プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ウェルテル@新国立劇場

しばらくブログを書いていませんでした。Jazzなんか行ってたもので....

 さて、初めての「”生”ウェルテル」観劇でした。日本ではなかなかフランスオペラを聴く機会が少ないですね。僕もビゼー、ドリーブ、オッフェンバックなどはまあまあ聴いていますが、アレヴィの「ユダヤの女」とか、ベルリオーズの「トロイアの人々」、マイアベーアの「ユグノー教徒」などは聴きたいのですが、チャンスがありません。恥ずかしながらマスネの「マノン」もまだ公演では聴いていません。

 そこで、2002年に新国立劇場での上演、2009年にリヨン歌劇場による演奏会形式での上演以来となる、今回のウェルテル、気合いを入れて聴いてきました。

 まずは、メロディーが最初から最後まで美しい。これだけでも、このオペラ本当に素晴らしいです。同じ時期に書かれたタイス、(ウェルテルが1892年、タイスは1894年)に比べると、タイスの瞑想曲が飛び抜けて美しいのですが、全体としてみたら、ウェルテルのほうが完成度が高いと思います。ウェルテルの「オシアンの歌」、シャルロットの「手紙の歌」が有名ですが、その他にも聴きどころがいっぱい。休憩入れて3時間半の長い公演でしたが、全然長く感じませんでした。

 何より、タイトルロールのディミトリー・コルチャックが素晴らしかったぁ!既に聴いた友人から「良い」とは聞いていましたが、これほど良いとは……
2014年にパルマ歌劇場でのビゼーの「真珠採り」のナディール役で聴いた時は、肺活量の足り無さで、ナディールのロマンスが切れ切れになって、あまり良いイメージは無かったのですが、それでも甘い声で、レイラ役のマチャイゼとのデュエット、ズルガ役のタオルミーナとのデュエットは素晴らしかったのが印象的でしたが、この日は彼の良いところがみんな出ていました。高音の抜け感も良いのですが、中音部で静かに歌う難しいところのテクニックが本当に素晴らしい。このウェルテルは、レチタティーヴォはありませんが、レチタティーヴォみたいに、中音で歌うところが多いのです。下手な歌手だったら、ウダウダと聞こえるだろうところを、コルチャックは見事に歌い上げていました。力が入りすぎず、しかし、感情をたっぷりと入れて、なにより、「若きウェルテルの悩み」という原作を彷彿とさせる、純粋な青年の思い入れが見事に表現されていました。家内がカウフマンのウェルテルを聴いていましたが、「いやー、全然違う。コルチャックのほうが純粋で可哀想。。」と言っていました。さもありなん。テノールが良いと、その役まで良く思えてくるのが、昨年5月の新国立での「ラ・トラヴィアータ」でのアルフレード役のアントニオ・ポーリでした。彼も純粋で、ヴィオレッタに尽くしているという感じが出た歌唱でしたね。肩に力が入っていないというところではコルチャックと似ています。今回のタイトルロールは、当初のマイケル・ファビアーノから、マルチェロ・ジョルダーニが出られなくなってコルチャックになりましたが、結果的には最高でした。コルチャック、フランス物とロッシーニを得意としていますから、これからも来日してほしいです。

 で、次に良かったのが、ソフィー(シャルロットの妹)役の砂川涼子さん。びっくりしました。昨年のゼッダのランスへの旅でのコリーナ役でも素晴らしい歌唱を聴かせてくれましたが、この日は芯の強い声で、実にフランスっぽい。鼻にかかったフランス語の発音も、多分出演者の中で一番良かったのでは?(僕フランス語わからないので、勘ですが。)3幕目の最初でのシャルロットのやりとりでは、完全にシャルロット役のエレーナ・マクシモワに勝っていましたね。二人を比較すると、マクシモワはメゾということもありますが、声がゴージャスすぎるんです。これも昨年ロイヤルオペラハウスで聴いた、アンドレア・シェニエでのカウフマンの相手役マッダレーナのウェストブレークがちょっとおおざっぱな歌い方で興を削いだのと似た感じがありました。

 美しいメロディを紡いでくれた、マエストロ、エマニュエル・ブラッソン、父親の代役を見事に務めていました。ただ、僕はこのウェルテルを聞き込んでいないのでなんとも言えないのですが、マスネって、弦の音でもう少し際だった音が出てくるのではないかと思うのです。その点が、なんとなくダルだった感じがしました。

しかし、去年から今年にかけて新国立での満足度は高いですね。「運命の力」こそ、いまいちでしたが、トラヴィアータ、沈黙、ドン・パスクワーレ/こうもり(研修所)、ラインの黄金、ファルスタッフ、イエヌーファ、サロメ、そして今回のウェルテル、素晴らしいラインナップでした。来年はいよいよベルカントの「ランメルモールのルチア」が登場、これを機会に毎シーズン、ベルカントとフランス物を入れてほしいですね。

 さて、いよいよ、ヌッチをおっかけてスペインの旅です。仕事があるので、オペラの時に頭をオペラ用に切り換えるのが難しい。特に時差ぼけありますからねー。がんばります。リセウでの「シモン・ボッカネグラ」はフリットリ、サルトリ、コワリョフ(この人初めて聴きます)、で指揮はザネッティ、マドリッドの「ルイーザ・ミラー」はヌッチ以外は知らないキャストですが、指揮が僕の大好きなジェームズ・コンロンです。楽しみだなぁ。

指揮:エマニュエル・プラッソン
演出:ニコラ・ジョエル
美術:エマニュエル・ファーヴル
衣裳:カティア・デュフロ
照明:ヴィニチオ・ケリ
舞台監督:大仁田雅彦

ウェルテル:ディミトリー・コルチャック
シャルロット:エレーナ・マクシモワ
アルベール:アドリアン・エレート
ソフィー:砂川涼子
大法官:久保田真澄
シュミット:村上公太
ジョアン:森口賢二
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