プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ランスへの旅、藤原歌劇団

 マエストロゼッダのタクトがピンと動くとオケは、音合わせのような響きで始まる序曲を奏でます。僕にとって、これほど心を躍らせるオペラブッファ(ブッファと呼べるのはドニゼッティくらいまででしょうかね?)はありません。2008年にゲルギエフ率いるマリインスキー歌劇場が引っ越し公演で来日した際に初めて聴いてから病みつきに。。日本では滅多に上演されないので、2003年のリセウ大劇場でのロペス=コボス指揮のDVDと、1984年のペーザロでのアバド指揮のCDを聴いて来ましたが、今年になって2月に渡欧した際にアムステルダムのロイヤルダッチ歌劇場で素晴らしい公演に接することができ、そして今日また日生劇場で素晴らしいランスを聴くことができました。

 ロッシーニ自身はこの作品を「良い出来」とは思っていなかったという話がありますが、僕はこのランスの曲を一部使用している「オリー伯爵」などに比べても、素晴らしい作品だと思います。なにしろ、あの14重唱が入っているのですから。。。これが素晴らしい出来で歌われた時には、このオペラは奇跡のオペラと呼んでいいのではないかと思います。

 大阪の公演に行った知人からは、「オケがゆるかった」と言われていましたが、昨日の東京公演ではそんなことは全くなく、今年87歳になるマエストロゼッダは比較的ゆったりとしたテンポでしたが、しまった感じのあるロッシーニを聴かせてくれました。ペーザロに行った気分です。歌手もさすが藤原、良くこれだけ大人数のクォリティの高い歌手を集めたもんだと感嘆。特にコリーナの砂川涼子、コルテーゼ夫人の平野雅代は素晴らしい声を序盤から聴かせてくれました。男声では、騎士ベルフォーレの中井亮一が光りました。彼はゼッダ門下生という感じで、1月のファルスタッフでもゼッダ指揮のもと、フェントンを歌っていました。大発見は、リーベンスコフ伯爵の岡阪弘毅、シラクーザかホセ・ブロスを彷彿とさせる、イタリアンな甘い声にびっくり。歌唱技法的にはまだ伸びる余地はあると思いますが、藤原はこんな若い歌手を隠していたのか!という感じでした。

 余談ですが、今回改めて思い出したのは、最後の大団円のシーンでかかる荘厳な曲が、チャイコフスキーのバレエ曲「眠れる森の美女」の”アポテオーズ”という最終曲、そのものだと言うことと、この曲は19世紀にはフランスで大評判になり、フランス第二の国歌(16世紀のアンリ4世への賛歌)と呼ばれていたそうだということ。この時代、著作権はまだなかったに等しいんですね。このブログで何度も書きましたが、このアポテオーズは世界バレエのカーテンコールにも使われています。https://www.youtube.com/watch?t=17&v=kOxeQY59YNo

 日生劇場は多分カプリッチョ以来と思いますが、ロッシーニを聴くには丁度良いサイズ。いいですね。難は手頃なパーキングがないことくらい。

 さて、個人的なシーズン最終は、再来週の新国立研修所公演、「こうもり」、「ドン・パスクワーレ」です。それまで2週間はお休み。

指揮:アルベルト・ゼッダ
合唱:藤原歌劇団合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【7/3&5】【7/4】
コリンナ: 佐藤美枝子 砂川涼子
リベーア侯爵夫人: 鳥木弥生 向野由美子
フォルヴィル伯爵夫人: 光岡暁恵 清水理恵
コルテーゼ夫人: 清水知子 平野雅世
騎士ベルフィオーレ: 小山陽一郎 中井亮一
リーベンスコフ伯爵: 曽我雄一 岡坂弘毅
シドニー卿: 彭康亮 伊藤貴之
ドン・プロフォンド: 久保田真澄 安藤玄人
トロンボノク男爵: 三浦克次 森口賢二
ドン・アルバロ: 牧野正人 谷友博
ドン・プルデンツィオ: 柿沼伸美 押川浩士
ドン・ルイージノ: 真野郁夫 所谷直生
デリア: 山口佳子 宮本彩音
マッダレーナ: 河野めぐみ 松浦麗
モデスティーナ: 但馬由香 楠麻衣
ゼフィリーノ: 藤原海考 井出司
アントーニオ: 立花敏弘 清水良一
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