プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

コジファントゥッテ@テアトロ・ジーリオ・ショウワ

 昭和音楽大学の今年度のオペラ公演はコジファントゥッテ。昨年のフィガロの結婚に続くダ・ポンテ作品です。そうすると来年は“ドン・ジョヴァンニ”かな?などと思ってしまいますね。

 今年も昨年同様に上海音楽学院との共同プロジェクトです。この日(10月9日、8日は別キャスト)の歌手には陳大帥さんがフェランドで、蘇栄娜さんがトラベッラで出演していました。まず、この陳大帥さんが素晴らしい。甘いテノールで高音まですくっと立ち上がる美声です。声量も充分。グリエルモの市川宥一郎も陳さんに負けず劣らずの美声で、表現力豊かです。そしてこの二人の演技の“乗り”がすごい!ブッファはこうでなくちゃ!と思わされました。陳さんはまだ大学院生、二人ともこれからどんどんうまくなるでしょう。名前覚えておきます。

 女声では、デスピーナの中畑有美子さんが出色でした。一幕目はやや緊張して堅い感じでしたが、二幕目では、まさにスブレット(利口な小間使い役の総称)冥利につきるという感じで、キュートな歌声を披露しました。

 フィオルディリージの中村芽吹さん、ドン・アルフォンソの田中大揮さん、ドラベッラの蘇栄娜さんも、レッジェロな良い声を持っています。蘇さんは技巧は素晴らしいですが、早くに固まってしまわないで、どんどん伸びていって欲しいと思いました。

 とにかく、この若い歌手たちは、舞台上で実に楽しそうに歌ってい、はずんで演技していました。合唱団も踊るような動き!まさしく出演者全員が、コジファントゥッテの役柄になりきっている感じで、本当に好感が持てました。

 そして指揮の大勝秀也マエストロは、ともすれば慎重になりがちな学生のオケを励ます感じで音を膨らませて行きます。昨年のフィガロの時のムーハイ・タンさんが、「俺についてこい!」という感じの指揮をしていたのとは、(見事に学生がついて行きました)好対照です。歌手に添い、応援する感じの演奏。一幕目終わりの6重唱は、歌も演奏も本当に素晴らしかった。大変な練習量をこなして、この舞台にのぞんでいるそうですが、それだけのことはあります。最後のカーテンコールの時にライトが当たったピット内のオケのみんなの若いこと!自分たちの出来がどうだったのか、とちょっと不安そうな顔をしていましたが、拍手喝采!!プロの批評家の方も「名演」とおっしゃっていましたよ!

 マルコ・ガンディーニの演出と、イタロ・グラッシの美術のコンビはこの劇場ではおなじみのもので、僕は3年前の「オベルト」から見ていますが、今回もイタリア的な「美術感」がたっぷり。舞台を3等分して一番左の部分はドン・アルフォンソの研究室、右側の2/3はテラコッタの壁を模した二重幕になっており、これが上がるとダヴィンチのような線描画が現れてきます。一幕目では大きな手が赤いバラを持ち、それを雉がしたから眺めるというおもしろいもの。まるでミラノのブレラ美術館かアンブロジアナ美術館の中に入ったような気分です。洒落ていますね。

 新国立のミキエレット演出の”キャンピング・コジ“も良いですが、今日の昭和音大のように、本来のブッファの良さをそのまま出して、シンプルだけどお洒落に演出し、若い人が歌い演奏するコジもとても良いです。

 昭和音大のオペラを聴いて帰る時はいつも格別に良い気分です。。僕たちの年代がこの世から消えた後も、オペラをしっかりと背負って、より素晴らしいものにしてくれる若者が着実に育っていることを、素晴らしい劇場で体験できるという幸せですね。できれば年に2回くらいやってほしいというのが本音。

 それにしても、この新百合ヶ丘近辺に住んでいらっしゃる方はラッキーですね。オペラ劇場のある小都市(中都市か?)なんて、イタリア以外ではなかなか無いですから。

 さあ、明日はマリインスキーのドン・カルロです。

指揮:大勝 秀也
演出:マルコ・ガンディーニ
管弦楽:昭和音楽大学管弦楽団
合唱:昭和音楽大学合唱団
フィオルディリージ/中村芽吹
ドラベッラ/蘇栄娜★
デスピーナ/中畑有美子
フェランド/陳大帥★
グリエルモ/市川宥一郎
ドン・アルフォンソ/田中大揮
★・・・上海音楽院より招聘
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