プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

レオ・ヌッチ バリトンリサイタル

 いや、昨日のヌッチはいつにも増してすごかったです!プログラムの最初がロッシーニの「セヴィリアの理髪師~私は街の何でも屋」というのは去年と同じですが、去年は、まずはロッシーニで喉をならすという感じだったと記憶しています。ところが今年は最初から全開!今年の夏、スカラ座で1ヶ月唄っていたので、僕の知人でも久しぶりのヌッチのフィガロを満喫した人が多いです。が、僕自身は行けなかったので、ここで素晴らしいカヴァティーナを聴けて幸せでした。

 ヌッチも声の調子を確かめるように、安全運転から入る時もあります。去年や2013年のリサイタルはそんな感じだったと覚えています。もちろん、それはそれで全然問題無く、後半に向かって盛り上がっていき、ヌッチリサイタルの第三部と言われる、アンコール5−6曲でピークに達するのです。

 ですが、昨日は本当に気分が乗っていたのだと思います。軽い咳は何度かしていたようですが、ベルカントな曲から重い曲までを自由に歌い分けます。マクベスの第4幕フィナーレは短いですが、圧巻でした。これぞマクベス。ROHの前に聴かなくて良かったです。そして前半最後のヴェルディの珍しい歌曲、亡命者。とにかく、昨年も書きましたが、高音が輝くように美しい。2008-2010年頃、tutto Verdiを録音した頃は、明らかに高音がくすんだ感じがありましたが、70歳を超えて、呼吸法を変えたのでしょうか?昔、ドミンゴと仮面舞踏会を唄ったレーナートのような高音が戻ってきたのです。昨年発売されたCD,“Kings and Courtiers”(王と廷臣)を聴くとそれがよく解ります。今年74歳ですから、皆「いつまで聴けるかわからない」という思いで彼のリサイタルに毎年出かけているのだと思いますが、聴く度に「まだ5年は大丈夫」と思い知らされます。今回もそうでした。

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 後半は二人のフォスカリから始まり時代を遡り、ベッリーニ、ドニゼッティ、ロッシーニと唄って行きます。最後はラ・ファヴォリータから“さあ、レオノーラよ、そなたの足許に”でしたから比較的軽く終わったわけです。でもそれからのアンコールが凄い、重い曲ばかり4曲。それも長い曲ばかり。ドン・カルロの” Per me giunto è il di supremo”の最後の”addio carlo”の歌詞や、 リゴレットの“Cortigiani,vil razza dannata”の”Ebben, piango, Marulllo, signore”の歌詞を歌った時は、全くオペラの中に飲み込まれてしまった感じです。ものすごい表現力。このリサイタルでオペラ5本分の満足感。

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今年は、2月にウィーンまで行き、初めてヌッチとフリットリのシモン・ボッカネグラを聴きましたが、この時は指揮者がオーギャンでテノールのバルガスが、セッコになって、その点が残念でした。来年はその敵討ちにリセウ歌劇場まで遠征しようかと思っています。
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