカニーニ響からエミリオ・ロマーニャ響に代わり、指揮についていけません。このオケ4日前にはモデナでシモンを鳴らしていました。同じメンバーかどうかわかりませんが、残念ながらレベル的にちょっと。。。

終演後、サレルノ在のバリトン歌手小川雄亮さんと食事をしていたら、マエストロも食事に来て、他のテーブルで、「3年前にトラヴィアータを振って以来なんだ。その時はトスカニーニ楽団だったんだけどね。」と直接不満は口にしないもの、やや不本意そうでした。

パルマ王立劇場は、ながいこと資金面での問題がいつもトラブルを呼んでおり、今回もそれが楽団そしてシラクーザの降板につながったのではと思います。

しかし、イタリアの劇場のほとんどが資金難の中でイタリアで歌い続けるヌッチのように、シラグーザにもランカトーレにも歌ってほしかったですね。特にその日に降板のシラグーザにはやや嫌悪感を覚えるのが本当のところ。。th-th-DSC00424.jpg
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