プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

「ファルスタッフ」藤原歌劇

藤原のファルスタッフの第2日目を見てきました。ファルスタッフ、以外と日本での公演は多くありません。昨年のサイトウキネン以来か?

キャストはどちらがAかBかわかりませんが、土日で別です。この日のキャストは下記の通り。

ファルスタッフ:折江忠道
フォード:森口賢二
フェントン:中井亮一
アリーチェ:佐藤亜希子
クイックリー夫人:牧野真由美
メグ・ページ:日向由子
ナンネッタ;清水理恵
カイウス:所谷直生
バルドルフォ:曽我雄一
ピストーラ:小田桐貴樹

そして、指揮は、アルベルト・ゼッタ、何歳?87歳ですよ。東フィルでも振るし、今年は東京、大阪で、”ランスへの旅”も振りますし、大活躍。すごいですね。

音楽のほうは、ゼッダの余裕たっぷりで、管をうまく使った味わい深く、ややゆったり目の指揮で安心して聴けました。歌手に寄り添う感じですが、決して遠慮しないで鳴らします。

しかし、舞台上では一転、一幕目は、歌手は皆非常に緊張気味。特に女性陣はファルスタッフを陥れる策略をしているとは思えない、テンションの低さでした。折江のファルスタッフも低音の弱音が安定せず、不安。ただ、ファルスタッフ役のバリトンは、このの一幕めの話すような弱音の低音は、不安定になりがちですね。かなり難しいのでしょう。サイトウキネンの時のケルシーも風呂にはいるまで、そんな感じでした。

一幕目で、一番自由に歌っていて光ったたのは、ナンネッタ役の清水理恵、彼女は最後まで非常に良かったです。まあ、アリアみたいなのもあるし、歌いやすい役なのもありますが、一幕目、彼女だけは喜劇に入っていました。ランスでも出て来ますから楽しみです。

二幕目にはいると、状態は一変。皆が調子が出て来た感じで、特に折江さんはどんどんファルスタッフになりきってきました。テムズ川から上がったあたりが、哀れっぽいところなんですが、ここらへんがうまい。演技も出来る余裕が出て来てだんだん引き込まれます。

良く「一幕目は声が暖まらない。」と言いますが、今回に関しては、1キャストで1日だけしか公演しない藤原歌劇団の常の上演方式に、歌手がかなり緊張していたのが一幕目の雰囲気だったのだと思います。二幕目に入りクイックリーの牧野真由美もどんどん調子が上がります。やや残念だったのは、実力派の佐藤亜希子のアリーチェの影がやや薄かったこと。Bravaも心なしか少なめの感じが。。。しかし、彼女は、もともとヴィオレッタでスピントに近い強い声で素晴らしいデビューをした歌手。4月も藤原でヴィオレッタを歌います。アリーチェのような、しゃべるような、軽い歌いは、この人の得意とするところではないのではと言う気がします。むしろ、トスカとかミミとか、或いはヴェリズモが合うのではないでしょうか。

そして、最後の森のシーンは、実際には森が出てこないというコストセービングの舞台なのですが、それを非常にうまく演出していました。舞台装置はお金をかけていませんが、とても良かったと思います。洗濯かごからファルスタッフを観客側に投げ入れるのも珍しい設定です。

ここ数年のヴェルディのマイブームは”ファルスタッフ”なんです。ヴィオレッタから入ったヴェルディで、今でもそれは、大好きな演目ですが、かれこれ国内外で20公演も生で見ると、やや飽きてきてくるのも事実。その点、シモン・ボッカネグラは何回見ても飽きない。特にレオ・ヌッチがタイトルロールのは。。という感じだったのですが、一作年のスカラ座来日の予習あたりから、ファルスタッフはまりました。ハーディング指揮、マエストリ、バルッチェローナ、フリットリ、カヴァレッティのすごいのを連チャンで聴き、そして去年のサイトウキネンのファビオ・ルイージの指揮の圧倒的な迫力の演奏を聴いて、完全にファルスタッフブームに陥りました。

ヴェルディがこの曲を書き上げたのは、80歳目前。オテロでもう最後と思われていたのを、リコルディとボイートにうまく乗せられて(?)、最後に書いた喜劇です。喜劇は、若い時の「贋のスタラチオ或いは一日だけの王様」が失敗に終わってから書いてなかったんです。ヴェルディは住んでいた小都市ブッセートからミラノの音楽院に入学しようと猛勉強をしますが、結局不合格になります。そして、妻と息子を病で亡くし、呆然としているところに、スカラ座からナブッコの脚本をもらい、これを作品かして、人気作曲家の階段を上り始めます。後に、有名になったヴェルディに、ミラノの音楽院は“ヴェルディ音楽院”と改名したいと申し出ますが、ヴェルディはそれを受け入れませんでした。自分を入れてくれなかった音楽院に自分の名を付けるなんて、ということでしょう。結局、“ヴェルディ音楽院”が成立するのは彼の死後になります。

 そして、ヴェルディの最後の作品、“ファルスタッフ”は彼が音楽院にはいるために猛勉強した「対位法」を駆使した、フーガで終わります。本当に美しく、複雑で、登場人物全員が歌うフーガ。「どんなもんだい」というヴェルディのつぶやきが聞こえそうです。また、舞台の上では、ヴェルディは、彼が生涯大事にしてきた「名誉」について、「名誉だと? そんなもので腹がふくれるか?」ファルスタッフにと言わせるのです。なんと、痛快な人生を送った音楽家ではありませんか。ヴェルディファンはそういうところが好きなんです。

今日のファルスタッフ、¥1,000-というリーズナブルな価格で販売していたプログラムもとても内容が濃くて、楽しめました。ただし、そろそろ自分の腹もビール腹になってきているのには気をつけようと思いましたが。。。
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