プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

大野マエストロが編み出す「ホフマン物語」

リヨン歌劇場の「ホフマン物語」楽日を見て来ました。何度も書いていますが、去年の新国立のホフマンから、パルマの真珠取り、LAでのタイス、そして今日のホフマンとフランスオペラをこんなに良く聴いた時は無いと思います。

今日のホフマンは新国立のものとは、作り方も解釈も演出も全く違うもの。「舟歌」や「きじ鳩は逃げた」のような美しいフランスオペラならではの曲調によりかかることなく、ホフマンの苦悩とミラクル医師に代表される「悪」の面を押し出したように感じました。それに合わせるようにローラン・ペリーの演出は黒を基調にした重苦しい感じ。大野マエストロの指揮も先日の横須賀での演奏会のペトルーシュカや展覧会の絵、マ・メール・ロワの軽い感じとは全く違って、かなり荘厳な雰囲気でした。会場であったフランスオペラにとても詳しい知人によれば、彼の持っているCDのどのホフマンよりもテンポが遅いとのことでした。

圧巻だっったのは、テノールのジョン・オズボーン。一昨年、ザルツブルグでバルトリのノルマでポリオーネを熱演して好印象があったのですが、完全に軽いベルカントなので、ホフマンをどう歌うのか気になっていたのですが、実にフランスっぽい、内向的で悲しみを含んだ素晴らしい声を出していました。ベルカントっぽいのも歌えて、フランスものも歌える、、うーん、マチャイゼがまさにそれですね。フランス物というとアラーニャが思い出されますが、オズボーンは最高のホフマンだったと思います。ホフマンの悩み、狂気を余すことろなく表現していました。

その点で、ややものたりなかったのは、オランピア、アントニアなど4役を歌い分けたパトリシア・チョーフィ−。まず、出だしの高音がふらつき、アリアでは高音を動かすのが得意ではないようで、安心して聴いていられない感じがありました。デセイのレベルを期待していましたが、オランピアに限っては幸田浩子のほうが良いと思いました。

ただ、アントニアになってからは素晴らしく、中音での感情表現はグッとくるものがありました。特に父親とのやりとり、3幕目の出だしは彼女が盛り上げ、その後ミラクル医師のアルバロ、オズボーンがからみ、感情表現のぶつかり合いで、5幕中白眉でした。

だから歌手は良かったんですよね。何か違和感を感じるのは、オズボーンがニコライ・ゲッダばりのフランス声、チョーフィーがベッリーニみたいなベルカント、アルバロがルネ・パーペみたいな"ユニバーサル・バリトン”というのがややアンバランスでしょうか?ま、それを言ったら5月のドミンゴとマチャイゼのタイスも妙なコンビなんですけど。

多くの登場人物がいて、その関係がよくわかり、一人一人の心理を掘り下げたという面では素晴らしいと思うのですが、終わった時に感じたのは「長かったぁ」というのが本音。このオペラにテンポ感はあまりいらないと思うのですが、あまりにも重苦しい雰囲気で、主役は「悪」かという感じを持ってしまったせいでしょうか?ところどころに日本語を入れてオッフェンバックっぽいジョークもあるのですが、ワーグナーを聴かされたような気分がしました。

ローラン・ペリーの演出は、この未完のオペラで最後にホフマンを生かします。しかし、ただでさえあまり良くできているとは思えない4幕、5幕の台本と音楽を締めくくるには、ホフマンが死んだ新国立版が良かったと思います。

これをきっかけに、日本でもフランスオペラもっとやってほしいですね。マイヤーベーアとは言いませんが、マノン、ロミオとジュリエット、ユダヤの女、美しきパースの娘、ラクメあたり5連発でお願いします!!
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