プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

ベートーヴェン交響曲第五番他 by 東フィル

 10月19日のオペラシティでのコンサートに行ってきました。10月に突如発表された、アンドレア・バッティストーニの東フィルの首席指揮者就任。いつかそうなるだろうなとは思っていましたが、けっこう早かったですね。まあ、年に3回ほどは日本に来ていますし、東フィルも空席だったこのポジションをバッティに預けたのは賢明な判断だったと思います。

 この日の演奏は、ヴェルディの歌劇 “ルイーザ・ミラー“の序曲から。これは素晴らしかったです。音の立ち上がりが鋭く、全体に塊感があり、序々に盛り上げて行って、オペラの1幕にめがけて流れ込むような勢いのある音楽に仕上がっていました。前に聴いたレンゼッティの研ぎ澄ましたような指揮、コンロンの豊穣な音とも全く違ったものでしたが、演奏が終わった後に、全幕を聴きたくてしかたなくなりました。(オペラの序曲は、それだけを演奏しても、聴くものを全幕に誘い込むような魅力がなければいけないと思います。)(来年9月にはオテロを演奏会形式でやるそうです。これも楽しみですね。

 さて続く、歌劇 “マクベス“からの舞曲にも魅了されました。魔女たちが踊る蠱惑的で美しい情景が目にうかぶような指揮ぶり。前回聴いたのが、昨年のガッティの指揮ですが、いやずいぶん違うものです。ガッティの指揮は重厚で、舞台のおどろおどろしさを良く表現していましたが、バッティストーニの指揮では、テンポ感があり、なまめかしさ(あるいは色っぽさ?)がとても良く出ていました。バッティストーニが芸術監督を務めるジェノヴァのカルロ・フェリーチェのオケとのCDに納められた同曲に比べても、この”なまめかしさ“が曲を支配して魅力的です。おそらく、これは東フィルの音が、カルロ・フェリーチェのオケに比べて締まって、精妙な音を出しているからではないかと思うのです。今や東フィルは世界のベスト10に入るオーケストラ、バッティストーニの音を体現するには最強のオケだと思います。いずれにしろ、この2つの序曲を聴いてみて、やはりバッティストーニのヴェルディは凄い!と思わざるを得ませんでした。

 続く、ロッシーニの “ウィリアム・テル”序曲も、最初の「夜明け」から最終章の「スイス軍の行進」にむけて、壮絶に盛り上がって行きました。数年前にムーティとジェルメッティの指揮を聴いたきりなので、ひさびさにワクワクした気分で聴きましたが、僕の脳内イメージ的には「ローン・レンジャー」感が強すぎて、前2曲ほどの感激はしませんでした。どうせなら「運命の力」か、「椿姫」の序曲(両方ともカルロ・フェリーチェでやっている)を持ってきて欲しかったなどと思いました。それだと、ヴェルディばかりになりますが。。。

 さて、休憩を挟んでのベートーヴェンの第五番「運命」。実にイタリアンなフルーティーな「運命」でした。開始部の「ジャジャジャジャーン」の速くて軽いこと!まずは聴衆にインパクトを与えようという意図さえも感じられました。ヴェルディの序曲の後で聴いても、違和感のないような指揮ぶり。個人的にはとてもおもしろかったし大満足でしたが、ベートーヴェン聴きの人々にとってはどうだったのでしょうか?感想を聞きたくなりました。ところで、この交響曲を「運命」と呼んでいるのは日本だけだそうです。プログラムに書いてありましたが、知りませんでした。

 盛大な拍手が続く中、アンコールに選んだのは、近々振る予定というラスマニノフのナンバーからヴォカリーズ。これも実にイタリアっぽく味付けられていました。バッティストーニの繊細さが出ていて素敵でした。実際、彼の「椿姫」の序曲などは、CD (ここから試聴できます。)で聴く限りは、ジュリーニの指揮のように繊細でゆったりしています。「鳴らす」バッティというのが聴衆のイメージでしょうが、繊細な指揮もこれからは聴いてみたいと思いました。

第105回東京オペラシティ定期シリーズ
2016年10月19日(水) 19:00 開演
東京オペラシティコンサートホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ
ヴェルディ/歌劇『ルイザ・ミラー』序曲
ヴェルディ/歌劇『マクベス』より舞曲
ロッシーニ/歌劇『ウィリアム・テル』序曲
ベートーヴェン/交響曲第5番『運命』
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