プロヴァンスの海と土を少し 湘南人草間文彦

セミラーミデ 藤沢市民オペラ

 前々からとても楽しみにしていた、藤沢市民オペラの”セミラーミデ“を聴きに行っていきました。当日券を買ったのですが、1400席のうち20席ほどしか残っていませんでした。このマイナーな演目でびっくりです。

 僕は高校が藤沢だったので、その頃からこの会場があることは知っていたのですが、行くのは初めて。駅から近くサイズ的にもなかなか良いホールです。内装やシートも古さを感じさせず快適でした。

 さて、日頃ロッシーニのオペラ・セリアは日本ではなかなか聴く機会がありません。ペーザロなどではがんがんやっていますけどね。僕も、DVDでゼルミーラを聴いたくらいで、このセミラーミデは、コンサートなどでソプラノやメゾでアリアを聴くことは時々ありますが、全幕を生で聴くのは初めてです。実際、日本では初の上演だと、ナビゲーターの朝岡聡さんが言っていました。

 すべてに渡って素晴らしい公演だったと思いますが、まずはタイトルロールの安藤赴美子さんがBrava!!でした。彼女の声のイメージというと、ややスピントな強い声という感じですが、この日はその強さよりも「まろやかさ」がぐんと前に出て、強さと甘さのある素晴らしいコロラトゥーラを聴かせてくれました。超高級チョコレートを味わっているみたいでした! 演奏会形式の上演でしたが、彼女の役へののめり込みかたは凄いものがあり、1幕目でアルサーチェが王に指名されてうろたえるところでは、腕を組んで横目でアルサーチェを睨み付けるような様子。これが、かっこよかったですねー。2幕目でアルサーチェの剣を受ける最期も、両手を天に挙げて悲鳴を上げます。イタリア人歌手は、演奏会形式でも、だんだん乗ってくると舞台上を歩きまわったり、指揮台のバーに脚をかけて絶命したり(今年5月のマドリッドでのラナ・コスがそうでした)、狭い舞台を使いまくるのですが、おとなしい日本人歌手の中では、安藤さんは際だっていましたね。見ていると、こちらもオペラにどんどんと引き込まれます。しかし、彼女はロッシーニからプッチーニ(来年2月に新国立で蝶々夫人やりますね。行かなくちゃ!)、ブラームスまで、上手にこなします。声の作り方の才能が素晴らしいです。「作り方」というと語弊を生じそうですね。発声のバラエティというか、とにかく素晴らしいんです。このことはいつも感じていますが、この日のロッシーニは一番難しい役、それを120%の出来で歌ってくれたので本当に感動しました。“麗しい光よ”は、グルベローヴァの歌が有名で、彼女のリサイタルなどでも良く歌われますが、細く軽いソプラノです。それはそれで素晴らしい。しかし、マエストロゼッダは、「セミラーミデはもっと太い声で」と言ったことがあるとか…. 安藤さんの歌には、女王の威厳と悪事を働いたものの後悔が素晴らしく、超絶技巧で表現されていました。黒いドレスもまさにセミラーミデ・ヴァージョン!

 メゾの中島郁子さんも素晴らしかったです。6月にロジーナを歌った時に装飾技巧が素晴らしかったですが、アルサーチェはもっと低い声域を使って、ドスの効いたアジリタを聴かせてくれました。この役の歌手が悪いと、このオペラどうにもならないと思いますが、神殿に入ってくる時の“ああ、この日のことを忘れない/ "Ah! quel giorno ognor rammento" で、「おっ、これは素晴らしい!」と思わず椅子から乗り出しそうになりました。中島さん、これから楽しみですね。

 そして、御大、妻屋秀和さんのアッスール、迫力ありました。2幕目でセミラーミデとのの知り合うところは凄かったです。金曜のナクソス島に続いて、オペラに”持って行かれ“ました。バス陣はオーロエの伊藤さんも素晴らしかったですし、ニーノ王の亡霊のデニス・ビシュニャも圧倒的な存在感で、モンテローネしていましたね!そしてテノールでインドの王子、イドノーレを歌った山本康寛さんも良かったですが、やや高音を持ち上げて出している感じがありました。ベルカントのテノールは難しいです。

 演奏会形式で音楽と歌に集中できるのは、初めてのオペラでは良いですね。今年はルイーザ・ミラーもそうでした。

 指揮の園田隆一郎さん、6月のセヴィリアに続いてのロッシーニでしたが、アマのオケの音を本当に良く引き出していました。ふくよかで、しかし膨張しないで締まっている、厚いところは厚く、速いところは速く、短調と長調が切り替わるロッシーニセリアの魅力をそのままストレートに出してくれました。僕は、特に長調のところにランスへの旅の雰囲気を感じました。2年違いの作曲ですから、それもありかも、、ですね。

 忘れてはならないのが、合唱、藤沢市のアマチュア合唱団9団体の合同でしたが、素晴らしい出来でした。この合唱も今回の素晴らしい公演のキイだったっと思います。

 朝岡さんのナビゲーション、しつこすぎず、簡潔でとても良かったです。こういうマイナーなオペラでは、鑑賞の助けになりますね。

 この公演、日曜の一回限りではあまりにももったいないです。藤原あたりで、東京でもやってほしいものです。

 さて、この週末は、ナクソス島とこのセミラーミデ、間に挟まった土曜日は映画の“インフェルノ”まで見に行って充実した観劇週末でした。今週は、いよいよグルベローヴァのノルマとウィーンのワルキューレ、大作が続きます。

指揮:園田隆一郎
安藤赴美子(セミラーミデ)
妻屋秀和(アッスール)
中島郁子(アルサーチェ)
山本康寛(イドレーノ)
伊藤貴之(オーロエ)
伊藤晴(アゼーマ)
岡坂弘毅(ミトラーネ)
デニス・ヴィシュニャ(ニーノ王の亡霊)

朝岡聡(ナビゲーター)
管弦楽:藤沢市民交響楽団
合唱:藤沢市合唱連盟

 

 
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