プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

“オネーギン“シュツットガルトバレエ団

 オネーギン、オペラでは全幕を見ていますが、実はバレエでは全幕物を見ていなかったのです。で、昨日は、ジョン・クランコの振り付けたオネーギンの「勧進元」であるシュツットガルトバレエ団が引っ越し公演でやって来たと言うので見て来ました。ちなみに、オネーギンの3幕目か1幕目のパ・ド・ドゥは、覚えているだけでも今年8月の世界バレエでこのバレエ団のスターであるフリーデマン・フォーゲルとアリシア・アマトリアンが1幕目のパドドゥを踊ったのを見ていますし、2012年の世界バレエではルグリとマリア・アイシュヴァルトが3幕目のパドドゥを、2007年には「ルグリと仲間達」で、モニカ・ルディエールのものすごいパフォーマンスを見ています。

 昨日のオネーギン役はロマン・ノヴイツキー。ルグリやフォーゲルに比べてやはり存在感がちょっと足りない感じ。このバレエは技術で見せるのではなく、ダンサーがいかに役の情感を出せるかで決まるので、タチヤーナとほぼ同じ男性としては低めの身長というのも不利だったかもしれません。それでも3幕目は見せてくれました。速く、きびきびした動きでノヴイスキーらしさを出し、美しく魅力的になったタチアナへの想いを火花のように散らす踊りにbravoでした。タチヤーナ役の韓国人、ヒョ・ジョン・カンはこの日の白眉!1幕目の幼なさの残る娘から成熟した女性に変わる3幕目の変化を踊りでふんだんに見せてくれました。鏡の向こうに立ったのは、日本人ソリストの森田愛海だったのかもしれません。今回はロミオとジュリエットのジプシーで踊っていたようですが、次に来るときにはプリンシパルになって良い役で踊ってほしいですね。

 このバレエのあらすじは、チャイコフスキーのオペラ“エフゲニー・オネーギン”と殆ど同じです。椿姫のように、最期にアルマン(アルフレード)が立ち会うか、立ち会わないか、というような大きな違いはバレエ版とオペラ版の間にはありません。いずれも美しく悲しい最後ですが、ストーリーを良く考えてみると、実は、昔は冴えなかった女の子が今は人の妻になっていて見違えるほど美しく魅力的なので、よりを戻そうとしたオネーギンが振られるというお話なのです。彼はその間に、親友のレンスキーを殺したりしているんですから、オネーギンというのもけっこう馬鹿なのです。これが美しく見えるのはバレエでもオペラでもタイトルロールの力量によると思います。その意味では、今日23日のジェイソン・レイリーや21日のフリーデマン・フォーゲルも見てみたかったです。

 群舞も美しかったですね。プリンシパルの下のランクのソリストを揃えただけあって、実に力強く生命感に溢れた動きを見せてくれました。

 やや残念だったのは音楽です。指揮者のジェームズ・ダグルはまずまずだったと思うのですが、オケの東京シティ・フィルが良いところでホルンを始め色々と異音を出してくれました。バレエのオーケストラって2流と思われていて、実際そういうキャスティングをしたのでしょうか?でも、バレエこそ音楽が大切だと思います。その点新国立のレベルは高いですね。

この日のキャストは次の通り。

オネーギン
ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト


オネーギン:ロマン・ノヴィツキー

レンスキー:パブロ・フォン・シュテルネンフェルス
オネーギンの友人

ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
未亡人

タチヤーナ:ヒョ・ジョン・カン
ラーリナ夫人の娘

オリガ:アンジェリーナ・ズッカリーニ
ラーリナ夫人の娘

彼女たちの乳母:ダニエラ・ランゼッティ

グレーミン公爵:マテオ・クロッカード=ヴィラ
ラーリナ家の友人

近所の人々、ラーリナ夫人の親戚たち/ 
サンクトペテルブルクのグレーミン公爵の客人たち:シュツットガルト・バレエ団


指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団



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