プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

英国ロイヤル・オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

9月13日、ROHのドン・ジョヴァンニに行ってきました。あいにく、ちょっと僕自身の体調が悪くオペラ前半は身が入りませんでした。その後休憩時間に復活し、後半はじっくり聴けましたので、後半中心の感想になります。

とにかくこの公演を引っ張っていたのは、カスパー・ホルテンの演出だと思います。特にプロジェクションマッピングで舞台装置の上に投影される光と色彩の美しさには目を見張りました。最初は、舞台の引き立て役になっていたプロジェクションが2幕目以降は、ドン・ジョヴァンニの心を写す光と影になっていきます。これは、いかにも英国のテクノロジー&芸術の得意技。好きな人と嫌いな人がはっきりする舞台でしたが、僕は好みでした。たた、ややもすると舞台装置に気を取られがちになってしまったのが難と言えば難。

パッパ-ノの指揮は、フォルテピアノを自身が弾くということもあって、斬新な演奏….実はテオドール・クルレンツィスのような振りをちょっと期待したのですが、やはり伝統あるROHでそこまで期待するのは素人のあさはかさ…..でも、序曲はエッジの効いた、はっきりとした音、ここが僕のパッパーノの一番好きなところですが、そう言った表現が出ていました。2月のアンドレア・シェニエでは、それがオペラの間ずっと続くのですが、この日は劇に入ると割と保守的で、パッパーノとしてはゆっくりしたテンポと感じました。それでも、歌手を引っ張ったり、バックアップしたりしながら進行する演奏は、オケの各パートから音が立ち上ってくるような魅力に溢れています。「出来たての音」っていう感じですかね。(表現力乏しく、失礼......)特別演奏会とマクベスが楽しみです。

歌手は、誰を取っても文句の付けようのないゴージャスなキャスティング。ですので、結局聴く人の好みになると思います。僕は、ドンナ・エルヴィーラのジョイス・ディドナード、レポレロのアレックス・エスポージトがとても良かったと思います。この二人が一番、「歌う俳優」をしていました。贔屓のユリア・レージネヴァも良かったのですが、アジリタを聴ける歌唱がなくて残念。オッターヴィオのヴィラゾン、久しぶりに聴きましたが、(うん?、生は初めてか?)かってのネトレプコとのトラヴィアータ(デッカ-演出)時代からすると、峠を過ぎたなぁと思いました。悪く言えば並のテノールというところで、中音を廻すのが上手いかなぁという感じで、高音は昔の面影がなかったですね。そして肝心なタイトルロールのダルカンジェロ、全く悪くないです。安定していてどっしりとしたバスバリトン。しかし、あまりに自然過ぎて、ジョヴァンニの極悪な面が心に響かなかったです。その点では、グヴィエチェンのほうが良かったなぁ。心の中の悪が声になって絞り出る感じしていました。声に緊張感がありました。それと、ダルカンジェロ、あまりに立派なバスバリトンなんで最後に騎士長が現れた時に、騎士長の声が地の底から沸き立ってくる悪魔のように聞こえないのです。「ジョヴァンニ対騎士長、最後の戦い」という構図が見えないんですね。なんか、兄弟で歌っているみたい。まあ、これは騎士長役のライモンド・アチェトが物足らないということもあります。この騎士長は、特に2階から声を出すので、リゴレットのモンテローネの呪いの場面のような、“ど迫力”が欲しかったです。その点では、グヴィエチェンと妻屋さんの2012年の新国立のほうが、この場面の印象が強かったです。ですので、最後に「孤独」という究極の罰を与えたという演出がいまひとつ軽い感じがしたのは僕だけでしょうか?この最後のところで地獄の炎に焼かれるようなプロジェクションマッピングを使ってほしかった。ただ、やはりこれも聴く人の好みによるところがあると思います。作り声っぽいところの無いダルカンジェロに好感を持たれた方も多いと思います。

さて、次は”マクベス“です。楽しみ〜!

作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:カスパー・ホルテン
ドン・ジョヴァンニ:イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレロ:アレックス・エスポージト
ドン・オッターヴィオ:ローランド・ヴィラゾン
ドンナ・エルヴィーラ:ジョイス・ディドナート
ドンナ・アンナ:アルビナ・シャギムラトヴァ
ツェルリーナ:ユリア・レージネヴァ
マゼット:マシュー・ローズ
騎士長:ライモンド・アチェト


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