プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

加藤浩子著「オペラでわかるヨーロッパ史」

 正月休み前に発刊された、楽しみにしていたこの本、やはり期待を裏切らない素晴らしいものでした。オペラの公演のプログラムガイドなどに、そのオペラが書かれた背景などが解説されてあることは良くありますが、これほど深く追求された集大成的な本は初めてだと思います。加藤さんは、ヴェルディの専門家であり、僕もオペラ作曲家の中ではヴェルディが群を抜いて好きなので、シチリアの晩鐘、シモン・ボッカネグラ、リゴレット、仮面舞踏会などの歴史的考察は大変おもしろかったです。特に加藤さんが、最近ヴェルディ協会の機関誌”ヴェルディアーナ“でも発表した「ヴェルディの捨て子」の考察は、その子孫へのインタビューも含めていて、単なる推察ではない「凄み」を感じました。

 この加藤さんの説を読んでから再びシモン・ボッカネグラを見直しましたが、新しい、ひしひしと心に迫る感動がありました。また、オペラのように毒薬で簡単には死ねずに数日間苦しんだ後で亡くなったこと、舞台では最後に涙を誘う「次の総督をアドルノに…」という事実は無かったことなどが、何度も見たオペラをまるで初めて見るように変えて行きます。彼女が書いたように、ジェノヴェのサンタゴスティーノ博物館の「ゆがんだ表情に見えた」シモン・ボッカネグラの横たわった像を見たくてしかたなくなりました。

 リゴレットについても、背中に瘤のある矮人(わいじん)として、ヴェラスケスの絵のそれを例に取って説明していることで、当時のそのような人達への偏見、そして彼等の立場、悲しみが視覚的に良くわかります。特にラス・メニーナスの絵は僕が短期間マドリッドに住んでいたころに毎週プラドに見に行っていたものですし、その後もピカソ版を追っかけて「生涯の絵」になっているものだけに、そこに”リゴレット“という大好きなオペラをリンク付けた加藤さんの才能、それにも増して研究に研究を重ねてこそ到達した知見に感動しました。この本を読まなければ、二つの芸術が僕の中でくっつくことはなかったのですから。

 もちろん、オペラはそんなに勉強しなくてももちろん楽しいです。でもシャンパンの泡のようにその楽しみが観劇後に序々に消えてしまうよりは、人生を豊かにする血となり、肉となることがもっと素晴らしいということをこの本は教えてくれました。やや興奮しながらの感想です。

オペラでわかるヨーロッパ史 平凡社新書 ¥780
関連記事
スポンサーサイト

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://provenzailmar.blog18.fc2.com/tb.php/568-649e3ea0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。