プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ハンガリー国立歌劇場「セビリアの理髪師」

1ヶ月ぶりのオペラ観劇です。こんなに間が空くのも珍しいのですが、仕事でアメリカの田舎に行ったりしていました。今日は東京では1日限りの、ダニエラ・バルッチェローナのロジーナが聴ける公演に行ってきました。

 バルッチェローナは、一昨年スカラ座来日のファルスタッフでのクィックリー夫人以来だと思います。その時の素晴らしい歌唱に感銘を受けたのですが、今日は彼女の得意とするベルカント唱法を堪能しました。Una Voce Poco Faはまさに天国でのオペラのよう。アジリタの駆使に加えて、曲のテンポをとても大きく変えていましたので、オーケストラとの調和が難しいだろうと思いましたが、実に綺麗に決まっていましたね。この曲は、どうしてもカラスの赤十字コンサートのムービーと、最近ではバルトリの歌唱が耳に焼き付いているのですが、バルッチェローナのそれは、メゾの部分で装飾をふんだんに聴かせてくれて、とても新鮮でした。

Una Voce Poco Fa (今の歌声は?)
カラス版  https://www.youtube.com/watch?v=NuEmJZzuG9U
バルトリ版 https://www.youtube.com/watch?v=TCUNvCjLrTo
バルッチェローナ版(日本の公演ではありませんが) 
https://www.youtube.com/watch?v=3TkiZFj6tH8

これが何より、今日のご馳走です。と言うか、会場で会ったオペラファンの友人もほとんどがバルッチェローナ目当てだったようです。バルトリもソプラノ音域までカバーして素晴らしい歌手ですが、バルッチェローナはやわらかなメゾで、演目はバロックオペラからロッシーニ、そしてヴェルディ(スカラ座来日では、アムネリスも歌っています)までカバーする声の包容力が凄いです。

 歌手では、しっかりした本格派バリトンという印象のフィガロ役の韓国人(?)歌手のアルド・ホがを生き生きとした声と演技でBravoをもらっていました。ベルタ役のアニコー・バコニも良かったですね。残念だったのは、侯爵役のゾルタン・メジェシ。1幕目登場して第一声から安定しません。一生懸命ベルカントしようとしているのですが、音程はずれます。途中、他の歌手はどんどん良くなっていくのに、彼だけはどうも…. 目の覚めるような大アリアまでは期待していませんでしたが、バルッチェローナの相手としては力不足と言えましょう。

 そして、もうひとつのがっかりは、指揮とオケです。イシュトヴァーン・デーネシュという指揮者、実に安全運転な指揮をするのですが、オケが序曲から締まりません。ホルンは変な音を出すし、クレッシェンドはロッシーニっぽく聞こえません。全体に退屈なのです。6月12日からほぼ連日のように演奏してきたせいでしょうか? (しかし同じメンバーで演奏しているとは思えませんが。)あるいは6-7月の公演で良くあるのですが、チェロやバイオリンなどの弦楽器が日本の湿度のせいで良い音が出ないということもあったかもしれません。

 舞台の設定は、白と黒を基調としたクラシックなシンプルなもの。舞台の中程に奥と手前を分ける鉄柵があり、これを実に有効に使って室内と室外を分けていました。セビリアというと新国立のケップリンガーの派手な演出が強烈で、すぐに頭に浮かんでしまうのですが、前にも書いたように、フランコの時代を設定したこの演出、個人的には好きになれません。ベーケーシュ/コヴァリクのこの日の舞台はとても洗練されていて、音楽と歌唱に集中できました。

ただ、演出で日本語を使ったり、(“コンニチワ”、“ワカッタ”など)、宝塚の舞台のように伯爵が階段を降りながら金ぴかの衣装をコートを開いて見せたりという、やや観客に媚びたような演出がtoo muchな気がしました。これもオケが良かったら全然気にならないと思いますが、オケでロッシーニの楽しさが出ない分を演出で過剰にやられたという後味の悪さが残ります。その中では、ロッジーナのUna Voce Poco Faの歌唱中の衣装の早変わりは美しいものでした。

さて、今日は「フィガロの結婚」です。
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