プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

イル・トロヴァトーレ

 昨年末の「第九」を聞き損ねたので、9月のオペラシティでの「展覧会の絵」、「運命の力序曲」他のコンサート以来のバッティストーニ。やはり、バッティのヴェルディは彫刻的で心に迫ってくるものがあります。とは言え、今回はお馴染みの東フィルを率いるのではなくて、東京都交響楽団を指揮するという初めて(?)のケースのせいか、いつもの彼の音楽作りよりややもったりした感じ、大人しい感じがありました。オケが指揮についていってない感じですね。特に前半はその感じがありましたが、後半、どんどん良くなり、第4幕の「処刑」の場面の音の作り方はバッティストーニならではの壮絶感が良く出ていました。しかし、このオペラは、ストーリーはまさに血みどろ、グチャグチャの凄まじいものがありますが、音楽はまるで宝石箱を広げたように美しいメロディーが散りばめられています。バッティストーニは、今回はそのメロディーの美しさを歌手に合わせながら堪能させてくれて、最後に爆発した!という感じでしょうか?そいういう観点から聴くと、決して都響も悪くなかったかと思います。

 演出は、Tutto Verdiで2010年のパルマ王立劇場での公演の映像になっているロレンツォ・マリアーニのもので、見慣れた感じがありましたが、いつものビデオ席ではなく、文化会館の2階1列目(今回は良いところが取れました)から見ると、実にシンプルで洗練された感じ。黒一色で作られた舞台はまるで床の間のような感じがしました。広い舞台を黒で狭小感を出してストーリー全体に流れる緊迫感を崩さないようにしている、と感じました。マリアーニ氏によると、今回の演出では「ミステリアス」を強調しているとのことでしたが、まさにその通り、そしてシーンはすべて夜、夜の中で見えない力、人間の力を超えた大きな力が働いているということを強調していたそうです。たしかに、一幕序奏のあとに、フェルランドが現れるところは、ちょっとスターウォーズでダースベーダ-(いや、カイロ・レンか?)が出てくるようで、フォースを感じましたね!

 この日のキャストは下に記しました。初日、だいぶ主役級に交代があったとのことで心配していましたが、この土曜日は波乱なく上演されました。主役級のレベルが皆高くて実に良かったと思います。特にルーナ伯爵役の上江隼人さんは、この二期会+バッティストーニの毎年の公演の固定キャストになっていますが、今回は得意のピアニシモももちろんですが、中音部の甘い声質がとても良く出ていて、また新しい魅力を出してくれたと思います。こういうのを聴くと、彼がイタリアで得意にして折々に唄っている、スッティフェーリオ聴きたくなりますね。アズチェーナの清水華澄さん、喉に負担のかかるだろうこの役を一瞬の破綻もなく、怨念に溢れた表現で舞台を支配している感がありました。マンリーコ役のエクトール・サンドバルさん、彼も甘い声で魅了してくれました。マンリーコの唄うメロディは、相当複雑だという事が今回良くわかりました。これを問題なく美しく唄っていくテクニックはすごいなと思いましたが、Tutto Verdiでのマルセロ・アルバレスはそのテクニックも感じさせない、という意味ではもっと凄かったのかもしれません。

 この公演、ひさしぶりにS席を取りましたが、プログラムが付いて\13,500-、これはヴァリューフォーマネーですね。それなのに、空席がやや目立ったのは残念なところでした。


指揮: アンドレア・バッティストーニ
演出: ロレンツォ・マリアーニ
美術: ウィリアム・オルランディ
照明: クリスチャン・ピノー
演出補: エリザベッタ・マリーニ

合唱指揮: 佐藤 宏
音楽アドヴァイザー: 田口興輔

舞台監督: 佐藤公紀
公演監督: 直野 資

レオノーラ:並河寿美
マンリーコ:エクトール・サンドバル
ルーナ伯爵:上江隼人
アズチェーナ:清水華澄
フェルランド:伊藤 純
合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 東京都交響楽団
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