プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

フォークトを満喫“ローエングリン“、”美しき水車小屋の娘“

 2012年に新国立でのローエングリン、1幕目フォークトが降りてくる場面で、僕はうかつにも半分寝ていました。そこに、まさに神の声!第一声目であれだけびっくりしたのは、同じく2012年の新国立でドン・ジョヴァンニを歌ったマリウシュ・クヴィエチェンとフォークトの二人だけかと思います。もちろん、生を聴いて素晴らしいと感激した歌手は他にもいましたが、この二人は僕にとっては無名で、それまでにCDもDVDも聴いていなかったのです。

 フォークトの声は独特で、やや鼻にかかった中音から高音にかけて、声の切り替えなしにすーっと上がっていきます。まるで、ウィーン少年合唱団のボーイソプラノが声変わりしないで成人したみたい。高音はマイルドで耳に心地よく、今回の来日での「美しき水車小屋の娘」では、近い場所でそれを堪能することができました。本人も自身の声の“おいしいところ”は良くわかっている様子で、アンコールで歌ったブラームスはまさに高音の至福!特にアンコール2曲目の「日曜日」は彼の魅力が最大限に引き出されていました。シュライアーなどに比べると中低音部の声が弱く、表現力にもやや欠けるという点はありますが、ローエングリンでは4年前に比べてこの点もずっと良くなってきたと思います。

 2013年にはハンブルグでシモーネ・ヤングの指揮でフォークトのヴァルター(マイスタージンガー)を聴きました。これも凄かったですね。ローエングリンに比べて、「人間」らしさにあふれるヴァルターのほうが、フォークトの色々な声の表情がうかがえて楽しい感じもありました。ただ、どちらが彼に今ぴったりかというと、やはりローエングリンでしょう。フォークトが出てくると他の歌手の影が薄くなってしまう感じがありますが、今回のエルザ役のマヌエラ・ウール、必死にローエングリンにすがりつく様が、声にも演技にも良く出ていて素晴らしかったと思います。シュトラウスも良く歌っているようで、声に花があります。そして、ハインリヒ国王のアンドレス・バウアー、威厳のあるバスで舞台を締めていました。やや残念だったのは、テルラムントのユルゲン・リン、今迄新国立でも何度も聴いていて良いイメージがあったのですが、この役としては声が落ち着かず、なんとなく浮いた感じが最後まで否めませんでした。

特筆すべきは、合唱の素晴らしさ!ローエングリンで合唱が重要なことは言うまでもありませんが、新国立のシルクのような美しい合唱は、まさに世界一のローエングリン合唱だったと思います。三澤さんと合唱団にBravi!!

 ワーグナーの指揮については何とも言えるほどの見識が無いのですが、飯盛マエストロの指揮、オケを良く鳴らしてはいたと思いますが、冗長な感じがしました。他の方のブログの記録を拝見すると、2012年のペーター・シュナイダーの指揮が195分だったのに対し209分かかっていたようです。時間の問題というよりも、ワーグナーは聴いているこちらの心も体もグッと持っていくような粘っこさが欲しかった感じがしました。その点はシュナイダーの指揮のほうが蠱惑的だったような覚えがあります。あとは舞台演出ですが、お金がかかっていることはわかるのですが、ほとんど動きの無い1幕目、不必要な動きの多い3幕目と、どうも感心しませんでした。エルザに覆い被さった扇風機のカバーの巨大なのも、高価であることはわかりますが、意味不明.......

 ともあれ、フォークトは、今回の来日では、バイロイトでのパルジファルへの出演を直後に控えているスケジュールを調整して小劇場での水車小屋を入れてくれたそうです。嬉しい限りです。それにしてもフォークトのパルジファル、カウフマンとはだいぶ違うでしょうね。来年はバイエルン歌劇場と5月からタンホイザーを歌い、秋には来日です。今から楽しみ!
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