プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ドン・カルロス 芸術劇場 & リゴレット テアトロ・ジーリオ・ショウワ

もう、あと1時間、2つの公演の上演時間が離れていたら。。そうすれば、こんなに悩むこともなかったのです。

昨日、6日土曜日、ヴェルディの「ドン・カルロス」フランス語全5幕版、それもパリ版と言われるやや短い版の上演が東京芸術劇場で演奏会形式でありました。

この上演については、今年の2月にイタリアのモデナの劇場で、シモン・ボッカネグラの観劇後寒い中出待ちをしていて、フィエスコ役でヌッチと共演したカルロス・コロンバラ本人に会えた際に、「今年は東京でフランス語バージョンのドン・カルロスに出るから是非来てください」と言われ(もちろん、みんなにそう言っているんでしょうけど、それでも目を見て言われると嬉しい!)、チケットも早くに入手しました。

コロンバラは、2011年のチューリッヒでもフィエスコで聴いており(この時もシモンはヌッチ)、2度とも素晴らしく良かったので、今回も期待をしていました。

1~2幕目、まだ歌手もオケもエンジンが暖まらないという感じだったところに、3幕目にはいってコロンバラのフィリップ2世が登場。圧倒的な存在感です。声質としてはデセイと夢遊病の女で伯爵役をやったように軽いほうですが、フルラネットほどは軽くない。フィリップ王の重厚さが出せます。が、この役を得意として僕も何度となく聴いているルネ・パーペほど凄みのある老人タイプのヘビー級ではない。スペインの王という実務を取り仕切っている王という感じに実に相応しい声だと思いました。コロンバラのここ数年の飛躍はすごいですね。フィリプ(フィリポ)も、前述の2人の間に入って役として自分のものにするのも近いでしょう。スカラ座ではロールデビューしていたでしょうか??

彼が登場して他の歌手も皆、調子を上げました。特にエリザベートの浜田理恵さん、フランス語が美しい(多分。。)、声質がフランスオペラ!!(フランスに住んでいるんだもの)彼女を起用したのは、このフランス語版ドン・カルロスにはぴったりだったのでは、と思います。できれば、このように帰国した時に小さいリサイタルでもやって、フランスオペラのアリアも聴かせてほしい。。。あ、話がそれました。イタリア語版だとマルティナ・セラフィン、タマラ・イヴェーリ、バルバラ・フリットリと、やや弱さもある雰囲気のソプラノがいるんですが、フランス語版はやはりフランスっぽい鼻に抜けるような声がいいですね。

とにかく、イタリア語版とエラク雰囲気違いますね。改めて感じました。例えば有名なカルロとロドリーゴの2重唱だけ聴いてもこんなに違う。


フランス語版(ドミンゴ&ヌッチ by アバド)

イタリア語版(サルトーリ&カヴァレッティ by 指揮者がわかりません。すみません。)4:00くらから聴いてください。


フランス語版は一時代前のベストデュオ、そしてイタリア語版は今の、僕個人のベストデュオです。

それで、冒頭に述べた悩みに戻るんですが、この日、18時からテアトロ・ジーリオ・ショウワで始まるアーリドラーテの「リゴレット」もチケット取っていたんです。15時に始まった「ドン・カルロス」が終演が7時過ぎ予定ですから、全部聴いていたらリゴレットは全く聴けない。

何も、移動時間無駄にして二つ聴かなくてもと思われるでしょうけど、3年近くも待っていた高橋薫子さんのオペラを、しかもジルダを歌うのは聴き逃すわけに行かなかったんです。なんで、同じ日に3時間違いの開演でやるんでしょうね。(涙)ドン・カルロスは6日のみの公演、高橋さんのジルダも6日のみで、チョイスがなかったのです。

芸術劇場の座席の場所からしてフィリップの「一人寂しく眠ろう」を聴いて、4幕目の最初にそっと抜けていくこともできたのですが、それではおそらくリゴレットは3幕目しか聴けなくなる。ドン・カルロスの3幕目を終えた休憩入りの17:30に決断を迫られました。本当に迷ったのです。結局、後ろ髪引かれる思いで新百合ヶ丘に移動しましたが。

さて、池袋から多少の渋滞があったものの、リゴレットの1幕目の最後のところでテアトロ・ジーリオ・ショウワに到着。車中でカーステを「ドン・カルロス」から「リゴレット」に切り替え、頭も"ポーザ公”から"マントヴァ公”に切り替えました。ということで、2幕目のジルダがさらわれた場面から聴くことができました。お目当てはもちろん高橋さんだったのですが、2幕目リゴレットがマントヴァの部下に泣きつくところから、タイトルロールの須藤慎吾さんが素晴らしい!いや、すぐに入り込めました。高橋さんの美しい華麗な声、ベルカントの香りの残るこの演目、そして愛らしいジルダにはぴったりです。彼女の凄いのは、声量を大きくしないで、表現力をいかんなんく発揮して歌っているのですが、4重唱でも合唱でも、その細い声が他のどんな声よりも上に乗って聞こえてくるのです。2012年の夢遊病の女のアミーナでもそうでした。そして演技力がある。あまり演技力について問わない(などと決めつけてすみませぬ)藤原歌劇団の中ではピカイチではないでしょうか?

この日は彼女と須藤さん、素晴らしかったですね。特に三幕目の最後重唱、そして絶命の演技。そして、スパラフチーレ役の小田桐貴樹さん、マッダレーナの向野由美子さんも良かった。

なにより、この公演がとにかく「イタリア」していたこと。高橋さんの声って本当にイタリアなんです。間違ってもフランス語版のエリザベートやラクメではない。明るいイタリアの声。美しいコロラトゥーラ!そして、指揮とオケがイタリアの小都市のオペラハウスの音!オケがベルカントしていました。 もちろん超一流のオケと比較できないところはありますが、明確にイタリアの音、ヴェルディの中期の音を出していました。特にクラリネットの使い方。エミリアロマーニャ管弦楽団かと思いました。目をつぶるとイタリア、いや、幸せでした。

今日のヴェルディオペラのハシゴ。まるでボローニャ歌劇場からモデナに移動したような感じです。

それにしても、ヴェルディはたった17年の間にこれだけ違う音楽を作っているのです。牧歌的で美しいオベルトから苦役の時代にリゴレット、椿姫を含む名作を量産し、ワーグナーファンも取り込む「ドン・カルロ」や「オッテロ」で番号オペラから離れ、最後にブッファの「ファルスタッフ」で、それまで命より大事にしていた名誉を「名誉なんてお笑いだ」と切り捨てる。これがヴェルディファンにはたまらないです。

やや、物足りない見方をしてしまいましたが、でもとっても贅沢なハシゴをさせてもらいました。

ドン・カルロス

指揮:佐藤正浩
管弦楽:ザ・オペラ・バンド(在京プロオケメンバーで結成)
ドン・カルロス:佐野成宏(Ten)
エリザベート:浜田理恵(Sop)
フィリップ2世:カルロ・コロンバーラ(Bs)
ロドリーグ:堀内康雄(Bar)
エボリ公女:小山由美(Mez)
宗教裁判長:妻屋秀和(Bs)
修道士:ジョン・ハオ(Bs)
デバルド:鷲尾麻衣(Sop)
天の声:佐藤美枝子(Sop)
レルマ伯爵:ジョルジュ・ゴーティエ(Ten)

リゴレット
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