プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

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メッセニアの神託 @ 神奈川県立音楽堂

 先週のリゴレットに続き、またまたもの凄いものを聴いてしまいました。ヴィヴァルディのオペラ“メッセニアの神託”ウィーン版(1742年)の日本初演です。古楽器のオーケストラ、エウロパ・ガランテ、を率いて「四季」で高い評価を受けた、ファビオ・ビオンディがオペラをやるというので、オペラ好きの間だけならず、バロックファンの間でも、公演の発表時点からかなりの話題になっていました。

 2日間の公演は同じキャスト、なんとテノール1人とメゾソプラノが6人!という構成の歌手陣とピリオド楽器の小さめ(20人くらいか?)のオケが行うこの公演、座席数1,000、今年開館60周年記念を迎える中規模の老舗ホールがそ相当力を入れているというので、両日ともに行ってきました。

 演奏、歌唱、演出のすべてが想像をはるかに超えた素晴らしさでした。ビオンディを生で聴くのは初めてですが、古楽器奏者としては、「古楽器っぽさを消した感じ」というイメージをCDなどからは持っていましたが、生で聴くと大違い。全体に非常に締まった感じで、チェンバロ、ホルン、マンドリン(おそらく)などで、美しく統制された音楽を作ります。  ヴィヴァルディの明るさが随所に出ていて、時には四季を思い出させるような激しく速い演奏。歌詞と音楽の協調もすごく良く出来ていて、ドラマティコな感じは、100年前版ヴェルディ! 1日目は前から8列目のオケのすぐそば、2日目は30列目最後列だったので、音の感じは大分違いました。ホールの音響のせい、それともしかしたら2日目は大雨だったので、湿気のせいもあったかもしれませんが、この日は音がややこもった感じになっていたかもしれません。それと上演時間が2日目のほうが10分近く長く、ややトレモロ(とオペラ通の知人に教えてもらいました)のスピードなどが1日目のほうがキリッとしていた感じもありました。それと、ホルンがやや不安定だったかなぁ。ただ、それは2日を比較して「そんな感じ」と言うだけの話で、久しぶりのイタリアンバロックの凄さに圧倒されました!

 なにせ最近、バロックというと食事の時に、「いわゆるターフェル・ムージク」として、バッハ、コレルリ、スカラルッティなどを聴いているのが主で、長いことヴィヴァルディ聴いていませんでした。自分の頭をゴツンです。

 そして、よくまあ、この高レベルの歌手を7人そろえたなぁ、という歌唱の素晴らしさ。その中でも度肝を抜かれたのは、25歳のロシアの若手、ユリア・レージネヴァ、王国の大臣役を歌うのですが、この人のアリアには腰が抜けました。低音から高音まで段差なく美しいコロラトゥーラ(バロックに使っていんですかね、この言葉)、そしてアリアが二巡目に入って装飾歌唱になった時のベルカント(じゃなくてアジリタだと同じくお会いしたオペラの先生に教えて頂きました)の華やかさ。初めて聞いた歌手で、椅子から20cm以上飛び上がったのは、バルトリ、フォークト以来です。2幕目のアリア「私は危険な海で揺れる船のよう」の後半部は、ロッシーニを得意とするというのが頷ける、軽く踊るような歌唱、3幕目の「戦場で私の誠実さを試したいなら〜」では、凄みも出した歌唱で、両日とも長い長い拍手を受けていました。主役ではないですが、この人が今場所の優勝杯をかっさらった感じですね。

 でも、他の6人もとても良かったんですよ。レージネヴァが飛び抜けていただけで。主役の王子を歌った、ヴィヴィカ・ジュノーも音域が広く、ソプラノと言っても良い感じ。三幕目に、母に訴える聴かせどころでのアリア「花嫁よ私が分からないのか?母よ私は貴方の心、息子です。」は、グッとくる迫力のある歌唱。そして、これも脇役で、アリアは一曲しかありませんでしたが、女王の護衛役のマルティナ・ベッリは、逆にアルトっぽいメゾで、2幕目のおどろおどろしい場面で「私は、感じる、前王のさすらう影が血を復讐を求め叫んでいるのを」と歌ったアリアが、身震いさせられるものがありました。

 バロックオペラの形式で、レチタティーボ(?)の後、アリアが終わると、歌手は一旦袖に引っ込み拍手、また次ぎのアリアと、「メッセニアの歌合戦」という感じが、また素敵なんです。重唱はほとんどないのですが、最後に母の女王と息子の王子が真実をしって手を取り合う時にわずか1-2小節だけ2重唱になります。これがまた効果的で感動しました。

 あと、どうしても書かなくてはいけないのは、能舞台を模した演出。素晴らしかったです。舞台装置は王の椅子と、その後ろの絹のような天井から下がる榊の葉を描いたカーテンのような布だけ。あとは衣装が王はまるで歌舞伎の鏡獅子か連獅子のような“どてら”(ちょっと表現ひどいなぁ)。ただ、隈取りとかはなく、歌手の化粧もほとんどないようでした。王役のスタヴランはほぼ坊主頭で、なんかジェイソン・ステータムみたい。他のメゾソプラノは設定は男ということなので、忍者のような藍の衣装に何人かは日本刀や、扇を持ち、これがとても効果的に使われていました。最後のシーンで、殺されたはずの王子が現れて、舞台背景に投影された大きな月をバックに紫の扇を掲げるところなど、演出家弥勒忠史の才能がほとばしっていました。

 いやー、良かったなぁ。この企画を実現させた、神奈川県立音楽堂にもBravoです!そして、この公演に限ったことではないそうですが、休憩中にホワイエでは身障者の方々が心を込めて作ったケーキやコーヒーそして素敵なアクセサリが販売されています。コーヒーが150円、ケーキ120円で、本当に美味しい。何か心が温まりました。

明後日、3月3日にはビオンディとジュノーでスターバト・マーテルをやります。(オペラシティ)行きたいんですが、この日は無理そう。残念。

 今週末、「後宮からの逃走」の公演はまだ行くか決めていません。次の週末の新国立の「マノン・レスコー」、ザハロワ&ボッレの「ジゼル」が次の観劇予定です。

指揮・ヴァイオリン:ファビオ・ビオンディ
演出:彌勒忠史
出演:マグヌス・スタヴラン(テノール)、マリアンヌ・キーランド、ヴィヴィカ・ジュノー、マリーナ・デ・リソ、ユリア・レージネヴァ、フランツィスカ・ゴッドヴァルト、マルティナ・ベッリ(以上メゾソプラノ)
演奏:エウローパ・ガランテ
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