プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ファルスタッフ at サイトウキネン~オペラへの愛

“ファルスタッフ” at サイトウキネン〜オペラへの愛

今年で”サイトウキネン“としては最後となる松本でのフェスティヴァルでの “ファルスタッフ”に行ってきました。期待以上に素晴らしく、想像以上に感動した、というのが正直な感想。まったく素晴らしい公演でした。

マエストロ ファビオ・ルイージ、最近では去年10月にスカラ座でドン・カルロを聴きました。今、考えて見るとその前もその前も彼の振ったのを聴いたのは、皆 ”ドン・カルロ”?METとスカラで振っているのでそうなったんでしょうね。カルミナ・ブラーナも聴いた気になっていましたが、あれはストリーミングでした。そこらへんの曲のイメージがあるせいかい、ルイージと言うとバッティストーニやマリオッティ、そして、今騒動になっているトリノ王立のノセダなどのイタリアの指揮者に比べて、やや重厚という印象を持っていたのですが、今日は指揮棒を振ったとたんに、凄い音が出てきました! “キレキレ”というとバラエティ番組用語みたいですが、本当にエッジの効いた、それでいて繊細、軽いところはあくまで軽く、そしてテンポも早いのです。Ⅰ幕目から、音楽に吸い込まれました。そして最後までそれが続きました。また、オーケストラが本当に良くマエストロの意図を汲み取って音を出していました。すごく練習したんでしょうね。終演後に、ピットの中で演奏者が皆握手して廻っているんです。なので今日が楽日かと思いましたが、そうではない。それだけにこ感動的でした。

去年のスカラ来日のハーディングのファルスタッフの指揮も良かったですが、今日のルイージの指揮に比べてみると、「”ウィンザーの陽気な女房たち” をイギリス人が振っているのよね。」という感じがあります。で、今日のは「イタリア人がヴェルディを振っている、そんでもって半分くらいはボイートが乗り移っている!」という感じ。これDVDかCDにならないですかね。ホント名演だったと思います。

歌手のほうも素晴らしかったです。名が通っている(というか僕が知っているのは)、マッシモ・カヴァレッティ(フォード)、とこの前ランカトーレとのデュオリサイタルを聞き損ねたパオロ・ファナーレくらいでした。しかし全歌手のレベルが本当に高かったです。カヴァレッティは最初から最後までステージをリードする力を持っていました。アリーチェ役のスペイン人ソプラノ、マイテ・アルベローラは、ややメゾっぽかったですが、素晴らしく安定しています。そして、自分の魅力の出る部分を良くしっていて(中音ですね)、そこをアピールする。実に魅力的。

メグのジェイミー・バートンはベッリーニからワーグナーまで幅広く歌っているようですが、表現力豊かなメゾでこの役に絶対必要な演技も素晴らしい。

びっくりしたのは、ドクター・カイウス役のラウール・ヒメネス。どっかで聞いたなぁと思ったらヌッチのセヴィリアやってますね。けっこうな歳だと思いますが、素晴らしいテノールの美声を聞かせてくれました。演技はこの人が一番うまかったなぁ。ベテランの余裕というところでしょうか。

タイトルロールのハワイ出身のクイン・ケルシー。出だし、声が安定しませんでしたが、徐々に調子を上げました。圧巻だったのは3幕でテムズ川から逃れて風呂にはいってぼやくところの独唱が、哀れな感じと、自分自身を鼓舞する様子がとても良く表現されていました。Bravo! ただ、この1年で見て来たファルスタッフがマエストリ、ブルゾン(80歳近いんですが、ブッセートで去年聴きました)という大物だったので、彼等に比較すると「大酒飲み」の巨漢のファルスタッフと言うよりも、「だまし討ちにあっちゃうかわいそうな小太りおじさん」という感じでした。ですので、後半に彼の魅力が出ましたね。

それにしても、歌手達の重唱や演技も相当の練習をしていると思います。最後の夜の森のところではただでさえ狭い舞台にローソクをかざした子供達が登場し立錐の余地もないようなところを、踊るように動き回って歌います。良くぶつからないものだと思いました。

この演出は、タングルウッド以来の小澤の友人、デヴィッド・ニースによるものですが、クラシックで質が高く、松本という美しい町での公演に相応しいものでした。最前列で観劇したので、舞台装置が本物の木や生花を存分に使っていることがわかりました。そして、廻り舞台や移動装置がないので、幕ごとの大道具はカーテンの向こうで人的移動、それもかなり大がかりな、、、をしているはずなんですが、物音が殆どしないんです。

フィナーレのフーガ、10人の歌手が勢揃い。やっぱりすごいレベルなことを痛感。ロッシーニ歌手もいるので、もう少しそろえば “ランスへの旅“の14重唱も出来そう。で、このフーガ、歌と音楽の一体感が素晴らしい。終わる前から立ち上がりたくなりました。

初めて行ったサイトウキネン、数時間の滞在でしたが満足は1週間続くでしょう。

そして、音楽祭を支えるスタッフの人たちのことも書かずにはいられません。観客として行ったので、会場案内や、カタログの販売をしている方々としか接しませんでしたが、本当にこのフェスティバルと音楽、オペラを愛していて、観客を暖かく迎えてくれます。長いカーテンコールが終わって、ホールの外に出てくると、スタッフの方々が列を作って観客に「有り難うございました」と声をかけて見送ってくれるんですよね。これにはウルってきてしまい、「いや、有り難うございました。」と返しました。

インターフェロン治療の中、ロキソニンを飲んで解熱しながらの観劇でしたが、素晴らしい感動は病も治します。

今日出会ったすべての人々に感謝を捧げます!

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