プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ハーゲンクァルテット@オペラシティ

 初めてハーゲン弦楽四重奏団の演奏を聴いたのは、2005年でした。清冽な弦の音に魅了され、以来、来日の時は公演に行くようにしています。今年のテーマは「フーガの芸術」、バッハ、ショスタコーヴィッチ、ベートーヴェンそれぞれの弦楽四重奏でフーガを聴かせます。

 最初のバッハの「フーガの技法」は、この日のアペリチフ、腕慣らしという感じです。そして、バッハが終わってすぐに拍手の入る間も与えずに、ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏第8番に入ります。これは、おもしろい演奏方法だと思いました。バッハとショスタコーヴィッチ、意外にうまくつながります。プログラムにも書いてありましたが、「バッハから200年飛びながら同様のテンポと似た動きで始まります」。もちろん、ショスタコーヴィッチのほうは大地を切り裂くような力強さがあり、目をつぶって聴いていると音楽の襞の間をさまよい歩いているような感じがしました。僕の親しくしている指揮者が、ハーゲンの演奏するショスタコーヴィッチの素晴らしさを「フレーズ感がはっきりしている」と評しましたが、まさにその通り、音の山脈のようです。ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏を聴くのは初めてでした。それに今迄ショスタコーヴィッチでこれだけの強い印象を受けたこともありません。素晴らしい演奏でした。

 休憩を挟んで後半はベートーヴェンの弦楽四重奏第13番、これは難曲だと思いますが、ハーゲンは意外にさらっとこの曲を弾いていきます。そうなんです。大迫力なのに、重さを感じさせない。。ショスタコーヴィッチにしても、重い曲なのですが、その重さを感じさせない。これは、特にチェロのクレメンス・ハーゲンとヴィオラのヴェロニカ・ハーゲンの二人の音が、軽やかと言うか、押さえたトーンに徹しているのに由来しているのではと思いました。この日前から3列目の中央という席で聴いたので、いつもより中低音がはっきりと聞こえたのです。

 ハーゲンの魅力は、楽器の魅力でもあります。この4人の素晴らしいテクニックは、日本音楽財団から貸与されているストラディヴァリウスの「パガニーニ・クァルテット」という17-18世紀の名器で思う存分発揮されています。これだけの楽器で弦楽四重奏を聴くのも実に贅沢です。

 ハーゲンの4人、白髪も増えてだいぶ歳を取ったなぁと思います。彼らの音も、年を経るに従って、単に「清冽」というのではなく、「熟成」した音になってきた感じがあります。この日はアンコールはありませんでしたが、(大フーガの後にアンコール演奏は酷でしょう)いつも弾いてくれる、ラヴェルの弦楽四重奏の第一楽章を今のハーゲンで聴いてみたいものです。

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン, Violin)
ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン, Violin)
ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ, Viola)
クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ, Cello)

J. S. バッハ:フーガの技法~ コントラプンクトゥス1~4
J. S. Bach: Die Kunst der Fuge BWV1080 ~ Contrapunctus 1-4

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番 ハ短調 作品110
Shostakovich: String Quartet No. 8 in C minor Op. 110

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 作品130
Beethoven: String Quartet No.13 in B flat major Op.130

ベートーヴェン:大フーガ 作品133
Beethoven: Grosse Fuge Op. 133
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