プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

トゥーランドット バッティストーニ @ サントリーホール

「いや、凄かった!」の一言でブログが終わりそうです。そもそも、プッチーニというのは、それなりの指揮者が振れば、どの曲もそれは美しいメロディーを持っているんですし、ましてバッティストー二が振ったのですから。

 ともあれ、バッティがトゥーランドットを振るというのを聞いて、期待せずにはいられませんでした。個人的には、2001年に僕が生まれて初めて聴いたオペラが、フィレンツェ歌劇場のトゥーランドットだったということもありますし、プッチーニのオペラの中では、「妖艶」という形容詞が付けられる魅力的な演目ということもあります。そして、バッティストーニが振るヴェルディ以外のオペラを初めて聴くというのも楽しみでした。

 この日の僕と家内の席は、なんと1列目の左端。指揮者の様子が良く見えます。前日のオーチャードでの公演を聴いた知人からは「シートベルトがいるぞ」と言われていましたが、あながち冗談ではなかった感じです。

 序曲とともに赤い照明が暗闇を裂き、ただの演奏会形式でないことがわかります。照明以外の演出的要素としては、中国の首切り役人が、上半身裸のダンサー(多分)が出て来たりしましたが、歌手自体はモーニングとドレスでした。それでも、紫禁城での1998年ズービン・メータ指揮のフィレンツェ歌劇場の公演と同じような迫力がサントリー・ホール全体を包みます。照明の色はそのうちに青く。。。バッティの指揮が色彩をコントロールしているかのようです。

 序曲の“鳴り”からして違うのです。彼の指揮は、すべての楽器をまとめて一つの壮大な音を作るというのではなく、楽器毎の音を引っ張り出し、引っ込めて、音の放物線がオーケストラの上を行き交うような立体的な音です。今回もそれは変わらず、鳴らすときの凄さと言ったら、ロックコンサート(家内談)のような感じでしたが、2012年のナブッコ、翌年のローマ三部作、それに続く毎年のバッティストーニの指揮をずっと聴いてきて、彼はどんどん進化していると思います。2013年に個人的にベストの公演だと思ったローマ三部作は、いつも言うようにミケランジェロの彫刻のように迷いのない切り立った崖のような音を聞かせてくれました。とにかく”鳴らし方“が凄かった。それは今でも変わりませんが、今年のリゴレット、チャイコフスキー交響曲5番、そしてこの日のトゥーラン・ドットでは、鳴らさないところでの表現力、音と音の間の表現力が非常に豊かになっていると感じました。あー、語彙が少ないなぁ。

 ヴェルディほど多くプッチーニは聴いていませんが、この日の公演は、それまでの"トゥーランドット"の概念を変えるほどのインパクトのあるものでした。彼は、このオペラの甘い部分を、まるで溶かした媚薬のように客席に流して行きます。それだけに、リューが死んだ後、つまりプッチーニが死んだ後の、アルファーノの作曲部分がいつになく完成度が低く感じました。もしプッチーニが生きていたら、最後にトゥーランドットのアリアかロマンツァが入ったのではないか、、などと考えました。

 バッティの指揮は、プッチーニの音楽が現代の映画音楽につながっていることも強く感じさせました。公演後に家内と話すと、彼女は「南太平洋」を、僕は「ロード・オブ・ザ・リング」を挙げましたが、たしかにつながっていますね。「バリハイ」などはメロディもにていますね。


 歌手陣では、なんと言ってもリューを唄った、浜田理恵さんが素晴らしかった。ピアニシモでスーッと伸びる、リューの魂が乗り移ったような声でした。昨年の芸術劇場の「ドン・カルロス(5幕フランス語版)」でのエリザベートでも素晴らしかった!フランス中心に活動しているようですが、日本でももっと唄って欲しいですね。

 前日、評判の良かった、カラフのカルロ・ヴェントレは前半やや疲れ気味の感じがあり、声量に乏しく、”リリコ・スピント“と言われる感じがわからなかったのですが、後半は素晴らしくなりました。イタリア人らしく、拍手が多くなるとどんどん良くなる感じですね。” nessun dorma”堪能しました。

 タイトルロールのティツィアナ・カルーソーは、容姿も声もまさしく美しいトゥーラン・ドット。前半はやはり疲れが出たのか、高音を「よいしょ」と持ち上げている感じがありましたが、後半の休憩後は全くそのような問題は解消でした。

歌手陣は他の日本人も素晴らしかったです。しかし、先週の新国立の”トラヴィアータ“やその前の”運命の力”、そしてこのトゥーランドット、またパリでのガッティの指揮の“マクベス”を聴いて感じたのは、オペラはやっぱり指揮者が良ければ、歌手に多少の問題があっても満足できる、ということです。逆はありません。指揮者が悪くて、歌手が良くても満足は出来ません。

 バッティストーニの”騒ぎ“とも言える人気を、苦々しく思っている方もいらっしゃるかと思います。まだ若干27歳。やたら鳴らす、というイメージがありますから。でも、是非、一度聴いてみてください。僕なんか、60歳を過ぎて、自分の大学院の生徒と同じような齢の”天才!”指揮者と出会えたことは、実にラッキーだと思っています。

 さて、今日はこれから、新国立”トラヴィアータ”2回目です。今週はまだあります。忙しい!



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